「というわけで、今週はツンデレ強化月間で行こうと思うの!」  
「何がというわけでだよ。いい加減脈絡を考えるということを覚えたらどうだ」  
「脈絡はあるわよ。あんたがついてこれてないだけ。あたしの言葉をきちんと聞いてない証拠よ。ちゃんと耳垢取ってる? 取りすぎるのもあれだけど、たまには綺麗にしないと腐って落ちるわよ。耳が」  
「落ちねえよ……まあ、んな事はどうでもいい。さしあたって聞きたいのはだな、これまで存在した覚えの無い強化月間についてだ。大体何なんだよその、えーっと、つんでれってのは」  
「え? ひょっとしてあんた知らないの? ぷっ、おっくれてるぅ〜。ツンデレと言えば、あんた、今一番流行の属性じゃないの! メガネとか猫の耳とか、ああいうのはもう古いのよ。遺跡よ遺跡。萌え遺跡ね」  
「あのな、俺が知るわけねえだろ、そんな人生の本筋とまるで関係ない極一部の流行と衰退」  
「ほーら、またあんたがSOS団の平均点を下げてるじゃない。団員たるもの、常にあらゆるところにアンテナを張り巡らせときなさいって、あれだけ口をすっぱくして言ったでしょうが」  
「言ってねえだろ……けど、いいさ。俺が不勉強だったよ。で、結局何なんだ。つんでれってのは」  
「そういう不勉強は今後もばしばし取り締まっていくからね。しっかり反省して次に繋げなさいよ。今回は特別にあたしが教えてあげるから」  
「はいはい。ありがたく教えていただくさ」  
 
 
「ツンデレってのは、そうね、例えて言うなら、一人の女子高生がいて、その子には気になる男子がいるとするじゃない?」  
「まあ、そういうことは往々にしてあるだろうな」  
「そう、往々にしてあるらしいのよ。あたしは納得できないけどね。そういう人は病院に行ったほうが良いんじゃないかとさえ思うわ。ま、あたしのことは今はいいんだけど。  
でね、本題を続けるけど、その彼女は気になる男子の前だと、どうしてか『あんた馬鹿じゃないの?』とか『ほんっと気が利かないわね』とか『そんなんだからダメなのよ。ダッメダメ。ダメ属性ね』とかしか言えないの。ここまではOK?」  
「いいけど。それだけだと、俺が男子に凄く同情するだけで終わるぞ」  
「ふふ、甘い甘い。こっからが本番なわけ。いい? 普段そんな言葉しか言えない彼女だけどね、実は自分の家に帰ってから、  
『もー、あたしの馬鹿馬鹿! あそこでもう少し優しい言葉をかけてあげられたら良かったのに!』  
なんてことを言いながら鏡の前で自分の頭をぽかりとやったり、  
『向こうから強引に来てくれたらこっちもその流れに乗って色々と』  
とか考えながら休みの日に着ていく服を選んだり……」  
「あ、なるほどなるほど。見えざるギャップって奴な。でもそれって、その男子の目の前でそういうとこ見せれないとまるで意味無いし、かえって嫌われそうなもんだけど……おい、どうしたハルヒ。何固まってんだ」  
「……やっぱ無し!」  
「はぁ?」  
「これは無いわね、うん。痛々しいわよ何か。大体ツンデレって、何よそのネーミング。ほぼツンドラじゃないの。あー、寒い寒い。ほらキョン、ぼさっとしてないでストーブ出しなさい。じゃないと風邪引いちゃいそうよ」  
「無いなら無いで、そっちの方が俺もいいけどさ、別にそこまで言わんでもいいだろ。伝わりにくいけど、結構可愛いじゃないか、そういうのも」  
「うっ……うっさいバカ!! 別に可愛くなんてないわよ!!」  
「へいへい。わかったから、んな怒鳴るなって」  
「もう、アホみたいなこと言ってないで、早くしなさいよね!」  
 
 
 
(涼宮さん、まんまだったんだ……)  
(涼宮さん、まんまだったんですね……)  
(涼宮ハルヒが昨日取った行動と全く同じ)  
 
 

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