……とまぁこうやって目玉焼きは作るんだ。わかったか長門。
「わかった」
さて、長門は目玉焼きに何かかけるか? モノによっちゃ塩をひかえるが。
「この料理ガイドに載っている調味料で味付けを頼みたい。最高だと書いてある」
ほう、何だか気になるな。言ってみろ。
「──あなたの、愛情を」
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「キョンくん。これは喩え話なんですけれど……もし自分が過去に行って自分の時代じゃ絶滅していたり、
天然記念物扱いになっているような、図鑑とか動物管理施設でしか見る事が出来ないような生物の成体と
その卵を使用した料理を出されたとしたら、キョンくんはどうしますか?」
俺が自信を以て人に振る舞える数少ないレパートリーの一つ、親子丼を前に朝比奈さんは遠い目をしながら聞いてきた。
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「まさか僕まであなたの手料理のご相伴にあずかれるとは思ってもいませんでした」
奇遇だな、俺も全く以て同じ考えだ。
「それで今日は何を作って戴けるのでしょうか」
えっと、ハルヒから言われたレシピによると『豚肉と馬鈴薯の芽の炒物』らしいな。
「……すいません、もう一度お願いします」
『豚肉と馬鈴薯の芽の炒物』だ。……なあ古泉、お前何やらかしたんだ?
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で、やっぱり最後はお前なのか。
「当然でしょ。アレキュイジーヌ! さあキョン、張り切ってじゃんじゃん作るのよ!
何だったら満族、漢族の料理の集大成でもあたしは構わないわ!」
そんな満漢全席が作れるならこんな所で高校生なんぞやらずに大衆食堂で光るカツ丼でも作ってる。
俺は溜息をつきながらも鍋に水を入れて火にかけだした。
「……それで何で味噌汁なのよ。もしかしてあたしだからって手を抜いた訳?」
バカ野郎、ちゃんとダシを取るところから作った大作だぞ。文句言うなら飲んでから言え。
「まぁいいわ……あ、本当に美味しい。へぇー、意外」
意外じゃない、当たり前だ。……しかし何だ、ハルヒから褒められると言うのもこれはこれで悪くないな。
こんなんでいいならまた作ってやるぜ。
「毎日でも?」
いくらなんでも欲張り過ぎだ。ま、また気が向いたらな。
「……バカ」