マンションの前に着いた。彼が、もう大丈夫だよな、そう言って帰ろうとする。  
 
「待って」  
 
彼が振り向いた。  
 
「話したいことがある」  
 
そう言って、わたしは、自分の部屋に向かった。彼は来るだろう。知りたいはずだ。  
彼は、少し難しい顔をして、わたしの後に続いた。  
不思議と、眼鏡がないのに、不自由を感じなかった。  
 
もう、彼も気が付いているのかもしれない。  
そう、今日、部室で、訊いていないのに彼がわたしのことを話した。  
あれは、彼なりに確認したかったからなのかもしれない。  
 
彼を部屋に招きいれ、お茶の用意をする。朝倉さんは来るだろうか。  
いや、来ても構わない。彼女にも聞いて欲しいような気もする。  
 
コタツテーブルに座り、お茶を出す。彼は、湯のみに口を付けた後、落ち着かない様子で、  
 
「やっぱり、まだ、不安なのか? それとも、他にも何かされたのか?」  
 
と訊いてきた。生徒会室の話だと思ったらしい。  
心配してくれている。そう思うと、申し訳ない気持ちになる。  
 
「それは大丈夫」  
 
そう言って、言葉を続けた。  
 
「世界改変の話」  
 
彼の動きが止まった。彼の真剣な眼差し。わたしは落ち着いた気分だった。  
これから話すことを思い、落ち着いていられるのが不思議だった。  
彼は、どう思うだろう。もう、わたしとは会いたくないと思うかもしれない。  
そうなっても仕方がない。わたしは、罰を受けなくてはならないのだ。  
 
「この世界を改変したのは、わたしだと思う」  
 
彼の驚いたような表情。胸が痛い。  
少し間を置いて、わたしは、これから話すことは全て推測だと断った上で、話し始めた。  
 
あなたの話では、本来、涼宮ハルヒが能力を持っていなければ、わたしや朝比奈みくるは、  
この世界に存在しないはず。だから、涼宮ハルヒが平凡な日常を望んだとしたなら、  
わたしや朝比奈みくるは存在していないはず。  
 
それに、あなたも言ったように、涼宮ハルヒが自身を不機嫌にさせるような改変を行うとは  
考えられない。無意識ならなおさら。  
 
また、涼宮ハルヒが自身の能力に気が付いていないのであれば、世界改変によって、  
彼女の能力が消失するとは考えにくい。そもそも、その能力に気が付いていないのだから。  
持っていないものを、なくすように願うことはない。  
 
よって、涼宮ハルヒが世界改変を行ったとは考えられない。  
 
彼の知っている、魔法を使う宇宙人製アンドロイドのわたし。そのわたしに世界改変の  
能力があったのか否かは解らない。しかし、状況は、それを示している。  
 
わたしは、あなたに特別な感情を持ったのだと思う。それは、情愛か恋愛かは解らない。  
でも、あなただけは、特別だと思った。そのような感情は、独占欲を増大させる。  
 
しかし、あなたには、涼宮ハルヒがいる。  
あなたの話を聞く限り、あなたは、涼宮ハルヒに特別な感情を持っていると思う。  
それは、わたしも知っていたはずだ。  
 
そして、閉鎖空間から戻れた鍵となるものが、あなたの言う通りならば、涼宮ハルヒも、  
あなたに対して特別な感情を持っていたと思われる。  
 
そのような状況で時間が経過するに従って、わたしは感情を抑えられなくなったのだと思う。  
未熟な感情による押さえきれない独占欲。それによって、わたしは、世界改変を行った。  
 
改変は、あなたが非日常的な事件に巻き込まれなかった場合を想定していたと思う。  
ただ、涼宮ハルヒの能力は存在せず、でも、わたしと朝比奈みくるは残した。  
 
北高に涼宮ハルヒは入学せず、よって、あなたは涼宮ハルヒに出会うことなく、  
SOS団も結成されない。そうなれば、あなたは平凡な学生生活を送ったはずだ。  
 
そして、朝比奈みくるは、書道部員のままで、朝倉さんとわたしが戦うこともない。  
よって、朝倉さんは転校せず、わたしが眼鏡を外すこともなかった。  
朝倉さんは、あなたの言った通り、わたしと同類なのだと思う。  
涼宮ハルヒの能力がない限り、朝倉さんは、ただ、わたしの保護と支援を行う存在。  
それは、度々わたしを助けてくれる朝倉さんの行動からも窺える。  
わたしは、朝倉さんを、そう捉えていたのだろう。  
 
ただ、そうであるなら、おかしなことが一つだけある。それは、図書館の思い出。  
 
わたしは、SOS団が結成されなければ、わたしとあなたが図書館に行くことにはならなかった  
のではないかと思っている。だから、わたしとあなたの図書館の思い出が一致していないのだと。  
ならば、なぜ、わたしに図書館の記憶があるのか。  
 
そして、その図書館の思い出だけが、今のわたしとあなたを繋いでいる。  
今のわたしがあなたを知っているのは、わたしの記憶に図書館の思い出があるから。  
図書館の思い出がなければ、今のわたしは、あなたを知らなかったはずだ。  
もし、あなたを知らなければ、あなたが文芸部室に入ってきたとき、逃げ出していたはず。  
 
最後に、緊急脱出プログラム。あの栞の文字。あれは間違いなく、わたしの字だった。  
わたしは、あなたの選択に任せたのだろう。そして、あなたは選択した。  
しかし、あなたは戻れなかった。  
 
「…………」  
 
彼は目を見開いたままだ。わたしは俯き加減のまま、テーブルの上の湯のみを見ていた。  
 
「でも、そうなら、何で、お前は人間に……」  
 
わたしは、顔を上げて彼を直視する。急に、感情が揺れた。何かがこみ上げてくる。  
 
「人と人でないものは、恋愛関係を構築できないから」  
 
彼の姿がぼやけた。何かが頬を伝う。ただ、悲しかった。  
これは全て推論だ。しかし、これで辻褄があうと思った。  
彼と抱き合った夢。夢の中で感じた彼の匂いと温もり。彼に抱きしめられた感触。  
それは、今日、部室で彼に抱きしめられたときに感じたものと同じだった。  
 
「あなたが好きだから」  
 
そのまま、わたしは、俯いた。とても、彼の姿を見ることはできない。  
 
この世界改変は、宇宙人製アンドロイドであるわたしの告白だった。  
彼は、緊急脱出プログラムを実行した。それが、彼の答えなのだ。  
しかし、それは機能しなかった。それが、わたしの意図だとしたら。  
それは彼に対してあまりに不誠実ではないか。  
 
わたしは、改変前のわたしに怒りを感じていた。  
 
彼は、それでも、わたしを受け入れてくれるだろうか。  
わたしは人間にはなれなかった。今日、生徒会室で感じた、あの妙な感覚。  
それに、彼と涼宮ハルヒの話から、改変は、三年以上前には影響を与えていないと思える。  
そうであれば、今のわたしが、人としてこの世界に生まれたことは否定される。  
 
わたしには三年以上前の記憶がある。しかし、三年前より昔のわたしを知っている人は  
いないのだろう。結局、世界改変しても、わたしは人間にはなれなかったのだ。  
そして、今のわたしには自覚できる何の力もない。少なくとも魔法を使うことはできない。  
きっと、わたしがそう望んだから。  
だから、もう彼が望む世界に戻すことはできない。何と間の抜けた話だろう。  
 
結局、わたしは力を失っただけだ。人間にもなれなかった。  
そして彼の答えを知っている。彼は、彼の世界を選択し、わたしを拒絶した。  
なのに、彼は帰れなかった。わたしは彼を帰さなかった。  
 
どうしても彼を見ることができない。わたしは彼の前から消えてしまいたかった。  
彼はどう思っているのだろう。  
 
しばらくして、  
 
「そうかもな」  
 
と言う彼の落ち着いた声が聞こえた。やはり、彼も気が付いていたのだ。  
 
「長門、顔を上げてくれ」  
 
顔を上げる。わたしは罰を受けなければならない。彼に何を言われても受け入れなければ  
ならない。しかし、彼の反応は予想と違っていた。信じられない。彼が微笑んでいる。  
 
「何となく、そう思ってたんだ。ハルヒが世界改変をしたとすれば、妙なことが多すぎる。  
そして、俺の知る限り、ハルヒ以外に世界改変が出来るとすれば、長門だけだったからな」  
 
そう言って、彼は一口お茶を飲むと、わたしを見つめたまま、口を開いた。寂しそうな笑みで。  
 
「ただ、何で長門がそんなことをしたのかが解らなかった。  
ハルヒに振り回されるのに嫌気が差したのかと思ってたんだが、  
でも、お前の話が本当なら……。いや、本当だと思うんだが……」  
 
そこで彼は、沈黙した。笑みは消え、真剣な表情。彼は、改変前のわたしを信頼していた。  
だからきっと、裏切られたと思っているだろう。  
 
「俺は、長門の気持ちを考えたことがなかった。あいつは追い詰められてたんだな」  
 
意外な言葉だった。  
彼は、視線を天井に向け、少し考えるような表情で、話を続けた。  
 
「でも、恋愛感情ってのは、どうだろうな。あいつは、人と接触したことがほとんどなかった  
はずだ。たぶん、俺が最初だったんじゃないか? だから、そう思い込んだだけかもしれない」  
 
そうだろうか。わたしは、彼に恋している。この気持ちに間違いはない。  
 
「わたしは、あなたが好き。これは、改変前のわたしの気持ちと同じだと思う」  
 
彼が固まった。  
彼は状況を正確に理解している。だから、わざと曖昧な言い方をしている。そう思った。  
わたしを思い遣ってくれているのかもしれない。しかし、わたしは、曖昧にできなかった。  
 
「わたしは、今日、あなたに抱きしめられて嬉しかった。  
生徒会室のことがあった直後で、普通は、男子に近付きたくないと思うはずなのに。  
わたしがあなたを好きだから。だから、抱きしめて欲しかった」  
「…………」  
「あなたはこの世界からの脱出を選択した。しかし、あなたは戻れなかった。  
それは、きっと、わたしが……」  
「やめろ! それ以上言うな!」  
 
彼が拳を握り締めて俯く。でも、彼には全てを知って欲しい。わたしは言葉を続けた。  
 
「わたしは、緊急脱出プログラムを正しく設定しなかった」  
「…………」  
「わたしは、あなたをこの世界に閉じ込めた」  
「…………」  
「わたしは、あなたを独占したかった」  
「…………」  
「そう考えると、辻褄が合う。そうとしか考えられない」  
「…………」  
「わたしは、罰せられなければならない」  
「やめろ! やめてくれ、長門。それは、お前のせいじゃない、お前のせいじゃないんだ」  
 
彼が両拳で、コタツテーブルを叩く。  
 
わたしは、ただ彼を見つめていた。頬が濡れていることを自覚する。  
わたしは懺悔しているつもりなのかもしれない。でもそれは、自分勝手な考え。  
彼に詰め寄られたほうが幾らかましだ。  
 
「長門、前にも言ったが、俺は長門を信頼している。  
だから、例の脱出プログラムは、それが準備されていた時点で、正しく設定されてたはずだ。  
あいつは、意味のないことはしない。だから、脱出プログラムがフェイクだったなんてことは、  
ありえない。そんなどっきりカメラみたいなことがあってたまるか。  
何か意味がある、あるはずなんだ」  
 
彼の改変前のわたしに対する信頼は驚くべきものだ。なぜ、そこまで信頼できるのだろう。  
普通は、恋人同士でさえ、それほどの信頼は置けないのではないだろうか。  
わたしは改変前のわたしの気持ちを思った。わたしが彼に好意を寄せた理由を。  
彼に選択を託した理由を。  
 
「お前ならどうする? お前は、そうするか?」  
「……しない。意味がない」  
「そうだろ? 俺の長門は、そんな悪趣味なことはしない」  
 
そうなら、一体、なぜ彼は脱出できなかったのだろう。  
彼は大きく息を吐いて、わたしに視線を固定した。  
 
「緊急脱出プログラムは本当はちゃんと動作したんじゃないだろうか。  
どうも気になるんだ。どう思う?」  
 
思わず息を呑んだ。それは最初に考えたこと。でも単なる妄想としか思えなかったこと。  
 
「この世界が分岐した可能性」  
 
わたしは、彼に、その妄想を話すことにした。  
何れにしても、わたしの責任がなくなるわけではない。わたしの考えの全てを話したほうがいい。  
 
緊急脱出プログラムを実行した時点で、この世界が彼の世界から分岐したのではないか。  
彼の世界では、緊急脱出プログラムにより彼が脱出した時空が、分岐したこの世界では、  
彼がこの世界に残る時空が発生した。  
 
彼の世界は、いや、この世界は唯一の世界だと思っていた。未来人がいるから。  
しかし、そうではないのかもしれない。  
たとえば、エヴェレット解釈では、世界は観察者の数だけ存在するはず。  
 
「なんだかよく解らんが、つまり、パラレルワールドってことか?」  
「正確ではない。でも、そんな感じ」  
「なんてこった……」  
 
もし、多時間宇宙において、時間の流れが異なる世界があれば、それらの世界間の移動は、  
タイムマシンによる移動と同じように見えるかもしれない。  
その場合は、タイムパラドックスは発生しない。それぞれの世界は、別の時系列に沿っている  
のだから。その世界では、未来人と異世界人は、同一の存在であると言える。  
 
彼が、唖然とした顔で呟いた。  
 
「時間平面……。そうだ、朝比奈さんは、違う時間平面から来たって言ってたっけ……」  
 
はっとしたように、そして、何かに気が付いたように、彼がわたしに向かって言った。  
 
「観察者の数だけ世界があるっていってたな?」  
「そう」  
「観察者……、長門? いや、ハルヒ……、違う、情報統合思念体か!」  
 
彼は、ぽかんとした顔をわたしに向け、しばらく固まった後、両手で顔を覆った。  
そして、いきなり笑い出した。腹を抱えて笑っている。どうしたのだろう。  
何がおかしいのかわからない。わたしは呆然とした表情をしていたに違いない。  
 
「すまん。でも、お前の考えの通りかもしれん。いや、たぶん、その通りだ。  
長門はやっぱり長門だな。でも、お前の話のほうが解りやすいぞ」  
「…………」  
「……何かすっきりしたよ、長門はちゃんとやってくれてたんだ。  
きっと、俺は、俺の世界で、長門を慰めてるんじゃないか。長門は、今のお前と同じくらい  
しょげてるだろうからな。俺の長門が、お前ほど正直に全てを話してくれてたらいいんだが」  
 
そして、目尻を押さえながら、  
 
「そうさ、それが本当かどうかは解らないが、そう考えれば、すっきりする。  
諦めもつくってもんだ。できないことを求め続けるのは、不健康だしな。  
いや、ハルヒのことじゃないぞ。それに、もしかしたら、この世界と俺がいた世界が  
交わることもあるかもしれない。いつか……」  
 
そう言って、薄らと涙を浮かべながら笑顔を見せた。彼は泣いているのではないだろうか。  
ふと、そんな疑問が浮かぶ。  
 
よく解らないが、彼は、彼の中でこの世界と折り合いをつけたように見える。  
でも、わたしが、全ての原因であることには変わりない。  
 
「違うぞ、長門。お前はちゃんと俺を戻してくれたのさ。二重の意味でな。  
この世界ができたのは、きっと情報統合思念体のせいだ。そう思っておけばいい」  
 
そして、  
 
「……俺がいた世界は、きっと三年前に、それまでの世界から分岐したんだ」  
 
そう呟くように言った。  
 
「お前が責任を感じる必要はないんだよ。それは、あれだ、そう規定事項ってやつだ。  
お前は、もう俺の知っているアンドロイドじゃない、人間だ。だから責任を感じる必要はない」  
 
人間。いや、わたしは人間にはなれなかった。  
 
「お前は人間だよ。あの超絶マジックを使わなければ、そして、あの情報統合思念体とやらが  
いなければ、お前は人間なのさ。改変前でも改変後でもな。そう宇宙人製だったとしてもだ」  
 
それに、と彼が続ける。  
 
「俺の知ってる長門は、微笑んだり泣いたりしないんだ。  
微笑んだり泣いたりして欲しかったんだがな。でも、お前は、微笑んだり泣いたりするだろ?  
人は、みんな、泣いたり笑ったりするんだよ。だから、お前は人間だ」  
 
そう言って、彼は立ち上がり、ポケットからハンカチを出すと、わたしに差し出した。  
 
「顔を拭いてくれ。頼むから、もう泣くのはやめてくれ」  
 
驚いた。思わず、彼を凝視してしまう。目の前に差し出されたハンカチ。  
彼のやさしい顔。それは、図書館の彼を思い出させた。  
わたしは、無意識に彼のハンカチを手に取っていた。  
 
「俺たちは生まれ変わったのさ。それぞれ違う世界の記憶を持ったままな」  
 
遠くを見つめるような顔で、彼は、そう言った。  
 
「俺が緊急脱出プログラムを実行したのは、この世界が嫌だったからじゃない。  
前の世界のほうが面白いと思ったからなんだ。非常識な事件が起こる世界がな。  
俺は、ガキのころから、宇宙人や未来人や超能力者のいる世界に憧れていたんだ」  
 
一拍置いて、彼が続ける。  
 
「でも、非常識な事件のない世界が嫌なわけじゃない。  
ハルヒに出会う前までは、平凡な日常ってやつがそのまま続くと思ってたんだからな。  
そもそも、俺たち人間は、生まれる世界を選べないんだ。  
全ては神か仏の思うままにってやつさ。だから、これでいいんだ。  
お前だってそうだ。改変前のお前は、敢えて言うなら、お前の前世ってやつだと思えばいい。  
誰も前世の行いの責任なんて取らないだろ。ま、俺は前世なんてやつは信じちゃいないがな」  
 
彼のフォローになっているようで、フォローになってない言葉。  
彼自身に言い聞かせているような言葉。  
 
「お前が俺を好きだって言ってくれたのは嬉しい。俺の知っている長門がそう思ってかも  
しれないってこともな。そして、お前が言ったように、俺がハルヒに特別な感情を持って  
いるってことも認める。それは恋愛感情じゃないと思うがな。  
だが、それは、改変前の話だ。前世の話なんだ。  
今の俺やお前の気持ちは、過去の記憶なんだ。それに縛られる必要は何もない」  
 
そう言われるとそうかもしれない。でも。  
 
「俺たちは、ある意味、知り合ったばかりだ。お互いに違うの記憶、過去の記憶しか持って  
ないからな。だから、もう少し付き合ってから、改めて考えてみないか」  
 
少しだけ落ち込んだ気分になる。彼の悪戯っ子のような表情。  
 
「そうだな。まずは、文芸部に入部させてくれ。そして、一緒に図書館に行こう。  
それから、SOS団のみんなでクリパだ、朝倉も呼んでさ。忙しくなるぞ」  
 
息が止まった。嬉しかった。嬉しいのに、涙が溢れて止まらなかった。  
慌てたような彼の表情。わたしは、うまく微笑むことができただろうか。  
 
 
彼が帰った後、わたしは、一人で考えていた。  
 
彼はわたしを人間だと言ってくれた。しかし、生徒会室で感じたあの妙な感覚。  
それに、眼鏡をかけていないのに不自由していない現実。  
 
わたしは、本当に彼の言っていた能力を失ったのだろうか。  
一度、朝倉さんに相談してみても良いのかも知れない。  
長門有希のバックアップだった朝倉涼子。もしかしたら、彼女は何かを知っているかも。  
でも、不用意に相談すると妄想だと笑われそうだ。もう少し様子を見たほうがいいかもしれない。  
 
これからどうなるのだろう。  
彼は、やはり涼宮ハルヒに惹かれるのではないだろうか。でも、先のことは解らない。  
 
ただ、わたしと彼の間にも共通の秘密がある。彼とは恋人同士になることはないかもしれない。  
わたしには、彼とそのような関係になる資格はないのかもしれない。  
でも、そうだとしても、彼とは友人として、今後も付き合っていけるはず。  
それで、十分なのかもしれない。少しの悲しさと寂しさを感じながら、そう思う。  
 
でも、彼は、文芸部に入部すると言ってくれた。  
未来のことは解らない。少なくともわたしは、もう一人ではない。  
 
そう、わたしは生まれ変わったのだ。  
 
 
―おわり―  
 
 

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