ここは、水色の塔の最も上層部にあたる階。  
 おそらく、140階あたりだろう。禍々しい瘴気が充満していて、  
 普通の冒険者ならまず近づくことすらできない。  
 瘴気は時には邪悪な霧と化し、容赦なく冒険者の足を鈍らせる。  
   
「……っはぁ、はあっ……!!」  
 部屋の一角にある階段から、一人の少女――シオが駆け下りてきた。  
「はぁ……はぁっ……もうっ、冗談じゃ……ないわっ!」  
 激しい息切れ、傷だらけの体、ボロボロの装備を見れば、  
 彼女が上から命からがら撤退してきた様子がうかがえる。  
 
「ふう、ここまで来れば……」  
 シオは階段のそばの壁によりかかり、一息ついた。  
 本来ならここで癒しの構えで回復したいところなのだが、  
 精神力が底をついていた。  
 
 
――思えば、今回の探索は散々だった。  
 
 130階台の魔物には一人でも楽勝だった。  
 だから140階台の魔物にも勝てると踏んでいた。  
 少しでも上に行こうと、あえて仲間は連れて行かなかった。  
 足手まといというわけではない。ただ自分の力を試したかっただけだ。  
 
 しかし、現実は違った。  
 140階台の魔物は次元が違っていた。  
 Gキング、カオスヴァーン、フェニックスなどの強敵がたむろしていたのだ。  
 癒しの構えが追いつかず、ほぼ防戦一方だった。  
 「こんな時に仲間がいれば……」とも思ったが、  
 助けてくれる仲間は連れてきていなかった。  
 カオスヴァーン3体とフェニックス3体に囲まれ、逃げてくるのが  
 やっとだった。  
 
「くっ……!」  
 シオは壁に怒りをぶつけた。  
 負けた悔しさだけではない。自分は仲間の力が必要としていたことを  
 自覚できなかった自分の非力さへの嘆きでもあった。  
「そういえば、フィル君やルヴェルさん、ヘルシンキさん……ううん、みんなも  
 私のこと心配してくれてたな……」  
 急にみんなの言葉が浮かんでくる。  
(シオ、無理しないでね)  
(全く、お主は怖いもの知らずというか……)  
(シオ殿は女性ゆえ、無理は禁物ですぞ)  
 最初は差別されているとも思ったが、どの言葉も  
 自分を気遣ってくれている上での言葉だと気付いた。  
 
「……バカみたい。私……」  
 自嘲し、涙がこぼれる。  
 仲間の本当の想いに気付いてやれなかった。  
 自分は本当は守ってもらってばかりだと悟った。  
 
「……よし!いつまでもウジウジしてられないし、さっさと出ようっと」  
 突然立ち上がり、歩き始めた。  
(強くならなくちゃ……『みんなが心配しているより強くなる』のではなく、  
 『みんなが心配しないくらい強くなる』ようにならなくちゃ!)  
 シオの瞳には強い決意が表れていた。  
 その時、背後で何かうごめいたようだが、シオは気がつかなかった。  
 
「さ〜て、出口はどこかなぁ……」  
 だいぶ階を下り、脱出の扉がある階にたどり着いたシオ。  
 あとは扉さえ見つかれば外に出られる。  
「お腹すいたなぁ……」  
 手持ちの食糧はない。精神力・体力ともに尽きかけ、限界が近い。  
(街に帰ったらとりあえずゴハン食べよ。あ、久々にアイト君と遊ぼうかな。  
 ギルドポイントも溜まってるし、何と交換しようかな……)  
 などと考えていると、突然――  
 
「グルルルルル……」  
(――っ!!最悪……)  
 現れたのはタタカウケモノの群れ。犬と熊のような風貌で、  
 見た目通り凶暴な魔物だ。数にして、3匹。  
 だがシオにとって勝てない相手ではない。むしろ往路では  
 バサバサと倒してきた。だが今の状態ではなんとか……といったところだろう。  
「……かかってきなさい!!」  
 果敢に剣を構える。すかさず相手も臨戦態勢に入り、両者に緊張が走る。  
 
……ズルッ……ズルッ……  
 
「!!」  
 突然妙な音がしたと思うと、相手の呼吸が止まり、体が硬直した。  
 そして今さっきまで殺意に満ちた眼が恐怖に変わり、  
 まるで蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていった。  
 
……ズルッ……ズルッ……  
 
「何?この音……」  
 まるで何かを引きずるような音。音の主は確実にシオの背後にいる。  
 振り返ってはいけない。それほどのプレッシャーを放っている。  
 なぜさっきまで気づかなかったのか。  
「くっ……」  
 プレッシャーに打ち勝とうと一気に体を返して後ろを向く。  
「!!……何よ……これ……?」  
 シオは驚愕した。目の前にいるのはさっきのとはちがうタタカウケモノ。  
 だがとてつもなく巨大で、全身の至る所から不釣合いな触手が生えている。  
 触手は大小さまざまで赤く、イソギンチャクのようにうねっている。  
 足の部分の触手が地面と擦れて、ズルリと不快な音を鳴らす。  
 魔物というよりは化物と表したほうがしっくりくる。  
「気持ち……悪っ……」  
 シオはあとずさろうとするが、足がうまく動かない。  
「!あれは……!?」  
 
 タタカウケモノの腹になにか付いてるのにシオは気づいた。  
「マザー……レイ?」  
 タタカウケモノの腹には一つの巨大な黒い眼があった。  
 マザーレイは、巨大な眼を持つ幽体のような魔物で、  
 詳しい正体は知られていない。  
 タタカウケモノ自身の目には何の生気も感じられない。  
「コイツが魔物に乗り移ってるのね……」  
 いや、正確には寄生しているといった方が正しい。  
 とすれば、全身に生えている触手もコイツの影響で……?  
 いずれにしろ、放っておく事はできない。  
「闘るしかないようね……」  
 プレッシャーに押されながらも剣を構える。  
 タタカウケモノは動く気配がない。  
(来ないのなら……こっちから!!)  
「やあああぁぁっ!!」  
 一気に飛び掛かり、触手の少ない胴をマザーレイもろとも狙う。  
 
――!!  
 
「なっ――!?」  
 シオが剣を振り下ろす瞬間、いきなりマザーレイの眼が光り、  
 ドバァッと大量の触手が胴から飛び出した。  
「うっ……!」  
 シオが怯んだ隙を逃さず、大量の触手はシオの腕を絡めとり、  
 地面に叩きつける。  
「きゃあっ!!……痛ぅ……――!?」  
 カランと乾いた音を立てて剣が落ちる。  
 化物はなおも攻撃を休めず、触手を絡めたままシオを軽々と吊り上げる。  
 もはや何の抵抗もできないシオに向かって次々と触手が伸びていく。  
「い、嫌ぁぁ……」  
 ついに首に触手が絡みつき、少しずつ締めつけていく。  
「ぐっ……やめ……いやぁ……」  
 触手にはウナギのようなヌメリがあり、肌と触れるほどに気持ち悪さを増す。  
 シオは今にも途切れそうな意識の中で必死にもがく。  
 意味の無い事だとは思っていたが。  
(うっ……もう、ダメ……かも……ゴメンね……みんな…………  
 ゴメ……ンね……フィル…………く……)  
 そこまででシオの意識は途切れた。  
 
 タタカウケモノ、いや化物は、シオが動かなくなったのを確かめるように  
 触手を這わせ、動かないと感じたのか、腕以外の触手を外し、  
 引きずるようにしてシオを奥の部屋へと連れ込んでいった。  
 
「うっ、うぐっ、うう……」  
 光の無い暗闇の部屋の中でシオの意識が戻る。  
 目が開いてるのか閉じてるのか分からないほど暗い。  
 自分の声ともいえない声が反響しているだけで、他に音は聞こえない。  
(……何なの……一体……?)  
 体に力が入らず、言いたい事が口に出せない。一体自分は――  
 
 ガラガラッ!!  
 
 風のいたずらか偶然か、壁のほんの一部分が崩れ落ちた。  
 その隙間から漏れてくる光は、部屋の状況を知るのに十分だった。  
「!!……い、嫌あああぁぁぁっっ!!」  
 シオは悲痛な悲鳴を上げる。  
 目の前にいるのはもはやタタカウケモノとしての原型はなく、  
 中央に大きな目のある触手の塊と化していた。  
 無数の蛇のような触手が自分の下半身に巻きつき、  
 柔肌のあらゆるところに潜り込んでグネグネと蠢いている。  
「うっ、うぐぅぅぅっ!!ああっ……」  
 ひときわ太い触手が下着との間から入り込み、中をかき回す。  
 既に気絶している間に入り込んだらしく、シオの中でいくらか  
 粘液を吐き散らしていた。  
「だ、だめえぇ……これいじょ、ひぐううぅぅっ!!」  
 少女の悲痛な叫びは化物に伝わるはずもなく、さらに触手を潜り込ませていく。  
 行き止まりのような膜に達したところで、一瞬触手の動きが止まったように見えたが、  
 次の瞬間、シオの中で激しく暴れだした。  
「んんんん、あひぃぃぃっっ!!」  
 芋虫のように凹凸のある触手が内壁を激しく擦っている。  
 触手の表面はザラザラしていて、内壁の突起を何度も刺激する。  
 そっちの経験が全く無いシオにとって、到底耐えられるものではなかった。  
「あああぁぁぁっっ!!ひぃやああぁぁぁ!!……!!……」  
 一瞬魂が抜けるような感覚だった。  
 シオは体を痙攣させ、力が抜けていくような気がした。  
 もはや指一本動かすことさえできず、声だけの出る人形となっていた。  
 
 近くに人がいれば助けてくれるのだろうか……いや、見られるのが恥ずかしい。  
 そもそも水色の塔に入るだけでも少ないのに、130階といったクラスに  
 上れる冒険者なんて、シオを除けば指を折るくらいしかいないハズだ。  
 しかもここは隠し部屋のようで、見つけることも困難そうだ。  
 
(私に……力があれば……こんなヤツ……)  
 悔しい。睨みつけようとするが、顔の筋肉まで弛緩して、表情がうまく作れない。  
 どうやらこの化物の粘液には軽い麻酔作用と催淫作用があるらしい。  
 シオの中は自らの液と粘液が混じりあい、ドロドロに溢れている。  
 ただ虚ろな目のまま、終わるまでいいようにされるままだ。  
「!?な、何?……ひいいぃぃぃ!!」  
 一度休んでいた触手がまた激しく暴れ始める。  
 今度はシオの中にある膜を集中的に攻めていく。  
「い、痛い、よおぉぉ!!」  
 触手が力をこめて膜にめり込むたび、シオのなかでミリミリと軋む音が響く。  
「ひっ、いぎっ、ぎぃぃぃぃぃっっ!!いあああぁっ!!」  
 ついに触手はシオの膜を貫き、消えない刻印を刻み込んだ。  
「いぎっ、うっ、うえぇ、ん……」  
 その刻印の重みを背負ったシオは、顔を歪ませて嗚咽を漏らす。  
 太股からは愛液と粘液に混じって赤いものがにじみ出てくるのが、  
 まぎれもなく刻印の証拠だった。  
(なんで……こんなヤツに……畜生…………畜生!!)  
 言いようのない悔しさと羞恥心の混ざり合った感情が頭を巡る。  
 そして――  
(ごめんね……フィル君……)  
 頭の中に一人の少年が浮かぶ。  
 無意識に浮かんだのは、シオにとってこの少年が最も大切な存在だったのかも  
 知れない。そして、初めてを許すことができる人だからかも知れない。  
 シオの頬に涙がつうと伝う。  
 
 しかし、シオの大切なものを奪った化物は無情にシオを弄び続ける。  
「!!……いぎっ!!ああああっっ、ぐうぅぅっ!!」  
 貫きながらもなお触手はシオの中で暴れ続ける。  
 さっきよりもさらに深く、より激しく――  
 もう何回昇天しただろうか……催淫液の影響で愛液が止まらない。  
 それどころか平衡感覚すら消え失せている。  
 指一本でも動かすほどの力すらも――  
 触手は前の穴だけでは飽き足らず、後ろにも触手を伸ばす。  
「……!!ダメッ!!そこは……あ、あふ……」  
 シオの懇願など受け入れず、触手は穴の周りをサワサワと這い回り、  
 ついに先端から入ってきた。  
「ぎいいっ、うあああっっ!!痛い、痛いってばあ!!」  
 深く入るごとに触手は太さを増し、比例して痛みも増す。  
 先端は直腸内でビチビチとはね回り、腸壁に当たって刺激を繰り返す。  
 一通り暴れると、またあの粘液を吐き出す。  
「うああぁぁっ、あ、熱……い……」  
 無理やり入った異物にさらに異物を撒き散らされ、シオの体は限界状態だった。  
 前にも後ろにも触手を詰め込まれ、攻められ、暴れられていた。  
 ブルブルと腰を震わせ、シオは何度も絶頂を迎えていた。  
 
 さらに極細の触手が何本にも枝分かれし、野太い触手に貫かれた周辺を  
 丹念に探っていく。  
 一本は前の穴の突起を探り当て、器用に包皮をはがし、中身を  
 むき出しにしていく。  
「ああっ、そこ、くふううぅぅっ!!」  
 最も敏感な一部分を触手はつまむように締め付ける。  
「あひっっ!!ひっ、ひゃめえぇぇ……」  
 痛みに近い快感が走り、シオは体をくねらせる。  
 それでもまだ余っている触手は、弄る穴を探すべく、執拗に探っていく。  
 性器を這い回り、触手の一つが小さな穴を探り当てる。  
「ひぃっ!!そ、そこは……」  
 排泄のための小さな尿道口。不浄で密やかなるその穴さえも、  
 触手の先端は見逃さなかった。  
「動いてる……そこは……入らな……その、その穴は……」  
 触手の先端が触れたかと思うと、管状の触手が一気に流れ込んできた。  
「きゃあああぁぁぁぁ!!あぎぃぃぃぃっ!!」  
 針金のように細く伸びた触手は、ズルリと音をたてて膀胱にまで達する。  
「いやああぁぁっ、う、動いてるうぅぅっ!!きゃあああぁぁぁぁ!!」  
 尿道を締める横紋筋を押し開いた触手は、膀胱の中で暴れまわる。  
 内壁に何度も触れ、激しい痛みとともに何かがこみ上げてくる。  
「ああっ、もう……出ちゃうっ!!出ちゃうよおおぉぉぉぉ!!」  
 次の瞬間、シオの股間から熱い湯気が立ち上がった。  
「ああああっ!!……あ、ああぁ……」  
 それは強制的に催された失禁行為だった。触手を尿道につき立てたまま、  
 シオの太股から黄色い液体が流れ落ち、周囲に小さな水溜りを作る。  
 それでもなお触手は膀胱の感触を楽しむように、何度も刺激していた。  
「ひあぁっ、も……う、ダ……メ……………」  
 体も心もズタズタにされたシオは、もう意識を保つことさえ難しかった。  
 ただ心の中が悔しさや悲しさでいっぱいで、耐えられなかった。  
(強く……ならなくちゃ……)  
 その一念がシオの意識を保っているようだった。  
(ツヨク・・・・・・ナラナクチャ・・・・・・)  
 心の中で何度も繰り返す。  
(ツヨク・・・・・・ナラ・・・・・・ナク・・・・・・チャ・・・・・・)  
 これまでのショックからか、シオの意識がまた途切れる。  
 
「…………ん……」  
 シオは目を覚ます。目の前には、もう化物はいない。  
 遊び尽くして行ってしまったのだろうか……  
「う……ぐ……」  
 動けない。あれだけボロボロにされたから当然だろうか。  
「くっ……」  
 さっきのことが嫌でも脳裏に浮かぶ。焼きついているだけで  
 決して忘れる事を許されない。それが、屈辱――  
 
 誰にも知られることはない。  
 誰にも知られたくもない。  
 
 何事も無かったように振舞いたい。  
 ただそれだけ……  
 
――ギルド寮  
 
「シオ……どうしたんだろう……」  
 寮の一部屋では、ギルドの少年、フィルが心配そうな顔つきでいる。  
 一人でも大丈夫といって単身水色の塔に行ったまま、戻ってこない。  
 やっぱり無理やりでもいいから付いて行った方が良かったかもしれない。  
 外は既に夜。シオが水色の塔に行ってから8時間は経っている。  
「やっぱり、探しにいこう!」  
 フィルは装備を整えて、単身水色の塔に行く準備をする。  
 と、その時――  
 
 コンコン  
 
 軽いノックの音が響く。  
「はーい」  
「フィル君……」  
「シ、シオ!?」  
 突然の来訪者はシオだった。  
「ちょっと、どうしたの!?こんな時間に……」  
「うん……ちょっと、話がしたくて……ダメ……かな?」  
「ううん、いいよ。上がって」  
「……ありがと」  
 フィルはお茶を入れながら疑問に思った。  
(こんな時間にシオが訪ねてくるなんて……珍しいな)  
 その後は二人で単なる雑談をしたのだが、フィルには  
 どうも彼女に違和感を感じていた。  
 おかしい……いつもの彼女じゃない。  
 いつもの明るさと違い、なんだか今日は見せかけの明るさに見える。  
 まるで、何かを隠しているかのように……  
 意を決して、彼女に尋ねる。  
「シオ……何か……隠して……ないかな?」  
「…………」  
 急に彼女の顔が曇る。  
「何かあったら、相談に乗るよ……それで……来たんでしょ?」  
「…………」  
「…………」  
「……ちぇっ、やっぱりフィル君には……嘘つけないや」  
 ばつの悪そうな顔をしたシオの頬を、涙が伝う。  
「ちょっ、シオ!?どうしたの!?」  
 慌てて駆け寄るフィル。明らかに動揺している。  
 拭っても涙は止まらない。  
「う、えぐぅっ、フィル、君……えっぐ……」  
「シ、シオ、落ち着いて!」  
「うえぇ……ヒック……助け……て……」  
「……シオ?」  
「助けて……フィル君……」  
 少女は悲痛な叫びを上げ、少年に泣きついた。  
 
 

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