「………何ですか、それは一体」  
 
オレの目の前にはうつむいて顔を真っ赤にした朝比奈さん。  
 
その手には、安っぽい白い紙コップが握られている。  
 
「………だ、出して、くだ、さい……」  
 
朝比奈さんは、震える声でぼそぼそと途切れ途切れに言った。  
 
でも、出すって……  
 
「あの、その……っ…、これ、に、………せ…、せい、ぇき、を、出して、くだ、さい…」  
 
 
思考がショート。  
 
 
せいえき  
=精液  
 
 
「は、はいぃぃ!?」  
 
 
そのときのオレは自分でも突っ込みたくなるようなうろたえっぷりだったが、言った本人はもっとうろたえていた。  
 
顔が、一際赤い。  
 
 
「それで、その……」  
「まあ…いいよ」  
とたん、彼女の顔が明るくなった。  
「ありがとうございますっ!!」  
「いえいえ、いつもお世話になってますから」  
 
…主に夜、妄想の中で。  
 
そんなこんなで、俺は朝比奈さんの手から紙コップを受け取った。  
「じゃ、明日で良いですかね」  
「いえ、出来るだけ鮮度を保ちたいので今お願いします」  
 
「…………今?」  
「はい」  
 
朝比奈さんはいつもどおりの可愛らしい笑顔をしている。  
「じゃあちょっとトイレ行ってきます」  
「いえ、出来るだけ素早く採取したいので、この場でお願いします」  
 
「…………この場で?」  
「はい」  
「…じゃあちょっと向こうむいててもらえますか」  
「いえ、出来るだけ確実に採取したいので、目の前でお願いします」  
 
「…………目の前で?」  
「はい」  
 
 
ああ、笑顔が眩しいよ朝比奈さん。  
…やっぱりダメですか?」「いや!やりますとも!!」つーかんなうる目見せられたら、イヤなんて言えません。  
思わず苦笑いだった。  
 
「じゃ、じゃあ、はじめますから…」  
俺は床に腰を下ろし、いつもとはまったく違うぎこちない手つきでズボンのジッパーをゆっくりと下げる。  
うう、朝比奈さんが見てるよ……  
中から、モノを取り出してゆるゆると擦りはじめた。  
 
が。  
「……あれ、」  
いくらいつもと同じようにしても、頭をもたげない。その様子を、朝比奈さんが息を呑んで見ている。  
 
そうか。  
朝比奈さんがいるから緊張してたたないのだ。  
「え、えーっと……」  
気まずくて頭を掻く俺。このままだと不能だと思われてしまう。すると朝比奈さんははっとして、  
「あ…ああ、そうですよね、緊張…しますよね」  
そういいながら、  
 
「ん………」  
 
服を、脱ぎはじめた。  
 
「…ってええぇぇ!!」  
俺がそうさけんだときには、もう鼻先ではあの(本当の意味で)夢にまで見た二つの大きな乳房がたゆんたゆんと静かに揺れていた。  
「あ、あさひなさ…」  
「えっと、男性はこうすると興奮すると資料で読みましたから…」  
頬を赤く染めながらも、わずかにほほえんでさらに胸を近付けてくる。  
あとほんの数センチの距離だ。  
その乳房はありえないほど大きく、真っ白で。少し大きめの乳輪は薄く色付いて、中心の乳首は淡いピンク色をしている。  
「ね、だから、キョンくん…」  
 
いっぱい、興奮して。  
 
かすかにそう聞こえたかと思った瞬間、口元に乳首が思い切り押しあてられた。「んむ……っ!」  
思いがけない事態に、思わず乳首を口に含んでしまう。  
まだ勃ってはいない、やわらかなくにゅくにゅとした乳首。  
乳房より数段やわらかい乳輪に唇を押しつけられ、なおかつもう片方の乳房で顔を挟むように固定される。「ふぁ…、はぁん……」  
息をしようとするたびに、逆効果で乳首を吸ってしまう。  
朝比奈さんの口から、艶のある感嘆の息が漏れているのが聞こえた。  
「はあ…っ…はあぁん………いぃ…おっぱぃ、きもちいぃですぅ………」  
朝比奈さんは熱に浮かされたようにとろんとした目で俺を解放し、その代わりに両手を自分の胸に添えさせた。  
俺は何をすべきか、本能でわかった。  
むにゅり。くにゅ、ふにゅ。  
「ひゃはぁ…っ!…あ、あぁん……っ」  
男の手にも余るほどのその爆乳を荒々しく揉みしだいていく。  
「は…っ、は…っ、は…」  
いつのまにか、俺のモノは最高にいきり立っていた。そろそろやばい。  
「ちょっと…」  
俺は傍らに落ちていた紙コップを拾い上げた。  
と、  
 
「だめぇっ!!」  
 
朝比奈さんが、払い除けた。  
「や、だって朝比奈さんがコレに出せって……」  
「だめぇっ…や、やだあぁ……っ!」  
朝比奈さんの指が、そろそろと自分の下の茂みをかき分けていく。  
そしての秘肉に指を這わせ、秘所をぱっくりとひらかせた。  
「はぁぅ………」  
恍惚とした表情の口元からは、一筋の涎が細く糸を引いて床に落ちる。  
それと同時に、ひらかれた下の口からもうっすらと白みをおびたとろりとした粘液が音もなくこぼれていく。肥大した赤い豆や花びらも、粘液に塗れてぬらぬらと光っている。  
 
「…っはぁ……キョンくん、キョンくん…っ……」  
 
とろんとした表情のまま、見えないなにかにしゃぶりつくように、赤い舌がちろちろと動き回っている。  
「ね…もっとぉ…」  
そういうと、ぬるぬるになった秘所を俺のモノにすり付けた。  
 
…………っ  
 
「…もう、知りませんよ」  
肩で息をする彼女を荒々しく床に押し倒した。  
「ひぁんっ!……は、はぁ…っ、キョンくん―――」「なんだこれ…?」  
 
不意に、落ちていた紙に気が付いた。  
「あっ!それ…!!」  
紙には、「精液採取目的人間」という字と知らない男の顔写真、そして採取する際の具体的な日付などがかかれていた。  
 
「朝比奈さん―――」  
「…あのね。交配実験の卵子には、私の卵子が使われる予定なの。そして、相手の精子がその写真の人のもの。――けど。だけど……同じく交配するなら、私は、キョンくんの精子がよかった。だって、だって………」  
 
すきだから。あいしてるから。  
 
その言葉を最後に、朝比奈さんは泣きだした。  
「それに、私はいつかは未来に帰らなきゃならなりません。だから…証がほしかったんです。未来と過去とをつなぐ証が…」  
 
「俺も、好きです。朝比奈さん、好きです。」  
「キョンくん…?」  
「初めてあったときから、可愛いっておもってて。守ってあげたくて。ずっと言えなかったけど…ようやく言えた。未来とか過去とか、そんなのどうだっていい。俺は…俺は、朝比奈さんが、好きです」  
「キョンくん…っ!」  
 
 
俺らは、生まれて初めてのキスをした。あんまりうまくはなかったけれど、最高に幸せなキスだったと思う。  
 
「…ね、お願い。きて…」  
「ん……」  
 
ゆっくりと朝比奈さんのうえにかぶさり、彼女の腕をくびにからめさせる。足を持ち上げて、白い粘液がくぷくぷと音をたててあふれている秘所にねらいを定めた。  
「…いきますよ」  
ぐちゅんっ、くぷ…っ  
「ひぁあっ…!!あ、あ…すご……っ、おっ…きいぃ…っ!!」  
 
ぐぷっ、じゅるっ…、ぐぷ…ぐちゅ…  
 
律動を早めると、中の粘膜が逃すまいと熱く絡んでくる。  
「く……っ」  
結合部からは白くあわ立った愛液がとめどなくあふれて床を汚した。  
ずっぷ………っ!  
「はあぁ…っ!」  
最奥をつくと、朝比奈さんの声色が変わる。  
「ふ…っ…いぃ…っ!おく、いいのぉ…っ…キョンくんのおちんちんのさきっぽとこすれて…っ、こりこりきもちいぃですぅ…っ!」  
ぬぷっ、ぬぷっ、ぐちゅる、ぐっちゅ、ぐっちゅ…  
「は…っは…っ、はあぁぅ…っ、ふぁ、も、もぅ、私……っ」  
「ん…っ…俺も、…くぁ…っ…」  
朝比奈さんの俺をつかむ手の力が、強くなる。  
「いきますよ…っ!」  
「んん…っ!いっぱい、いっぱいおくにだしてぇ…っ!!」  
 
びゅくんっ!びゅくっ  
びゅるる…っ!!  
 
「うあ…っ!!」  
「ふぅあ…っ!!あ、あついぃ…っ!きょんくんのせいえか、いっぱい…、あついよぉ……っ…キョンくんっ、きょんくん…っ!!」  
 
 
 
 
 
 
 
愛するヒトが、俺のとなりで寝息をたてていた。  
下半身は、あふれだした愛の証で少し汚れている。  
 
「結局…実験じゃなくても交配しちゃったな」  
少し苦笑して、となりの愛しいヒトを見ると、いつもどおりの…いや、いつも以上の可愛らしい表情で寝息をたてていた。  
笑顔。よい夢でも見ているのだろうか。  
 
この笑顔が、未来でも過去でも…どこででも、失われませんように。  
 
そう思いながら、俺もゆっくりと横たわった。  
 
 
 
「…んにゅ……キョンくん、…あいしてる……」  
 
 
 
END  
 

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