「とっと起きろこのアホンダラゲ!何回かけたと思ってんのよ!!」  
寝ぼけ眼で何とか携帯を探し当て、やっとの思いで通話ボタンを押した途端、待ち構えていたようにヘリの爆音のような声が鳴り響いた。  
相手を確かめるまでもなく、こんなことをしでかす心当たりは一人しかいない。  
えーと、今日って不思議探索だっけ?と、寝起きの頭で必死に考えながら目覚まし時計に目をやると……現在時刻5時15分。  
……どおりでまだ薄暗いわけだ……だいたい今日は平日じゃねーか。いったいなんだってんだ。  
「おはよう、キョン。あたし、いま家を出るとこだから30分後に部室に集合ね。あんたも絶対来なさい。わかった!?」  
「いや、全然分からん」  
「今日からSOS団も朝練することにしたのよ。体育会の連中になんかに負けてられないじゃない。だから、あたしたt」  
結論。寝る。  
シャミセンの迷惑そうな一瞥を受けながら、俺は切ボタンを押し、直後に再び鳴り出すうるさい携帯を布団の中に突っ込んで夢つづきに戻ることにした。  
 
 
いったん鳴り止んだ携帯だったが、ようやく夢の世界に片足を突っ込んだあたりで、再びうるさく自己主張を始めた。  
さっきよりは幾分回りやすい頭で時計を確認すると、現在5時35分。  
「いま学校に着いたわ!って、すぐに出たってことは、あんたまだ家にいるんじゃないでしょうね!?」  
「まだ寝てる」  
「このバカキョン!朝練だって言ったでしょーが!!とっとと来なさいっ!!!6時までにこなかったら酷いんだからね!!!」  
えーと、さっきが15分だったから……このアホは東中の学区から北高まで20分で着いたのか?  
「気合で来れば楽勝よ!いいから6時までに来ること!ほんっっとに酷いことになっちゃうって決めたんだからね!」  
決めただと?また死刑ってか?相変わらず訳分からんが、とりあえず現実的な対処をするとしよう。  
「おやすみ」  
と、答えて携帯を放り投げてはみたものの、2度も叩き起こされた頭は、すぐに三度寝するには、やや鮮明になりすぎていた。  
さてどうしたもんかね?大声で何かを喚いている携帯をぼけーっと見守ること約3分。やれやれ、どうやらこのアホもようやく諦めたようだ。  
妹の襲撃予定時刻は6時50分。おいおい、あと1時間も寝れるじゃねーか。  
と、いうことで横になると、ようやく睡魔に引きずられる頃を見計らったように、また携帯が鳴り出した。  
予告どおり6時ジャスト。てか、電源切っとけば良かったんじゃね?  
 
 
「………………」  
今度は無言電話かよ。  
「おい、ハルヒ、今度こそほんとに怒るぞ。……………ハルヒ〜……………お〜い!………………聞いてっか〜!?」  
「……ぁっんっ……きょ、キョン〜」  
ようやく返ってきたのは、熱に浮かされたような弱々しい声だった。背筋が凍る。おい!どうした!いったい何があった!?  
「あ、あんたが来ないから、ッンわ悪いんだからヒッ……ほんとにック酷いことになっちゃたックんだから……」  
しゃくりあげるような声が混じる。くそっ酷いことになっただと!?慌てて飛び起き、制服に手を伸ばす。  
「待てハルヒ!落ち着け。わかった。朝練だな。すぐ行く。だからちょっと待ってろ!」  
「だって、も、ックもう6時になっッンちゃった、でしょ」  
「知らん!普通の朝練は7時からのはずだ!」  
まずいぞ。このアホウはなぜだか知らんが、本気で暴走してるみたいだ。なんとか時間をかせがにゃ、  
って、こんなときにかぎって取れるワイシャツのボタンを床にたたきつける。だぁ!このバカシャツめ!  
いや、落ち着け俺!ものに怒ってる時間なんかねーぞ!……怒ってる?よしそうだ!  
 
「命令だ!ハルヒ、そのままの体勢でまて!」  
さあ怒れ!!  
「ンッぁ、え?め、命令?」  
「ああ、そうだ。SOS団の規律を乱す平団員から団長様への命令だ!そのまま動かず待ってろ!!」  
さあ来い!爆音に備えて少し携帯から耳を離す。  
「め、命令なの?キョンから?あたしキョンに命令されるの?」  
あれ?作戦失敗か!?  
「このまま待たなきゃいけないのね?」  
「ああ、そうだ。俺が行くまで、絶対にバカな真似をせずに待ってろ!」  
「…………わかった。ちょっと怖いけどそのまま待ってる。キョンの命令だもんね。なるべく速く来て」  
怖いけど?てかなんで命令されてちょっと嬉しそうな声になるんだ?くそっ今日のこいつは本気でやばいな。  
 
 
いったんハルヒとの電話を切り、メモリの中で最も不本意な番号にコールする。  
「おはようございます。いやあ、そろそろ掛かってくる頃だと思ってましたよ」  
挨拶抜きだ。なにが起こってる?  
「こちらも混乱しています。ただ、異常事態ではありますが、緊急事態ではないようです」  
ますます分からん。とりあえず、ハルヒから呼び出されたんで大至急学校に行きたいんだ。すまんが、  
「分かりました。すでに新川さんの車でそちらに向かっています。5分以内に準備をしてもらえますか?」  
さすがに、こういうときは頼もしいね。  
「簡単な朝食などは車の中に用意しておきます。では後ほど」  
 
慌てて顔を洗いながら、歯を磨いていると、玄関先で急ブレーキの音がした。すごいね。3分も経ってないじゃねーか。  
「おはようございます。簡単にこちらの状況を説明しますので、食べながら聞いてもらえますか」  
WRCクラスの挙動を示す新川さんの運転じゃ、いくらアンパンにパック牛乳とはいえ高難度のテクを要するぞ。ってまぁいい。で、なにがどうなってるんだ?  
「昨夜9時半ごろ、これまでで最大規模の閉鎖空間が発生し、急速に拡大を始めました。  
しかも神人の発生数は過去最多。というよりあたり一面神人だらけで、我々はなすすべなく逃げ回るしかありませんでした」  
昨夜?昨日のハルヒは、なんかの懸賞で屋内型レジャープールのタダ券が当たったとか言って上機嫌だったじゃねーか。次の不思議探索はみんなの水着探索に行くんだろ?  
「ええ、それで我々も油断してたんです。しかし、この閉鎖空間の拡大は12分後に急停止し、同じ速度で今度は急激な縮小を始めました。  
飛び回っていた我々は危うく外に放り出されるところでしたよ」  
赤球がそのまま赤い水たまりに……スマン。冗談にならんな。そんなに睨むな。  
「その後は北高を中心にちょうど市内を囲むような規模で落ち着き、そのまま固定されました。  
ちなみにその過程で神人は一体に吸収合併されましたが、一切の攻撃が効かず、我々では手の出しようがありません。  
そいつは30分ほど前に東中付近から北高に移動して、現在は部室棟のあたりで何もせずに待機中です。  
正直言って今回の事態は機関の想定を超えていまして、今はとにかく少しでも情報が欲しいところなんです。  
そちらではどのような動きがあったんですか?」  
えーと、5時過ぎから何回かあいつから電話があってな。出たら今日からSOS団は朝練するから6時までに来いとかぬかしやがった。  
あんまりにもバカバカしいんで無視して寝てたんだが、さっきの電話であいつの様子がかなりおかしかった。で、お前に連絡したってわけだ。  
「ふむ。確かに涼宮さんは、現在、かなりの緊張状態にあるようですね。  
ですが、何か緊急の危機にさらされているというわけでもなさそうです。  
ただ、あなたからの電話の直前に雰囲気が……そのなんというか、グレーから極端に明度を落としたピンクになったとでもいいましょうか。とにかく今までにない兆候です」  
明度を落としたピンク?何だそりゃ?  
「おっと、着きましたね。この先の事態はあなた自身の目で確かめてきてください。健闘を祈ります」  
古泉の真剣なまなざしと新川さんの指先までバシッと伸ばした本物の敬礼を背に受けながら、俺はダッシュで部室棟に向かった。  
 
運動不足の身に朝一のダッシュはこたえる。だが、一晩中駆け回った連中に送ってもらったんだ、そんな情けないこと言ってられっか!!  
 
そのハイテンションに急かされるように、一気に3階まで駆け上がると…………  
 
!!!!  
文芸部室の扉が半開きになってやがる!!!  
あの口やかましいハルヒが扉を開けっ放しにするはずがない!!  
 
胃の中に氷を放り込まれたような嫌な予感が全身を駆け巡る。  
くそっ、だれかが侵入したのか!?  
 
 
「ハルヒっ!!!!」  
開きかけのドアを蹴破ると………………そこには信じがたい光景が広がっていた。  
 
 
おーけー。落ち着け、俺。とりあえず、このあがっちまった息を元に戻そう。  
深呼吸だ。そうそう。1回の深呼吸ってやつは酸素水1本分以上の酸素を体内に吸収してくれるらしいからな。  
てか、それってあの手の水が意味ないって事じゃね?と、しょうもない小ネタで心を落ち着かせつつ、  
背けようにも目が離れない生々しい現実を直視しながら、俺は3分ほど深呼吸を繰り返した。  
 
その間、団長様の顔は、息を切らせて飛び込んできた俺に驚いて蒼白になり、次いで、俺の視線に気付いて見る見るうちに熟れきったイタリアントマトよりも真っ赤になった。  
 
よーし。落ち着いてきた。グッジョブだ俺の肺。じゃあ次は脳が頑張る番だ。冷静になれ。この状況は一体なんだ?  
客観的に見れば、俺は文芸部室に一歩入ったところで固まっているだけであり、団長様は自分の席にふんぞり返っているだけである。  
いつもどおりのSOS団の平和な風景。  
 
…………スカートをたくし上げたハルヒが、テラテラ光る内臓に指を伸ばして、見せ付けるように逆ピースで開いていなければな。  
 
 
「ちょっと質問してもいいかな、ハルヒ?」  
自分でも気味が悪いくらいの優しい声が出る。  
「……なによ」  
「何をやってるんだ?」  
「キョンが言ったんじゃない。命令を守ってるのよ」  
「そっか」  
とりあえず開けっぱなしの扉を丁寧に閉め、ハルヒのほうに向き直る。  
カチャリと扉の閉まる音に、ハルヒがビクッと反応し、熱に浮かされた目がさらに潤む。  
 
「で、何をしてるんだハルヒ?」  
「だ、だから、キョンが動くなって言うから、命令をまもって……」  
 
「どれだけ心配したと思ってんだ、このドアホウ!!!!朝っぱらから何やってんだと聞いてんだ!!!」  
抑えようにも抑えられない声が爆発し、ビクッと震えたハルヒの両目からボロボロと涙が溢れる。  
「だって、ヒック、キョ、キョンがヒック……ヒック」  
嗚咽を漏らしながら必死にこたえるハルヒ  
「俺は扉開けたまま、そんなことしてろなんて命令した覚えはないぞ!誰かに見られたらどうすんだ!!だいたい、これがSOS団の朝練なのか!?」  
あまりの情けなさに頭に血が上る。  
「だって、ヒックあ、朝練だもの。なんかヒック体動かさなきゃって。それで……」  
体を動かす?知ったことか!  
「心配して損した!バカバカしい!俺は帰るからな!」  
 
「待って!!!!!」  
 
慌てて立ち上がったハルヒが、俺の憤りをも吹き飛ばすほど大きな声で制止した。  
その怯えた両目からボロボロと大粒の涙がこぼしながらも、口は堅い決意を秘めてキッと引き結ばれていた。  
 
ノロノロと机を回ったハルヒは、スカートをベルトのあたりまでたくし上げ、団長机に両手をついて、尻をこっちに向けてきた。  
 
 
ツンと突き出されたハルヒの美尻。それは小ぶりながらも見事なくらいの逆ハート型で、思わず我を忘れて見蕩れるほど美しかった。  
そして、綺麗なアールを描いてきゅんと弓なりになった腰から尻にかけてのラインの到達点には、  
サーモンピンクの性器がぐずぐずに濡れぼそりながら、息づくように収縮を繰り返してた。  
 
 
「ハ、ハルヒ?」  
ゴクリと粘りつくような唾を無理やり飲み下し、精一杯の理性を総動員して、絞るように声を出す。  
「イレテクダサイ」  
なんだと?  
「キョンのを!あ、あたしのおマンコに挿れてくださいっ!!キョンをくださいっ!!!」  
血を吐くような激白。そのあまりの迫力に空気が固まり、俺の脳みそは完全にフリーズしてしまった。  
 
 
そのままどれくらいの時間が経ったのだろうか。  
真っ赤だったハルヒの尻がだんだんと透き通るような白に戻っていき、やがて蒼白なった。  
そして、ハルヒはノロノロとスカートを元に戻し、上体を起こしながら、パンパンと埃を払うように皺を直してニッコリと笑った。  
「ご、ごめんねキョン。今日のあたしちょっと変なんだ。  
うーんと。あのね、女ってどうしてもこういう日があってさ。  
まあ、その、えと……と、とにかくそういうもんなのよ。びっくりさせちゃってごめんね。  
キョンには佐々木さんがいるもんね。それとも有希?みくるちゃん?鶴屋さんかな?」  
口元が無理やり曲げられ、わなわなと引きつった三日月が現れる。  
 
俺は昔、こんな笑顔を見たことがある。確か小学校の2年生のときだった。  
そんなに仲がよかったわけじゃないけど、同級生が何かの病気で長期の入院をすることになった。  
夏休み前の終業式。そいつの両親がケーキを持って来て、みんなで激励会をして鶴を折った。  
そいつは、みんなの一生懸命な様子を、今のハルヒと同じ笑顔で見守っていた。  
残酷なもんで、今の今まで俺はそいつのことをすっかり忘れていた。だれも思い出さなかった。  
そういえば、あいつはどうなった?どこへ行った?  
 
ハルヒはどこへ行く?  
 
その硬い笑顔を浮かべたまま、ハルヒは幽鬼のようにフラフラとドアに向かって歩き出した。  
待て。ハルヒはどこに行くつもりだ!?  
 
「ハルヒっ!」  
伸ばした俺の手を、ハルヒはビシッと振り払った。  
「さわらないで」  
振り返ったハルヒの顔には、憤怒どころか気持ち悪いくらいに透き通った笑顔が浮かんでいる。  
見蕩れるほどに美しい微笑。だがそれは、咲き誇った桜の最後の一日に似ていた。  
 
俺はなんてバカなんだ。こいつにこんな顔をさせちまうなんて!!  
 
カッと頭に血が上る。  
いやだ!こいつは絶対にどこにも行かせない!!!  
 
タックルをするようにハルヒを抱きしめると、本気で暴れだしたハルヒのパンチが体中に降り注いだ。  
だが、それらには情けなくなるほど力がない。いや力なんて残ってないのだろう。  
俺にズタボロにされちまったハルヒ。  
どうすりゃいい?俺はこいつをどう繋ぎ止めりゃいいんだ?  
 
 
強引にこちらに顔を向かせると、ハルヒは頑として拒むようにそっぽを向いた。  
 
ああ。キスなんかで誤魔化すつもりはないさ。  
俺はこいつと繋がるんだ。拒まれたって繋がるんだ!  
真っ白になっていた頭が紅蓮の炎で赤熱し、焦がされたような真っ黒な欲望が沸騰した。  
 
俺は、こいつと繋がるんだ!!  
 
 
首根っこを掴むようにして、力ないハルヒの上体を長机に押し付け、そのスカートを捲り上げる。  
こんな瞬間ですら息を呑むほど美しいハルヒの尻。  
 
 
「やだっ、だめよ!やめなさいキョン、あたしなんか、あたしなんかを相手にしちゃダメっ!  
こんな変態で童貞捨てる気なの!?やめなさい!ぜったい後悔するわよ!!」  
ボロボロに泣きながら必死の抵抗をするハルヒ。  
 
「うるせえ!絶対どこにも行かせないからな!!お前は俺のものなんだ!!」  
 
ジッパーを下ろすことすらもどかしい。この瞬間にハルヒが消えちまうかもしれない!  
いやだ!そんなの絶対に許さねえ!!  
 
「だめよ!キョン、落ち着きなさい!あたしなのよ、あたしなんかなのよ!」  
取り出したモノは情けないくらいにギンギンに硬くなり、すでに射精したかのように先走り液がほとばしっていた。  
 
喰らえハルヒ!!  
尻穴のちょっと下あたりに適当に狙いをつけ、ぐいっと腰を突き出す。  
亀頭を通して伝わる驚くほど柔らかい感触。  
全身全霊でこの瞬間を貪らんと全神経一点が集約し、俺を構成する全ての細胞が歓喜に粟立った。  
 
「だめっ、キョン、やめなさい!やっだめぇ〜!!!!」  
必死に振り返りながら暴れるハルヒ。だがその瞳に生気が戻りかけている。  
帰って来いハルヒ!!どこにも行っちゃいやだ!!!  
 
だが俺の焦りをあざ笑うかのように、亀頭はつるつるとあちこちを滑り、一向に狙いが定まらない。  
情けねえ!ハルヒが、ハルヒがどっか行っちまうかもしれないのに!瀬戸際なのに!!  
なにやってんだよ!なんなんだよ!どこなんだよ!!  
 
「は、ハルヒっ、お、俺っ」  
ハルヒの瞳に優しい光が灯り、逃げるように振り回されていた腰がちゅぷりと俺の亀頭を捕らえる。  
パズルの最後のピースがあうようなピタリとした感覚。  
ここか?ここでいいのか!?  
 
だが、ぐぐっと雁首のあたりまで侵入したところで、急激な抵抗感が息子をせき止めた。  
さらに進むと、グチグチと何かが押し広げられるおぞましい感覚が襲い、全身に鳥肌が立つ。  
 
眉がキュッと寄せられ、蒼白になるハルヒ。  
だが、その目はキラキラと光りながらカッと見開かれ、俺のすべてを射ぬいていた。  
 
 
「ハルヒ!!お前は俺のもんだ!!!」  
全体重と全神経を棹先に乗せ、一気にのしかかる。  
ぐぼっという感覚と共に、ギチギチに重かった抵抗があっけなく消え、ハルヒの最深部には、滾るような歓喜が渦巻いていた。  
 
 
「ひっくぅっ!」  
さすがのハルヒがびくりと跳ね、ギュッときつく閉じられた目尻から大粒の涙がボロボロとこぼれる。  
まさに生身を引き裂かれる痛みに耐えるハルヒ。  
その様子をコマ送りのように脳髄の底に記憶しながら、俺の中の何かがはじけた。  
 
愛おしいのに壊したい。壊したいのに守りたい。守りたいのに狂わせたい。  
 
吹き荒れる愛憎の矛盾と快楽の暴風。  
説明のしようのない原初の感情に身を任せながら、俺はひたすら雄の本能に従って腰を振っていた。  
 
はるひっはるひっはるひっ!!  
 
一突きごとにの狂おしい程の愛しさがこみ上げ、一瞬でもはやくこの想いをハルヒにぶちまけんと全神経が猛り狂う。  
 
はるひっはるひっはるひっはるひっ!!  
 
はるひっ!はるひっ!!はるひっ!!!はるひっ!!!!  
 
 
「キョ〜〜〜ン!!!!」  
切羽詰ったハルヒの断末魔。雌を服従させる高揚感。ギュッと絞まる子宮口。愛しさを完結させる充足感。  
俺のつま先から頭のてっぺんまでがドロドロに溶けてハルヒ色染まった瞬間、俺のすべてはハルヒの暖かな胎内に還っていった。  
 
 
荒い息を調え、ふと我に返ると、ハルヒのいたずらっ子のような目がこちらを見つめていた。  
いつもの、真夏のヒマワリのようなハルヒの顔。  
だが、まだその目にはまだ少し涙が残っていた。  
 
「お、俺……」  
謝罪を言うべきか、感謝を述べるべきか躊躇した瞬間、ハルヒが人差し指で涙をぬぐいながら、俺の弱気を吹き飛ばすような笑顔を浮かべた。  
 
「こ、これってば、どう見てもレイプよね。あ、あたし、あんたに、その、犯されちゃった、の、よね?」  
かみ締めるように単語を区切りながら、尻すぼみで弱気になっていくハルヒ。  
「ああ、俺はお前を無理やり犯した。一生をかけて恨んでくれていいぜ」  
とたんにハルヒの瞳が曇る。  
「ふ、ふんっバカにしないでよ!あんたは、あ、あたしの網にかかっただけなんだから!  
これはあたしがあんたを襲ったの!勘違いするんじゃないわよ!」  
そんなオドオドした目で、俺に逃げ道を作ろうとすんなよ。  
俺は絶対逃げないからな。それにお前がどっかに行きそうなったら、また首根っこ掴んで同じことするからな!覚悟しとけ!!  
 
ハルヒの瞳からとめどない暖かな涙がこぼれる。  
「このバカキョン!あんたってば、ほんとに、ほんとにアホで、ヒック、ドジで、間抜けで、えと、ヒック、この、このっヒック」  
しゃくりあげながら、何とか団長の面子を保とうとするハルヒ。  
やれやれ。まったくお前らしいよ。  
 
そして俺たちは、この世界では初めて、ゆっくりとした長いキスを交わした。  
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
おわるべき?  
 

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