朝、学校へ到着すると校舎沿いの花壇が満開になっていたので、ちょっとグラウンドで泳いでみることにした。  
 軽やかにグラウンドへ向かって歩き、  
「これは春かもしれん」  
 ここぞとばかりに俺は呟く。  
 そういうわけで早速グラウンドの中央あたりに到着。そこで俺はやっぱりもうちょいグラウンドの隅へと移動することを決意した。  
 うつ伏せで倒れこみ、やがて顔に型が付くまで砂と小石の感触を堪能する。これはやばい。  
 手足に関しては、誰かがそれを見たところで瞬時に平泳ぎをイメージできるよう正しいフォームを心掛ける。  
「こいつはたまらん。お前もやってみろ国木田」  
 試しにそう言ってみるが、特に国木田がいるというわけではない。  
   
 ――見つけた。  
 
 俺だけの時間。  
 現実を遥かに凌駕するほどの夢をふんだんに詰め折りにしたひと時。  
 だが、何ゆえこうもタイミング良く邪魔立てしようとするのだろうか。  
「おや、何をなさっているのでしょう?」  
 こいつは完全に節穴だ。これのどこを見れば、何をしているのか、などと問わなければならないのか逆に問い詰めたい。  
「どうやら僕も参加した方がよさそうですね」  
 俺だけの時間、それが俺たちだけの時間へと進化を遂げた。  
 
 
 
 

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