ぷぅ。
「ん?」
古泉に3子置かせたところで、妙な音がした。
俺の聞き違いではなかったのか、古泉も顔を上げて俺を見ている。
ちょっと待て、なんで俺を見る。
「ちょっとキョン!! あんたねぇ!」
ハルヒは座っていた椅子が窓際にぶつかるほどの勢いで立ち上がると、俺を指差した。
細い眉を吊り上げて、俺を指差す。
「女の子がいるところでおならするなんて、どういうことよ!! まったくもう!」
顔を真っ赤にしながら、俺を指差して糾弾するハルヒ。
「ちょっと待て、俺じゃないぞ」
「あんた以外にいるわけないでしょ! もうっ! こんな部室で、一体あんた何考えてんのよ!」
ふと朝比奈さんを見ると、やっぱり俺を見ていて、さらには嫌いな物をプレゼントされた子どものように困り顔をしている。
って、俺を疑ってるのか。
「だから、俺じゃないって」
「あんた以外考えられないわ! さっさと罪を認めれば、まぁ許してやらないこともないわよ!」
いや、音の方向から察するに、窓際から聞こえてきたような気がしたんだが。
やれやれ。
「ああ、悪かったな」
「そうよ! 最初っからそう言えばすぐに許してあげたのに! まったくもう、これだから馬鹿キョンは!」
御立腹なハルヒはぷいと目を閉じて、吹き飛んだ椅子を引き戻して座った。
「いやぁ、さすがですね」
帰り道で古泉は気持ち悪いにやけ面でそう言った。
「あなたが名乗り出なかったら、僕が名乗ろうかと思っていましたよ」
なんてこった、それならもうちょっと待ってりゃよかったぜ。
「ハルヒのやつ、人のせいにしやがって……」
「まぁ女性ですから、仕方ないでしょう。生理現象を責めるのは酷ですよ」
おかげで朝比奈さんの困惑顔は、なんだか同情するような怪しい顔になってたぞ。
俺の株も暴落だ。また上げるから、今のうちに誰か買ってくれないかね。絶対儲かるって。
「僕でよかったら買い占めますよ」
いらん。
肩に提げた鞄が急に重たくなったような気がして、俺は溜め息をついた。
当のハルヒはというと、俺と古泉の前を朝比奈さんと並んで歩いている。仲良さそうにハルヒは朝比奈さんの肩に手なんか回してるしな。
「もう、みくるちゃんったら、いくらなんでも部室でおならはまずいわよ。咄嗟にキョンのせいにしたけど、みくるちゃんは我が団のマスコットキャラなんだから気をつけてよね」
「えっ、ええっ?! あたしそんなのしてません!」
「何言ってるの、みくるちゃんでしょ? 大丈夫よ、黙っててあげるから」
「ふぇっ?! ち、違いますぅ」
「あら、長門さん。どうしたんですか? え? お裾分け? サツマイモが安かったから箱買いしたけど飽きたからって? まぁ、ありがとうございます。長門さんにようやく人間味というものが溢れてきましたね。ふふ」
「以上が今年度の修繕費予算の……」
ぷぅ。
「ん?」
「まぁ、会長ったら」
「いや、今のは明らかに君のほうから」
「会長、どうかお気になさらず続きを。ええ、生徒会役員は会長がおならをしたくらいでは失望したりしませんから」