少年にしてみれば、そこそこ熟練したギルド員にとってはした金でも大金であった。  
 ドブ掃除、市民広場のトイレ掃除、ペンキ塗り……家の手伝いとほどんど変わらない依頼をいくつも受け、少しずつ金をかき集め、ようやく4桁中程まで貯めることができた。  
 血液にも似たその金をポケットに詰め込み、ある店の前にいた。たった数十分を買うために。  
 店に入ると、無愛想な店員が出迎えた。  
「何番?」  
 顔写真と、その端に書かれた番号。それから選べ、という意味だ。別に選ぶ気はない、目当ての娘はとっくに決まっている。ただ何番か知らないだけで。  
「……6番」  
 トレードマークとも言える青色の髪を捜し、言った。その写真は似合わないきりっとした表情で、それでも持ち前の純粋さが見え隠れしている。  
「6番、ね……『磯の間』で待ってて」  
 部屋の名前を言うだけで案内もないまま、店員は引っ込んだ。まあこんな若造、金にならないのは当然、愛想が悪いのはしかたのないことだろう。  
 汚い壁に貼りついた、下手な見取り図を頼りに部屋に向かった。そこは狭くて少し異臭のする、毒々しいピンク色の照明で満ちた部屋。  
 少年は待った。この日のために欲望の自己処理を何日も我慢し、量を生産していた。  
 それが、あと少しで、野望と呼ぶには小さすぎる願いが叶う。まだ相手も来ていないのに、己の分身はきりきりと主張し始めていた。  
 入ってきたトビラとは別の、向かいにあるトビラが開いた。  
 ……来た。  
 
「いらっしゃいませぇ」  
 彼女は布に近い服を身にまとっていた。ここでの彼女の位置付けがすぐわかる衣装だった。  
「シ……ど、どうも」  
 つい、彼女の本名を言ってしまいそうになった。が、ぐっと押し殺した。  
「ええと、短い時間ですが、よろしくお願いします」  
 どうせマニュアル通りだろう。適当に聞き流した。  
「どうぞ、こっちへ」  
 彼女は、ベッドと呼ぶにはあまりに質素すぎる、板に厚手の布を敷いた床に少年を招いた。少年は文句一つ言わず、そこに腰掛けた。  
「当店は『本番』を除いた、どんなプレイでも体験することができます。いかがしましょうか?」  
「……とにかく、気持ちよくしてください」  
「あは、ドーテーさんですか?」  
 少年の前に中腰になり、静かにズボンのチャックに触れた。そして自分が取り出すのと大差なく、怒張している欲望が取り出された。  
「硬い……失礼します」  
 間を置き、彼女は欲望にそっとキスをした。  
「う、はぁ……」  
 彼女はいたるところにキスをして、欲望の感度を高めた。ただ唇を押し当てるだけのキス。それだけなのに、どんどんと感度が上昇していく。  
 
 どれだけ、この妄想を考えただろうか。薄汚い精液を、彼女の体内に流し込む。ああ、まだ興奮できそうだ。  
「あ、あー……」  
 彼女は口を離し、開けて見せた。でろりとした白い液体と微量な透明の液体。二つの液体がミックスされている。  
 やや量の多い精液を、舌で絡めている。これも料金の内なのだろう。ピンク色の舌が精液と絡まり、何とも言えない淫靡さを見せている。  
「! うあああっ!」  
 精液を喉に流し込むことなく――また欲望を咥え込んだ。先ほどと違い、別の液体も潤滑油となり、激しすぎる粘度と温度が包み込む。  
「ん、んぐっ」  
 じゅる、じゅるっ。欲望が痛いぐらい吸い込まれ、液体をすすっている。  
 じゅば。口から開放された欲望は、ほんのりと白かった。  
「お掃除フェラならぬ、汚しフェラでしたっ」  
 気持ち良すぎた。フェラの技術はもちろんのこと、この『汚しフェラ』とやらは彼女を奴隷にしている感覚を与えてくる。  
「こういうの毎度してるの?」  
「気に入ったお客さんにだけですよ。普段はすぐに吐き出します」  
 社交辞令かもしれないのに、それだけでまた硬さが戻ってきた。  
「わ、もう硬くなってる……じゃ、次は横になってください」  
 言われるがままに横になると、彼女はズボンに手をかけて脱がそうとした。  
「な、何を!?」  
「んー、『本番』。ちょっと興奮しちゃいました」  
 あっという間に下半身が裸になった。そして、布の服を捲くるとそこはすぐに彼女の性器があった。  
 
「もう濡れてますよー」  
 指で秘所を押し広げ、天井に向かっている欲望を入り口に着けた。  
「あ、あ、はい、る……!」  
「ふふ、ドーテーさん、いただきまーす」  
 じゅぼり。彼女が少年を食べた。  
「は、はぁぁぁぁぁぁっ」  
「んん、おおきっ……動き、ます……!」  
 股を大きめに広げ、彼女はやや斜めに動き始めた。  
 さっきのフェラとはまた違った快楽。いや、彼女を犯しているという事実が、快楽を増していっている。  
「はあ、あぁんっ。おきゃくさん、おおきぃっ……!」  
 どんどんと彼女の理性が剥がれ落ちている。股の欲望だけでは足りないのか、手は胸に伸び、ぎゅうぎゅうと揉みほぐしている。  
 少年の理性もほとんどなかった。初めての体験、彼女との性交。それらすべてが、少年の肉欲を満たしていく。  
 そして、少年は落ちた。言ってはならない、それを言った。  
「シ……シオ、さん……あああああ!」  
 
 ――シオには、イシュワルドという街は大きすぎた。  
 剣一本で生きていく。そう決意してやってきたイシュワルド。しかし実際は……女剣士では立ち向かえない魔物が多すぎた。山から下りてきたイノシシを退治するのとはわけが違った。  
 しかし登録した魔物討伐のギルドの解約には大金が必要だった。誰かに頼るわけにもいかない、こうしているうちにも船で知り合った年下の男の子は立派にギルドの依頼を請け負っていく。  
「もう、だめ……」  
 そう口から吐き出すころ、シオは今働いているこの店のトビラを開いていた。  
 そこでは、体さえ差し出せば金が手に入った。命がけの魔物討伐とは違う。ほんの少し我慢すれば良いだけだった。実家に帰るだけの資金を稼ぐための、苦肉の策だった。  
 だが……男性の体臭だけで秘所が濡れてしまうようになるころ、もうこの『天職』から離れることができないと、知ってしまった。  
 
「いいよ、イっていいよぉ……シオの、シオのここにたくさんだしてぇっ!」  
「あ、ああああああっっっ!」  
 とどめの一撃とも言える、シオの膣の締めによって二度目の射精がシオの膣内で行われた。  
 ドクドクと、下の口から精液が体内へ流し込まれる。  
「う、ふっ、ふぅぅ」  
 シオは笑った。膣内の少年の欲望は、硬さを失っていなかった。  
 まだ楽しめる。まだ、気持ちよくしてくれる。もっと精液がほしかった。  
 
「さぁ……次はどこに射精しましょうか?」  
 

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