とあるありふれた日の夜のことだ。
中3の俺は塾に通い、佐々木と帰っているところだった。
ある時、佐々木が目を輝かせながらいきなりこんなことを言い出した。
「キョン。これから君に今僕が思い付いた謎かけをといてもらうよ。」
まったく。塾が終わってもこの容量の少ない脳みそを働かさなきゃならんのか。
「まぁまぁそう言わずに、付き合ってくれよ。ほんの少し考えればわかるようなことだからさ。
知恵の輪を解くのに力は必要ないだろ?」
「わかったよ。で、どんなのだ?」
「いいかい。よく聞いてくれよ。
平穏な日々、とかけまして、キョン、君と解く。」
「その心は?」
「その心はね…」
何でもいいが佐々木よ。それ謎かけか?
「その心はね、」
「やぁ、キョン。佐々木さんも。こんな時間に奇遇だね。」
何だ国木田か。いきなり夜道で出てくんなよ。ビックリするから。
「帰るとこなのかい?それだったら僕もご一緒させてもらっていいかな?」
あぁ別にいいが。いいよな、佐々木?
「ん?あぁ。構わないよ。」
で、さっきの答えは何だったんだ?
くっくっくっと独特の笑い方で佐々木は笑うと、こう答えた。
「そうだね、いつまでもエサの前で犬を待たせるのは良くないね。その心はね、
『月並みではあるけど、それが大事』だよ」
「ふ〜ん…?」
俺が語尾を上げながらそう返すと、
「今の君の言い方はまだその答えの意味が理解出来てないようだね。
まぁまた今度にでも答えの意味でも教えてあげるよ。暇があったら考えてみるといい。
それじゃあキョンまた明日。国木田君も。」
そう言って佐々木はバスに乗っていった。
「キョン。さっきのは一体何だったんだい?」
とりあえず先ほどの謎かけの問いと答えを国木田にそのまま伝えると、国木田は
ニヤニヤしてこちらを見だした。何だ?
「それはお邪魔しちゃったね、キョン。僕がいなけりゃほんとの解答がきけたのに。
じゃあね。また明日。」そう言って国木田は別方向に歩いていった。
本当の答え?一体何だっていうんだ?
う〜む…わからん。まぁいいか。
こうして俺は一瞬で考えるのをやめ、口笛を吹きながら帰った。