どうでもいいような話だが、基本的に男ってのは胸は大きい方がいいと思っている奴が多い。  
かくいう俺も、どちらかといえば無いよりはあったほうがいいと思っている。  
朝比奈さんがお茶を渡してくれるときに、揺れる胸に思わず視線が行ってしまったり、ハルヒがバニーガール姿になったとき、意外とグラマーだったことに少しドキリとしてしまうのは、もはや必然というかどうしようもないことだ。  
さて、ここで面白くない奴が出る。  
誰かって?そりゃ、残る一人に決まってるだろう。  
そう。宇宙人にして、SOS団の万能選手、長門有希である。  
長門は基本的に、大食らいのくせに細い。  
食べたものは一体どこに行っているのだろうかと思えるほどだ。  
俺の推測だが、きっと長門の中には宇宙へつながるブラックホールでも開いているのだろう。  
と、まあそれはいいとして、とにかく細いわけだ。  
つまり、胸は無いわけではないが、無いのである。  
ハルヒのを見たわけではないが、たぶん2カップぐらいは差があるだろう。  
朝比奈さんに至っては、見たこと無いが3、4カップは違いそうだ。  
さて、ここで頭がいい、もしくは注意力がある奴は気がつくだろう。  
俺は『ハルヒ』と『朝比奈さん』のは見たことがないと言った。  
じゃあ、長門は?  
結論から言うと、見たことがある。というか、今回はそれについて話すつもりだからな。  
 
 
あれは、数日前。珍しくハルヒが用事があるとか何とか言って、部室によらずに帰った日だった。  
ハルヒがいなくとも俺の足はいつもの元・文芸部室およびSOS団部室へ向かってしまう。  
まあハルヒがいない方が、静かでいいしな。たまにはこんな日もいいだろう。  
ハルヒに怒鳴られることなく、俺の癒しの女神である朝比奈さんをゆっくり眺められる。  
そんな楽しみを胸に、俺はドアをノックする。  
しかし、あの天使のような返事がない。  
部室を開けた先にいたのは、本を黙々と読む長門だけだった。  
「よぉ、長門。まだ朝比奈さんは来てないのか?」  
小泉はどうでもいい。ってか聞く気にもならないね。  
「朝比奈みくるは、今日は買い出し。」  
……とおっしゃいますと?  
「お茶の葉がきれてるから買いに行くと言っていた。よって今日は来ない。」  
ああ。さいですか。  
お茶なんていいですよ。あなたさえいてくだされば。  
そうとでも言いたかったが、もう時すでに遅しだ。  
仕方がない、小泉でも待ってチェスでもやるか。  
「小泉一樹も、今日は帰った。」  
……そうですか。  
ってことは、今日は俺とお前だけなのか?  
「そういうことになる。」  
「そうか……」  
とりあえず椅子に座る。くそ、どいつもこいつも今日はいないのかよ。  
本当に仕方が無く、一人チェスをやっていたが、数分もしないうちに飽きた。  
ボーッとなんとなく長門を眺める。  
ん?今日は分厚いハードカバーじゃないのか。  
長門の読んでいる本は普通のサイズで、黒いカバーがかけてあった。  
何となく興味を引く。  
「何読んでるんだ?」  
俺が聞くと、長門はその本を俺に差し出してきた。  
その長門の目が少し潤んでいるような……気のせいか?  
だが、その本を読むうちに、それが見間違いではなかったと知る。  
はっきり言おう。それは官能小説だった。  
 
「な……長門、なんでこんなものを……?」  
「人間の心理を知る上では役に立つ。」  
「だからといって、こんな本を読むか?」  
首肯。マジか。  
「……と、とにかく。こういうのは読んではいかん。特に18歳未満は禁止だ。」  
まあ、俺のような健全な男子は守りゃしてないがな。  
谷口や国木田と、エロ本を学校で隠れ見たことだってある。  
だが、さすがに女子、特に長門のようなのが見てるとなれば話は別だろう。  
しかし、事態は思っていた以上にすごい方向へと飛んでいってしまったのだ。  
「人間の男は、女の胸に欲情するとある。その効果は大きい方が、多い。」  
「……?」  
驚く俺の前で、長門はさらに驚くような行動に出た。  
布擦れの音が、夕方の部室に響く。  
ちなみに発生源は長門。  
ようするに長門は服を脱ぎだし、上半身裸になったわけだ。  
「っ!!」  
あまりにも唐突で予想外の行動だったため、少しの間固まってしまった。  
だが見るわけにもいかず、とっさに後ろを向く。  
……ホントはその慎ましい二つの丘を見てしまったけどな。  
「長門っ!!その……服を脱ぐなっ……!」  
目のやり場に困る。ってか誰かに見つかったらマジでヤバい。  
「それなら大丈夫。情報を改変した。」  
その言葉にドアを見る。……いつぞやのようにドアは無かった。  
ということは、もしかして俺、閉じこめられた?  
「……見ないの?」  
いや、見ないの?とか言われてもな、一応ほら学校だし、モラルとか色々問題が……  
それ以前に、俺が耐えられそうにない。  
さっきの官能小説の内容といい、一瞬見てしまった胸といい、俺のそこはもう堅くなってしまってるんだ。  
とにかく、どうにかしてここから脱出しようと動こうとしたが……  
 
あれ?  
動けないぞ?  
……どうやら、俺まで情報が改変された様子で。  
マジか。おいしい展開……もといヤバいぞ、これは。  
そう思ってる間にもほら、長門は前に回り込んできた。  
くそ、潤んでる目が色っぽくてそそる。  
その瞳から下、慎ましくそこにある乳房。  
まぶしいくらいの白に、思わず貪りたくなるような淡いピンク色の突起。  
小さくたってあまり気にならないほど、長門の胸は魅力的だった。  
ズボンの中が、一段と窮屈になる。マジでヤバい。  
「長門、頼むから服を着てくれ……」  
必死で目をそらそうとする俺をどうとらえたか、長門が悲しそうな声色で言う。  
「……欲情、しない?」  
いや、そういう問題以前にな。  
「……やはり小さい胸ではダメ?」  
いえ、そんなことはありませんが……って長門!?  
何かをつぶやいていると気がついたときには、遅かった。  
長門の胸が大きくなっていく。  
そしてハルヒよりやや劣る程度のところで、成長は止まった。  
「情報改変。脂肪分を胸に集めた。」  
ああ、長門。俺の声は今、お前には届いていないんだな?  
もうズボンも限界だぞ?  
その思いが伝わったのかどうかは知らないが、長門は俺のズボンを下げた。  
そして大きくしたその胸の間に、俺のモノを挟んで……  
「ううっ!」  
その柔らかさに、思わず意識が飛びかけたね。  
これは何ですか?パイズリってやつですか。  
さっきの小説の中にもあったなあ。これ。  
その文章を忠実に再現するかのように、長門は動く。  
寄せてあげた胸を擦りつけるようにし、時々亀頭をペロリと舐める。  
ちょ、待て長門!マジで出そうだって……  
「平気。出して。」  
長門の動きが速くなる。揺れる胸と長門のほのかに赤くなった顔。  
軽く咥えられて、ちゅうと吸われたとき、長門と目があった。  
上目遣いで、のぞき込む黒。  
その瞬間、俺は白濁とした欲望を吐き出した。  
 
白く染まった顔と胸。  
う、これはこれでかなりそそられる。  
だけどな。  
「長門よ。こういっちゃなんだが、お前は前のままがいいと思うぞ?」  
決して俺は貧乳萌えってわけではない。  
だが、今の長門は少々違和感がある。  
「……でも、大きな胸の方がいい?」  
悲しそうに聞く長門。というか、何故俺にそんなことを聞く?  
「……わからない。ただ。」  
ただ?  
「……あなたに喜んでもらいたかったから。」  
……はい?  
「よくわからない。だけど、今の私の感情に近いものとして恋があげられた。」  
つーとなんだ?これは告白か?  
「恋。あなたに好かれたいと思う気持ち。喜んでもらいたいと思う気持ち。」  
つまりは、俺の好みにあわせようとしたわけか。  
う〜ん。素直に喜んでいいのかどうか。  
なんかここまで調子がいいと疑いたくなるのは、誰かさんのせいだ。  
「長門。だけど、俺はそのままでいいと思う。自然成長が一番いい。」  
そんな裏技じみた豊乳よりも、自然成長が一番だ。  
何なら俺が揉んで育ててやってもいいぞ?とはさすがに言えなかったが。  
しかし、長門は俺の心でも読めたのだろうか?大きくした胸を元に戻すと  
「……あなたの手に期待する。」  
と言った。どうしようかね?ホント。  
 
 
 
 
次の日。  
「ねえ、キョン。なんか部室が変なにおいなんだけど、あんた何か悪いことでもしなかったでしょうねぇ?」  
おかしい。消臭剤はまいておいたぞ?  
 
 
 
終わり  
 
 

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