「キョンくん・・・」 
「あ、朝比奈さん・・・」  
 
世界の終わりと始まりの危機を回避して日常に戻った俺を迎えてくれたのは天使、ならぬ涙目で飛びついてくれた朝比奈さんだった。 
「もう、もう会えないかって思った。」  
むしゃぶりつくように抱き締められる。・・・むにゅむにゅむにゅ・・・胸が胸が胸が、感動の再会も豊かなバスト。押しつけられるおっぱいの感触に流され、至福だった。  
「あーあー俺も・・・嬉しい。」 
このまま時が止まればってぐらいである。  
 
しかし!昔の人は言ったのだ。幸せは誰かの不幸せの上にあると。 
「キョ・・・ン?!」 
この少女らしくない様子で、呼び留まった災厄の火種、神の卵、涼宮ハルヒは二人のいる廊下の角に身を潜めた。  
「・・・・・・ふぅん。」 
結んだ唇にはファーストキスの感触がまだ生々しく残る。もっとも当人は夢と思っているのだが。いまハルヒは初めて感じる不快感に身を焼いていた。それた嫉妬、憎悪、惨めさ・・・それらの矛先は無意識に朝比奈みくるに向けられた。  
 
 
そして明くる日。  
ハルヒはSOS団の部室に入るなり高らかに宣言した。  
・・・ここまでが凍結中の俺の頭脳で廻った走馬灯である。  
「あのーそれは言葉通り朝比奈さん主演のAVを僕らで撮る・・・ということなんですね?」 
ハルヒの呼んだ氷河期から真っ先に芽吹いたのは古泉だった。 
ーしかし何だその冷静さは・・・つられてパニックには為らずにすんだが。  
「ちょっ、ちょっ、ちょっとまってくださ〜い!」 
キョトンとした瞳の焦点が戻り愛らしい顔を真っ赤に染め抗議の手を振りかざす朝比奈さん。  
ーそりゃまぁ、当たり前である。いくら人の好い彼女でも洒落にならない。  
「あ・た・し・が決めたのよ?」 
しかし将軍様は一蹴した。あえなく陳情は棄却された。 
ーおまえの思考回路なんぞ理解できるわけもないが、今回は暴挙が過ぎるぞ。だいたいハルヒがやればいいんだ。AVつーもんを見たことあるのか実際。  
「あるわよ!」  
ーあるのか・・・。  
「ちなみにタイトルは『汚された制服』『美少女ミルク塗れ』『拘束奉仕奴隷』だったわね。」 
腰に手を当て発声する。  
ー認めよう。おまえは普通じゃない。それをなんでウチでやるんだ。  
「そんなこと決まってるじゃない!したいからする。これ以外にある?」 
ゆらり・・・とハルヒの体からオーラの様なものが出ているのが見えるようだ。視線もいつになく強烈であった。  
ー・・・・・・無理だろ?いくらなんでも。と、誰にも聞こえないように呟く。  
「はぁ、大変そうですね。」  
ー古泉、お前も大分普通じゃない。  
長門はというと、  
「・・・」 
相変わらずであった。 
そして肝心の朝比奈さんはというと、今度は真っ青な顔で立ちすくんでいた。  
 
ー安心してください朝比奈さん。  
すっーっと前に進み出る。丁度、敵から姫を守ろうとするナイトの位置に。  
ーハルヒ!冗談でも笑えないぞ、今回は。  
ハルヒの本気の目を認め、わかっている。お前が本気じゃなかったことなんてなかった。だからこそ・・・。  
ーそんなことはさせない!絶対許さない!! 
言った。言っちまった。ハルヒの瞳が見開かれた。怒気が蒸散するようなプレッシャー。世界が揺らいでいる? 
かつて古泉にされた警告にモロに触れてしまった。古泉、長門、朝比奈さん、それぞれが予測不能の事態に対応し切れず停止している。 
 
=覚醒= 
 
そんな言葉が頭をよぎった。あとで長門に聞くところによると、タマゴの殻にヒビが入ったようなものだとか。 
古泉はセカンド・インパクトなどとのたまった。  
ーお前の組織の長とやらは某アニメに影響されちゃいないか?  
確かに揺らいだ。それは宇宙なのか、世界なのか、それともこの学校あるいはこの部屋だけだったのかもしれない。しかし確実にこのオンナが=中心=であることを皆に知らしめる現象であった。究極の自己チューである。ーなんだったんだ今のは・・・呆気にとられ間抜けな声を漏らす。世界は見たところ何の変化もない。  
 
「みくるちゃん。じゃ首輪つけて!つけたらもう四つ足でしか歩いちゃダメよ。」  
ーおい、だから人の話聞いてないのか!!  
声を荒げハルヒに掴みかかった俺に一瞥をくれ。  
「うるさい、黙れ!」ーっむ・・・。  
なぜか黙ってしまった自分。  
「キョン、カメラ用意する!」 
どうゆう神経だ。こいつは・・・。しかし俺の手にはしっかりビデオカメラが握られているではないか。これは???  
「あのーこれで良いですかぁ?」 
メイド服に犬用の首輪をつけた朝比奈さんが、ぺたりと床に両手両足をつけてハルヒを見上げている。  
ハルヒはというとご主人さま然としてリードを握り、邪悪な笑みでその頭を撫でていた。 
「イイ子ねぇ〜みくるちゃん〜。」 
息子がむくりと起き上がる。マズイこれは・  
・・変わったのはハルヒだった。ハルヒは世界を創り出す、その力が目覚めたのだった。  
「もう誰も彼女に逆らえないでしょう。」  
ーいたのか古泉。  
「まだ現象は局地的。この場で収束させることができる可能性はある。」  
ー珍しく長文だな、長門。で終わらせるには?  
なんだかんだ冷静な自分。  
「涼宮さんが満足することです。」  
「涼宮ハルヒの欲求の充足。」  
二人の回答によれば朝比奈さんは生贄であった。  
 
「じゃあ行くわよ!」 
リードを引き犬の散歩に出かけるような口調で言った。  
ーどこに行く気だ。  
と言いたかったが声帯が麻痺したように声が出ない。  
「校長室よ。」 
いやまて、テレパシーまで使えるのか。しかも何しに行くんだそれで。  
「アンタの考えてることくらい筒抜けよ。」 
いやそれはお前だけだ。  
「あっ、そのまえに・・・」 
机の上にささっていたハサミを手にして笑うハルヒ。  
「ちょ〜っと勿体ないかもだけど。」 
チョキン、チョキチョキ・・・なんと朝比奈さんのメイド服の胸部に二つ円形のカットを加えたのだった。  
「きゃっ、いやぁ」 
身悶えする朝比奈さん。艶めかしく揺れる乳房、白いブラジャー丸出しになった。  
「きゃっ、あっ」再び上がる悲鳴、するりと背中に忍び込んだハルヒの手がブラを掴  
んで引き出される。  
「おとなしくしてる!みくるちゃん。」 
ピタッと抵抗できなくなる朝比奈さん。チョキッチョキンチョキン・・・スカートを脱がされ、同じく純白のパンティが切り落とされる。 
「さて、今度こそ行くわよ!」 
この光景、一月ネタに困らないだろう。むしろ猛ける血液の行き場に困る。  
学園のアイドルは今や首輪に切り刻まれたメイド服。白い乳房とこれまた白い臀部を晒し犬這いなってペタペタとハルヒに従い外に出る。  
「キョン、ぼーっとしてないでついてくるのよ!」 
しっかりとアップで撮影しながら従ってしまう俺。このままじゃ朝比奈さんが・・・。  
幸い、なのか放課後の校内は人も少なく誰に身咎められることなく校長室に着いた。  
「失礼しま〜す。校長センセー」 
ノックもせず入り込む。執務中の校長、ハトが豆鉄砲喰った様な・・・と言う表情を学習させてくださった。  
 
 
 

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