「きみはSOS団のことが本当に好きなのかい?」
そう言うと佐々木は俺の頬を、まるで恋人にそうするように優しく撫でた。
「どういう、意味なんだ?」
搾り出すようにして声を出した。
俺は目の前の少女を思わず見直した。俺のベッドに腰掛けたそいつはその秀麗な顔に微笑を浮かべていた。
一体お前は誰なんだ?
「誰って、僕は僕じゃないか」
違う。俺の知っている佐々木はこんな奴じゃなかったはずだ。
「キョン、君が知っている僕は僕の一面でしかないんだよ。いや君はあえて僕の一面しか見ようとしていないんだろう。そうすればお互い傷つく可能性はなくなるからね。でもね、それは偽善だよ。 その中途半端な優しさで僕が君にどれだけ傷つけられたか知っているかい?」
佐々木は言葉を切り唇を舐めた。その舌は唇同様赤く、なぜか俺はいけないものを見てしまったように目を逸らした。
「ほら、君はそうやってすぐ目を背けるんだ。キョン、気付いているんだろう。君は男で僕は女。どれだけ言葉で繕おうと態度で示そうとそれは厳然たる事実なんだよ」
思考が追いつかない。追いつきたくない。
「はっきり言うよ、キョン。僕は、いやわたしは君のことが好きなの。大好きなの」
その大きな瞳を閉じた佐々木は俺の首に手を回し顔を寄せてきた。まぬけなことに俺は佐々木のまつ毛の長さにいまさらながら気付いた。
そして俺はぎこちなく、だが確実に佐々木の唇へと俺の唇を近づけていった。