精神汚染を観測した。
汚染除去プログラムを起動する。
・・・4分18秒待って。
部室についた俺が見たのは、珍しくパソコンに向かっていた長門だった。
少々尋ねたいことがあって俺が声をかけようとして返って来た反応が
冒頭のこれだ。
何かネットで見たのかね?
履歴でも確認したいところだが、長門のことだから宇宙的パワーを
使わなくてもキレイに消してありそうだから無理だろうな。
長門は本棚から一冊の書を取り出すと、いつもの自分の席に座り読
み出した。
その一連の動作は、いつもよりちょっとだけ、俺ぐらいでようやく気付く
ぐらいのレベルのぎこちなさを感じさせた。
これが精神汚染とやらの影響によるものなら、かなりのダメージを長門の
心と体に与えてるんじゃないのかね?
見てみたい気もするが、そんなレベルのものを俺が見たら、きっと再起
不能のダメージを受けかねないから、やめておくべきだろうな。
何しろ、汚染除去プログラムとかたいそうな名前で読んでいたが、長門
がやっているのは、お気に入りの本を読むことによる気分転換なんだから。
そして、その気分転換のために長門が選んだが、こないだの不思議探索
でとある古書店で見つけたネクロノミコン(ギリシャ語版)なんて物騒な
しろものだ。
長門が何をネットで見たのか、想像するだけで正気が失われかねん。
俺が自分と長門の分のお茶の準備をしていると、予告した通りの時
間になると長門は顔を上げて俺の方を向く。
「なに?」
そこには、落ち着きを取り戻した、いつもの長門の顔があった。
俺はお茶を差し出しながら、手短に要件を伝え出した。