「みくるーっ。おっはよーん」  
 手を挙げつつ、今日も元気はつらつオロナミンGぐらいの快活さで笑いながら声をかけた。  
「あ、鶴屋さん」  
 坂を上っていたみくるが振り向いて手を振った。そのまま二人は並びながら学校へ向かう。  
「昨日のあるある見たかいっ? お茶の種類ごとのおいしい淹れ方と健康作用について長々とやってたっさ」  
「うそ。見逃しちゃった。ちゃんとチェックしておけばよかった……」  
「あちゃ。ま、うちで録画してあるから、今度おいでおいで。いっしょに見ようっ」  
 残念そうな顔をするみくるにフォローを入れる。  
「ほんと? 鶴屋さん、ありがと。えっと、次の休みの日におじゃましてもいい?」  
「うん、めがっさいいよっ。ついでに買い物にも行こう。色々セールしてそうだっ」  
「セール? あ、そろそろ春物の季節かあ」  
「ほえ? ちがうよみくるっ。一週間後にあるじゃないかいっ、女の子の一大イベント!」  
 みくるはただ不思議そうな顔をしているだけだった。何も思いつかないらしい。  
「あれあれ? もしかしてほんとに知らないのっ。あははっ。まぁいいや、そのうちわかるっ」  
 談話しているうちに校門が見えてきた。  
 
 そしてつつがなく一日は終わり、放課後になった。  
「それじゃ鶴屋さん、またあしたに」  
「ほいほい、SOS団がんばってきてちょんっ」  
 手をにぎにぎしながら教室から出て行くみくるに、笑顔と手の左右で応える。  
「さてさて、あたしは帰りますかっ」  
 
「印籠だーっ! ははーっ。あっはっは、みんな土下座してるっ」  
「お嬢様、お電話が入っております」  
 こざっぱりした和服を着てテレビに大笑いしてると、使用人が戸を開けて声をかけてきた。  
「ご苦労様っ。えーっと、内線ボタンはこれかっ。もしもしっ、鶴屋です」  
『お忙しいところ済みません――』  
「いや、別にいいっさ。それよりキミがうちに電話するなんてめずらしー。あ、チョコの催促?  
心配しなくてもちゃんとあげるにょろよっ。いっぱいもらえるから心配してないかなっ?」  
『そうだったらいいのですが……いえいえ、チョコのことではありません――』  
「んーっ?……へえーっ……ふむふむ……ほーっ……なるほどっ、わかったにょろ! まかしてっ」  
『それではよろしくおねがいします。くれぐれもこの話はご内密に』  
 切れた子機が手に残った。  
「うーん、明日から面白くなりそうだっ。それにしても最後の言葉……ぷぷっ……  
さっき越後屋が言ったのといっわっはっはっはっは! あーっはっはっはっは。ひーひひお腹がよじれるっ」  
 
「あはははっ。すんげー笑えるこの裏技っ。わっはっは」  
 結局、翌日も学校では特になにもなく、自宅で大笑いしている鶴屋さんだった。  
「測量コーナーだっ。今日はどこの地図を作るんだろ……はれ? お客さん?」  
 インターホンの音に、笑い顔のまま疑問符を頭の上に乗せた。  
「もう、誰だいっ。人がせっかく大好きな伊能家の食卓を見てるのにっ」  
 首をちょろんっと動かして防犯カメラのモニターを見る。  
「あれあれっ。みくるとキョンくんだ。めっずらし」  
 さっと立ち上がると戸を開け、下駄をはいて玄関へ向かった。  
 そして玄関に着くと、かんぬきに手をかけながら声を向こうへ放った。  
「ちょい、待つっさ!」  
 
「こんばんはっ、みちるさん」  
「こ、こんばんは。よ、よろしくお願いします、えーっと、つ、鶴屋さん」  
 キョンはじきに帰り、みちると二人で離れに残った。  
「あははっ。その反応、お姉さんのみくるにそっくりだっ。最初会ったときまんま。さすが双子っさ」  
「ええっ、そ、そうだったっけ……じゃない、そ、そうなんですか」  
 最初キョンとともにいたのはみくるだと思っていたが、実はみくるの妹のみちるだった。  
 しばらく預ってもらえないかとキョンに乞われ、快諾した鶴屋さんは、みちるの返事に笑いながら、  
「そんなに緊張しなくてもいいよっ。みくるとあたしは大の親友なのさっ。お姉さんのことで  
なにか聞きたいことがあったら、なんでもいってちょんっ。ところでごはんは食べたかい?」  
「え、はい、ありが、あ、いえ、まだ、です」  
「よしっ、それならごはんを食べようっ! そのあとでいっしょにお風呂!」  
 
「入るよーっ、いいかい?」  
「ど、どうぞ……」  
 鶴屋家だけあって、銭湯のような広々とした浴室だった。  
「いやーっ、やっぱ裸と裸のつきあいがいちばんだっ。みちるさんもそう思わないかいっ?」  
「はい……ってつ、鶴屋さん、せめてタオ」  
「そういうわけで、これは没収っ!」  
 同意しながら振り向いたみちるが見たのは、前も隠さず堂々と入ってきた鶴屋さんだった。  
 有無を言わせず、みちるが手にしていたタオルも奪い取り、みちるの横に座る。胸を見て、  
「うーん、大きいっ! みくるに勝るとも劣らないねっ。ヒケツでもあるの?」  
「え? いえ、特になにも……それに大きくてもわたしみたいな小柄な体型には合いませんし……」  
「そんなことないよないっ。ハルにゃん……あ、みくるのいる部活の団長さんなんだけど、  
そのハルにゃんがね、『あたしももうちょっと巨乳でロリなら』なんて言ってたんだよっ。  
たぶんねっ、誰かさんの視線をよく独り占めしてるみくるがちょっとうらやましいんじゃないかなっ」  
「うそ。そんなことを涼宮さんが言ってたんですか?」  
「うん、だからさっ。みちるさんも気にすることないよっ。むしろもっと大きくしようっ」  
 そう言いながら、唐突にみちるの両胸をわしっとつかんだ。  
「わっ、鶴屋さ……ふわっ、くすぐった、わふっ、やめっ、直はほんとに……感じてあぶな」  
「わははっ、みくるもハルにゃんに耳はむはむされたり色々されたそうだよっ。みちるも  
慣れとかないとねっ。なんならあたしのも揉んでくれっ。あたしももう少し大きくなりたいっ」  
「あふっ、そ、そう、わたしはいまみちるなんだった……も、揉んであげますっ」  
 なにに思い当たったのか、吹っ切れたようにみちるも手を伸ばして鶴屋さんのを揉み始めた。  
「んっ、こそばっゆいっ。しっかし……これだけ大きいと……ん……肩凝りそうだねっ」  
 お互いに両腕を出して揉み合うのは無理なので、自然と片方ずつ手を出している。  
「それは……ひんっ……悩みの種です……寝るときも……あんっ……圧迫感が……」  
「大きいのも……あはっ……それはそれで……ふぅ……大変なんだねっ……んんっ」  
 とりとめのない会話をしながらしばらく揉み合っていたが、  
「つ、鶴屋さん……あたしもう……」  
 上気しきった顔で、みちるがか細い声をあげた。瞳も心なしかいつもと色合いが違う。  
「あっ……あははっ。やりすぎちゃったかなあ? 背中流しっこしてお風呂入ってあがろっ」  
「えっ?」  
 目をぱちくり。意外そうな声をあげた。  
「なにが『えっ?』なんだいっ、みーちーるー?」  
「い、いえ……」  
「布団は離れに敷いてあるよっ。誰もきやしないから、火照りをさましたいのならごゆっくりーんっ。んふふっ」  
 いつもよりちょっと含みのある笑い声とともに、鶴屋さんの手が胸からシャンプーに移った。  
「……鶴屋さんの、いじわる……」  
 
「おっはよーん」  
「あ、鶴屋さん。おはよう」  
 教室の戸を開けて、みくるに元気良くあいさつした鶴屋さんは、そこでなぜか  
しげしげとみくるの顔を見つめた。  
「? 鶴屋さん、あたしの顔になにかついてる?」  
「うん、ごはんつぶついてるよっ、ほらっ」  
 言いながら、みくるの唇近くを指でなで、その指をぱくっとくわえた。  
「ひゃっ。もうっ、言ってくれるだけでいいのに」  
「あっはっはっ、ごっめーん。次からはちゃんとそうするっさ」  
 舌をペロリと出す鶴屋さんに、みくるは思案気な顔になる。  
「……あれ? あたし今日の朝食パンだったような……」  
「じゃ、パンくずだったのかもっ……むぐむぐ。これはパンの味だっ。間違いないっ!」  
「うう、パンくずつけながら登校してたなんて、恥ずかし……」  
 顔を赤らめてうつむくみくるの肩をポンと叩いて、  
「気にすることはないよっ! みくるなら絵になるっ!」  
 自信満タンでフォローなのかよく分からないようなことを言った。  
 
「むむう。どこだっ。出てこいこい」  
 家に帰ってから、ごそごそ蔵をあさる鶴屋さんがそこにいた。  
 使用人に聞いたところ、みちるはキョンとどこかへ出かけたらしい。  
 その間に、頼まれてたことをしている最中だった。  
「そこだっ。あんたはもう包囲されてるっさ!」  
 腕を伸ばす。手がつかんだのは古ぼけた葛篭だった。フタをかぱっと開ける。  
「ありゃっ。ぼろっちぃ紙切れだけか。これじゃないないばーだよっ。む?」  
 紙切れをつまみあげてしげしげと眺める。  
「むうう。ひょっとしてこれも? そういやハルにゃんとの約束があったなぁ、えいっ」  
 無造作に紙を袖に放り込み  
「さてさて、隠れてないでさささっと出てきたほうが身のためだよっ」  
 再びあさり始めた。  
 
「みちる、今日は大変だったみたいだねっ」  
「いえ、そうでも……」  
 蔵あさりからしばらくして、みちるがキョンといっしょに帰ってきた。  
 途中から雨に変わったらしく、少し濡れた格好の二人だった。  
「キョンくん残念だったなぁ。みちるもそう思わないかいっ? いっしょにお風呂入るの」  
「ふえっ? い、いえ、さすがに男の人と混浴は……」  
「あはははっ、冗談冗談っ。キョンくんだってちゃんと分かってくれてたよ?」  
 少し土っぽくなってた二人に、鶴屋さんは混浴風呂を申し出たが、キョンは固辞した。  
 そのまま帰りそうなキョンに、蔵あさりで見つけた巻物を押し付け、傘を貸し見送ったのが  
ついさっきで、今は屋敷へと歩みを進めているところだった。  
「でも、キョンくんっていい男だよねっ?」  
「え……はい。みくる……お姉さん、に声をかけられなくて困ってたわたしの面倒を見てくれましたし」  
「ひょっとして惚れたっ?」  
 ぶしつけな質問をぶつける。みちるは戸惑ったのか、恥ずかしいのか、もごもご口の中で反芻する。  
「えっ?……この時代……でもいまわたしはみちるで……別に問題ないし……」  
「どした、みちる?」  
「い、いえっ、別になにも。うん、少し、いえかなり気になります。こんなに親切にされたの始めてです」  
「ふふふうん? ならお姉さんの親友としては、応援してやらないとねっ! みくるもキョンくんのこと  
気にいってると思うんだけど、あの子奥手だからっ。バレンタインデーすら知らないのはどうしようもないっ!」  
「あっ……そ、そうですね。さすがにバレンタインデーを知らないなんて」  
「そう思うよねっ? みちるはみくるより、だいぶお姉さんっさ」  
 なぜかみちるは慌てたように、  
「わわっ、そ、そんなことないですよう。わたしは妹です、妹」  
「? まあいいや、お風呂お風呂っと。それからごはんだっ!」  
 
「ごちそうさまっ!」  
「……ごちそうさまでした」  
 お風呂に入ったあと、いい旅夢心地を見ながらごはんを食べ終えた。  
 なぜかみちるは、不満そうな、物欲しげな顔をしたまま箸を置いた。  
 鶴屋さんは、それには全然気付かない様子で、  
「それじゃみちるっ、いい夢を見るんだよっ。あたしはもう寝るっさ」  
 さっさと自分の部屋へと引っ込んだ。  
「……」  
「……また揉んでくれても良かったのに……」  
 
 
「あ、ハルにゃん?」  
 自室に入った鶴屋さんは、携帯でハルヒに電話をかけていた。  
「うん、ごめんよこんな遅くにっ。それでさ、だいぶ前にハルにゃん言ってたしょ?  
宝の地図があったら欲しいーって」  
 電話の向こう側のトーンが急に上がった。  
「そそそっ。なんと今日、蔵をあさってたらみっかっちゃったっ。うちのご先祖さまのっ」  
 さらに2オクターブぐらい上がった。  
「あはははっ。それでハルにゃんに教えようと思ったら、偶然、うちの前をキョンくんが通ってさ。  
シャミの散歩中だったみたいだけど、ついでによろしくしちゃったっ。明日キョンくんからもらってちょんっ」  
 急にトーンが下がってぶーぶー言い出した。  
「わははっ、ごめんよう。それじゃまた明日ーっ。ん? なになにっ?」  
 言うだけ言って切ろうとした鶴屋さんに、向こうから声がかかる。  
「……なるるっ、ほいさ。それじゃ明日、放課後おじゃまさせてもらうねっ。ばいばーい」  
 
 
「やっほーい! 来たよんっ。入っていいかーいっ?」  
 放課後。SOS団の部室のドアをノックしながら、鶴屋さんが声を上げた。  
「待ってたわ。どうぞどうぞ。どんどん入っちゃって!」  
 珍しく、ハルヒがドアを自ら開いて招き入れる。  
「やあ、みくる以外のみんな! 久しぶりねい。ああっ、キョンくんは昨日会ったっけね?  
シャミいいなあシャミ、またつれて来ておくれよ!」  
 
「そだっ。みくる、明日買い物できなくなっちゃったねっ」  
 宝探し特別ミーティングが終わったあとの下校中、ハルヒとともに先陣を切っていた  
鶴屋さんが後ろを振り返り、みくるに声をかけた。  
「あっ、そうでした。ごめんなさい鶴屋さん。あるあるも見せてもらう約束だったのに」  
 SOS団とともにいるせいか、みくるの口調は二人きりのときより固い。  
「みくるちゃんと鶴屋さん、遊ぶ約束してたの?」  
 横にいるハルヒが会話に加わってくる。  
「うん、実はそうだったんだよねっ。でもさ、みくるっ。気にしなくていいよ。あたしも  
ひょっこり用事を忘れれてさっ。この宝探しがなかったら、謝ってたのはあたしのほうだったからっ」  
「そうなんですか。セールって、明日じゃなくても間に合います?」  
「セール? なにそれ」  
 ハルヒが疑問符を浮かべた。  
「ハルにゃん、そりゃもちろんバレンタ」  
「鶴屋さん! わかった、わかったからその先は言わないで、お願いっ!」  
 いきなり大声を上げたハルヒに注目が集まる。ハルヒはやや気まずそうに、  
「な、なんでもないの。ただちょっと、今あまり耳に入れたくない言葉だったから」  
「ふふーん? ハルにゃんにそんなものがあるなんてねーっ?」  
 わざとちらちらハルヒとキョンを交互に見たりする鶴屋さん。古泉にもちらっとついでに目線を送る。  
「つ、鶴屋さん! もういいでしょ、この話はおしまい!」  
 強引に打ち切って、ハルヒは歩くというより走ると呼んだほうがいいような速度で坂を下り始めた。  
 
 
 家に着いたと思ったらインターホンが鳴った。鶴屋さんはかばんだけ放って、玄関へ戻る。  
「来ると思ったよっ」  
 さっき別れたキョンがそこに立っていた。手招きして、離れへ案内しながら、  
「で、どうなんだい? あのみちるちゃんは、いつまでうちの座敷わらしをやっててくれるんだい?」  
「そいつはちょっとまだ解りませんね。ですが、あと数日でいいはずですよ」  
 キョンが答える。それでいいかどうか、返答を待っている感じだ。  
「あたしだったらいつまでも置いときたいからいいよっ。いやぁもう可愛い可愛い! 同じ家にいると  
学校じゃ解らなかったみくる……じゃなかったね、あの娘の可愛さを新しく十二個ぐらい  
発見しちゃったさ! 抱いて眠りたいくらいだねっ」  
「……まさかやってんじゃないでしょうね、そんな羨ましいことを」  
「いんやっ。一緒なのはお風呂くらいさ。みちる、何か言おうとするたびに、これ言って  
いいのかなって悩む顔するんだよ。それがまた大層可愛いんだけどっ。ちょっと  
かわいそうでもあるね。気にしなくてもいいのにさっ」  
 
「あ、キョンくん……」  
 離れにいたみちるは、キョンの姿をとらえると、安堵の溜息をついた。  
「鶴屋さん、すみませんが俺と朝比奈――みちるさんと二人にしてもらえませんか。すぐすみますんで」  
「ふふふううん?」  
 それを聞いた鶴屋さんは面白そうに、  
「二人っきりに? この狭い部屋でっ? いいけどねっ」  
 含み笑いをしたあと、みちるに近寄って耳打ちをする。  
「みちる、チャンスだよっ。前にも言ったけど、離れには誰もきやしないからっ。コクるんだっ。  
お姉さんがどうとか今は考えちゃいけないよっ。みちるは朝比奈みちるなんだからっ」  
「ええっ!?」  
 驚くみちる。なにごともなかったように鶴屋さんは立ち上がると、  
「じゃあ、あたしは着替えてくるよ。うふふふん? ごゆっくり〜ん」  
 にやけ加減の笑いとともに、ふすまを閉めた。  
 
 
「やぁやぁっ。ずいぶんゆっくりだったね! ほんとにキョンくんっ、なんかしてたんじゃないだろうねぇっ」  
 普段着に着替えた鶴屋さんがニコニコ顔で離れの戸口で待っていた。  
 キョンは頭は別のところに行っているらしく、生返事をするばかり。  
 みちるは恥ずかしいのか顔をうつむいていた。そのままキョンは自宅へ戻っていった。  
 
 キョンが見えなくなったのを見計らって、  
「さぁさぁっ。どうだったみちるっ? あははっ、ここまでお膳立てしたんだからもちろ……」  
「う……うう、うっ。ぐすっ、ひっく……」  
 成果を聞こうとした鶴屋さんが見たのは、顔を覆って泣きじゃくるみちるだった。  
「みちるっ?」  
「ごめんなさい、鶴屋さん……うっ……ダメなんです……言っちゃダメなんです……  
あたしだって言えるのなら言いたい……ぐす……でも、ダメなんです……禁則事項が  
禁則事項になって禁則事項で、禁則事項をすると、禁則事項が禁則事項になって……  
ひっく、うっ……キョンくん……キョンくん……キョンくん……うう……ぐすっ……」  
「みちる……」  
 言っている内容はよく分からないが、鶴屋さんは後悔の念に襲われた。  
「ごめんよう、みちる。あたしが軽く考えたばっかりに」  
「いえ……鶴屋さんが悪いんじゃないです……ひっく、むしろ、あたしが悪いんです」  
「そんなこと――」  
「そうなんです! あたしにもっと知る権限があれば……あのときも、あのときも……」  
「……」  
「ごめんなさい、鶴屋さん。なにを言っているのか解りませんよね。ごめんなさい」  
「みちるがそんなにあやまることじゃないよっ! みちるはやれることはやってる!  
みちるのやれないことを押し付けるほうだって、責任はあるんだよっ」  
「鶴屋さん……?」  
「あたしにもみちるの苦しみを分けさせておくれっ。それが親友だよっ!」  
「鶴屋さん……」  
 みちるは涙を拭いて、鶴屋さんを見上げる。  
「鶴屋さん、それじゃ、一つ頼んでもいいですか?」  
「なんだいっ?」  
「キョンくんへの想いを……この任務の間だけでもいいので、忘れさせてください」  
 
 
「……みちる、始めるよっ?」  
 全裸になった二人は、浴室で向かい合っていた。  
「お願いします……んっ……」  
 唇と唇を合わせる。その隙に鶴屋さんの手は胸をおさめ、揉みしだく。  
「んっ、んんっ……あふっ、ひゃっ」  
「ぷはっ、感じるの早すぎじゃないかいっ、みちるぅ?」  
「だって……鶴屋さんがさんざん焦らすんですもの……」  
 いつもの鶴屋調が戻った鶴屋さんに、みちるが口を尖らせてすねてみせる。  
「あははっ。かわいいなあ、みちるはっ。かわいい子にはおしおきっ!」  
「えっ?……わふっ、ひぁ」  
 みちるの豊満な胸にかぶりつく。耳を甘噛みするように軽くついばんでいく。  
「つ、鶴屋さん……あんっ、それはきつすぎ……ひぅっ」  
「ちゅっ、ちゅっ、はむはむっ。ん? なんだいっ。よく聞こえないなぁっ」  
「はぁっ、ふぇっ、い、いじわるっ……」  
「うふふふん? そう、実は鶴にゃんはいじわるなのさっ。だからこんなことも……」  
 言いながら、手をさらに下へと這わせる。  
「っ!」  
 みちるの体がビクッと敏感に反応する。すっと指を滑りこませる。  
「うわっ、しとどに濡れてるっさ。みちるはエロいなぁっ」  
「はっ、はっ、はぁっ……い、言わないで……お願い」  
 涙を浮かべて甘い声で抗議する。鶴屋さんは舌でぺろんっと涙をすくいとって、  
「そんなことを言うのはこの口かいっ?」  
 と指を出し入れする。  
「ひぁっ、ち、ちがっ、そっちはしゃべれ、あふぅ」  
「こっひもついへひっ、んっ……んん……じゅるっ」  
 唇を再びふさいで、舌をからませ、唾液を交換し合う。  
「んんっ!……んふぅ……んっ……はぁ……はぁ……」  
 みちるの目は潤み、焦点もぼやけた感じであえぎ声が目立ってきた。  
「はぁ……鶴屋さん、あたしもう……」  
「……んっ。ならっ、これで、いっちゃうっさ!」  
 右手で左胸の乳房をつねり、口は右胸に吸い付き、左手でつまみあげた。  
「っ、ぁあんっ!」  
 体をびくんっと大きくしならせ、みちるは崩れ落ちた。  
 
「ふぅっ……はぁ……んっ」  
 鶴屋さんも荒い息をついていた。しばらくして、みちるが身を起こす。  
「はぁ……はぁ……鶴屋さん、どうもありがとう」  
「どう?……忘れられそうかいっ?」  
「ええ……たぶん……でも」  
「でも?」  
「……あたしだけイクのはずるいでしょ?」  
「えっ? いや、あたしは別にいかなくてもいいかなって」  
「そうは問屋が卸しませんっ!」  
「わーっ、みちるがSになったーっ!」  
 

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