「今日は、これ使いましょ」
放課後の文芸部室。窓の外は夕焼け。あたしが取り出したアイテムに、
わたし以外で唯一部室に残ったSOS団員その1、が訝しげな顔を向ける。
いぶかしげっていうか、呆れてるわね、これは。
「お前は…」
なによ。
「いつも思うんだが、そんな物をどっから手に入れてくるんだ?」
いつも言ってるじゃない。通販よ、ネット通販。今は耳かきからミサイルまで、
何でもネットで手に入る時代なんだから。
「ミサイルは無理だ」
何言ってるの!ネットを舐めちゃ駄目よ?我々がまだ知らないだけでネットのどこかには
絶対に闇の武器商人の隠しショップがあるわ。多分秘密の暗証暗号とかで入るの。
「妄想だな」
うっさい。とにかく今はそんな話じゃないのよ。どうよこれ。
「…どうと言われてもな」
あたしが置いたアイテムをしげしげと眺めて、
「…首輪だよな」
首輪よ?ファーつきで可愛いでしょ。
「リードが付いてるって事は…ペット用だろ、これ」
違うわよ?ヒト用フリーサイズって書いてあったわ。あたしが間違える訳ないじゃない。
「…いや…そうでなくてだな…」
キョンはお得意のポーズ。眉間をもみほぐしながら、「どこからつっこんだらいい…」とか
ぶつぶつ言ってる。ごちゃごちゃ言わない!とっととこれ首に巻きなさい!
「俺かよ!?」
あんた以外に誰がいるのよ!
「…っ。わかった」
あら、結構素直じゃない。そうそう、そうやって解いて、首に巻いて、…
「…じゃない!あたしに巻いてどうすんの!?ていうかなんでそんな手際がいいのよ!」
「お前は…猫ブリーダーを舐めた!」
なんかいかめしい面で言って、抗議してる間にしゅっ、とベルトを締められる。
首まわりに余裕はあるけど、勿論頭は抜けない。ちょっと、これはあんたに付ける為に…
がくん、とリードが引っ張られた。強い力ではなかったけど、意表を突かれたあたしは
前につんのめった。キョンのもう片方の手が首筋に回され、そのまま胸に抱えられる。
「な…」
「ハルヒ」
「ひゃっ」
耳元で囁かれる。熱い息。そこから火を入れられた様に、あたしの顔にも血がのぼっていく。
「似合ってるぞ」
いとおしげな声と一緒に、耳たぶをものすごく優しく食まれた。
「あ…」
魔法の言葉。スタンガンでも使われたみたいに身体から力が抜ける。へなへな、と
腰からくだけてキョンに寄りかかる。あたしに押し倒されるような形でキョンもその場に屈む。
耳への愛撫が続く。耳の凹凸に合わせて丁寧に舌を這わせられる。たまに舌をとがらせて
啄木鳥のように突かれる。耳穴に吐息。耳の裏、首に掛けてをやらしく舐めあげられる。
その動作一つ一つに、あたしの身体は情けないほど敏感に反応した。
「ひっ」「やっ」「はぁー…」
自分のものじゃないみたいに力なく、蕩けた声が出てる。出させてるのは誰だ。
「ば…かキョン…っ」
キョンは答えない。その代わりとばかり、逆の耳にも指で優しく刺激が与えられた。あう。
リードを持ったそっちの腕であたしの首筋を支えたまま、キョンがあたしの身体の横側に
回り込んだ。優しく…そう、ペットでも撫で付けるように、体重を掛けながら背筋を撫でられる。
きもちいい。首を支える腕にしがみつくようにしながらあたしも身体を沈ませていく。
暫くそうやってあたしを律していた手のひらは、そのまま、自然な動きでずれ落ちていって
スカートの中に滑り込んだ。指がパンツの線を伝う。「…や、」 抗議をする間もあらばこそ。
突き出す形になっていた私のおしり、股の間からするりと指がパンツの下に潜り込む。
指は何の抵抗もなく陰唇を撫で通ると、そのままあたしのクレバスを穿った。
覚えのある人差し指を、あたしの膣穴はぬるりと飲み込んでしまう。そりゃあそうよね。
だって、あたしのあそこ、とっくにとろとろだったんだもの。首輪を取り出した時には、もう。
これ以上ない詰み。好きなヤツ、心底から好きだととっくに自覚してしまったヤツの指を
あたしが拒める訳ない。…すぐに小気味良いリズムで指は蜜壷を掻き回し始めた。
「は…あ…」
浅く、深く。あくまでやさしく、その指がわたしの中をまさぐる。そのリズムは段々早くなってくる。
たまに親指や中指が参加する。くぱっ、と開かれた時は思わず大きな声をあげてしまった。
そしたらぐいっと首を捻られ、苦しい姿勢で唇を吸われる。「ふぁ…」 あたしの蕩けた声。
指の動きが激しさを増してきた。今は中指はクリトリスに当てられて、人差し指と親指の
狼藉の振動を、あたしの一番敏感な部分に伝えてくる。直接つついてくる訳ではない
指腹がむずがゆい。それに較べてイタズラ指たちはやりたい放題、あたしの中をこね回す。
膣壁の、敏感な所が擦られるたびに短い悲鳴をあげてしまう。あたしはもういい感じに
テンパってしまってる。何かせり上がってくる。嬲られてる所から、脊髄を通って。身体が
浮き上がる感覚。「うあ、あ、あ、ああ」あたしは吃音のような短い嬌声を続けて漏らす。
ああもう、
駄目!…と思った瞬間、するりと膣から指が引き抜かれた。
それも刺激にはなったけど、イクには一歩足りない。えええ、なんで。なんでよ?
必死に首を後ろに曲げてあたしはキョンを見る。すがる子犬のような目をしてたと思う。
それを見るキョンの目も、子犬をを見つめるような優しい目だった。と、思う。
そう、「恋人を見るような」、でなく「子犬を見るような」。
また、首のリードを引かれる。もう一度首を押し下げるように。
あ、とか言いながら、火照った身体では抵抗もできずに床に押さえつけられた。
キョンは私の汁で濡れそぼった指を、セーラーがずり落ちた背中にそっと這わせてくる。
あたしの身体がびくりと震える。性欲に湯だった頭、その耳元でキョンの声がする。
「…ハルヒ」
ペットの背に置くように優しく体重をかけながら、
ペットに優しく問い掛けるみたいに。
「ごしゅじんさま、だ」
耳元で囁いた。
「…」
せめてもの抵抗に睨むような目を向ける。…いや、睨めてなんかない。
惚けた、潤んだ瞳でぐらぐらと見つめる。キョンの目は優しいまま。
「言ってみろ」
「あ…、」
「…………………………………………ご、しゅじんさま…おねが、い、します」
鼻にかかった、甘えるような声が自然に出た。自分の脳がその甘さで熔けそう。
リードを握る手でおとがいをさらりとなでられる。あぅ。それだけで身体が震える。
もう片方の腕はもう一度私のパンツへ。もうびしょびしょのそれは力任せに膝辺りまで
下げられる。スカートもすっかりひっくり返ってて、剥きだしにされた私の腰が外気に晒された。
丸出しのお尻を突き出してるあたしは、まるで今から折檻を受ける子供みたい。
でも、違う。今から貰えるのは、「よくできました」のごほうび。
だらしなくひらいた私の陰唇にするりとキョンの指が忍び込む。それだけで意識が
飛びそうになって、むずがるように腰を捻る。でもそんな動きはすぐに、膣内に入った指に
抑えられてしまう。指先が内壁をこする度に、電撃でも流されたみたいに身体が跳ねる。
リズミカルな刺激。
「あっ、ああっ、あっ、ひっ、はっ、あっ…」
楽器みたいに、キョンの指に合わせてあたしは悲鳴をあげる。なんだキョン、
演奏できるじゃない。頭のどっかで妙に冷静な自分が、冷静にあほな事を言っている。と、
「──────ッいぁ!!?」
アクセントのように伸ばされた中指に、絶妙なタイミングでクリトリスを擦り上げられて、
あほなジョークもどっかへ吹っ飛んだ。いつ、何をされたらあたしが気持ちよくなっちゃうのか、
全部知ってるみたいな指遣い。なんだかちょっと悔しくて、なんだか凄く嬉しい。
「きょ…、うぁ」
短い名を呼び切れない。「ごしゅじんさま」の指は絶え間なく私の意識をゆさぶる。
意識がどっかに飛ばされそうになる。津波に流されそうになってる船員の気分。
でも大丈夫、ごしゅじんさまがあたしの腰をしっかり抱えてくれてるから、もう片方の手ゆびで、
きもちよくされ、て、身体が、はねても、だいじょ、ああ、またイっちゃう、また。また!…。
んぁ……あれ。いつの間にかキョンはあたしの後ろに回ってた。
ぼんやり視線をやると、ぐったりした私の腰を両手で挟んで、ぐっと持ち上げる。
何も考えられずその動きに従う。肩から床に…や、いつのまにか敷かれたキョンのブレザーに
突っ伏して、膝は肩幅より開いて、もうパンツなんて履いてない腰を高く差し上げる。
我ながら何て恰好だろう。こんな恰好させられてるって事は…そういうことよね。
とろろんとした頭で考えながら、次にくるだろう衝撃に備えて。
そんな覚悟に何の意味もなかった事を思い知る。
ものすごく熱いキョンの肉棒が一気に私の膣奥まで突き入れられる。
「…!………っ!!!」
声にもならない。声にもできない。脳髄をハンマーで殴られたみたいな圧倒的な快感。
そのまま抽送を始められて、あっ、とか おっ、とか単音の、動物じみた声しかあげられない。
じゅぶ、じゅぼ、くちゃ。くぐもった、でも激しい水音。ぺち、ぱち、ぱちん。キョンの腰と
あたしのおしりのぶつかる音。自分の身体がすごくやらしい音をたててる、恥ずかしい。
恥ずかしくて凄く興奮する。もっと気持ちよくなる。音はどんどん激しさを増してく。
もっともっと恥ずかしくなってしまいたい。自分でも腰を突き出す。いっそう激しく抉られる。
頭の中で光が弾ける。何度もなんども。きもちいい。きもちいい。きもちいい。きもちいいい。
他の事が考えられない。どうしよう、本当にきもちいい。自分の腰が、自分の腰じゃない
みたいに勝手にがくがく動いて止まんない。これじゃ本当に犬みたい。あたし犬みたい。
犬なんだ。キョンの。キョンに可愛がられてる犬。ためしにわんって言ってみようかな。
また浮かんだあほな考えと、何故か一瞬浮かんだ有希の顔を頭から追いやってるうちに
キョンの腰の動きが更に早く、激しくなった。もうイキそうなのかな、キョンも息が荒い。
あたしはイキっぱなし。でもまだ欲しい。「とどめ」が欲しい。ください。おねがいします。
無我夢中でおしりを突き出す。
「ハルヒ…っ!」
わんっ。
感極まった呼び掛けに、心の中で応える。
それにまた応えるように激しく肉棒が突き入れられて──
肩で息を整えながら30分くらい、部室の天井を見ていた。隣に寝転んだキョンの
うでまくら。何も話さず大の字になりながら、たまに髪を梳いてくれる。えへへ。
あたしが呼び掛ける。
「…ごしゅじんさま。」
ぶっ、という声がした。おいおい、とかやれやれ、みたいな事をぶつぶつ言ってる。
もう薄暗くてよく顔色はみえないけど、きっと自称「ごしゅじんさま」は真っ赤に違いない。
「ね、キョン。幾ら相手がペットでも、生で中だしはまずいんじゃないかしら」
「…」
「ペットはちゃんと管理しとかないとすぐ増えちゃうのよ?」
「……あー」
「責任、取りなさいよっ」
ああー、とかううー、とか心底困り果てた顔でうなってるのが可愛くて、
思いっきり胸に抱きついた。汗のにおい。今日みたいな遊びじゃない。ずっと前、わたしに
ほんものの、視えない首輪をつけた男の子のにおい。この首輪はもうきっと外れない。
外れなくていい。でも、そのかわり。
「…大事にしてよね」
「ああ。分かった」
いつも韜晦してばっかのくせに、こんな時だけは、即答して抱き締めてくれる。
なんだか泣きそうになりながらキスの雨を降らせる。と、その頭を挟むように押さえられて、
正面から唇を吸われた。ついばむようにして一度離れて、次は舌が挿し入れられる。
そのまま、競い合うようにお互いの舌を貪った。酸欠になりそうなくらい。
「今日は凄ーーくノリノリだったわよね、キョン」
帰りの坂道。獄卒のような笑みを浮かべたハルヒが、斜めに俺の顔を覗き込んでいる。
あー…ええと…すまん。
「別に怒ってないわよ?でもなんか気に入っちゃった、この首輪。明日付けてこよっかな」
おぉおいー?!教室にもか!リード付けてか!もしかしてそれ俺が持つのか!?
「冗談よ」
…お前が言うと冗談に聞こえないんだ。
「なーによ、バカキョン!」
ぼやく俺に、俺の女神は三百ワットな笑顔を見せた。