唐突だが、二重人格というものをご存知であろうか?知らない奴は・・・各々調べを入れてみてくれ。ここでは説明を省略させていただく。
その名の通り一つの人間という単体に複数の人格が宿っているという事らしい。簡単に言えばこんなような意味だ。
さて、なぜ俺がこんな非科学的現象話を持ちかけたというと・・・少し時間をさかのぼらなければならない。
・・・言っておくが俺は二重人格じゃないからな?
【数時間前】
「あ・・・キョン君、おはよう」
「・・・・すまん、ちょっと寝ぼけてて聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「へ?あ、うん。キョン君、おはよう!」
「・・・・・!?」
こ、これは・・・悪夢だ!悪夢が今まさにこの瞬間起きようとしている!俺には分かる・・・この先の未来が・・・・
いや、待て待て落ち着け。それじゃあ俺が未来が見える不思議少年じゃないか、長門じゃあるまいし。というか、何で俺こんな訳も分からん
発想を自分の中で広げているんだ?ハルヒか?ハルヒが原因かこの発想は!とうとう俺もあっち側の人間になっちまったのか・・・?
谷口の言う通り、俺は毒に犯されてしまったのか・・・?
「キョン君・・・?」
「キョンさん、事件です」
「うわッ!い、いきなり現れるな、びっくりするだろ!」
「これは失礼。謝ります。それより、厄介な事が起こりました」
「顔が近い、もうちょっと離れろ」
「これは今だかつてない、前例の無い事態です」
人の話を簡単に流すな!何なんだこいつは
「どうせまたハルヒ絡みなんだろ?」
「ご名答、その通りです。よく分かりましたね」
「今のハルヒを見てみろ、不自然の代名詞化してるぞ。一体どうなってる、ハルヒが別人になっているぞ。」
「それを含めて今から説明します。ここでは涼宮さんに聞かれる恐れがあるので移動しましょう」
俺は古泉に連れられて部室へと移動する。部室には長門、朝比奈さんが既に待機していた。
「大体察しはつく。どうせまたあの閉鎖空間とかいうのが出たんだろ?今回のは俺は知らん。俺を面倒事に巻き込まないでくれ」
「いえ、今回はそうではありません。閉鎖空間よりも厄介な事です。それに、あなたにも協力してもらわなければなりません」
あれで充分厄介なのにまだ上があるのか?
「って、やっぱり俺も巻き込まれなきゃならないのかよ!」
「申し訳ないです。我々の力では限界がありまして、今回のはあなたでないと解決出来ません。」
「・・・・・。
で、閉鎖空間より厄介なのって何だ?一応話だけは聞いてやる」
「実は、単体人格変化空間が現れました」
「単体・・・何だって?」
「単体人格変化空間。簡単に言えば個人情報の書き換え。涼宮ハルヒは自分の意思で人格の変化を望んだ。その結果、涼宮ハルヒのもう一つの
人格が表へ出てしまった。」
「長門、お前の説明じゃよく分からん。理解しかねる」
「・・・。この世界で一般的に使われている言語で表すと、二重人格という言葉が匹敵する。ただし多少意味に相違が見られる。」
「それなら分かりやすい。成る程二重人格ね・・・・・・二重人格ぅぅ!!??ええ!!あの二重人格か!?」
「そう・・・。」
「まさかそんな事が・・・それに意味の相違って何だ?どういうところが違うんだ?」
「この世界で一般的に使われる言語の二重人格は二つの人格が共存しているという意味。それに対して単体人格変化空間は、人格を消し新たな人格を生み出して
しまう。」
「つまり、前の人格は綺麗さっぱり消えてしまう。そして誰もしらない涼宮さんの人格が現れてしまう。そういう事です。そうですねよね、長門さん」
「そう・・・。」
「じゃあ、前のハルヒの人格は消えちまうって事か?」
「ええ、まだ消えてはいませんが・・・時間の問題です」
「もはや何でもありだな・・・」
「キョン君・・・昨日の事覚えていますか・・・?」
朝比奈さんが唐突に質問してきた。
「昨日の事・・・?」
「昨日の私との会話です。」
「会話会話・・・会話って言われてもいつどの会話を指しているんだか分からないんですが・・・」
「涼宮さんと私とキョン君の三人だけだった時の会話です・・・。」
「・・・ああ、あの時のですか。思い出しましたよ。それが何か・・・?」
「その時キョン君、『朝比奈さんは性格、容姿、スタイルすべて完璧のオールSですよ。ハルヒもあの性格を治せば完璧になるんですけどね』と言ったよね・・・?」
そんな事、言ったような言わなかったような・・・・どうも記憶がない、ついに俺も老化が始まったか・・・
「あんまり覚えていませんが・・・朝比奈さんが言うのなら言ったのでしょうね。けど、そんな事あいつが聞こえていないところでこっそり言うような事だと思いますが・・・」
「聞こえていたんです・・・涼宮さんに・・・」
「それが原因ですか・・・成る程、道理で・・・」
「はい・・・恐らく涼宮さんはそのキョン君の一言で・・・」
「自分の人格に嫌気が差してしまった・・・・と、いうところですかね。
あなたの言った言葉に涼宮さんが過剰に反応してしまった。つまり・・・すべての原因は・・・
『「キョンさん」「キョン君」「あなた・・・。」』
に、あるという事です」
全員の言葉が同じ意味を表している。原因は俺・・・?ハルヒの急激な変化も・・・?
「・・・ドッキリとかじゃないのか?実は俺をハメてるとかそういう・・・」
「残念ながらドッキリではありません。事実です・・・。ドッキリなのであればどれだけ我々も安心出来る事か・・・」
「・・・またお前がその空間に侵入して問題を解決してくればいいじゃないか」
「不可能。単体人格変化空間はその単体の中で発生する。今回は涼宮ハルヒに発生した。侵入は不可能。一般的な言葉に置き換えると、無理。」
「・・・・・そうか」
「そう・・・。」
「長門さんの言う通りです。今回は我々もお手上げです。どうにもなりません」
「キョン君しかいないの・・・涼宮さんを元に戻せるのは・・・」
待てよ・・・ハルヒがあの性格のままで別に問題ないんじゃないのか?前のハルヒより今のハルヒの方が静かだし。俺もちょっとドキッとしたほどだ。
そうすればこのSOS団も解散。俺に平和が戻ってくるって事じゃないか!
「なあ・・・別に戻らなくていいんじゃないのか・・・・?」
「え・・?」
「と、言いますと?」
「いやだから俺の意見はハルヒがあのままでいいんじゃないかって事だよ。考えてみろ、あの訳の分からん思考を持つ爆弾のような女子より。
大人しい女の子の方が良いだろう?いや、良いに決まってる!」
「それは逆。元に戻らなければ地球の終わりを意味する。」
「何でだよ、人格が変わっただけじゃないか」
「人格の書き換えが完了するのが引き金となって涼宮ハルヒの記憶がすべてリセットされてしまう」
「何だって?」
「つまり、涼宮さんの人格が完全に変わってしまうと記憶が無くなってしまうという事です」
「そうじゃなくて、何で人格と地球の終わりが関係してるんだよ」
「涼宮さんの新しい人格には、あなたの記憶しかないのです。僕や長門さん、朝比奈さんはもちろん。あなた以外の人間の記憶は無くなってしまうのです。
すると必然的に僕達はこの世から消えてしまう・・・今の涼宮さんは僕達の存在を望んでいない。すると僕達は存在する意味、または理由が無くなってしまのです。
今涼宮さんが望んでいるのはあなただけ。つまり、あなた以外の存在はすべて消えてしまうという事です。無常にも、あなたの記憶に植え付けられたまま・・・」
「この世界に俺とハルヒだけの二人以外いなくなっちまうって言うのか?」
「ご名答。その通りです」
「前にも言ったでしょう?あなたは涼宮さんに選ばれた者なのです。たった一人のね」
「・・・・・。」
古泉や長門、朝比奈さんの言っている事は普通ではありえない話。しかし、これまでの経験上こいつらには俺の常識は通用しない。
ハルヒの変化から見ても異常だってのは分かる。ドッキリでもないようだ。
「・・・・どうすりゃいい?」
「協力してくれるのですね?」
「ああ・・・」
「流石、僕のかけがえの無い親友です」
違う、俺は朝比奈さんやその他が消えてしまうのが嫌なんだ。お前は別に消えてもいい、むしろ消えてくれ
「で、どうすりゃいいんだ?ハルヒに直接『元に戻ってください』とかなんとか言えとでも言うのか?」
「そんな簡単じゃありません。あなたを涼宮さんの人格をコントロールしている場所へあなたを送り出します。」
「何だって!?それじゃあ・・・」
「ええ、あなたを単体人格変化空間に強引に侵入してもらう事になります。」
「それは無理だとさっき言っていただろうが」
「いいえ、あなたにはその力があるんです。僕達はその力が無い、だから侵入出来ない。理解して頂けましたか?」
「なぜ俺だけは侵入出来ると断言出来る」
「分かってしまうんです。こればかりは説明出来ません」
「朝比奈さん、あなたも・・?」
「はい・・・」
「長門、お前も分かるのか・・・?」
「分かる・・・・」
「・・・・。分かった。で、方法は何だ?どうやって侵入する」
「侵入方法は一つです。それを今から説明するので少しばかり目を閉じてください」
またそれか・・・
「閉じたぞ」
「もう、開けていいですよ?」
目を開けるとそこには予想通り閉鎖空間とやらが広がっている
「閉鎖空間か・・・」
「ご名答。その通りです」
「その返答は聞き飽きた。もうちょっとアドリブを効かせろ」
「これは失礼。今度は別のバージョンに変えることにしましょう」
「で、この後どうするんだ?」
「この閉鎖空間から単体人格変化空間に移動します。これが難儀な事で、困ってるんですよ」
「どうやって移動する?また目を瞑るのか?」
「いいえ、ここからはあなた一人の力で移動してもらうほかありません。僕達はここまでです。では、頼みましたよ」
そう言い放つと古泉は俺の目の前から姿を消した。
「おい古泉!」
「キョン君、また会えたら宜しくね・・・頑張って・・・」
朝比奈さんも古泉と同様に姿を消す
「これを・・・」
「何だこれ?」
「あなたとの唯一の交信手段。困ったらこれを使って。ただし、多用出来ない。時間がない。健闘を祈る。」
「あ、おい長門!これどうやって使うんだよ!」
長門から10分の1くらいの大きさにしたノートパソコンのようなものを受け取った。
しかし、使い方が分からない。
「肝心な事を・・・。ふぅ・・・呆然と立っていても仕方が無い。行くか・・・」
辺り一面が薄暗い砂漠のようなこの世界に俺はため息をつきながらも、一歩一歩地を踏みしめていた・・・。