時として「状況説明を必要としない状況」と云うものがある事を皆にも理解  
してもらえたら嬉しく思う。どうして、なぜ? 5W1H、そんなものは些末  
な問題に過ぎないし、知っても意味が無い。今、意味があるとしたらそれはこ  
れからの行為の方であって、例えば俺がこのシーンに遭遇するまでにそれはそ  
れは恥ずかしい行動や言動をどれほどとっていたとしても諸君には一切関係無  
い事であり、それを事細かに説明していては話が長くなる一方であるばかりか  
些か興醒めしてしまうに違いない。例えばここに饅頭があったとする、別にパ  
エリヤだろうが満漢全席だろうがなんだっていい。とにかくそれを食ったら美  
味い、要はその結果だけがあればいいのだ。途中の工程でどれほどの鉄人やパ  
ティシエが腕を揮い技巧を凝らそうともそれ自体には特に興味は無い、そんな  
もんだ。  
 だから俺はサクサクと話を進める事にする、こんな恥さらしな内容の話なん  
てさっさと終わらせてしまいたいんでね。  
 
 どうしても知りたいヤツは後で俺のところに来い。  
 
 宇宙が腸捻転になったような事態を長門や古泉たちに知らされたその日、俺  
は相当のショックを受けて帰宅したのだがそれはまあなんだかんだあって自己  
完結したりハルヒによる外部情報でどうにか補い、時刻が11時に近づく頃に  
は寝室で長門から借り受けたハードカバーの小説を読みながらまったりと過ご  
していた。そろそろ日課となりつつあるこの就寝前の読書は俺にとって数少な  
い心休まるひと時となっていて、この時間帯に読破した本は既に5冊を数えて  
いる。この本ももう半ばまで読み進めていてようやく面白さが判り始めた頃合  
いであり、活字離れだと自覚している俺にとってはかなりの進歩と言えるだろ  
う。ハルヒと共に過ごす時間も決して悪くは無いのだが、それなりの疲労が  
伴ってしまうのはどうしても否めないからな。  
 
「なんか言った?」  
「何も言ってないぞ?」  
 
 と、そのハルヒが寝室に戻ってきた。さっきまで俺の横でファッション誌な  
んぞ眺めていたのだがトイレにでも行ってきたのだろう。ハルヒは目覚ましの  
タイマーが規定時刻にセットしてある事を確認すると、掛け布団を乱雑に跳ね  
上げてもぞもぞとベッドに潜り込んできた。  
 
「もう少し詰めなさいよ」  
 
 リクエストに生返事をして俺は少しだけスペースを空けてやる。ハルヒはそ  
れで十分だったのかそれ以上文句を寄越す事はなく、黙って布団に包まった。ど  
うやらハルヒはもう寝る気らしい。  
 俺は頭元の時計に目を遣る。  
 
 もう11時を回っていた。明日も学校があるのだし、そろそろ寝た方がいい  
だろう。  
 
「消すぞ」  
「ん」  
 
 小説に栞を挿み、ベッド脇のミニテーブルに置いた。リモコンを操作して照  
明を落とすと当たり前だが寝室は闇に包まれる。  
 
 ああ、今日は色々あったなお疲れ様俺。これから後何年生きるか知らんが無  
事平穏な一日なんてきっと俺には巡って来ないだろうからせめて夢の中くらい  
は平和でありますように。おやすみなさい…………  
 
 目蓋を閉じて羊でも数えようかと考えた矢先、脇腹を突付かれた。  
 
「ん、どうした?」  
「…………」  
 
 返事が無い、ただの屍のようだ。  
 暫く待ってみても何の反応も見せない。俺は訝しんだが偶然手が触れたのか  
気まぐれに悪戯してみたのだろうと思い、再び目を閉じた。  
 
 が、また指先で突付いてくる。  
 
「なんなんだよ?」  
 
 少々苛立ちが言葉に乗ってしまったかも知れない。俺は頭をもたげてハルヒ  
に顔を向け、暗闇で目が合った。  
 
「どうしたんだ?」  
「…………」  
 
 ハルヒの柳眉が寄り、唇を尖らせる。そして、機嫌を損ねたように背中を向  
けてしまった。  
 
 …………あー、これは気付きませんで。失敬。  
 
「ハルヒ」  
 
 俺はハルヒの二の腕に手を遣る。  
 
「もう知らない!」  
「そんなに剥れるなよ」  
「剥れてないわよ!」  
 
 ハルヒは肩を揺らして俺の手を払おうとしてみせるが、明らかに素振りだけ  
のもので本気じゃない。  
 
「悪かったよ」  
 
 俺はハルヒの臀部に掌を押し付けた。「あっ」と云う小さな声と共に身体を  
跳ねさせたその隙を見逃さず、俺はハルヒの首筋へと顔を埋める。  
 
「んっ! や……」  
 
 恐らく反射的にだろう、ハルヒは身を竦めた。ハルヒの馬鹿力はこんな時に  
でも…… いや、こんな時だからこそ加減をできずにその細い肩で俺の顔を挟  
みつける。多少の息苦しさは感じたが構わず、ハルヒの肌に舌先を触れてい  
た。  
 
「や、あっああっ!」  
 
 ハルヒの身体が徐々に弛緩する。俺はハルヒの腰に廻した右手で仰向けに導  
き、その右手で、パジャマのボタンを下から順に解いていく。その間にも舌を  
這わせ続け、白い項を通り過ぎたどり着いた喉元からは、既に甘い吐息が漏れ  
始めていた。  
 
「はぁ、あっ、あぁ……っ」  
 
 手探りでも戸惑い無くボタンを外し終え、胸元を肌蹴る。薄闇の中で色まで  
は判らないが最近になって小洒落た下着を着け始めたハルヒの双房が露にな  
り、俺はレースの淵を指で辿った。  
 
「んんんっ!」  
 
 舌先は小さな顎の稜線を越える。唇の色素のぎりぎりを俺の舌が這い、ハル  
ヒはもどかしそうに唇を震わせながら、切な気な左手が俺の胸板を弄ってい  
た。  
 
「バカ…… キョンっ」  
「ん?」  
 
 潤んだ瞳が俺を睨む。  
 
「どうした?」  
「こんな事していいなんて、あっ! い、言ってな…… ああっ!」  
 
 意地っ張りなヤツだな、まだそんな事言ってるのか。そんな上気した顔で  
言っても説得力なんてないぞ?  
 
「バカ……っ!」  
 
 頂点に達した俺の指先がハルヒの先端を捉えて、下着の布地越しでも分か  
るくらいはっきりとした硬さを指の腹で撫で、ハルヒの反応を窺う。  
 
「はあっ! あ、あっ!」  
 
 相変わらず感度のいいハルヒの身体は既に出来上がっているだろう。だが、  
それを確かめてやるのはもう少し後だ。その方が、ハルヒは身体も、そして  
心も素直になる。  
 
「きゃ! あ……」  
 
 俺はハルヒの肩に手を廻し、抱き寄せた。ハルヒの顔がすぐ目の前にある。  
 
「キョン……」  
 
 ハルヒは目を伏せた。  
 この時俺はハルヒの背中に伸ばした手でブラのホックを外しながら、考えて  
いた。  
 
 ―― キスをしてしまったら 何もかも終わってしまうかも知れない  
 
 もしも、もしもそんな事になったらどうすればいいんだ。全てが無かった  
事になったとして、俺たちはまた、やり直せるのか。  
 
 俺の気持ちは? ハルヒの心は? どこに向かっていくんだ――  
 
 そして、その答えはすぐに出た。俺が決断を下すより早く、ハルヒの方か  
ら唇を合わせてきたからだ。  
 
「キョン…… んん……っ」  
 
 何も起こらなかった。  
 
「ハルヒ」  
 
 ハルヒはここに、俺の手の中にいる。  
 
「ふぁ、ふ……」  
 
 小刻みに俺の唇を啄ばむハルヒの唇が、俺の名を呼ぶ。俺はハルヒを抱きし  
め、その唇を塞いだ。  
 ハルヒの吐息を絡め取り、唇が唇を撫でる。混ざり合う舌から、また吐息が  
零れ落ちた。  
 お互いを溶かすように接吻(くちづ)けて、俺は左手でハルヒの身体を手繰り  
寄せる。湯上りの微かに湿り気を帯びた髪を撫で、耳朶を指に乗せた。  
 
「くふ……っ はぁ、あ……」  
 
 息継ぎももどかしくハルヒは求めて、縋り付き身体を跳ねさせる。抱きつい  
てくるハルヒの左手を引き離すと、その細い肩口から衣服を剥ぎ取った。  
 少し乱暴に感じるかも知れないが心配には及ばない、こう云う時ハルヒは、  
これくらい乱雑に扱われるのが好みなんだ。  
 
 俺はハルヒに覆い被さる。  
 左の半身だけを晒し、微熱を帯びた瞳で見上げてくる肢体が艶かしい。誘  
うようなハルヒの目、だがそれは決して意識的にではないのだろう。気の強  
い女が身体を預け、俺の中に溺れようとする、そんな視線だ。  
 
 再び唇を塞ぐ。右手の平で膨らみを掴み、歪に弄ぶ。  
 
「あっ、ああっ!」  
 
 徐々に滑らせる唇でハルヒの喉を啄ばみ、首筋に痕を残す。鎖骨の窪みを  
舌で辿り、起伏の始まりを確かめる。  
 
「あぁっ! んっ!」  
 
 幾ら形を歪めても、ハルヒの弾力は俺の掌を押し返してきた。指の間に突起  
を挟んで弾くと、ハルヒは白い喉を反らせて嬌声を上げる。  
 
「キョン…… キョン……っ!」  
 
 先端を口内に含み、舌先で転がす。浅く温く、歯を立てる。  
 
「はぁあっ! あっ!」  
 
 ハルヒは震える手で俺の髪を掻き毟り、快感に耐えていた。ハルヒの崩壊は  
早い、一度堕ちてしまうと後は、坂道を転がるように何度も昇り詰めてしま  
う。そうなる事への期待と僅かばかりの恐怖が、ハルヒの中で犇めき合って  
いるのだろう。  
 
 しかしそれは徒労にしかならない。なぜなら、俺はハルヒを全て知ってい  
るのだから。俺は乳房に口付けたまま右手を脇腹から腰のラインに滑らせ、  
臍をくすぐり、そのままパジャマの内部へと侵入させた。  
 
「あっ、あ……」  
 
 核心へと近づきつつある俺に、ハルヒは震えている。着実に昇らされ始め  
た身体が、悦んでいるのだ。  
 下着の上から触れたハルヒは、溢れていた。  
 
「イヤ、ああっ! はぅっ!」  
 パジャマに手を掛けるとハルヒは尻を持ち上げる。膝の辺りまで引き下ろ  
し指先で、内腿を弾いた。  
 
「ダメ、キョン…… 今触っちゃ、ダメ、あっ」  
 
 ほう、何が駄目なんだ?  
 俺は布地越しにハルヒの恥丘を掌で包み、余計な刺激を与えないように緩  
く撫でる。  
 
「だって、あッ! いま触られたらあたし、あたし……」  
「遠慮するな」  
「遠慮なんかじゃ、ああっ!」  
 
 秘裂に、中指を突き立てた。  
 
「ああぁぁあっ!」  
 
 その瞬間、ハルヒの腰は大きく振るえ、両腕が俺の背中にしがみつく。ハル  
ヒは嬌(こえ)と愛液とを迸らせて、俺の手の中で絶頂を迎えていた。  
 
「あ…… あぁ……」  
 
 張り詰めていたハルヒからゆっくりと力が抜けていく。その感触を全身で味  
わい、俺はハルヒに接吻ける。左手で頬を撫で、髪を絡めて、両腕でハルヒを  
抱いてやった。  
 
「バカァ…… パンツ汚れちゃったじゃない……」  
 
 心配するな、どっちみち手遅れだった。  
 
「バカ……」  
 
 俺の胸に額を当てるハルヒの荒い息遣いと心臓の音が聞こえる。両手で俺の  
パジャマをギュッと掴んで余韻に浸っているみたいだがハルヒよ、もうそろそ  
ろいいか?  
 
「え?」  
 
 俺は再び、ハルヒの下半身に手を伸ばしていた。  
 
「ちょ! や、まだちょっと待って!」  
 
 イヤだね。昼間ならいざ知らず夜なら主導権は俺の手の中にある。お前の要  
望は受け入れられない、てかもう待てない。このタイミングで待ったをかけら  
れて待てるのはブッダとかキリストあたりの聖人君子かお預けを喰らって喜ぶ  
マゾヒストくらいなもんだろうし、もちろん俺はそのどちらでもない。  
 ベッドの中ほどまで体をずらした俺は、ハルヒの膝に絡み付いているパジャ  
マのズボンを剥ぎ取った。どうやらブラとお揃いであるらしいサイドにレース  
をあしらった下着を捲り、脚から抜き去る。  
 
「まだダメだって言ってるのにっ!」  
 
 そんなこと言いながらも俺のやり易いように動いているハルヒは、素直なん  
だか意固地なんだか。うん? こんなのを一言で言い表せる簡潔な単語があっ  
たような気がするがなんだったっけな?  
 
「まあいいか」  
「何がいいのよっ!?」  
 
 俺はハルヒの膝に手を掛け、割り開かせる。  
 
「お願い、待って、あっ?」  
 
 そして、ハルヒ自身に口付けた。  
 
「ひあ、ああぁあっ!」  
 
 まだ絶頂の痙攣が治まらぬ膣口は息づくように震えて、中心から滴らせ続け  
る。滑光るものはハルヒの尻の丸みを伝い、シーツまで零れ落ちて染みを広  
げ、淫猥に匂い立っていた。  
 
「ひっ…… うぅ…… 待ってって、言ったのにぃ……」  
 
 陰唇に舌を這わせ、息を吹きかける。それだけでハルヒの身体は跳ねて、  
さらに潤いを増す。  
 
「は、あぁっ」  
 
 ハルヒに割り込んだ舌が牝の味に犯され、晒されて蠢く粘膜のピンク色が、  
俺の雄を刺激して止まない。  
 唇に感じるハルヒはあたかも熟れた果実が身を晒すように開いているがその  
味わいは、未だ早熟な気配を色濃く残し、貪欲に求めて舌を伸ばせばまた新た  
な蜜を零して、ハルヒを飲み干すなんてできそうも無かった。舌に押し付けた  
ヒダの感触が、耐え難く心地良い。  
 
「ダメ、あっ、あ……」  
 
 もっと奥へ、ハルヒのうねりに従って試みる。ハルヒの熱さに、俺は狂いか  
けた。  
 
 ハルヒは髪を振り乱し俺の頭を押さえ付け、目前に迫り来る二度目の波を乗  
り切ろうと足掻いている。だが、そんなな貶しの理性が見せる虚しい抵抗とは  
裏腹に、身体は求め、腰を突き出して俺に押し当てた。  
 
「ああっ、ふあぁっ!」  
 
 尻の動きが激しくなり過ぎないように、腰を掴む。細く、余りにも華奢なウ  
エスト。肌理細やかな柔絹のように白い皮膚に指を喰い込ませて、どうやれば  
こんな小さな中に俺と同程度の内臓が収まるのだろうか? などと言う浮き上  
がってきた馬鹿な疑問を、俺は淫水と共に呑み下す。  
 
「もう、あたし…… あ、あたし……っ」  
 今のところ、俺はハルヒを操れていた。  
 
 なに、そんなに難しい事じゃない。ハルヒは判り易い、俺にとってはな。  
 
 与え続け、与え過ぎず、ガラスの表面を転がる水滴が型を崩さないギリギリ  
の様な温さで、煙霞のような快楽へと導く。そうする事でハルヒは溶けて、ひ  
と時の永遠の中を俺の手の中で踊るのだから。  
 
「ああぁっ!」  
 
 その実、ハルヒは踊っているようだった。身悶え、姿態をうねらせて歌う嬌  
は、在り来たりな歌劇などより格段に美しい。それでも踊り子に手を出す罪悪  
感など欠片も持たない俺はハルヒの女を蹂躙し、後ろへと連なる薄皮にまで手  
を伸ばして、尻の肉を割り、淡く沈着する色素に舌先が幾度か触れる度にハル  
ヒは、歌声に艶を重ねていった。  
 
  「ふあっ!? あっ、そこダメぇ……!」  
 
 駄目なものか、ハルヒに駄目なところなどどこにも無い。  
 
「バカぁ……」  
 
 女性の入り口へと、指を割り込ませる。  
 
「ひぅっ!?」  
 
 途端に蕩けた膣壁は絡み付いて、こんなにも柔らかく滑(ぬめ)っていると云  
うのに、まるで離すまいとするかの如く俺の指を締め付けた。  
 
「は、はぁ…… あぅ……」  
 
 内側から持ち上げるように指で擦り、男を喜ばせるためにあるとしか思えな  
いハルヒのざらついたヒダを確かめる。天井部分にだけではあるが、細かな凹  
凸が膣の中ほどから子宮口に向かって続いており、ハルヒ以外の女性を知らな  
い俺ではあるがこれが世に言う「数の子天井」と呼ばれるものであろうと推測  
していた。ハルヒ本人に訊いてみればひょっとして知っているかもしれない  
が、本当に訊いたら殴り倒されそうな気がしないでもないので実践してみた事  
は無い。  
 いや、ハルヒ自身もこの事実を知らない可能性もある。ハルヒの知らないハ  
ルヒの秘密を俺だけが知っていると云うのもなかなか乙なものだ。それに、俺  
はもう一つ知っている。  
 
「あっ、ああぁっ!?」  
 
 このヒダを擦れば、ハルヒの身体が悦ぶと云う事を。  
 
 指先が子宮口に触れるまで突き挿れて、ヒダを捲るように引き戻す。俺はそ  
んなに技巧派じゃない、単調な動きでしかないのだが、それでもハルヒは着実  
に高みへと押し上げられていく。  
 
「はぁっ! あっ!」」  
 
 愛液は徐々に粘度を落とし、色合いも透明のものから内側に気泡を閉じ込め  
たような白濁へと変化する。大きなうねりだったハルヒの内側が、断続的な  
痙攣の連なりに変化しつつある。これが、ハルヒの身体が限界に近い証拠だ。  
 
「イッちゃう、もう、イッちゃうぅ……!」  
 
 だが、俺はそれを許さない。ギリギリまで昂ぶったハルヒの身体を、登頂の  
寸前で見放してやる。引き抜いた先でじわりと閉じられていく膣口が、名残惜  
しそうに愛液を零していた。  
 
「あ、あぁ……」  
 
 切ない身体を抱きしめて、涙目になった恨みがましい視線を向けてくるハル  
ヒ。俺は知らん振りをしてハルヒの内腿に舌を這わせ唾液の痕を付けながら、  
恥丘をささやかに覆う薄い蔭りを撫で摩る。  
 
「意地悪……」  
 
 意地悪になりたい気持ちは察して欲しいね、何がどうだからとは言わんが。  
なによりこんな可愛いハルヒが見られるんだから俺は喜んで意地悪になるさ。  
それになハルヒ、その潤んだ瞳はますます嗜虐心をくすぐるぜ?  
 
 全身に纏う汗とボディーソープの仄かな匂いを嗅ぎ取った鼻先に息づく小さ  
な肉芽へと、俺は標的を移す事にした。  
 
「はぅっ!」  
 
 押し広げ曝け出させた尿道口を舌先で突付き、粘膜の表面をくすぐりながら  
上へと辿る。そうしながら俺は、ベッド脇のミニテーブル据付の椅子の背に掛  
けてあったバスタオルをさりげなく手繰り寄せ、ハルヒの下に敷いた。湯上り  
に使用したせいで少々湿ってはいるが、こうしておかなければ少々の湿り気で  
は済まなくなる。  
 それほど、ハルヒは濡れていた。  
 ハルヒは小振りだった。陰核だけでなく全体的に小さな佇まいではあるが特  
にその部分は、崩れ落ちる直前まで張り詰めたとしても包茎を押し上げるに至  
ってはいない。俺は挨拶をするように、ハルヒを覆い隠す皮の上から優しく口  
付けた。  
 
「ひっ、うっ、」  
 
 余りにも敏感なこの器官に於いて、過度な刺激はともすれば痛みとなりかね  
ない。慎重に解きほぐすように、俺はハルヒを愛撫する。  
 
「あ、ああっ」  
 
 表皮の揺らぎを利用して、唇で転がす。舌で挫るように押し付けてやる。生  
意気なハルヒの自己主張は包茎に隠れながらも硬く尖り、俺に感触を伝えた。  
 
「ふあぁ、あ、ああっ!」  
 
 ハルヒの声に再び熱が篭りはじめ、狂おしく腰を振り求める。俺の髪に置か  
れた手が振るえ、やがて掻き毟る動きに変わった。甘噛みし、刺激に慣れた事  
を確かめて、俺はハルヒを捲り上げる。  
 
「んんっ!」  
 
 艶やかな表面が、カーテン越しの月光を照り返す。小さく、小指の先ほども  
無いそれは小生意気でありながらもあどけなさを残し、その色は、内側の粘膜  
よりも僅かに鮮やかだった。  
 
 俺は舌を伸ばした。そこからもまた、注意が必要だった。  
 
 こう見えて、ハルヒはまだ日が浅い。柔らかい舌先とは言えど表面のざらつ  
きを押し付けてしまっては些か刺激が強いのだ。だから俺は、舌の裏側を使  
い、子供をあやすように撫でてやる。  
 
「はぁぁ…… あぁ……」  
 
 陶酔するような声、ハルヒの部分部分で感触が違うように、ハルヒもまた部  
分部分で違った反応を見せた。俺の舌の動きに同調するようにハルヒは揺ら  
ぎ、ゆっくりと昇りながら、飛沫と吐息とを漏らし続ける。  
 舌を大きく動かし、上から下へ、陰核ごと膣口の辺りまで愛撫した。鼻先  
を擽る陰毛を掌で押さえ、空いた片手の指を、ハルヒの中へ忍ばせる。  
 
「ああっ!」  
 
 押し出された液体が溢れ出し、アヌスを通り過ぎてタオルへと染み込んだ。  
その滑(ぬめ)りを親指で掬い取り、ハルヒの不浄の部位を撫でる。  
 
「イヤぁ……」  
 
 反応し、ハルヒが窄めて来るのを、指先が感じていた。  
 
 ハルヒは近い。もうひと時も耐えられない肢体を持て余している。昇り詰め  
ようとする体と、昇り詰めたい心とが、悲鳴を上げている。  
 
 そして、俺はハルヒを見た。  
 
 喉を反らせて喘いでいたハルヒだったが、期待した悦びを得られない不安を  
感じ取り、ハルヒもまた、俺を見返した。  
 
「あう……」  
 
 もじもじと尻を動かし、膝を摺り合わせようとしたのか俺の顔を太腿で挟  
む。俺は挟まれたままハルヒを見上げて、ニヤリと笑って見せた。ハルヒの頬  
が、羞恥に朱く染まっていく。  
 
「おねがい、イかせて……」  
 
 ハルヒは陥落した、肉体より先に精神的に、俺に無条件降伏を提示してき  
た。普段の勝気な姿など、今は欠片ほども見られない。  
 
 いいだろう。と言うか、俺ももう我慢できん。  
 
 俺は脚の間から抜け出して、ハルヒに覆い被さった。右腕に絡み付いたまま  
ハルヒの半身を覆い隠している衣服を剥ぎ取り、ハルヒを見下ろした。  
 
「キョン……」  
 
 見上げてくるハルヒが目を閉じきらないうちに唇を重ね咥内を侵し、同時に、  
ハルヒを犯した。  
 
「ああああぁぁあ!!」  
 
 首に巻き付いた腕が、俺を締め付ける。まだ半分も収まりきらないうちに  
ハルヒが達したのを、俺自身に絡まるヒダの蠢動が言わずもがなも教えてくれ  
た。  
 
「あっ、あぁっ」  
 
 放心しているところ悪いが、まだこれからだ。  
 限界まで押し入ろうと腰を落とし、ハルヒの狭さに阻まれる。無理矢理に押  
し広げながら、ハルヒの柔らかさに脳髄を溶かされそうになっていた。  
 
「あぁっ!」  
 
 堪えて、子宮口を突き上げる。最深部を持ち上げられ、ハルヒの身体がガク  
リと揺れた。  
 俺は何度も突き立て、ハルヒは、入れる度に愛液を溢れさせ、引く度にヒダ  
を捲れさせた。ハルヒは身体を仰け反らせて鳴き、白い乳房の間に俺を掻き抱  
く。されるままに任せて唇を落とし、ハルヒの肌に俺の印を刻んだ。  
 
「ああっ! うあぁっ!」  
 
 再びハルヒは絶頂を迎えた。飛び散った滴りが俺の腹を打ち、膝にまで伝  
わっていく。痙攣するハルヒの肩を押さえ付け、それでも俺はハルヒを愛し  
ていた。  
 
「あっ、ああっ? あっ」  
 
 放心する暇すら与えられず、いや、放心の最中でハルヒは何度も高みに昇り、  
狂う。最早嬌声とも嗚咽ともつかない声を上げるハルヒは、それでも俺を感じ  
取ろうと全身で俺にしがみ付き、俺はハルヒを抱いたまま打ち据えた。  
 
「は、あ、ああっ!」  
 
 水溜りを踏みしめるような淫猥な音が響き、ハルヒと、俺の荒い息遣いと重  
なり合いループする。ハルヒは我を失い、ハルヒと混ざり合ったかのような錯  
覚に、俺はもう俺でいられない。  
 
 
「キョン、キョン……」  
 
 うわ言のように繰り返すハルヒがまた達して  
 
「あっ、ああぁああっ!」  
 
 俺はハルヒの中に吐き出していた。  
 
 
 
 
   
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
 足元に蟠ったバスタオルはすっかり濡れ、脚に冷たく張り付いている。あれ  
だけ溢れさせたらもう何も出すものはきっと残っていないだろう。俺ももう精  
根尽きたような気がする、今はこの余韻にもう少し浸っていたい。  
 だがそんな願いも虚しく脱力する俺の横でハルヒはむっくり起き上がったか  
と思うと、二年前に隠してすっかり忘れていたヘソクリをなんかの拍子にふと  
見つけたやりくり上手な主婦みたいな爽快な笑顔を向けてきて、俺を銀のエン  
ゼルを四枚手に入れて最後の一枚を入手しようと試みた矢先に金のエンゼルを  
引き当ててしまったような複雑な心境へと追いやった。  
 
「次は私の番ね、覚悟しなさい!」  
 
 ああ、やっぱりな。まだ体内に汁気を残しておいででしたか。  
 
 言っておくが俺は絶倫じゃない、だがハルヒは常軌を逸した性豪であり、  
さっきくらいの事では全く満足してくれないのだ。  
 実際、致した翌日の俺は常に、疲労を通り越して衰弱していた。  
 
 だったら最初から手を出さなきゃいいじゃないかなんて言われるかも知れな  
いが、俺だって健康な若い男子だ、身体を持て余す事だってある。幾ら最終的  
には搾り取られると判ってたって、目の前に差し出された据え膳からは逃げら  
れない事だってあるんだよ。俺だってしたいんだよ!  
 
 今にも舌なめずりしそうなハルヒがしなを造り、俺の下半身に手を伸ばす。  
この時点で起立させてる俺も俺ですね。  
 
 唇に軽く触れさせながら俺は、明日の太陽はどのくらい黄色いだろうかと考  
えていた。  
 
 
 
 
 
 
              ―― 終 ――  
 
 

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