古泉一樹の野望〜準備編〜
事は夏休み前。僕、古泉一樹はとある本屋で涼宮さんとばったり遭遇。
彼女は片手にUMAの本、もう一方に日本地図を広げ格闘していました。
…夏休みにUMA探しに行くのでしょうか。涼宮さんだと本物を見つけてしまうかも
しれない、ここは一つ……
「おや、涼宮さんじゃないですか。どうしたんです?地図なんて広げて」
「何だ。古泉くんか…いえね、せっかくの夏休みだし、いつものように部室や町内探索で
時間を使うのももったいないと思わない?」
「それはそうかもしれないですね。2ヶ月近くある夏休み、いつもと同じように過ごす
というのも興がないかもしれません」
「そうでしょう? それで、せっかくだからSOS団合宿を開こうと思ってるのよ」
「それで地図と格闘中ですか。それなら丁度いいところがありますよ」
「え!? どこどこ? 比婆山脈にUFOが出たとか? それとも富士樹海にツチノコ?」
「残念ながらそういうモノが出たりとかはないです。僕の知り合いが
別荘に来ないかって言ってきてるんですよ」
「別荘か、それって何処にあるの?」
「海です。」
「ん〜、普通ね。何か面白いモノとかあったりしないの?」
「それが、海は海でも無人島を買い取ってそこに別荘があるんですよ。
で、せっかく建てたので招待客を募集してるんです」
「無人島…か。それって結構遠くにあったりする?」
「もちろんです。フェリーで片道六時間強の場所にある孤島です」
「…孤島かぁ。それってクローズドサークルじゃない……」
何とか涼宮さんが興味を持ってくれたみたいです。
「うん! じゃあ第一回SOS団夏合宿は海に決定!!
このことは今度の部活であたしが言うまで誰にもナイショよ!」
「はい、わかりました。ではまた部室で」
さて、これから忙しくなりそうです。どうせなら一芝居打たないと面白くないですよね。
それから僕は機関に連絡をし、多丸氏兄弟に別荘に行く事を伝えその時の執事と
家政婦さんを雇って貰う事にしました。と言っても、全員機関の者ですが。
そして、その事件のための打ち合わせに全員が顔合わせをしました。
「皆さん、ご多忙だと思われますが、お集まりいただきありがとうございます。」
「いや、涼宮さんの事となると話は別だよ」
こう言ってくれたのは多丸圭一氏(兄)。その言葉にうんうんと頷いているのは弟の裕氏。
「それで、本日はどうしたのでございますか?」
とても丁寧な物腰で尋ねてきたのは、執事役の新川さん。
「あの…私達にもお話があるってお聞きしたんですけど…」
ちょっと不安そうなのは今回の家政婦役に抜擢された森さん。
「はい、その事なんですが。向こうで一事件を起こそうと思っているんですよ」
「一事件? なぜそんなことをするんだい?」
「それはですね………」
今回の計画を全員に伝え、反応を見てみることに。
「「「そ、そんなことを!?」」」
その案に僕以外の男性が驚きの声を上げました。そして、
ここに一人しか居ない女性の森さんは…
「え? え?」
と、未だに混乱しているようです。やはり、女性にいきなり言っても混乱しますよね。
「と言う事で、皆さん。当日、よろしくお願いしますね。」
「う、うむ…やれるだけやってみよう」
「そ、そうだね。が、頑張ってみるよ」
「私に出来る事は精一杯させていただきます」
男性3人はいい答えをくれました。でも、また……
「え? あ、あの…それって、もしかして……」
「はぁ、まだ分からないんですか、森さん?」
「ひ!? ちょ、な、何を!?」
「いえ、今回のことは失敗を許されません。なので、頭で覚えられないならその身体に
覚えさせるだけですよ」
そう言いながら森さんに近づく僕。ちなみに今回の事件と言うのは…
まあ、おいおい分かると思うのでここでは省略しましょう。
「当日に抵抗されて、涼宮さん達にばれる訳にはいかないんですよ…
すみませんが、これも仕事と思って我慢してくださいね?」
僕はそう言いながら、出来るだけ優しく微笑みました。
「そ、そんな事言われても!? ひゃう!」
「ふふ、当日と同じ事をしますからね…ちゃんと覚えてくださいよ?」
「んん! や、ああ…や、やめてく、ださいぃぃ」
この後、数時間ほどかけて森さんに当日の予行練習を行いました。
これだけ同じ事を繰り返せば、きっと当日に失敗なんてしないでしょう。
あ、もちろん多丸氏兄弟や新川さんにも当日の練習をしてもらいました。
別に当日はふりだけでもいいんですが、もし演技だと見破られてはいけませんからね…
さて、後は当日を迎えるだけですね…
本番のときに、彼女達がどんな反応をするのか楽しみです。
〜続く〜