――どうして、他の子みたいにちゃんとできないの。  
 
 うるさい。  
 
 
 ――いつまでも子供みたいな事して。  
 
 うるさいってば。  
 
 
 ――少しは女の子らしくしたらどうなの。  
 
 うるさいうるさいうるさい!!  
 
 
 あたしは、ただ、欲しかっただけなのに。  
 
 
 
  【誇り】  
 
 
 
 あたしは「普通」がとにかく嫌だった。みんなと同じ事をするのも嫌だった。普通すぎるこの世界自体がとにかく嫌いだった。  
 だからあたしはみんなとは違う道を選んだ。違うやり方を探した。そのほうが面白い事があるような気がしたから。  
 最初はまだ良かった。だけど中学生になると、そうもいかなくなってきた。  
 まず担任にはしょっちゅう呼び出された。協調性が足りない、と。成績は良かったからきつく言われる事はなかったにしろ。  
 親だってうるさく言うようになった。あたしみたいな人間はただワガママな子供なのだと言う。  
 だったらあたしは一生子供でもいい。普通の象徴である大人になんかなりたくない。あたしは、ただ、みんなと一緒なのが嫌なだけ。普通に生きて普通に死ぬのが嫌なだけなの。  
 だからあたしは行動に出た。校舎の屋上にペンキで星を描いたり、学校中にお札を貼ったり、校庭に宇宙人へのメッセージを描いてみたりした。  
 だけど何も起こらなかった。ただ、メッセージを描いた時に、変な高校生に会っただけ。  
 そいつはあたしの話を初めてまともに聞いてくれた。みんなあたしを…親や先生ですら変人扱いしたのに。  
 宇宙人は、いる。未来人もいるかもしれない。超能力者は配り歩くほどいる。異世界人はこれから知り合う予定。  
 あたしは救われた。あたしにとって、その人はあたしを認めてくれた唯一の人物だった。その高校生はジョン・スミスと名乗った。  
 
 それからあたしはジョンを探した。彼があたしの人生を変えてくれるに違いない。そして…他にも言わなくちゃならない事がある気がするから。  
 そいつが着ていた制服の学校の前で張り込んだり、忍び込んで名簿を見たりしたけどそんな名前の奴はいなかった。結局、彼を見付ける事はできなかった。  
 彼は、あたしが作り出した幻だったのかもしれない。だけど、いつかまた会える。そんな気がする。  
 あたしが宇宙人や未来人、超能力者を捕まえたその時、またふらりと現れる。あたしにはそんな気が、いや、確信があるの。  
 だからあたしは、北高へ入学した。彼の面影を追って。  
 
 いつか、あたしもあんたの所に行ってやるんだから。  
 
 だから…待ってなさいよ。  
 
 
 聞こえる? ジョン?  
 
 いくわよ。  
 
 
 
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしの所に来なさい」  
 
 
 
(終わり)  
 

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