部室に入ると珍しくハルヒの姿。パイプ椅子に踏ん反り返って座っている。
まあ、俺が掃除当番だったせいもあるけど、大抵ハルヒの奴は真打の如く遅れて登場してきて、さも当然のように「宇宙人を探しに行くわよ」と部室の扉を開いた瞬間にのたまうわけだ。
それとか、部室に集合とか言っておきながら自分だけ来なかったりとかな!
「部室に入ったら、まず挨拶するのが基本でしょ? あんた、体育会系に向いてないわね」
いつからこの部は体育会系に分類されるようになったんだ。確かに野球大会に参加したことはあったけど。
「何してるんだ?」
その昔パソコン部からふんだくったラップトップ型のパソコンを前に、ハルヒは難しい顔をしていた。むくぅと何かを詰め込んだように頬を膨らませ、おもむろにマウスを動かす。
「ホームページの更新よ。こうして、みくるちゃんの体操着姿を……」
マウスをクリックしようとした瞬間に俺は水面下の魚を狙う鷲を思わせる瞬発力でハルヒに飛び掛った。
いろいろあって阻止(飛びついたはいいが、胸を掴んでしまったせいでボコボコにされた。でも、気を逸らすことには成功)。
結果、オーライだ。身を犠牲にしたけど。
たぶん、俺の顔は真っ赤だ。明日の朝には真っ青になっているに違いない。
くそ、自分の体操着姿でもアップロードしやがれ。と、言ったら本当にやりそうだから言わないでおく。とりあえず朝比奈さんの体操着姿の写真はハルヒから盗んでおいた。
「そうだわ、キョン。超能力者をその辺で捕まえて実演させなさい。それをホームビデオ
か何かで撮影して、ここにアップロードすれば……アクセス増加間違いないね! そうだ
わ、ビデオカメラが必要ね。よし――パソコン部へ借りに行きましょう」
妙案でも何でもない最初っからまるっきり出鱈目のハルヒ理論が狭っ苦しい部室内で展
開していた。借りに行くとか何とか言って、はなから強奪するつもりだ。腕なんか捲くっ
てるし。そもそも、超能力者ってのはどこにいるんだ?
古泉を連れてきても「はぁ?」ってな顔つきで超能力者の何たるかを事細かく説明され
るのは目に見えている。
「なによ、その目は? 反抗的ね、団長命令よ! さっさと取材に行ってきなさい!」
ハルヒの双眸が見開き、目がつりあがり、俺を睨む。
超能力者を見つけて……そこがまず無理なんだ。くそ、いい加減、腹が立ってきた。
文芸部を乗っ取り、強引にメンバーを集めて、無理矢理部を成立させ、活動方針さえ
あやふやなSOS団の部活動は、言ってみればただの暇つぶしみたいなもんだ。
「うるさい」
キャンキャン犬みたいに騒がしい奴だ。俺はドスを効かせて睨み返した。
険悪になるかと思ったが意外にもハルヒは顔をビクつかせた。
俺の反応が予想外だったのだろう。自分でもそう思う。
だって、普通ならここで「はいはい」と従うのがセオリー、いつものパターン。
ハルヒの表情が親に怒鳴られた子供みたいにしゅんとなる。
俺はと言うと、どういうわけか気分が高揚してきた。主導権がこちらに傾きかけていた。
「……だ、だいたいやる気が感じられないのよ。いつもいつも、ボーッとしちゃって。
ちょっと、キョン? 聞いてるの?」
すぐにハルヒは勢いよく捲し立て反撃に出たが、変化のない俺の表情に気づいたのか
黙り込んでしまった。苦笑を浮かべ、ハルヒに近づく。ハルヒはパイプ椅子に座ったまま動かない。
「いつも考えてたよ」
「……な、なにをよ」
「どうしたら、上手い具合に収まるかをだ」
奇行に走るハルヒ。それを阻止しろと煽る部員三名。
えらい板ばさみだな。普通、こんな面倒な役回りを引き受ける酔狂な奴はいない。
「どうしてだと思う?」
強気で問う。
「…………」
「どうしてだと思う?」
黙殺するハルヒに二度問う。
「……一体、何の話をしてるのよ?」
「俺がお前の命令に従う理由」
「……ふ、ふんっ! あんたがマゾだからでしょ!」
明らかに気負いしながらもどうにかいつもの調子で喋り出す。
まるでいつもの展開に流れを戻そうとする思惑でもあるかのように――しかし、ハルヒの顔から
は焦りが見て取れた。
「違うよ」
「…………」
「お前がいるからだよ」
抑揚なく言ってのけると、ハルヒの表情は途端に豹変した。
恐れているような、戸惑っているような、雑多に混在する感情でごったがえしているように――。
まるで金縛りにでもあったかのように、身動きの取れないハルヒの肩を両手で掴む。
許可なしに口を塞いでしまう。
「……んんん!?」
乱暴に抱擁し、そのまま唾液を流し込んでやる。
さて、そろそろ殴られる頃か。そんな予感を覚悟し、身を離すとハルヒは恍惚とした表情でこちらを見ていた。
うっとりしちゃってるな。
思わぬ展開に悩む。
冗談のつもりだったんだ。悪ノリしすぎた、すまん謝る、助けてくれー。っと、言うつもりだったんだけど、ハルヒは気の抜けた表情で椅子から滑り落ちた。
慌てて支えるとハルヒが耳元で何か呟いた。怒っているわけでもなく、泣いているわけでもなく、何故か
ハルヒは俺に謝った。ごめんなさい、と。
謝られるような覚えはまるでない。いや、あるにはある。
けど、それをハルヒが認めるなんて一体、どういう夢だこれは? ていうか、また夢ですか?
分析中――。
つまり、いいように俺を扱き使うハルヒにも一応、罪悪感はあったんだな。別の感情かもしれないけど。
このまま部室から逃げ出そうとも思うが、無意識のうちにハルヒを逃がさんと両腕で捕まえていた。
ハルヒは逃げも隠れもせず、為すがままに俺の腕の中におさまる。二人で床に座り込む。
後ろから抱きすくめると、香りの良いシャンプーの匂いが鼻を刺激した。
空気が振動する。耳鳴りがする。窓の外で蝉が鳴きだす。
ハルヒの抱き心地はその辺の抱き枕なんて比較にならないほど柔らかく、めちゃくちゃ心が落ち着いた。
やや時間が流れ、よく分からない密着状態の中でハルヒが神妙に呟く。
「……ねえ……するの?」
胸の奥で何かが弾け飛ぶ、音を立てて。これは、同意したと見てよろしいか?
思うが瞬間、ハルヒを床に押し倒していた。
部室のねっとりとした空気の中、制服姿のハルヒが仰向けで寝ている。これだけで、もう現実にはありえない展開なのだが――まさかハルヒの願望が反映しているとか? そんなわけないか。すぐにそう結論付けた。
「……あ……んん! やだ、何してるの?」
パンツの中に顔を潜ませています。隊長、素晴らしい世界が広がっています! 隊長って誰だよ(ノリツッコミ)。
舐めて、吸って、また舐めて、そんな行為を十度繰り返す。
「ん……はぁぁ……ふぁぁぁ!!」
ハルヒの両足が俺の体を固定する。身動きが取れない。けど、俺は行為を続ける。
下着をするっと下ろして足にひっかけたまま、スカートをたくしあげる。
セーラー服の上を剥いでブラジャーを外さず、これもたくしあげる。そして、胸を吸い上げていく。
「だめぇ、そんな……あんっ……はぁぁぁ……ふぁぁっ!!」
おねだりするハルヒが可愛くて唇を何度も愛撫する。
そろそろ頃合いだろうか。
かちゃかちゃとベルトを外す音に、ハルヒがきょとんとした顔で現実的な作業に没頭する生々しい俺の姿を見つめ、ズボンを脱いで出てきたこれまた生々しいモノを見つめ、ぎょっとして顔を逸らす。
免疫なさそー。
入学当初は男子生徒にもてはやされていたハルヒも、今はただの変人女として学校中に認知されているわけで、こんな女に近づく俺はやっぱり、変わってるのかもしれない。
何やってんだろうね、俺は。
ざわつく心を鎮めるためにハルヒの体にむしゃぶりつく。よく分からないがこれでいい。
「いいか?」
「……うん……お願い」
こんな言われちゃやるしかないわけで、
「……くっ……ううううあああぁぁぁぁ!!」
情け容赦なく一気に貫いた。ハルヒは痛いなどとは決して言わないが、滴る赤い液体を見るに――
どう考えても痛いに決まっている。床に赤い鮮血がぽたりと零れ落ちた。
「あっ……あっ……あっ……あっ……あぁぁぁん!!」
一定のリズムで挿入を開始するとハルヒは断続的に喘ぎ、ひとたび強く突けば、泣き叫ぶように声
を上げる。しかし、そのうち徐々に声色にも変化が訪れる。
「……あぁぁぁ!! あん、あん、あん……んあぁぁ!! もっと……強くしていいから」
「なあ、ハルヒ……はぁはぁ……今、誰か来たらどうする?」
「……えっ!? あん!! や、ちょっと……あああぁぁぁぁ!!」
ちょっとした悪戯心に火がつく。
「朝比奈さんが来るかもしれないな。長門なんか、隙間から覗いてんじゃないのか?」
「やだ……やだぁ!! ちょっとキョン、放して……んあああああぁぁぁ!!」
やっと我に返ったのかハルヒが慌てる。
「焦るなって。もうすぐ、イクから」
どうせ、誰も来やしない。ハルヒが来て欲しくないと考えさえすれば、俺としては安全だ。
未だに胡散臭いとは思っているが、ハルヒの願望は高確率で再現される。だから、誰も来ない。この部室には。
「あああああっ!! やだぁ、なんか……来る……なに……これ……んあああっ!!」
「イクのか……?」
「……イク? ……うん、イク……もう、もう私……イク!!」
ハルヒが腰をひくひくと揺らす。俺もハルヒの腰を掴み、出し入れのテンポを上げていく。
フィニッシュに向けて乱暴に体を揺るってモノを奥へ差し込む。
「んあああああっ!! だめ……もう、イクイクイク……イクゥゥゥゥ!!」
搾り取るような収縮。膣が俺のモノを強く締め付ける。
――ドクゥ!! ドクゥ!!
膣で吐き出される精液、やばいと思って抜くが殆ど膣で出していた。
ねばっこい残滓がハルヒのスカートの上にポタリポタリと滴り落ちた。
ハルヒは俺の体を離すまいとしがみ付いてはぁはぁと声を荒げる。
「大丈夫だったか?」
「……死刑」
うげ、なんかいつもの調子に……。
「……あんた、この私に膣出しをしたのよ? そこんとこ、判ってんの?」
声がでかい。隣の部は何部だったっけな。
ハルヒは俺にここまでやられたわけで、もう恐れるものは何もない状態になっているわけで……。
ハルヒは施錠時間になるまで、俺に罵声を浴びせ続けた。
「……あんたは一生、私の奴隷よ」
帰り際にそんな意味深なことを言い残し去っていった。その時のハルヒの表情は、悪意の抜けきった覇気の足りない、だけどちょっと可愛い顔をしていた。
明日、全員が揃った部室であいつが俺にどのような態度で接するか見物だ。
……まあ、どう考えても危ういのは俺の方だが、実は携帯カメラで写真を撮っておいたので脅迫されたらこいつを突き出してやれば問題ないだろう。うあ、俺は鬼畜ゲームの主人公ですか。
何はともあれ、これぐらいじゃあハルヒも部の活動方針を考え直したりしないわな。
逆に、今まで以上の奇行に走る可能性は否定できない。
ま、ハルヒのあんな表情が見れたことだし、いいことにしよう。
いや、いいんだって。
−The End−