「古泉、お前が戦っている様はヴァニラアイスみたいだな」
ジョジョの話だ、それを話題に盛り上がりたいワケではないが興味があった、この超能力少年にその手の話題が通用するかどうかをな。
しかしいきなりヴァニラアイスと言われても、もし読んだことがあっても冷凍食品の方だと思ってしまうかもし――
「あぁ、ジョジョの話ですね? あなたも読むんですか?」
――微細な齟齬も無く完璧に通じてしまった。
「驚いたな、お前ジョジョなんて読むのか」
「ええ、はっきり言ってマニアと言っていいですね」
意外だ、甚だしく意外だ。
まさかスタンドをすべて丸暗記してたりするのか。
「マニアと呼ばれる人たちがみんなスタンドを丸暗記しているワケでは無いのですよ」
「まあ、そうだろうな」
「僕は丸暗記してますけど」
「してんのかよ…」
我ながらくだらない馬鹿話をしちまった物だと嘆息し、俺はそのまま話題を変えようとした。
――しかして、古泉は次のように会話を続けた。
「ちなみに朝比奈さんの能力は、時間平面を跳び越えられると言う物ですよね。長門さんが持つ能力は、宇宙生命体にアクセスできると言う代物です。涼宮さんの能力については、もう貴方には言うまでもないと思いますが」
うん? 確かにそれは知っているが、何か、話のニュアンスがおかしくないか?
古泉はいつもと変わらぬハンサムニヤケ面に、少しだけ偽悪的な色合いを混濁させ……おいおい、何やら嫌な予感がするぜ。
「何故、僕たち四人が揃いも揃ってSOS団に加入したのだと思います? 覚えていますか? 『スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う』……ジョジョの中に出てくる有名な台詞ですよ。そうそう、まだ僕のスタンド能力の名を、貴方に教えていませんでしたね」
くっくっと不気味な笑い声を漏らしながら、古泉は糸のように細めた双眸で俺を見据えた。
ふざけるな。つまらない冗談もいい加減にしておけよ。冗談だろ? 冗談だよな? できれば冗談であって欲しいんだが。
「良いですか? 僕が持つスタンド能力の名前は――」