突然な話だが、  
大概の高校生というのは、昼休みというのは食事を済ませると結構暇だったりする。  
そりゃ中には部活の昼練に行くような体育会系の奴もいれば、図書室に行くような奴もいる。  
まぁただ、だいたいの無所属の奴らというのは、そういうのが面倒くさいから無所属なので、  
昼休みというのは家から持って来てすっかり冷めちまった飯を友達と  
ダラダラ喋りながら食べることによって、時間と飯を消化するのであり、  
後から思い返すとその時間は案外くだらないが楽しかったりする。  
谷口や国木田や俺なんかという…まぁいつものメンバーなんだが、とにかくそこら辺の  
生徒はその典型的なパターンなのだ。  
さて、こんな事を説明しているのには訳がある。  
結論から言わしてもらおう。  
それは俺にとってはなかなか面白い昼休みであった。  
 
ある雨の日の昼。毎度のごとくやる事がない俺は部室にぶらぶらしながら行ってみることにした。  
雨なので、中庭を通じてのショートカットが出来ないのは残念だがまぁそれは今度でいいか。  
別に俺は急ぐ事もないので、だらだら歩いて自販機の前で阪中が  
「新しいジュースはコンプリートするのね。」  
とか言いながらこの前入った新しいジュースを一気飲みしてるのを眺めたりしながら歩いていった。  
我が校は立地条件の割には狭いので、あっという間に部室の前に着いた。  
昼休みだから朝比奈さんの着替えもないし、恐らく長門が本を読んでるだけだろうから  
ノックもせずに入ろうかと思ってたが、  
どうも一度身に付いた習慣は簡単に抜けないのか、無意識下でノックをして、  
我が部室のドアを開けた。  
すると先程ジュースをコンプリートしていた阪中が何故か部室の中にいた。  
「どうしたんだ?」  
「あ、こっちに…来ちゃ…」  
どこか熱っぽい阪中がこっち向いたと思ったその時。  
急に阪中の体が光り出して、光が止んだ時にそこにはヤツがいた。  
俺の頭の中で色んな映像がフラッシュバックされる。  
夕焼けの教室。飛んでいる椅子。夜の学校。ナイフ。  
そう。  
 
 
朝倉が出て来た。  
待て。落ち着け。この状況は何なんだ。ナイフは?まだ見えない。  
でもアイツなら一瞬でナイフでもランチャーでも戦車でも出せちまう。  
 
ヤバいヤバい。とにかく俺の脳細胞フル稼働で脱出方法を考え…  
そんな事を考えてる間に朝倉は一瞬で俺との間にあった5mくらいの間合いを詰めてきて…  
 
キスをしてきた。  
わけがわかんねえ。何が起きてるんだ?  
阪中がこっち向いて、フラッとしたと思ったら朝倉が出て来て、キスをした。  
そしてキスしてる奥の方で…とんでもない殺意の波動に目覚めた長門がいた。  
俺が色々困ってる今も朝倉は俺とディープにキスをしている。  
「んむっ…んっ…ぢゅっ」  
どうやらこいつもキスする時は目をつぶる派らしい。どアップで真っ赤な朝倉の顔を見ながら、  
次に俺に降りかかる災難を考えていた。  
そうすること約15秒。  
ついに長門がキレた。  
20倍速ぐらいで何かを喋り、  
「情報連結解除」  
ただ静かにそう言い放つと、朝倉がまたいつもの様に砂のようになって散っていった…  
と、思いきや朝倉がキスしたままだったので、そのまま阪中にバトンタッチされた。  
自分が置かれている状況を理解したのか顔が赤くなりきった阪中は  
「ふわ、え?キョ、キョ…」  
と、何か言った後にぐったりとして、そのまま床に倒れた。  
わけがわからなさすぎる状況に戸惑っていた俺に長門が静かに話しかけてきた。  
「その清涼飲料水のコピーに目をつけた朝倉涼子が自分の情報を  
混入し、誰かが飲んだと同時に侵食を開始するように構成されていた。  
こういう手段は想定していなかった。彼女が標的になったのはまったくの偶然。  
しかし、未然に防げなかった私に過失がある。」  
まぁ別に今回はナイフで刺されるとかそういうのじゃなかったから、  
誰もお前を責めたりはしないだろ。  
「…そう。」  
長門の闇のような瞳を見つめていたら俺はふと、あることに気付いた。  
「そういえば、阪中が飲んだのその…清涼飲料水って何だったんだ?」  
「これ。」  
そう言って長門が指差した机の上に置いてある赤いアルミ缶を見た。  
あぁそういやそんな宣伝だったな。  
っつーか阪中これ一気飲みしてたのかよ。  
 
 
「――いいほうに考えよう  
    Coca-Cola――」  
 

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