スマイル野郎のジョークがそろそろ欲しくなってくるくらいの陽気が心地いい初夏の某日。  
高らかに今日の不思議探索の解散を宣言した地球温暖化の元凶である笑顔から解放された俺は、フラつく足を叱咤激励しながら自転車置き場へと向かった。  
中間試験の日程が微妙に異なるために結ばれた佐々木とハルヒの休戦協定に合わせて、せめて束の間の平和を楽しもうと目論んでいた俺のなのだが、  
エネルギーを持て余した団長様がそんなことを許すはずもなく、心のオアシスである試験休みは、あっけなく不思議探索という名目のウィンドーショッピングに消えた。  
さてさて、このままだと俺の心も真夏に放置されたカキ氷のごとく消えてしまうのではないかと半ば以上に本気で危惧していると、  
もうひとつの暑苦しさの元凶が、俺の自転車にデローンともたれかかりながら、へたばっているのを発見した。  
 
「こ……こんにちは、キョンさん。いえ……もう、こ、こんばんわと言うべき……かしら?」  
近づいてくる俺を発見して無理やりに作られた笑顔と、活舌の怪しい口調が痛々しい。てか、干からびる寸前なんじゃねーか、こいつ?  
「だが断る」  
「んんっもうっ!まだ何も頼んでないじゃないですか!」  
「佐々木の件以外に何かあるならいってみろ」  
「あう、そ、それは、その……」  
「そうか。じゃあな」  
ここ最近、何度となく繰り返されたこの問答は、もはや挨拶と同じくらいのお約束になっている。  
まったくもって暇なやつだね、こいつも。まあ俺だって人のことを言えた義理じゃないがな。  
「ちょっと待ってください!今日こそ決心してもらわないと、キョンさんを待ち伏せたこの2週間に飲んだジュース代の領収書が落ちないのです!  
来月の生活費のためにも、今日こそは話だけでも聞いてください!」  
…………身に覚えのありすぎる切実な理由にほだされた俺は、仕方なくこのアホの子を連れて、いつもの喫茶店のドアをくぐった。  
 
やや早い気がしないでもないが、試運転で調子が今ひとつであると思われる少しぬるめの冷房が火照った体に心地いい。  
対面に目をやると、ひんやりとした机に頬ずりしながら、ダラーンと伸びきっていたこやつも、  
お冷とアイスコーヒーを飲み終わるころには、ようやく当初の目的を思い出したようで、ツインテールを振りつつ、必死に演説を始めた。  
だが、その内容は初めて会った頃から、ちっとも進歩していない。まぁ手詰まり状態なんだから当然といえば当然だろうけどな。  
とりあえず右から左へと聞き流しつつ、さてさてどうやって話を切り上げたもんかと思案していると、窓の外に女連れの国木田を発見した。  
お相手にも見覚えがあるな。あれは確か、中学んの時の同級生だった岡本……だったかな?なんにせよ国木田のやつ、ちゃっかり青春を謳歌しやがって。  
それに引き換え俺ときたら、明らかに間違った性春を謳歌する羽目に陥っているだけでなく、  
こんな電波話を延々と……と思っていたら、どうやら演説が終わっていたようだ。  
「ちょっとキョンさん!きちんと聞いてくれてたんですか!?」  
「いや、全然」  
「んんっもうっ!世界の未来が掛かってるんですから、少しは真面目に聞いてください!  
だいたいあなたはこんな美少女と二人きりでお茶をしているんですから、ちょっとくらいは嬉しそうにしたらどうなんですか!」  
バンッと悔しそうにテーブルを叩く橘。言われてみりゃ、確かにこいつも電波でなけりゃけっこういい線いってんのに……。  
「そ、そんなにしげしげと見つめないでください!…………あ、でも、その、あたし、別にキョ、キョンさんがその気なら……」  
急に茹ダコよりも真っ赤になってうつむき、何かをゴニョゴニョと呟く橘。  
そのしおらしい様子に一瞬ドキッとしてしまったのは、ここ最近の陽気にやられたせいであって、他意はない。  
てか、このアホの子は、今、とんでもないことを口走らなかったか?  
 
「話は承った。だがな、何度も言っているとおり、まず佐々木の承認を得ろ。そうしたら俺も協力せんでもない」  
「それが出来たらこんなに苦労はしていません。だからまず鍵であるあなたを味方につけて、佐々木さんに翻意を促がそうと……」  
「あのな、その虚仮の一念には敬意を表するが、いいかげんもうちょっと戦略を変えたほうがよくないか?  
せっかく誘拐未遂までして悪の秘密結社みたいな登場をしたんだから、少年誌的な展開に従って、  
セクシーなおねーちゃんが色仕掛けをするとか、誰かを人質に取って脅迫するとか、裏切らせるにも色々と定石ってもんがあるだろ?」  
「!!!!! な、なんてことを言うんですか!胸はなくたって、あたしはこの健康美で十分にセクシーですっ!」  
おい、だれも胸のこと言ってねーだろ、と突っ込みを入れたいところだが、これならこれで話は早い。  
てきとーに怒らせて、とっとと引き上げてさせてもらうとするか。  
「ほほう、ずいぶんと自信満々だな。まるで色仕掛けをやったことがあるような口ぶりじゃないか」  
「も、もちろんです!あたし達は目的のためなら誘拐すら辞さない組織ですよ?ハニートラップくらい日常茶飯事で、お茶の子さいさいなのです!  
あ、あたしなんて、むしろそっちのスペシャリストとして訓練に訓練を重ね、その、これまでに、えーと、ほら、あんなことやこんなことを……」  
尻すぼみに小声になっていく橘。古泉の鉄仮面を見習えとまでは言わんが、せめてもう少し具体的な事例を挙げて嘘をつこうぜ?  
「ほ〜、そいつはすごい。じゃあそのご自慢の技とやらをここで披露してくれ。  
俺が降参するまでやってくれるなら、お前の話を前向きに検討しよう。ダメなら交渉決裂だ。二度とこの話は聞かん」  
「!!!! こ、こんな公衆の面前で!?」  
ガタンとイスを跳ね飛ばす勢いでのけぞり、アタフタと周りを見渡す橘。  
おいおい、自称ハニートラップのスペシャリストがこの程度で真っ青になるなよ。  
だが、どうやらあと一押しでチェックメイトみたいだな。  
「誰が公衆の面前でなんて言ったんだ?ほれ、ここはいつかと同じ席だ。てことは、同じように二人きりになる方法があるだろ」  
「あ、あなたって人は、まさか……佐々木さんの中でそんな破廉恥なことを!?不潔……不潔だわ……」  
たっぷり3秒ほど俺の言葉を考え込んでいた橘は、その意味に気付くと、唇まで真っ青になってワナワナと震えはじめた。  
てか、不潔て。いまどき深窓の令嬢でもそんなこと言わんぞ。  
もっとも、俺がリアルで知りうる御令嬢は、明朗快活で天衣無縫な上に豪放磊落を絵にかいたような人物なので、参考にはならないのかもしれんがな。  
とはいえ、まあ当初の目標は達成したようだ。  
「じゃあ交渉決裂みたいだな。そういうことなら俺は帰らせてもらう」  
 
だが、いつもの癖で請求書を手に取り、3歩ほど歩いたところで、ジャケットの裾をガシッと掴まれた。  
振り返ると、耳まで真っ赤になった橘が決意に満ちた目でキッと俺を睨みつけている。  
「や、やってやろうじゃないの!」  
おいおい、無理すんな。手の甲まで真っ赤になってるじゃねーか。だいたい、やるっていっても、何をやるかすら分かってないんだろ?  
「そ、それは……」  
一瞬泣きそうな顔をして俯いた橘が再び顔を上げたとき、俺達は例のオックスフォードホワイト色をした空間にいた。  
 
 
「……おい」  
今にもこぼれそうな涙で潤んだ瞳が、まっすぐに俺を見据えている。  
まずったな。そう言えばこいつは、腹をくくれば、森さんのあの壮絶な微笑を見返すほどの度胸があったんだっけか。  
「わかったから、とりあえず手を離してくれ。OK、まじめに話を聞けばいいんだろ?」  
「いいえ!今日こそ覚悟を決めてもらいます!さっきキョンさんが言った条件を呑めばいいのよね?  
あなたが降参したらあたし達に協力して佐々木さんを説得すること、その代わり、今日ここであたしが音を上げたら二度と無理なお願いはしません!」  
……まずい。どうやら本気のようだ。目が完全に据わっていやがる。しかしまあ売り言葉に買い言葉とはいえ、ここまで単純な挑発に乗ってくるとは……。  
さてさて、どうすっかなーと、頭を抱えつつ、近くの席の適当なイスに腰を下ろすと、それを同意と受け取ったのか、  
俺の前にしゃがんだ橘が、意を決して恐る恐るという感じでジッパーに手を伸ばしてきた。  
 
「おい」  
ビクッと反応し、ぴょーんと水平に飛びのく橘。さすがは超能力者。すげえ跳躍力だ。  
だが、イスに座った俺の股間に手を伸ばそうとしゃがんでいた橘の頭は、当然のように俺の膝のちょっと上あたりにあったわけで、水平に飛べば……  
ゴインと派手な音を立てながら、後頭部を机に強打してひっくり返った。  
 
いま、かなりいい音したぞ!?大丈夫か!?  
慌てて駆け寄ると、橘は見事なくらいに目をクルクルさせてピヨっている。  
うむ、さすがは佐々木団(仮)のボケ担当。こういうお約束は外さないな……などと感心している場合じゃない。  
息はしてるようだし、とりあえず陥没するような怪我にもなっていないようだが、床に放置してよさそうな状況でもないようだ。  
ということで、仕方なく橘を抱えあげた俺は、この軽い物体を奥のソファーになった6人がけのボックス席へと運び、  
そこら辺のお絞りとお冷で作った即席の氷嚢を後頭部にそえてみた。  
 
5分経過……まだ動く気配すらなし。まずいな。ここじゃ古泉も入ってこれないし、長門も呼べやしない。  
佐々木の内面世界とはいえ、へたすりゃこのままこいつは寝たきりで、俺も閉じ込められるなんて羽目に……。  
割とシャレにならない事態に当惑した俺が、スタッフルームで見つけた救急箱を持って帰ると、  
目をぱちりと開けた橘が起き上がり、不思議そうにキョロキョロと辺りを見回していた。  
やれやれ、どうやら一安心みたいだな。  
 
「うふふふふ。キョンさん、み〜っけ!れも、こんらろころれ何をやってるんれすかぁ〜?  
あ、まさかあたしに追ってきてくれたの!?もう、キョンさんったら!  
呼び出してくれれば、どこにでも行くし、いつでもこのボディを自由にしていいのにぃ〜」  
前言撤回。アホの子がバグった。舌が上手く回っていないこのアホタレは、異常に真っ赤な頬に両手を当てて、くねり始めやがった。  
ってこら!分かったから、とりあえずブラウスを脱ぐな!スカートを穿け!てか、なんなんだその下着は!!  
「どうです?かわいいでしょ、これ。まえに佐々木さんと一緒にお買い物に行ったときに買ったんです。  
あたしは恥ずかしくって、この真っ赤な総レースでいっぱいいっぱいでしたけど、佐々木さんってば、もっともっと大胆なやつを買ってました!  
あの真面目な彼女に、ヒモみたいなバタフライと、乳首すらまともに隠せない妖しいブラを買わせるなんて!  
まったくキョンさんったらエッチなんだから〜!このっこのぅ!」  
おい、そんな極秘情報はいいから、とりあえずまぁ今は落ち着け。お前は頭を打ってピヨってんだ。俺の言ってる事が分かるか?  
「もちろんなのです!とりあえず、その……口ですればいいんですよね?」  
だめだ。完全に日本語が通じてない……えーと、こういうときは、三十六計逃げるにしかず。  
ということで、脱兎のごとく逃げ出そうとした俺の腰に、ぎゅっと柔らかい何かが絡みついてきたと思ったら、腰払いの要領でステンとひっくり返された。  
やべえ、ただのアホかと思って油断していたが、こいつは超能力者として古泉んとこと血みどろのケンカをしてたんだったな。  
 
教科書よりも見事なマウントポジションで俺を押さえ込んだ橘は、気持ち悪いくらいの笑顔を浮かべながら上半身を倒し、ふにっと抱きついてきた。  
正直いって、グラマーとは対極にある体ではあるが、しなやかに鍛え上げられた柔肌は適度な張りを保ちつつ、  
キュッと引き締まることでむしろ女の子独特の柔らかい部分を強調し、その健康的なプロポーションはアダルトな下着に引き立てられて……  
ってまて!落ち着け俺!!こいつは敵だぞ!?マイスイートエンジェルを誘拐しようとした極悪人だ!!!  
あの憤りを思い出せ!そうそう、あのくたっと倒れた朝比奈さんの無防備で安らかな寝顔は……ってコラッ!そっちじゃない!!  
大慌てで脳にデフラグを掛けていると、俺の胸に頬擦りしていた橘は、なにを思ったか、ずりずりと体をずらし、足元まで移動しやがった。  
チャンス到来!この機を逃さず、こやつを押しのけて立ち上が……ろうにも、上半身を起き上がらせたところで俺の脚はうんともすんとも動かず、  
どこをどうやっているんだか知らんが、気が付けば俺の下半身は完全に押さえ込まれていた。  
その上、えへへ、と照れ笑いを浮かべた橘は、ジッパーを下ろしたかと思ったら、  
トランクスからご子息を取り出し、一呼吸置いて、意を決したようにパクッと咥えてきた。  
 
真剣な表情のツインテールに刺し込まれたグロテスクな愚息。  
きゅっと締められた唇の柔らかさに、交感神経が刺激され、一気に硬度が増大する。  
その小さな口で愚息の正直すぎる反応をダイレクトに受け取った橘は、恐れおののいたように、ぷはっと離してしまった。  
すまん。不可抗力だから許せ。てか、この刺激で正気に返ったってことは……ないようだ。  
いきなり巨大化したご子息を見つめる橘の目には、興味シンシンな光がランランに輝いている。  
「キョンさん、こんなに大きいものを、どうやって口に入れればいいんですか?」  
びっくりするほど嬉しそうな幼い笑顔と、対照的なセクシーな下着。やばい。本格的に理性を失いそうだ。  
 
心頭を滅却し、何とか滾りを抑えようと俺が精神を集中した矢先、橘はニコニコの笑顔のまま、愚息をぐっと握ってきた。  
おい、そんなに強く握ったら痛いって。  
「ごごごごめんなさい!あの、あたしどうしたら良いか分かんなくて!」  
熱したヤカンに触れてしまったように慌てて手を引っ込めた橘は、今にも泣き出しそうな顔でオロオロと謝罪している。  
あー、いやその、そんなに痛かったわけじゃないし、むしろ気持ち良いくらいだから安心してくれ。  
それを聞いて、一転してパッと明るい笑顔に戻る橘。  
普段が切羽詰った真剣な表情ばかりなもんだから、そのギャップがすさまじい勢いで俺の琴線をかき鳴らす。  
まずいぞ。なに考えてんだ俺!落ち着け、キープクールだ!!よーしいいぞ。頭が程よく冷えてきた。  
よく考えりゃこいつが正気に戻らなけりゃ、どこまで逃げようにも、ここに閉じ込められたままなんだよな。  
ということは、だ。こいつの要求をある程度呑んで……ってこらっ待ちなさい!その恐る恐るな手つきは絶妙な刺激になるんだよ!  
「そうなんですか!?」  
初めて100点を取った小学生のような笑顔をほころばせる橘。あ、カワイイ、と思ってしまったのが運の尽きで、  
数日振りに女性から与えられる刺激に即応した愚息は、ドクドクと先走りをほとばしらせ始めた。  
 
ニチャニチャと指にかかる粘液を気にもせず、ネコじゃらしにじゃれ付く子猫のように棒をこすり始める橘。  
その真摯で嬉しそうな目が俺の理性を麻痺させ、気がつくと俺はこやつに指示を出してた。  
「もっとゆっくりでいいから、その太くなってるあたりに指を絡ませて擦ってみてくれ。  
うん、上手いぞ。そうそう。そこだ。それに空いてる左手で玉のほうを触ってくれるともっと良い」  
俺の命令を嬉々として聞きながら、的確にこなしていく橘。そのひんやりとした指が火照った愚息に気持ちよく絡みつき、  
ぎこちない動作が逆に初々しさを際立たせることで、刺激を倍増させる。  
 
ツインテールをピョコピョコ揺らしながら、恐る恐るとしたタッチで愚息を擦りあげる橘は、なぜかとにかく嬉しそうだった。  
カウパーが噴出すたびに「ヒャ」とか「ウワッ」とか小さく悲鳴を上げるくせに、一切指を離そうとはせず、より一層目を輝かせながら、擦るスピードを上げていく。  
しかもこやつには妙な才能があるようで、最初の指示で要領を掴むと、あとは独特のリズム感でコスコスと肉茎を擦り上げながらも、  
急にピッチを変えてみたり、指の腹をじっくりとカリ首に這わせたり、アクセントをつける為にちょっとひねってみたりと、  
独自の改良を加えつつ、カウパーの量が増えるたびに、初めて遊園地に連れて行ってもらった子供のように顔を輝かせる。  
 
この手コキというやつは、なにぶん自家発電と似ているだけに、すぐにリミットを振り切ってしまう代物ではない。  
しかしながら、女性のしなやかさを象徴するようなスラリと細い指が、柔らかくひんやりとした感触を伴って愚息を溶かすかのごとく優しく包み込み、  
さらには、愚息の愚直な反応がウブな橘に感嘆と歓喜をもたらしているかと思うと、  
その快楽は棒からの直接的なものだけにとどまらず、暖かな感情となって心からも湧きあがってくる。  
しかも、ピョコピョコと揺れるツインテールの嬉しそうな表情だけでなく、艶やかな下着がやんわりと包み込む女の子に特有の曲線美や、  
きゅっと引き締まった肌の瑞々しさが俺の視覚を占領することで、脳そのものを撫でられているような錯覚にとらわれる。  
さらには、控えめながらも十分な大きさを持った双球が、愚息をコキ上げるたびに、ぷるるんぷるるんと可憐に揺れ、  
レースのブラから見え隠れするその硬く尖った蕾の初々しさは、漢の奥底に眠るドロドロとした欲望そのものに火をつけてきやがる。  
この刺激だけでも十分過ぎる程なのに、玉に添えられた左手の指は、まるでピアニストのように繊細かつ大胆な手つきで中の玉を転がし、  
ときおり内股や蟻の戸渡りをくすぐりながら、また違った刺激をもたらすことで、それに呼応するように噴き出す透明な汁を嬉しそうに絡めとっていく。  
 
そのカウパーでヌルヌルになった指先の臭いを真剣な表情で嗅いでいた橘は、思い切ったようにそれをぺろりと舐めた。  
とたんにビクンと震えてキュッと目を閉じながら、ポワンと熱に浮かされたように固まる橘。  
そして再び明けられた目には、今までとは違った色の炎が灯っていた。  
……やべえ、こいつは明らかになんか間違ったアクセルを踏み込んだ顔だ。  
ふいんき(なぜryに流されて、為すがままになっていた俺の理性が最後のアラートを発した瞬間、  
好きなだけ食べても良いといわれたお菓子の山を目にした子供のような表情で、橘が俺の愚息にむしゃぶりついてきた。  
 
歯を立てないようにしながら、カウパーをちゅるちゅると音を立てて啜る橘。  
しかも、指で要領を覚えていたせいで、何もためらうことなく、唇でカリを抑えつつ、短い舌を必死に動かしながら亀頭をチロチロと舐め上げる。  
絶妙な手コキ攻撃に何とか耐え抜いていた愚息も、いきなり包まれた粘膜の柔らかさと、  
橘の情熱に満ちた攻撃の前にあっけなく陥落を決意し、その小さな口に向かってどろどろの粘液を吹き上げていた。  
 
まるで鯨の潮吹きのような勢いでビュクビュクと放出されるスペルマは、あっという間に橘の小さな口内をいっぱいに満たし、  
驚いた橘がちゅぽんっと口を離した途端、弾けるようにその幼い顔を穢した挙句、艶やかな紅い下着に彩られた若雌の体をねっとりと白く染め上げていった。  
 
ようやく長い長い噴射がとまると、困ったような表情で口にザーメンプールを形成していた橘は、俺に許しを請うような視線を向けてきた。  
そのあまりに初々しい表情にちょっと悪戯心を起こした俺は、しかめっ面を作って首を横に振ってみた。  
すると、泣きそうな顔のまま数秒固まっていた橘は、つばによって嵩が増す一方の口内の惨状に耐え切れず、  
オロオロと視線を左右に動かしていたと思ったら、意を決したように目をつぶり、口いっぱいに溜まったドロドロの汁をコクリと飲み込んだ。  
固形に近い粘液を無理やりを飲み込んだ結果、当然のように涙を浮かべながらケホケホとむせる橘。  
スマン。調子に乗りすぎた。俺が慌ててその柔らかな背中をさすると、ようやく落ち着いて上げられた橘の目は、あり得ないほどの歓喜と情欲が渦巻いていた。  
「うふふ、これが我々の神ですらひれ伏させるキョンさんの御神酒なんですね?  
すごいのです!最初は喉に絡み付いたと思ったら、胃に入った途端、カッと熱い滾りが背骨を這い上がってきて、心をトばすなんて!!」  
えーと、橘さん? あなたさっき頭をぶつけてピヨってた割には、妙に冷静じゃありませんか?てか、キャラがなんか間違っちゃってるから。  
 
「いやだわ、キョンさん!まだまだ勃ちっ放しじゃないですか!これじゃあなたが降参したことにはなりませんよね?  
わかりました。あたしってば、誠心誠意を込めてキョンさんを絞りつくしてみせるのですっ!!!」  
ぐっとこぶしを突き上げる橘。待て、分かったから落ち着け。話せばわかるはずだ。  
な?とりあえず、佐々木の信者なんだろ?あいつらしく理性的にいこうぜ?  
「はい!どーんっと大船に乗った気持ちで任せてください!ちなみにここは言うまでもなく佐々木さんの閉鎖空間ですから、  
あたし達の本体は喫茶店で手を握ったまんまです。なので、精神力が支配するこの世界では、あなたの心が折れるまで、それもうは勃ちっ放し♪  
うふふ。あと何回出せるんですか?とっても楽しみなのです!!」  
 
俺はこのときほど無駄に落ち着いた自分の心を憎らしく思ったことはない。  
このあと、脳が萎縮するほど疲れきった本体とは裏腹に、俺の愚息は橘がハラヒレホレハラになるまで噴射を続け、  
お互いに憔悴しきった俺たちは、ダブルノックダウンで両者引き分けということにして、とりあえずここをあとにした。  
 
 
「やあ、キョンに橘さん、こんばんは。おっと、そんなに驚かないでくれないか。  
僕は塾帰りにたまたまここを通りかかっただけであって衆目の集まる駅前喫茶店のしかも非常に目立つ窓際の席で手を繋いだまま動かないバカップルが何をやっているのか冷やかしに来たなどという愚かな理由は持ち合わせてはいないよ  
まあこれはたまたま疲労困憊した脳幹がダイエット中であるという心の制止を振り切って糖分を要求したために仕方なくこの喫茶店のドアをくぐった結果として起きた偶然の出会いというやつなのさ」  
あのー佐々木さん?その句読点をまったく含まない平坦な口調に、ものすごいプレッシャーを感じるのですが。  
えーとですね、言い訳のひとつにでも耳を傾けてくださる気がおありでしたら、わたくしといたしましても幸いなのでございますが?  
「佐々木さんっ!ごか、ご、誤解なのです!あ、あたしはキョンさんに協力してもらうために、ちょびっとだけ変わった説得方法を試みただけであってですね、その……」  
「ふむ、きみのその熱意と行動力には敬意を表するよ。ちなみに僕が隣に座ってから既に24分と18秒が経過したんだが、  
その間、目をつぶったまま手を繋いで微動だにしない男女という奇異な光景をしげしげと観察させてもらったよ。  
ところで、君たちのこうした様子を観察するのは、4月以来二回目だと記憶しているんだが、その時は10秒ほどだったはずだ。  
前回、君たちがどのくらいの時間を僕の内面世界とやらで過ごしたのかは定かではないが、この脳の奥底に眠るやや複雑な記憶に照らし合わせてみれば、  
今日のご旅行はずいぶんと長かったのではないかと邪推するが、これについて異論はないかい?」  
さ、佐々木さん?そのこぼれんばかりの笑顔はとても素敵なんですが、その、で、できたら目も笑ったほうが美しいのではないかと……。  
「えええ、えーとですね、前にも説明したように、閉鎖空間における時間の流れは現実とは異なるのです。  
だから、今日はそのにじゅ、ヒィッ」  
ざくっと目の前の物体にナイフらしき金属棒を突き立てる佐々木。  
あの〜、柄の長さから察するに、皿どころか机を突き通していそうな気がするのは、目の錯覚ですよね?  
「あえて君たちが『僕の中』で何をしていたのかを聞くほど、僕は野暮な人間ではないつもりだよ。  
それにきみ達がどこでなにをしようと、僕の許可を取る必要なんてこの爪楊枝ほどの必要性もない。そうだね、キョン?」  
あの……佐々木さん?それは一般的には楊枝ではなく、フォークと呼ばれるものに該当する存在なのですが。  
というか、その3つ又の先が異様に尖っているように見えるのは俺だけでしょうか?  
「いやだなあキョン、きみは何をそんなに怯えているんだい?  
だが、きみ達の逢瀬が終わるのを今か今かと待ちわびている間、煮えくり返る臓物を宥めるために、  
ダイエット中であるにも関わらず、僕はこの3つ目のアップルパイを注文してしまったわけだ。  
だから、もしきみ達が、僕がこれを食べ終わるまでに、『僕の中』で何をしでかしやがっていたのか、  
どうしても話したいというのなら、僕は敢えてそれを止めはしないが、どうだろうか?ねえ、橘さん?」  
さらに凄絶なほどに据わった目をしながら、ニコニコと橘に微笑みかける佐々木。  
なんというべきか、この目は森さんが今向かいに座っているこのアホ子を叱りつけたときより数段恐い。  
あれを耐え抜いた橘すらも、メデューサに睨まれた戦士のごとく、コチンコチンに固まっていやがるし。  
ガクブルになりつつ、髪の短いライダーさんの暗黒神殿や鮮血神殿や騎英の手綱を何とか受け流しながら、藁にもすがる思いで必死に周囲を見渡すと……  
あ、いいところに来てくれました喜緑さん!できたら、ほんの少しだけ助けていただけると……って何であなたまで顔を引きつらせてるんですかっ!?  
 
けっきょく、完全にフリーズした橘に代わって、俺はヤのつく自由業な舅様に出来ちゃった婚のご報告をする婿のような気持ちで  
冷や汗を垂らしながら釈明を行う羽目になった。  
で、その稚拙で杜撰で支離滅裂な俺の説明に対し、一言も口を挟まない代わりに、ずっと目を逸らさずに聞いていた佐々木は、  
その間、喜緑さんが運んでくるアップルパイを椀子蕎麦のごとく平らげ続け、ようやく俺の舌がこれ以上の言い訳を紡ぎ出せなくなったと判断すると、  
俺の手に分厚い請求書を握らせながら立ち上がった。  
「さてキョン、きみ達が『僕の中』で何をしたにせよ、きみの実体が体液の交換を伴った行為を行わなかったことだけは、隣にいた僕が重々承知しているよ。  
だが、きみのその微細にわたる懇切丁寧な解説を理解するには、僕の貧弱な妄想力では足りないようだ。  
きみも知っての通り、僕はリアリストであり、同時に負けず嫌いと好奇心が旺盛なたちでね。  
摂取しすぎてしまったカロリーを消費するためにも、きみ達が『僕の中』で行ったプレイの数々を  
僕相手に再現してもらいたいと思ってしまったわけなのだが、まさか拒んだりしないだろうね?」  
壮絶だった佐々木の目に、いたずらっ子のような暖かな灯が燈る。  
 
一瞬、俺が安心しかけたのも束の間、隣で固まっていたツインテールが急に復活しやがった。  
「それなら、あたしにだって実物を見る権利があるのです!」  
「ふむ。それは正論だね。ということで、キョン、今すぐにどちらを選べなどということは言わないよ。  
だが、きみが本当に反省しているなら、いつもどおりに二人分くらい余裕だよね?」  
初めて見た犬を威嚇する子猫のような挑戦的な橘の視線を、佐々木は余裕しゃくしゃくながらもどこか嬉しそうな態度で迎え撃つ。  
 
両者がにらみ合ってる隙に脱出を模索した俺であったが、無駄に気を利かせてくれた喜緑さん謹製のコンクリート壁が窓を覆っているのを見て、絶望と共に覚悟を極めた。  
 
やれやれ。  
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
おわり  
 

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