「ふざけるな!」  
 目の前に立つ長門に向かい、俺は長門の両肩を掴み怒鳴りつける。  
 怒鳴られている長門は、いつもと変わらない無表情な顔で、その闇  
色の瞳で俺を見つめる。  
 ただその瞳に、今まで俺が見たことが無いほどの決意の色が浮か  
んでいる。  
「問題ない、わたしと喜緑江美里の二人で対処は可能」  
「…問題ないわけ……ないだろ」  
 涙声になりながらも、俺は長門を説得する。  
 
 朝倉涼子  
 
 長門の親玉の一人の急進派とか言うのが造りだしたインターフェイス。  
 俺としてはあまり思い出したくない名前だ。そりゃ二回も殺されそうに  
なれば、誰だって好きになるわけない。  
 その急進派インターフェイスの最新型が、地球に再び送り込まれた。  
任務はハルヒの観察、及び自分たち情報総合思念体にとっての脅威、  
つまり俺を排除するために送り込まれた。  
「ただ、情報総合思念体もあなたを殺害しては、自分たちを含める世界  
がどのように改変されるかが予測不可能でした。そのため任務内容は  
あなたの記憶の一部削除などの、無力化に変更されるはずでした」  
 北高にある生徒会室で、喜緑さんが説明する。  
 過去形で…。  
 
「情報総合思念体は新型インターフェイスのプログラム書き換えに失敗。  
重ねて新型インターフェイスは情報総合思念体より自らリンクを切除。  
情報総合思念体からの干渉は不可能」  
 つまり大失敗ってことですか、長門先生。  
「そう。また、情報総合思念体は前回の朝倉涼子の件より、あなたに  
危害が加えられる際、現存するインターフェイスがあなたの生命を保  
護する可能性があるため、新型インターフェイスには対インターフェイ  
ス用に強化がなされている」  
 殆ど某映画のような話になっている、つまりおまえや喜緑さんでは  
手も足も出せないってことか。  
「わたしたちには新型インターフェイス処分の指示が出ている」  
 …ちょっと待て、今新型はおまえらと戦うのに特化してるんだろ。  
「大丈夫、あなたは守る」  
 そういうことじゃない、おまえはそいつと戦って勝てるのか?  
「…わたしのシュミレートでは攻撃情報を打ち込む前に消滅させられる  
可能性が、ほぼ百パーセントと出ている」  
 まさか…それでもいくって言うのか?  
 小さな肯定の仕草。  
 ここで話は冒頭へと戻る。  
 
「…二人で勝てる確立は?」  
 うなだれたまま長門に聞く。案の定こいつは淡々と答える。  
「新型インターフェイスの消去に成功できる可能性は二十八パーセント、  
ただしこの場合、わたしたちも新型インターフェイスに消去される」  
「………それでも、戦うのか?」  
 またも肯定の仕草。  
「なら、俺も行く」  
 その言葉を聴き、長門が目を見開く。同じように喜緑さんもあっけに  
採られた表情になっている。  
「何で?失礼ですがあなたはわたしたちにとって、足手まといにしかな  
りません。それよりわたしたちが安全なところに…」  
「喜緑さんと長門が殺されれば、遅かれ早かれ俺はそいつに殺される。  
だったらおまえと、長門と一緒にいる」  
 こいつの、長門の眼を見て、俺は言う。  
「長門が死ぬときが、俺の死ぬときだ。…わかったな?」  
 
「…承諾した」  
「!!長門さん!?」  
 喜緑さんが素っ頓狂な声を出す。  
「ならわたしもあなたに伝えておく」  
 
「あなたを一人にしたくない。あなたが死ぬときが、わたしの死ぬとき」  
 長門…おまえ…。  
「それから……」  
 他にもなにか?  
「私のことを…有希と呼んでほしい」  
 …分かった、……有希。  
「俺と有希は一心同体だ」  
 
 ……………何書いてんだ?おまえ。  
 ノートパソコンのキーボードを黙々と打ち続ける長門の前にあるモニター  
に、長門本人の名前と生徒会の喜緑さん、果ては長門の親玉のことまで  
書かれている。  
「…次回機関紙の原案……」  
 かってに人の名前使ってか?  
「…固有名詞は後で変更する」  
 なあ…。  
「………わたしとあなたは、一心同体」  
 長門にしては、普段の二・三倍はあるような、普通に聞こえるぐらいの声で  
言う。  
 ちょうど部室に入ってきたそいつに聞こえるように。  
 
そいつ予想   
 
A=本命ハルヒ  
B=癒しの天使朝比奈さん  
C=大穴狙いで古泉  
D=意外と鶴屋さん  
 
 終わっとこっか。  
 
 

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