○月 ×日 日曜日 (晴れ)
すごくお天気のいい、風のない、穏やかな朝でした。
あたしは気持ちよく目覚めると、部屋に掃除機をかけ、お布団を干してしまい、紅茶を淹れてリビングでくつろぎながら、安らいだ気持ちで飲みはじめました。
未来からの指令もなく、SOS団も今日はお休みです。
平和な一日になりそうな、そんな落ちついた静かな朝でした。
長門さんから電話があったのは、確か午前10時を少し回った頃でした。
携帯電話の長門さん専用の着信音が鳴り響くのはとても珍しいことなので、
あたしはきっと、SOS団の急な用事が入ったのだと思って、
行こうとしていたお買い物は、今日は諦めるしかないなあ、なんて少し落ち込みながら、長門さんからの電話をとったのでした。
でも、あたしのそんな予想は、半分は的中し、半分は外れていました。
いつものあの冷静な口調で、長門さんは「今から私のマンションに来て欲しい」と、あたしに告げたのです。
どうやらSOS団の活動とは無関係な用事みたいでした。
正直なところ、あたしは長門さんのことを、ちょっと苦手だなー。って感じているから、その提案には、いささか戸惑うところがありました。
けれども、とりたてて断る理由もありません。
あたしはお昼過ぎにマンションに向かう約束をして、長門さんからの電話を切りました。
イヤな予感が少しだけしましたが、あまり気にしないようにして、あたしは長門さんのマンションに向かったのです。
チャイムを鳴らすと、長門さんはすぐに玄関のドアを開けてくれました。
まるで、あたしをずっと待っててくれたみたいに、すぐでした。
居間に通されて腰をおろすと、長門さんはテーブル越しにあたしの正面に向かい合って座り、透明な視線であたしの顔をじいっと覗き込みました。
あたしは当然、すごく動揺してしまいます。きっとものすごい量の汗をかいてしまってたと思います。
重い沈黙が二人を包み込みました。
あたしは挙動不審っぽい仕草を散々に振りまきながら、やっとのことで、長門さんに尋ねることができました。
「あの、今日はあたし、どうしてここに呼び出されたんでしょう?」
長門さんはあたしから視線を外さずに、そのまましばらく沈黙したあと、「あなたは現在、情報生命体に寄生されている」と、言ったのです。
わけがわかりませんでした。
長門さんが言うには、あたしはそのとき、「宇宙からやって来た、有機生命体とは別の存在である情報生命体に寄生された状態」で、
「今はなんの被害も受けていないが、このまま放っておくと、深刻な損害をこうむる可能性がある」とのことでした。
長門さんは相変わらず、お人形さんみたいに表情を変えずにいましたが、彼女がふざけたり、嘘をついたりするような人じゃないのは、あたしもよくわかっていました。
あたしは長門さんの提案するところによる「情報生命体の駆除」を受け入れることに決め、大人しく長門さんの指示に従いました。
長門さんは寝室に布団を敷くと、あたしに横たわるように言いました。
あたしが仰向けに寝そべると、長門さんはまるでお医者さんが触診するみたいにして、掌であたしのお腹に触れました。
その瞬間、静電気がはじけるときに似た感覚が、おへその辺りにありました。
長門さんは手が触れている場所を興味深そうにしげしげと眺め、そこを丁寧にさすりながら、「情報解除を申請した。このように駆除していく」と、言いました。
長門さんの掌は、お腹から太腿、すねの辺り、足首、足の指へと、順番に移動してゆきました。
そうして次々と、寄生した情報生命体を駆除し、またお腹の方へと引き返してきたのです。
それから今度は胸の辺りにのぼってきて、なでるように両手で胸を触りはじめました。
胸に寄生した情報生命体はなかなか手強いらしく、長門さんはずいぶんと長い時間、入念にあたしの胸をなでたりさすったりしていました。
そのようにして胸の情報生命体を駆除されているうちに、あたしはなんだか、自分が変な気持ちになってきているのに気がつきました。
ええと、なんていったらいいんだろう。
情報生命体を駆除する長門さんの手つきが、いやらしいと言うか、扇情的と言うのか……。
相変わらず、触れられたときに起こる静電気がはぜるみたいな感覚はつづいていたのだけど、その頃にはそれが、ひどく気持ちのいいものに感じられるようになってしまっていたのです。
長門さんの掌が胸をなでまわるたびに、あたしの身体は震え、びくびくと跳ねあがり、どんどん力が抜けていってしまうようでした。
長門さんの掌が触れるたび、恐ろしいほどの快感が、あたしの胸に走るのです。
あたしの快楽中枢はおかしくなってしまったみたいに、どばどばと快感物質を分泌しつづけ、長門さんの手が胸に触れるたびに、静電気の刺激と共に、今まで経験したことがないほどの快感が、あたしの身体を襲うのでした。
あたしは声が出そうになってしまうのを、必死でこらえました。
長門さんの手は、変わらずあたしの胸をなでまわしており、抗いがたい気持ちよさを、触れた場所に与えつづけていました。
身体中が汗ばみ、鼓動は早く打ち、呼吸が震えました。
全身が痙攣しそうになるのを抑え、唇を噛みしめながら、あたしは耐えつづけました。
そうしてぼんやりしてしまいそうな意識の中、長門さんの感情が読めない瞳を、どうにか見つめていたのでした。
そのうちに、長門さんの掌がとうとう胸のてっぺん辺りに達して、ブラジャーとシャツ越しに、あたしの乳首を覆い隠すみたいに掌でやんわりと刺激しだすと、あたしはあっさりとイッてしまいました。
乳首でイッたのは初めての経験でした。
それまでも友達とかから、「乳首でもイクときあるっさ」なんてエッチな話を聞かされたことはあったけど、まさか自分がそうなるなんて、全く思いもしませんでした。
しかも、あんなにあっさりとイッてしまうなんて。
それくらい、そのときの快感は強烈なものだったのです。
あたしは喉が引きつったときみたいな声をあげ、イッてしまいました。
長門さんはそれに気づいたのか気がつかなかったのか、落ちつき払った様子で、寄生した情報生命体の駆除をつづけていました。
長門さんの掌が胸をなで回るあいだ、あたしは何度も何度もイッてしまいました。
イッた回数も数えられないくらい、たくさんでした。
意識がもうろうとし、気を失ってしまいそうになるほど、何度もそれが繰り返されました。
あたしのあそこはどうしようもないほど濡れてしまっていて、とろけそうな疼きを伴いながら、下着をびしょびしょに濡らしてしまっているのが、その状態でもよくわかりました。
あたしはもう、声が出るのを抑え切れませんでした。
長門さんの手が、あたしの感じるところに触れるたび、あたしは大きなあえぎ声を漏らさずにはいられなかったのです。
彼女の手が乳首に触れたときなどは、悲鳴にも似たよがり声を、堪えきれずにあげてしまってました。
それはすでに、あたしの意思ではどうにもできない領域の出来事でした。
あたしは声を抑えられず、濡れつづける下半身や、イキっぱなしになってしまった身体をコントロールできず、長門さんの掌によってもたらされる快感のなすがままになってしまっていました。
あたしは長門さんに、びしょびしょになったあそこを触って欲しくてたまらなくなってしまいました。
情報生命体の駆除を黙々とつづけている長門さんに、実際に「触ってください」と、お願いをしてもみたのです。
けれども、長門さんは僅かに首を振ってあたしの要求を断ると、
「それは情報生命体が駆除に抵抗して起こしている間違った生体反応」
と、結論づけて、淡々と胸の情報生命体の駆除をつづけていきました。
あたしはそれから三回ほどイッてしまい、それきり意識を失いました。
気がついたときには、あたしは自分の部屋のベッドに寝そべっていて、時刻は夕方の4時半を指し示しているところでした。
長門さんの部屋でのあの出来事が、本当にあったことなのか、ひょっとしたらあたしの夢なんじゃないのか、正直、今でも確信が持てないままでいます。
あれから長門さんはなんにも言わないし、あたしも怖くてなんとなく訊けないでいるのです。
だからこの日の記入欄は、ずっと空白のままにしてあって、一週間がたった今頃になって、ようやく書き込んでいるのだけれど……。
とにかく、やっぱりあたしは、長門さんのことが、どうにも苦手なままでいます。
だけれど、お礼くらいは言った方がいいのかな。まだ、ちょっと迷ってしまってます。
もちろん、本気で感じてしまっていたことだとか、何度もイッてしまったことなんかは、忘れちゃったフリをして。
今から、いろいろと考えてみることにします。
○月 △日 朝比奈みくる