まるで予想だにしなかった奴が黒板の前に立っていた。
「遅いよ、キョン」
朝倉涼子が俺に笑いかけていた。
まっすぐの髪を揺らして、朝倉は教壇から降りた。
教室の中程に進んで歩みを止め、朝倉は笑顔をそのままに誘うように手を振った。
「入ったら?」
引き戸に手をかけた状態で止まっていた俺は、その動きに誘われるように朝倉に近寄る。
「お前か……」
「そう。意外だろ」
くったくなく笑う朝倉。その右半身が夕日に紅く染まっていた。
「……何の冗談だ?」
くつくつと笑い声を立てながら朝倉は、
「何が?」
小馬鹿にしたように言った。
「お前は俺の事をキョンとは呼ばないだろ」
「そうだっけ?」
「それに、その口調は何だ」
「あなたの彼女――」
「違う」
条件反射の如く、言い切った。
「――そうよね」
納得した様な感じで言った朝倉はポケットから携帯を出し、ボタンを数回押してアンテナを伸ばした。古いのか?
何か音が流れだし、俺の目の前に携帯を突き出した、横向きに。
『――市の私立高校で女子生徒が血を流して倒れている所を発見されました。女子生徒は意識不明の重体で――』
「――佐々木」
振り下ろされたナイフは夕日より赤かった。
ってのを書こうとしたけどブラックすぎてやめた