「………何ですか、それは一体」  
 
 
オレの目の前にはうつむいて顔を真っ赤にした朝比奈さん。  
 
その手には、安っぽい白い紙コップが握られている。  
 
 
「………だ、出して、くだ、さい……」  
 
 
朝比奈さんは、震える声でぼそぼそと途切れ途切れに言った。  
 
でも、出すって……  
 
 
「あの、その……っ…、これ、に、………せ…、せい、ぇき、を、出して、くだ、さい…」  
 
 
 
思考がショート。  
 
 
せいえき  
=精液  
 
 
「は、はいぃぃ!?」  
 
 
そのときのオレは自分でも突っ込みたくなるようなうろたえっぷりだったが、言った本人はもっとうろたえていた。  
 
顔が、一際赤い。  
 
 
ちょっと待ってください朝比奈さん。  
そもそもなんでそんなものを採取する必要があるんですか。  
「そ、それは……その」  
口篭もりながらもぽつりぽつりと朝比奈さんは説明を始める。  
「最近、夜とかちょっと咳が酷くて……。  
 思い切って長門さんに相談したら、せ、せ……を飲むと  
 健康にいいからって教えてもらったんです」  
な、長門ー!  
「……情報に偽りはない。  
 予想される採取方法によればあなたの健康に良いのは確実」  
「わ、私の健康じゃないんですかぁー!?」  
「考慮に値しない」  
 
いえ、飲むと本当に健康にいいそうですよ?  
「え、でも・・・」  
こんなものでよければ、いくらでもどうぞ!  
「ちょ、キョンく」  
どうせ捨てるものですし、どうぞ遠慮無く!!  
「そ、その〜」  
さぁ!俺のジョンは準備万全です!  
「ふ、ふぇぇ・・・」  
「・・・・・・・・・・・・・・」  
って長門!?ちょ、そんな後ろからだなんてアッ―――――!  
 

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