日付が変わるころ、家にまで持ち帰った仕事も一段落し、サラサは腕を伸ばして肩を鳴らした。  
 情報漏洩が大きな問題となっている昨今だが、この時期は大勢の人々がイシュワルドへ移住し、それに伴い居住権やギルド員の申請などが増加する。加えて内部では人事異動もあり、人がいてもまともに使える人間がいないような状態になっている。  
 新人の面倒を見つつも、自分の仕事をこなす――最近は後者がうまくいかず、こうして仕事を持ち帰ることもしばしば。はかどるとは言いがたいが、なにもしないよりはよっぽどマシであった。  
 書類を封筒で外部の目から守り、カバンへ入れる。夕食代わりに片手間に食べていたサンドウィッチをすべて平らげ、皿を洗う。  
 明日のスケジュールの確認、身の回りの整頓、シャワー。軽く身だしなみ、明日の運勢を星占いで確認。すべてを一時間少々で行い、ベッドの中に潜り込む。メガネはケースに入れずにベッド脇のテーブルに放置。疲れていると変にずぼらだ。  
 今日も疲れた。やりがいはないわけではないが、それでも疲れる。ここ最近は気疲れに近い。人の動きが多いせいだろう。  
 
「ん………」  
 本当なら早く寝てしまいたい。泥のように眠って、気づけば朝日を浴びていたい。それなのに。  
「ん、ん……」  
 手が胸を押さえ、指でふにふにとこねる。ここはそこまで性感帯でもないのに、小さく喘いでしまう。  
 おそらく動物の本能だろう。疲労しているほど、性的な興奮が湧きあがってくる。種を残そうとする、欲求、本能。素直にそれに従っているだけなのだ。  
「ん、んんっ」  
 パジャマのボタンを外し、直に触れてしまう。ここまでエスカレートしてはもう止まらない。無理に止めてほてりを残すよりも、しっかりとやり切ってしまうほうが寝付きもよく、疲れの明日に残らない。  
「あ、はぁ、ん」  
 指先を唾液で濡らし、胸の突起に刷り込むようにこりこりと摘み上げる。唾液がローションのようになり、感度をさらに引き上げてくれる。  
 胸の感度を上げたところで、再びこねる。どうやら性感帯でないにしても感度はいいらしい。ぞくぞくと鳥肌が立ち、びくびくと震える体はくの字に曲がってしまう。  
 
「は、はっ、はっ」  
 息が絶え絶えになるころ、サラサは手を休めて下半身を覆う布の類を一気に下ろした。下半身はシーツの感触を味わい、改めて裸体に近い姿であることを認識させてくれる。  
「あ、あぁん……!」  
 腹部に手をあて、ゆっくりと下ろしていく。下腹部、そしてうっすらとした茂み。ついには、温かな粘液をまとっている秘所へ到達した。  
 男を受け入れるほど濡れているわけではない。入り口付近をコーティングするように湿っている程度だが、中指と薬指を口に含み、めいいっぱい唾液で満たして秘所に挿入した。  
「あぁぁぁぁぁっ」  
 異物であるはずの指が、まるで歯車同士が噛みあったように性感をダイレクトに伝えてくれる。自分の指では浅いところまで入らないが、それでも届くところまで膣内の壁を優しく引っ掻く。  
「ああ、あん、あぁんっ」  
 空いた手で下腹部を押さえる。膣内が下がるのか、指先で捕らえやすくなる。何度も指を動かすうちに、手のひらやシーツをべとべとにしてしまうほどの愛液が漏れてきた。  
 
「そろ、そろ……」  
 テーブルの引き出しから、細長いものを取り出した。隠語ではオトナのおもちゃと言われているものである。それを口に含み、擬似フェラチオにて唾液というローションを塗り込んでいく。  
 たっぷりと濡れたそれを、それ以上にぬとぬとになっている秘所にあてがい、ゆっくりと押し込んでいく。  
「あ、あ、あ、あ、あっ、あっ、あっ!」  
 入っていく。入る。入った。根元までぱっくりとくわえ込み、膣内はめいいっぱいに満たされた。  
 けれどここからが本番。今日応対をした男性の顔、名前を記憶から引っ張り出す。職業柄、名前と顔は一度覚えたら忘れない。  
 ギルド員志望の青年の顔を思い出し、その彼のモノが挿入される、という想像を膨らませる。不思議とおもちゃが熱を帯びているように感じられる。  
「あん、いい、イイ、そこ、ソコっ!」  
 ゆっくりとグラインドを開始するも、それだけでは物足りない。びりびりと痺れる感覚のまま激しく動かしていく。  
 彼が必死に腰を動かしている。時折耳元で甘い言葉を囁き、小さく喘ぎ、しっとりと汗をかきながら愛してくれる。  
 
「――、――!」  
 小さく相手の名前を呼ぶ。しかし現実では相手は無機物で、果てることはない。サラサは自分の意思で、自分の好きなときに達することができる。  
 相手がすべてを放出しようと腰を動かす。想像と本能がぐちゃぐちゃと混ぜながら激しく、激しく動かしていき――  
「イ、イ、く、イっちゃ、わたし、いっちゃ、ああああああ!」  
 びぐんっ。きつい締め付けはおもちゃをぱくぱくと波打つ肉壁で咀嚼する。最後に体内で熱い粘液を放出されたことを思い描き、彼に別れを告げる。  
どっと出た汗は肌はもちろんシーツまで届いているようにも感じられる。少なくとも、下半身にあたるシーツはべとべとだ。  
 汗をかいて気持ち悪い。けれど、深い睡魔が襲ってきた。最近はいつもこうだ、達したあとすぐに眠って、翌朝、シーツとおもちゃを片付けて――  
 薄れる思考の中、サラサは眠りについた。愛液まみれのおもちゃは、寝返りの際に蹴飛ばし、ベッドから落ちていった。  
 
 

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