「性欲を持て余す」
誰ともなく呟いた。部室には今のところ長門しか居ない。
周辺視野で長門がこっちを凝視しているのを確認。
まあ、知り合いが突然そんなことを言ったら俺だって気になるさ。
ただ俺と違うのは長門は特に言及することもなく読書に戻ってしまったワケだが、これも周辺視野で確認。
しばらくしてから古泉がやってきた。
「おや、お二人だけですか」とか言いながら、いつものスマイルの仮面を顔に付けて、いつもの席に座った。
なんとなく俺から話題をふってやった。
「最近はバイトは忙しくないのか?」
「いや、性欲を持て余しますね」
話が噛み合ってない気がするのは、さて俺の気のせいだろうか。
長門が俺と古泉を交互に見やってるのを周辺視野で確認。
「そうか、実は俺も性欲を持て余す」
「おや奇遇ですね、もしや長門さんも性欲を持て余すんですか?」
なんてこと聞きやがると思いつつも、興味があるので黙っていた。
「………わたしにそういう機能は無い」
「そうなんですか? それは残念ですね」
「残念か? 性欲を持て余しちゃって大変だぜ俺は」
「確かに性欲を持て余すのは大変ですね」
「性欲を持て余す」
「まったくです、性欲を持て余す」
「………」