今日もギルドの仕事は大変だった。フィルは自室に帰るなり崩れ落ちた。  
ペンキ塗りや犬の散歩など、もはや何でも屋のような雑用ばかりで、無意味に体力が消費してしまった。魔物退治とかならまだ充実感もあるのだろうが……それを受ける実力のない自分が悲しい。  
 夕食と入浴を手早く済ませ、絵の練習や夜釣りをすることなくベッドに飛び込んだ。その瞬間睡魔が襲いかかり、そのまますっと眠りに落ちた。  
 気がつけば朝――いつもなら。そういつもなら。だが、今夜は違った。  
「んふふ、おじゃましまーすっ」  
 どこから調達してきたのか、合鍵でフィルの部屋のドアを開けたその者は、小声で、そして忍び足で侵入した。  
 
(んー……)  
 意識の半分が夢の中に突っ込んでいる状態で、フィルはたしかに違和感を覚えた。  
 腕が勝手に動かされている。両腕が上に、上に。  
 がちり。  
 ぎちり。  
 手首と足首に、冷たい金属が押し付けられる。  
 ああ、まるで大の字だ。  
(んー……んん!?)  
 動けない。手と足が動かせない! モンスターに囲まれたような危機感を感じ、フィルは意識を覚醒させた。  
 テーブルには消したはずのランプが煌々と照っている。そしてその横には、ぼんやりと誰かが立っている。  
「だ、だれ?」  
 暗闇のため見えない。最悪の事態も想定したが、泥棒ならさっさと金品を強奪して逃げるだろうし、暗殺者ならさっさと首を掻ききっているだろう。  
「えへへ、こんばんは、フィルくん」  
 人影がランプに寄り、影が人になり――イヴがいた。いつもとは違い、白いシンプルなワンピースを着ている。黒色の普段着からは一転して純白。何色を着ても似合うなぁ……というのは置いといて!  
 
「イ、イヴちゃん! ちょ、これはどういうこと!?」  
「あー、これはねー」  
 しゅるり。イヴは肩にかかる紐をずらし、服を床に落とした。する、ずるり。純白のワンピースは滑るように床に沈んだ。  
 ランプに照らされた肌、細い首筋、いたって普通の女性らしい華奢な体。そして、豊満な胸、メリハリのある腰。月並みに言えば美術品のような体がフィルの目に飛び込んだ。  
「わ、うわ!」  
「こういうこと。夜伽にやってきたの」  
 イヴはベッドに飛び乗り、大の字になっているフィルの股に座り、あろうことか股間を撫で始める。  
「――というのは建前で、襲いにきたの」  
 わけがわからない。建前と本音でどれほどの差があるのだろう。いや、まず股間の手を止めてもらわないと。  
「や、やめて、イヴちゃんっ」  
「んー、ダ・メ。オネーサンがいろいろ教えてあ・げ・るっ」  
「年はそれほど変わらないし……」  
「黙って」  
 語尾にハートマークがつきそうな甘い声で制する。ツンと指先で唇を弾く仕草が少女らしさを増すが、いかんせん裸体であると『女』の香りが強かった。  
 
 イヴはフィルの顔に寄った。あと数センチで鼻が当たってしまうような距離。フィルはイヴの整った顔つきに胸が鳴った。普段は友人としての距離が、物理的に狭まることで精神的な距離さえ縮まったように感じた。  
「私の体、どお?」  
「え、う」  
「オナニーではさんざん想像されていたのかな?」  
「うっ……」  
 否定はできない。健全な男子には酷な質問だ。もちろんイヴはわかってのことだ。ちょっとした言葉攻めである。  
「舌」  
「え?」  
「舌、噛んじゃダメだからね」  
 何のことだろう。そんな疑問は、舌をねじ込まれた瞬間理解できた。  
 イヴに唇を捕らえられた。そして舌が歯をなぞっている。何度も何度もなぞられるうちに唾液がゆるゆると入ってくる。  
 何て濃厚なのだろう。フィルは気づかぬうちに、それこそ本能が働いて舌を伸ばした。イヴはそれに絡み、フィルとは初めての性的な交流を行った。  
 その間もイヴの手はフィルの下半身を撫で回す。硬さを帯び始めるそれに、イヴは嬉しさと、経験のない少年をモノにできるという支配、そしてオスの雰囲気を感じたことで興奮していた。  
 
「ぷは……そろそろかな?」  
 唇を離し、唾液の糸を指で絡めながら様子を見る。フィルの感度、自分の濡れ具合。キス一つで濡れてしまうのは、このシチュエーションのおかげだろう。  
「では、失礼」  
 チャックを軽くつまんで開く。すぐ上のフックも外し、フィルの興奮を表すそれを外気に晒す。  
「あ、あ……イヴ、ちゃん……」  
「あは、ビクビクしてる。ちょっと触っただけでイっちゃいそ」  
 フィルと正面を向き合うようにそれとも向き合う。さて、手で遊ぶか口で味わうか。先走っている粘液を親指の腹に塗り、すりすりとさする。  
「やめ、イヴ、ちゃ、やめ、ああああ!」  
 びく、び、ぐ。それは大きく震え、白い欲をイヴに降りかけた。  
「わ、わっ」  
 ぼんやりと触っていたため、顔や胸に叩きつけられた。まあ体はいいとして、シーツをどうしようか……それも別にいいか。  
 それにしても早いなぁ。というかウブ。かわいいなぁ。  
「もうっ、濃い〜1発目はイヴの中にほしかったなぁ」  
 胸元の精液を指ですくい、ペロリと味わって一言。それでもあと1発ぐらいは大丈夫だろう。  
 
 さすがに2発目は体内に頂きたい。円滑に挿入するために、イヴは口内に唾液を溜め込み、それをかぶせるようにフィルのそれに食いかかった。  
「あ、ああっ!」  
 初めてでこれほど激しい食いつき。イヴにしてみればただ咥えるだけのことだが、感度の高ぶったフィルにしてみれば硬さを取り戻すには十分すぎた。  
「ん、んん、んくっ」  
 じゅぼじゅぼと、あえて音を立てながら貪る。この音の出し方、目線、そしてテクニック、どれも相手を興奮させるように練習してきた。彼の表情を見れば、どれだけ興奮しているかがわかる。  
 あまりやり過ぎると2発目は別の意味で体内に取り入れてしまうことになる。それはまたの機会にするとして、イヴは股を開いてまたがった。  
 フィルのそれが真下にある。考えるだけで心を下半身がうずく。  
「それじゃ、いただきまぁす」  
 ずぷっ。先端を咥えた。フィルは声にならないのか口を金魚のようにパクパクとしている。  
「ん、きもち、いぃ」  
 やはり背徳感だろうか、深いところへ誘うほど心がギンギンと熱くなっていく。  
 すべてを飲み込んだころ、フィルは荒い息だけを吐いていた。  
「まだイっちゃダメだよ?」  
 
 フィルの服を肌蹴させ、胸元を何度も撫で回す。彼の小さな突起をくりくりと弄ると、かわいい声で鳴き始めた。  
「あ、あっ……あぁ」  
「男の子もここ弱いんだよね」  
 腰を動かさず、ただ体を弄るだけ。もう少し下半身で彼を感じたいというものあったが、少しばかし彼への仕返しというものあった。  
「さってと、そろそろ」  
 体を反り、斜め前に上がるように腰を浮かし、そのまま戻す。男が最も感じるであろう騎乗位の動作を何度も繰り返す。  
「あ、あっ、あっ!」  
 早くもフィルの声が甲高くなってきた。今イかれてはさすがに満足できない。腰を止め、けれど彼の感度を下げないように愛撫することにした。  
 顔を落とし、キスをする。そのまま耳元に舌を這わし、甘ったるい声でわざと喘いで見せる。指は腰を撫で、わずかに神経を刺激する。  
「イヴ、ちゃん……俺……っ!」  
「ん、なあに?」  
 答えはわかっている。それでもあえて聞き返す。  
「イきたい……イかせて……」  
 言わせた。そう、これが、これが聞きたかった。  
 
「うんいいよ。イヴの体でたくさん感じてね」  
 腰の動きを再開させる。片手の指を唾液で濡らし突起を弄る。上半身と下半身、両方から攻めてたてる。  
「あ、うぅん……フィル、くん、気持ち、いい!」  
「お、俺も……俺も気持ちいい……っ」  
 少なくとも今は彼の心は私に堕ちている。あのコにはできない方法で、カレを振り向かせている。  
「あ、あ、俺、イ、く、イク!」  
「うん、イって、イッていい、よ!」  
 ず、ずぅ。さすがに量は少ないが、下から熱い液体が膣内を叩いた。深く差し込み、その痙攣を膣で感じ取る。まだ硬いが、三発目を出せるほどのものではない。  
「はぁ、はぁっ……気持ちよかったぁ」  
 繋がったまま、イヴはフィルに倒れ込んだ。フィルは荒く呼吸をしたままだった。  
「ねぇ、次はいつしよっか? というか、したい?」  
 フィルは答えない。けれど首を縦に振った。  
「やったねっ。じゃ、次はお風呂場で楽しいことしようねっ」  
 最後に濃厚なキス。フィルも舌を出し、ぬるぬると絡ませ合った。  
 ふと力を抜いてしまい、接合部のところから精液が漏れてきた。イヴは慌てて力を入れた。  
 
 

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