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酔いどれアイソパラメトリック  
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1.  
 
 神様が雲ってやつの存在をど忘れしたんじゃないかと思えるほど良く晴れた、とある月曜日の話になる。  
 アイドルの前歯のごとく必要以上に爽やかな眩しさの朝日に促されて目覚めた俺は、脳に程よく融けた鉛でも流し込まれたかのようなひどい頭痛にいきなり襲いかかられるはめになった。  
 今年の風邪は頭に来るのか、とか、でもこれ以上悪くはなりようがないなー、とか覚醒度5%以下のはっきりしない頭でぼんやりと詮無い事を考えながら、とりあえず起き上がろうとベッドに手をついたところで、ふにょんと柔らかくて熱い物体を押しつぶした。  
「んあ、んー」  
 その未確認やわらか物体(UYO)はよく分からないうめき声を上げながら、俺のベッドの上で気持ちよさそうに全裸で眠り続けており、………つーか、  
 
「何でハルヒが俺のベッドで寝てやがるんだ?」  
 
 しかも全裸で。そんな事をいたしてしまったという記憶は全くないんだが。  
 ああ、天国というか一つ屋根の下にいるお父さんお母さん、あなた方の不肖の息子さんは自分でも知らない間に、大人の十三階段という若さゆえの過ちを全速力で駆け上ったみたいです。  
「イヤ?」  
 別にハルヒと云々ってのがイヤってわけじゃないんだが、記憶がないってのがどうにも………なあ。  
「では、説明する」  
「ああ、頼んだぞ、長門」  
「………ツッコミは?」  
「オオ トウテン ナガト クテン イツノマニデテキタンダヨ エクスクラメーションマーク×3」  
「………投げ遣り?」  
 すまん、こう見えて意外と余裕がないんだよ。  
「………ショボーン」  
 いつの間にか気配なく俺の後ろに立っていた、最近どうも悪いインターネットに毒されつつある無口型万能宇宙人である長門は、何とも形容し難い顔でそう言いながら俺の額に手を当てた。  
「今からあなたの情報処理領域へとわたしが得た昨夜の映像データを転送する」  
 長門の手から俺の頭へと覚えのない映像が濁流のように流れ込んでくる。  
 現実の映像と衝突事故を起こし、パニックになりそうだったので慌てて目を閉じた。  
 
2.  
 
 映像は昨夜遅く、新しくも古くもない平凡な愛しきマイホームの玄関から始まる。  
 家の中から、まるで酔っ払いのようにふらつきながら、俺が喜劇か悲劇かの見当さえつかない舞台に登場した。  
 この場に長門はいなかったため音声データは取得できなかったらしく、客観的に見ると昨夜の俺はでたらめなパントマイムをしている変な人だ。  
「パントマイムではなく、実際に酔っ払っている」  
 待て、昨夜は別に飲んだ記憶はないぞ。未成年だしな。お酒は二十歳になってから、オーケー。  
「実際に飲んだのは涼宮ハルヒ、それに巻き込まれただけ」  
 どういう事だ? この二日酔いらしき状態のせいか稼働率10%未満のマイブレインにも分かるように説明してくれないか。  
「昨夜はこの世界の全存在が酔っ払っていた」  
 あーなるほど。要するに、何だ。昨日はいつも通り楽しく陽気に世界が危なかったんだな。  
「そう。………でも、一番危なかったのはあなた」  
 長門の言葉通り、昨夜の映像の続きで、どこを目指してるのか分からん酔っ払いの進攻を食い止めるかのように、『ナイフ+笑顔』というサイコな組み合わせを兼ね備えた少女が俺の前に立ちはだかった。  
「情報統合思念体は昨夜、涼宮ハルヒを刺激するため、鍵となるあなたに危害を加える事を、一時的にではあるが、決定した」  
 それでまた俺はこいつに殺されかけたってのか。一体なんでそんな事になっちまったんだ。  
「………酔った勢いでやった。今は反省している」  
 ………待てや、こら。  
「分かり易く言うなら、………ノリ?」  
 とりあえず俺の脳内の酒を飲ませてはいけないやつランキングの第二位に思念体をいれておく事にした。  
 一位は今も俺のベッドでグースカ寝息をたててやがるへべれけ神様もどきだがな。  
 
 さて、映像の続きでは朝倉が、おもちゃで遊ぶ子供のようにナイフを楽しくぶらぶらさせながら、俺に何かを話しかけている。  
 対する俺はといえば、多分ふってわいたような異常事態に呆然としているだろうと思っていたのだが、  
「なあ、長門さんや。何で昨夜の俺は中国拳法のような構えを取っているんだろうな?」  
「誇りを賭けて戦うため」  
「いや、意味わかんねえよ。ちなみになんか俺の口が動いてるんだが」  
「『御託はいいから、かかってきな』と言っている」  
「俺無駄にかっこいー!」  
 酔っ払いの戯言を愚直にも侮辱されたととったのか、顔を真っ赤にして俺に突っ込んでくる朝倉。………頼むから冗談の分かる大人になって欲しい。  
 音速を超えるかとすら思える速度でナイフが俺の首と胴体をサヨナラ×3させようと迫り来る。………が、  
「すげー! 全部避けてるよ、俺!」  
 どちらかというとスローな俺の動きはしかし、朝倉のナイフを全て適確にさばいていく。  
「『ふっ、中国4千年っぽい何かを甘く見たな、朝倉よ』と言っている」  
「でもやっぱり意味わかんねー!」  
 酔拳か! 酔拳とでもいいたいのか、俺!  
 このままでは埒が明かないとでも考えたのか、距離をとって高速詠唱を唱えようとする朝倉。  
 俺はそれを追いかけるようにして距離をつめ、手で口を塞ぎながら抱きしめるようにして朝倉の動きを止め、耳元で何かを呟いた。  
 その瞬間、朝倉の体からプシューという擬音が聞こえそうなくらいの勢いで力が抜けていった。  
 
 どんな必殺技を使ったのか、朝倉は立ち上がれないどころか、顔は真っ赤だし目の焦点も合っていない。  
「ちなみにあなたは朝倉涼子の耳元で『ふふっ、イタズラな子猫ちゃんだな、ベイビー』と囁いた」  
「何その明らかに外してるセリフは!」  
 てか、朝倉もそんなセリフでオトされるなよ!  
「その後、『でも、そんなところも可愛いぜ、ベイビー』と言って耳元に息を吹きかけた」  
「………誰か昨夜の俺を殺してくれ」  
 そして後ろ手を軽く振りながら颯爽とその場から立ち去る俺。  
 それを呆然としながらも何処か熱いものを秘めた瞳で見送る朝倉。  
 ここだけを切り取ったらすごく良いシーンなのかもしれん。………自分が登場人物でなかったら、だがな。  
「ちなみに朝倉涼子はボーとしていたので後ろからさくっとヤっておいた」  
 ………しかし、不憫な子だ、本当に。  
 ちなみにこの日の朝に、学校の屋上から逆さづりにされてしくしく泣いている元委員長が発見されるのはまた別の話である。  
 
「では次のシーンに移る」  
 長門の言葉と共に映像が切り替わった。  
 ………てか、次とかあるのかよ。  
 
3.  
 
 二つ目の映像の舞台は川原だった。そこで一昔前の青春ドラマっぽい映像が展開されていた。  
 つーか、何故か俺と古泉が何かを叫びつつ血だらけになりながら殴り合っている。  
「………何でやねん」  
 思わず大阪弁で突っ込んでしまう。ボードゲームで勝てない事にキレて、とうとう実力行使にでやがったのか、あいつ。  
 
「あなた達には、譲れないものがあった」  
 呆然としている俺に対して長門が、俺にしか分からないだろうが、確かに悲しそうな顔で、そう、言った。  
「自分がどうしても譲れないもの。それを守るために親友と争う。これはそれだけの話。………わたしには、よく、分かる」  
 それを聞いて、俺のベッドで幸せそうに寝ている少女の事を思い出す。  
 ………そういう事、なのか?  
 古泉、お前はあの幸せそうな寝顔のために………。  
 だとしたら、俺は………、俺は………、  
 
「わたしはこの時、既にその場に到着していたから音声データが存在する。聞きたい?」  
 もし俺の推測が正しいとするならば、これは酔っているからといって忘れて良い事じゃないだろう。  
 ………俺も、そして多分あいつだって、な。  
 覚悟を決め、長門に向かってはっきりと頷く。  
 頼む、長門。俺は、どうしても古泉の譲れないものってやつを思い出さないといけないんだ。  
 俺はそいつを、心に刻んどかないといけないんだよ。  
「………そう」  
 長門が悲しそうに呟くと同時に、俺の脳内に古泉の全てを失ったかのような悲壮な叫びが響き渡った。  
 
 
「信じていたのに! どうして、どうして冷蔵庫に入れておいた僕のプリンを食べたんですか!」  
「金、女、そしてプリン、全部、全部だ。持ってるやつから奪うんだよー!」  
「あなたって人はー!」  
 
 
 そして再び殴りあう、マイナス方向に全速力でノリノリな馬鹿二人。  
「どう?」  
「………誰かこいつ等を殺してくれ」  
 さっきまでの俺の心の痛みを返してください、マジで。  
「わたしもプリンのためなら命を賭ける。………そう、これはそれだけのつまらない、しかしとても温かい、一つの寓話」  
 やかましい! てか、俺には今の話で得られた教訓なんかねーよ。  
「長門、さっさと次の映像へ行こう」  
「そう。………ちなみに、この映像は後ろががら空きだった古泉一樹をわたしがさくっとヤって終了する」  
 本当に心の底の底辺からどうでもいい。  
 
 ああ、ついでに言うと一週間後どこかの無人島で半死半生の超能力少年が発見されるのだが、それもまた別の話だ。  
 ま、当然、そんな事もどうだっていいよな。  
 
4.  
 
「ちなみに、次の映像は無駄に長いので、エンディングだけを流す事にする」  
 まあ、どうせ古池に飛び込もうとした蛙が間違って地べたに激突する音くらい無駄な映像なんだろうが、一応聞いておこう。  
「で、どんな話なんだ」  
「『機関』に敵対する組織に再度さらわれた朝比奈みくるを救うため、あなたが世界中を飛び回る話」  
 いや、それ全部一晩で終わるのかよ、とかいうツッコミはおいておくとして、そういうロマンあふれる話ならフルで頼みたいのだが。  
「却下」  
 にべも無い。  
「話す理由がない」  
 容赦も無い。  
「そもそも、話したくない」  
 遠慮も無い。  
 しかし、最近なんだか俺に対する態度がハルヒのそれに似てきたようで、お父さんはちょっと心配である。………これも親馬鹿の一種なのかね?  
 そんな事を考えているうちに映像が始まった。  
 
 
 立ち去ってゆく俺を一昔前のCMのチワワのように物悲しそうな瞳で見送る朝比奈さん。  
 そんな彼女の隣に鶴屋さんが何故か『バタバタッ!』と擬音を口で言いながら走り寄ってきた。  
「にょろっ、キョンくんもう行っちゃったのかいっ!」  
「ええ、あの人には帰る場所がありますから」  
 寂しそうにそう呟く朝比奈さん。  
 この人にこんな事を言わせる男に、やっかみという名の天罰が降りそそぎますように、………って、俺じゃん。  
「むー、悪人さんだねっ、キョンくんはっ!」  
「そんな、キョンくんは何もしてませんよ」  
 朝比奈さんは驚きながらもちゃんと否定してくれた。  
 ありがとうございます。そんなあなたの常識人っぷりにはいつも癒されます。  
「いやっ、キョンくんは大変なものを盗んでいったのさっ!」  
「え?」  
 疑問詞を浮かべながら可愛らしく首を傾げる朝比奈さんの胸を、異議ありと言わんばかりにビシッと指差して鶴屋さんは続けた。  
「それは、みくるの心にょろー」  
 鶴屋さんの言葉に一瞬驚きの表情を浮かべた朝比奈さんであったが、やがて真夏の太陽もここまではいかないだろうと感じられるほど晴れ晴れとした笑顔でこう言った。  
「………はいっ!」  
 
 
 あー、すまん。これはどこからつっこめば良いんだ。  
「その必要はない。ついでだったので朝比奈みくるも後ろからさくっとヤっておいた」  
「ヤるなよ! 朝比奈さん別に俺に危害加えてないじゃん!」  
「おおよそのちょ、っとは誤差があるかもしれない予測で一、パターンのみなのは確かだがしんら、い度は高いしそもそも、これはあなたのために費やす、ろうりょくであるから、すいていでもわたしは動く、。」  
「その不自然な文章と読点は一体何なんだよ!」  
 せめて縦読みくらいにしとけ。隠す気ほとんどねぇじゃねーか。  
「祈って」  
 ………何を?  
「ご冥福」  
「朝比奈さーん!」  
 早朝の青空にムンクもびっくりな俺の叫びが響き渡った。  
 
 『いやっははは、よく覚えてないんだけどっさ! なんかもー、つるにゃん危機一髪って感じだったねっ!』と大笑いする鶴屋さんと、その背後にうつろな瞳でたたずむ朝比奈さんが、放課後なってからようやく登校してくるのは、結論からいうとまた別の話だ。  
 
5.  
 
「次が、最後の映像」  
 そうか、やっと最後か。見るだけだってのに何故か精神的なダメージが過剰に蓄積されているのはどうしてだろうな?  
「二日酔い?」  
「絶対違う!」  
 今のツッコミで過労死レベルまで溜まった俺の疲労を無視するように、最後の映像が始まった。  
 
 
 映像は、意味もなく世界的な大冒険の後、自分の家に帰ってきた俺を涼宮ハルヒが待ち構えていたところから始まる。  
 ああ、そういえば何でこいつは酒なんか飲んだんだろうな、と疑問に思いながら映像を見る事にした。  
「キョン」  
 少女漫画から出てきたかのような切なそうな瞳でハルヒは話し出した。  
「ほんとはね、お酒の力を借りるなんてダメだって、そう思ったのよ。でも、このままだったらなんか一生言えそうにないし、だから、………ごめん。でも、聞いて」  
 理由は酒なのかどうかは知らんが、真っ赤な顔でハルヒは言葉を搾り出す。  
 
「ずっと、あなたが、好きでした」  
 
 直球すぎてバッターどころか審判も手を出せないほどのストレート。  
 言った後で泣きそうな顔になりながらも、審判である俺から目を離さないハルヒ。  
 そんなハルヒに何を感じたのかは『今の俺』は覚えてないのだが、『昨夜の俺』は何を思ったのかハルヒの頭の後ろに手をかけ、  
「キョン、って、ひゃうわあっ!」  
 お姫様抱っこで一気に持ち上げやがった。  
「ちょ、キョン、え、いきなりなのー!」  
 何がいきなりなのかは正直知りたくもないが、そのまま特攻隊もかくやといわんばかりの勢いで家の中に突入していく昨夜の俺。  
 そこでいきなり映像が途切れた。………故障、はありえないよな。  
 
 
「長門、続きは?」  
「これ以上は映像に残していない。………わたしという個体が『見たくない』と思ったから」  
「いや、むしろここからが大事といいますか、一線を越えてるか越えてないかがこれからの人生設計に大きく関わってくるといいますか「そんな事よりも、もっと重要な事がある」  
 長門が珍しく強めな声で俺のヘタレ気味な逃げ口上をさえぎった。  
「えっと、何でしょうか?」  
 思い切り低姿勢になる完璧ヘタレな俺である。  
「昨夜のあなたがずっっっとわたしを無視していた事、今までの映像を見て、分からなかった?」  
 いつになく攻撃的な長門。なんか、登場時からテンションがおかしかったのは確かなのだが………、もしかして、こいつまだ酔ってるんじゃ。  
 
「そんにゃきょちょにゃい!」  
 
 噛んだー! 長門さん噛んだー!  
 しかも、いつの間にか顔が真っ赤になってるし、目の焦点も結構ヤバイ方向に行っちまっている。………というか、イっちまっている。  
「………そう。認める。わたしはあなたに酔っている」  
 いや、得意そうに言っているが大して上手くないぞ、それ。  
「………」  
 つーか、なんで無言でにじり寄ってくるんだ?  
「………」  
 つーか、なんで俺の体が動かないんだ?  
「………」  
 つーか、なんで両手をそんなにワキワキさせてるんだ?  
「………」  
 なんか答えろよ、頼むから!  
「いただきます」  
「最悪の答えだ!」  
 そのまま、俺というメインディッシュは捕食者長門に押し倒された。逆だろ、普通!  
 
 こんな形で初めてを失うのはどうなんだ、とか、いやでももしかしたらもう初めてじゃないのかも、とか、そういやハルヒは、とかいろいろパニックになって目をぎゅっと閉じる。  
 
 ………、  
 
 ………あれ?  
 一分ほどたったが何も起こらないので恐る恐る目を開ける。  
 長門は動けない俺に覆いかぶさるようにしてクークーと可愛らしい寝息を立てていた。  
 どうやら酔いつぶれたらしいな、セーフ。  
 酔いつぶれなかったらどうなってたんだ、とかいう想像は止めておこう。あくまでこれは戦略的撤退系統の一種であり、逃げじゃないぞ、信じろ。  
「全く、もう………」  
 ちょうど俺の胸の位置にあるちっちゃな頭をポスポスと軽く撫でる。  
 ただまあ、これだけは言っておかんとな。  
「長門、お前の事はちゃんと大事に思ってるよ」  
 俺の言葉で長門は少しだけ幸せそうな寝顔になった、そんな気がした。  
「いい夢、見ろよな」  
 できるだけ優しい声で自分の中の温かな何かをラッピングして送り届ける。  
「そうね、あたしもそう思うわ」  
 予想外なやつが凄く冷たい何かを俺の鼓膜に押し付けてきた。  
「………ハルヒさん、いつから起きていらっしゃったのでしょうか?」  
「『全く、もう………』のあたりかしらね」  
 そっかー、ピンポイントで誤解される部分だよな、そりゃ。  
 ………バッドエンドの鐘の音が、聞こえた気がした。  
 
「ところでキョン、撲殺と絞殺と薬殺と刺殺と銃殺と圧殺と殴殺と格殺と斬殺と轢殺と虐殺と溢殺と惨殺と射殺と磔殺と、悩殺、と誅殺と酖殺と毒殺と爆殺と焚殺と撃殺と暴殺と扼殺とフルコースとがあるんだけど、フルコースでいいわよね?」  
 そうだな。どうせ死ぬならどれも一緒だよな。………って、どれを選んでもマジdeathですか?  
「………ふふふ、そうよね。これが正常なキョンよね。べ、別に残念だなんて思ってないし、悔しくなんかないし、泣いてなんか、ないわよ………うう」  
 下を向きながら小声でなんかブツブツと呟いているハルヒ。すんません、正直、怖いっす。  
 ああ、そういえば、俺昨夜こいつに告白されたんだったよな。  
 もしかしたら告白以上の事をしたりされたりなのかもしれないが、とりあえずそれは置いておこう。  
 あの必死な顔で、でも決して俺から視線を外さなかったハルヒの事を思う。  
 酔った勢いなんかじゃなく、多少は二日酔い気味だとしても素面な今の俺が、こいつをどう思っているのか。  
 ………答えなきゃ、ならんよなあ、やっぱり。  
 
 そう覚悟を決めた俺は、自分の正直な気持ちを伝えるべく口を開き、  
「ハルヒ、よく分からんが悩み事か? 俺でよけりゃ力になるぞ。まあ、進路相談とか恋愛相談とかされても話を聞く事だけしか出来ないと思うけどな」  
 と、思いっきり昨夜の事を知らないふりをした。………あれ、何で?  
 
「うがーーー!」  
 いきなり奇声を発しながら暴れだすハルヒ。いや、違うか。照れ隠しのセリフで墓穴を掘った俺、だな。  
 慌てて逃げようとしたが、長門に凄い力で服を掴まれてて逃げられない。  
 ………というか長門、お前絶対起きてるだろ。  
「寝ている」  
 めっちゃ起きてるじゃねーか!  
 
「じゃ、キョン。フルコース、………だったわよね」  
「ぐーぐー」  
「助けてくれー!」  
 どうやら今朝は神様も二日酔いらしく、俺の魂の叫びという懇願は辺りに物悲しそうに響き渡っただけだった。  
 
 その後、ごまかす気ゼロの寝たふりを続ける長門と、拳をバキバキならして殺る気満々のハルヒに挟まれながら、二日酔いの朝と俺の人生がいろんな意味で終わりを告げるのであるが、これもやっぱり、また別の話だ。  
 

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