シオ=ミサキは街のアイドルと言っても過言ではない。それもひとえに写真集が出回ったおかげでもあるが、主なところは彼女の明るさだろう。  
 若くして、しかも女性でギルドに通い、しかも魔物討伐だけを請け負う。そんな彼女に憧れる女性たちも多いという。  
 元々はオークトラビス共和国出身で、移住船からやって来る際にフィルとも出会った。最近では二人の仲は、今までの親友という間柄から進展していると噂されている。  
 さて今回は、シオとフィルが少し意識し始めたころのお話。  
 
 蒸し暑く、汗が衣服に張り付く季節とはいえ、夜もふければ暗闇が押し寄せる。こんな時間になると、人の影もちらちらあるかないかぐらいである。  
 シオは倉庫が立ち並ぶ、薄暗い港にいた。夜の冒険が嫌い(おそらく夜に出歩くことが嫌いなのだろう)な彼女がこんなところにいることを、不自然がる人間は周りにいなかった。  
 今の彼女には、いつもの明るさはなかった。むしろ、いつもとは逆の、どこか負の感情があるように見えた。ただ、その顔に絶望はない。けれど諦めの色に染まっていた。  
 多くの倉庫からたった一つの倉庫に寄り、ぎぎぎと軋む音を立てて扉を開ける。そこはたしかに暗闇だが、ぽつぽつと明かりが灯っている。  
 無用心に空いているトビラ、灯るランプ――これは誰かがいる証拠である。  
 シオはこそりと入り、また音を立てながら閉めて奥へ入っていく。倉庫内の、荷物が積み上げられた迷路を歩む。主に豆や米などといった食料品だと薄く感じる。  
 さらに奥へ行くと、不自然に出来た曲がり角と、そこから妙に漏れる明かりがあった。シオは足を止め進むと――  
「やあ、シオちゃん」  
 最奥のエアポケットに、小麦粉だろうか、それが詰まった荷物に腰掛ける男が一人。ここだけランプが入念に置かれていて、男の顔がよく見えた。  
「今夜も来てくれたんだね。嬉しいよ」  
「………」  
 
 男は嬉しそうにつぶやくが、シオは何も応えない。  
「ほら見てごらん。キミの写真集だよ。今日発売だったからつい買っちゃったよ」  
 手に持つ本をシオに見せる。あれは、先日何冊かにサインを書いた、たしかに最新刊だった。  
「いやぁ、変な店主に言いくるめられてね。これと保存用と知人に譲る用と何かあったとき用、四冊も買っちゃったよ。もっといい写真、持っているのにね」  
 ニタリ。そんな音が聞こえてきそうな笑み。フラッシュバックする、ある光景。  
 シオは息を飲む。そして、覚悟を決めて行動した。  
 服のボタンを一つ一つ外す。胸元のリボンを解き、脱いだ上着をするりと床に落とす。それを控えめな下着が見えるまで繰り返し、下着となったとき、かちりと金具と解いて床の服の上に置く。  
 彼女の小ぶりな胸が、それを隠そうともせず下半身へ手が進む。動きやすいように切ったミニのズボンを、靴で汚さないように丁寧に脱ぐ。  
「あっ……」  
 白い下着をするりと脱いだとき、彼女は小さく鳴いた。そこは、わずかだが湿気を帯びていた。あえて男の顔は見ないが、いつもの笑みを浮かべているだろう。  
 ものの数十秒で、シオは靴と指先が外気に出ている皮手袋、ニーソックスだけとなった。男はそんな彼女の姿をじろりじろりと見つめる。  
「いつ見ても綺麗だねぇ。ま、写真でずぅっと見てるけどね」  
 内心もこの感想通りだが、いささか不服だった。たしかに、目の前の彼女は恥ずかしいだろうが、日増しに屈辱の色が薄れていっている。  
 さて、どうしたものか。  
「おいで」  
 男の言葉に何も答えない。だがシオはすぅっと男との距離を詰める。そして男のすぐそばで四つんばいとなり、指先をそっと秘所に沿わす。  
「うん、んっ」  
 指をそこで上下に動かす。静かな空間に、小さなぴちゃぴちゃと液体の擦れる音が響き、シオの頬が自然と染まっていく。  
 
「あ、あつ、ぅう……」  
 しばらくして、秘所の上部――豆粒のような突起をこりこりと掻く。空いた手も暇はなく、小ぶりの胸をこねる。  
 男は何もしない。だがそれがシオにとって、恥ずかしさを増す行為であった。  
 男のすぐ近くでオナニー。これは数多い命令の中の一つである。  
「しっ……」  
 シオの口は言葉を発さず、ぱくぱくと動く。ごくりと妙に溜まった唾液を飲み込み、再度言い直した。  
「失礼しますっ……お、オチンチンを、しゃ、しゃぶらせていた、だきます……!」  
 そして、これも命令の一つ。  
 この二人は出会いはごく最近であった。ギルドの依頼の中の「盗賊退治」――よくある依頼を、シオは引き受けた。ただ、いつもの「盗賊退治」のわりにはランクと金額が高かったことを彼女は見落としていた。  
 依頼書にあった場所に着いたとき、そこにはたった一人――それこそがこの男――がいた。盗賊と呼ばれる割には妙に礼儀正しい。シオの第一印象はそんな感じだった。  
 そこで油断したわけではない。いや、わずかながら油断はあったのかもしれない。剣を抜いた瞬間、後頭部に強い衝撃が襲い、気がつけば男に見下ろされていた。  
 次に発した言葉をシオは決して忘れない。  
「盗賊だって魔法は使いますよ。あと、フィルムの現像も、ね」  
 男はシオのことを女性とは見ていないだろう。あの後の処女喪失のとき、路地裏で、公衆トイレで、倉庫内で。彼はキスや言葉の一つもなしに、シオの唇や精神を犯し、穴として扱っている。  
 シオは馴れた手つきでズボンを脱がし、彼の物を取り出す。すでにいきり立った物はシオの前でぴくぴくとその怒張を主張する。  
 シオは胸をこねていた手を離し、その手の指で優しく彼の物を握りゆっくりと上下にしごく。何度かすると物の先端から透明な液体が出るころ、シオは舌でちろりと掬い取る。  
 何度かしごいて、液体を舌で掬う。次に、男にも見えるように舌の腹でれろれろと亀頭の裏側を叩くように舐める。  
 
 ち、ち、と指先が唾液を弾く小さな音が耳に入る。  
「ちょっと痛いな。濡らしてよ」  
 無言で頷き、口を大きく開けて物を含む。このときはしごく動作を留めて、とにかく奥まで突っ込み、溜まった唾液を舌で絡める。  
「……! う、ぇ、えぇ……」  
 えずいたところでようやく離す。自分の唾液で濡れた物を、またしごく。にちりにちりと独特な音は聞きたくなかった。  
 このときまで、秘所をいじっている指はまだ動いている。手の平までねとねとになるころ、中指と薬指を穴に入れ、膣の上側を掻く。  
「あ、ぁぁぁっ」  
 愛撫しているのはあくまで自分。普段は剣を握る両手が、今は片方は自分を、片方は男を愛撫している。  
 ――あ、だめ!  
 シオは一物を食らいつくように口に突っ込んだ。ぼんやりとしごいていると、膣から放たれる快楽に負けてしまう。  
 えずきを我慢して、口で一物をしごく。  
「かわいいよ、シオちゃん」  
 そんなシオは、ペットを可愛がるように頭を撫でる。彼女は髪はよい香りがする。それだけで男は興奮する。  
 少し前まで純心無垢な冒険好きの少女が、今や処女を奪い、裸で、オナニーをしながらしゃぶってくれている。脅迫と調教の賜物だが、この好条件の中で、男はどうも乗る気がしなかった。やはりシオの屈辱感が薄いように感じる。  
 これではせっかくのシチェーションが台無しだ。  
「ねえシオちゃん……フィルくんのことを考えてみてよ」  
「――!」  
「噂だよぉ。あのシオちゃんに、てね。ほら、彼のことを考えてフェラとオナニーしなよぉ」  
 シオは口内の物を抜き、いやいやと首を振る。うっすらと、悲しみの表情も見れる。  
 ああ、これだ。この、今にも泣きそうな彼女をさらにどん底へ落としたい……!  
「嫌だじゃねぇよ、さっさとフィルフィルって言いながらしろよ!」  
 ――と、いけないいけない。男はシオの頭を撫でながら落ち着く。自分の悪い癖に叱り付ける。  
「さあ、やってごらん」  
「ん、あ……」  
 
 この男と知り合ってまだ日は浅いが、今のように豹変することがたまにある。こうして落ち着いたように見えるが、命令通りにしないと手痛い仕置きがある――シオは学んでいた。  
「フィ、ル、くん……フィルくん……」  
 思いを寄せる少年を頭に浮かべながら、自慰行為と、男への奉仕を再開させる。こんなとき、たいてい思い描く人との良い思い出が頭を過ぎる。それがさらに罪悪感を募らせる。  
「ごめんね……フィルくん……あ、ぁあ」  
 どれだけ申し訳なく思っていても体は正直で、男の象徴を味わいながらのオナニーは彼女に強烈な快楽を与える。  
 ――その表情いいねぇ。それが見たかったんだよぉ。  
 シオの罪の意識と、悲しみと、屈辱と、怒り。ようやく男の征服欲が満たされた。  
「さあシオちゃん。イってごらんよ」  
 男の誘いにシオは物を口に含んだまま固定させて、両手で秘所を責め立てる。首が痛いが、今までの経験だとこうするほうが早くイけることを学んでいた。  
 右手で豆粒を掻き、左手で膣内を掻く。  
「ふ、ふぅ……!」  
 ぴくぴくと痙攣し始める。シオの首筋が小刻みに動き始めると、絶頂までのカウントダウンが始まる。これは男だけしか知らない。  
「ふぅ、ぅ、ふぅんぅぅぅ!」  
 びく、びくっと、大きく震えてシオは止まった。絶頂を迎えてシオはうまく体を動かせないが、口から物をずるりと抜いて、愛液だらけの指で上下にしごく。  
「いいよいいよ、シオちゃん。イったキミは本当に可愛い」  
 まるでオーケストラを聴いたような酔い。けれど男の言葉はシオに響かない。  
 彼女の心はがらんどうではない。フィルへの謝罪の言葉や、男への怒り、自分の境遇を呪ってもいない。  
 ほしい。この、目の前でびくびくと、唾液と愛液でまみれた物を突っ込まれたい。本能が彼女を駆り立てていた。  
「……くださいぃ」  
 はあはあと、湿気の高い吐息が物をくすぐる。  
「あなたのオチンチンをぉ、私の穴に突っ込んでくださぃぃっ」  
 ここまで性欲に狂わされたことを悲しむよりも、その性欲を満たしたい。それだけが今のシオであった。  
 
「おやおや、淫乱な。他の人が聞いたら幻滅しますよ」  
「ぃいいよぉ……私、淫乱な子、だもんぅぅ」  
 男はこんなことを言いながらも、忠実に躾けることのできた彼女と自分の技量に酔っていた。  
「なら、自分でまたがりなさい」  
 男は大きく脚を開き、体勢をやや崩す。ちょうどシオが乗っかれるようなイスのようになる。シオは飛びつくように男の腰をまたいで、すとんと腰を下ろした。  
「あ、ああああぁぁぁぁぁっ」  
 すぶすぶと熱い棒が入り口を通過して膣へ侵入――いや、招かれる。竿が肉ひだを沿い、亀頭が肉の壁にぶつかる。衝撃と強すぎる快楽でバランスを崩し、シオは男に抱きついた。  
「おや、熱烈だね」  
「ご、ごめんなさぃ、動きますっ、動きますからぁ!」  
 別に何か咎めるわけでもない。それなのに恐れられると男の気分は複雑だった。  
 胸を上下に動かすようにすると、自然と腰が振られる。  
「ああぁ、ぁぁぁあああ」  
 ずちゃずちゃと激しい音、シオの大きな喘ぎ声が男の耳に奏でられる。シオの口からだらりと流れる唾液は、まるで貪欲な獣のように見えた。  
 いや、彼女は獣だろうか。目は焦点がないように、どんよりと濁り、たらたらと唾液が口の端から伝う。  
「シオちゃぁん、いいよ、すごく、いいっ……」  
 男は忙しなく手を動かす。背中に回っていた手が落ちていき、シオの小ぶりな尻を力強く揉む。シオはその痛みを性感に変換させ、さらに昇りつめていく。  
「そろそろ……ここも躾けないとねぇ……!」  
「ひぃい!」  
 男は指に愛液を掬い、それをシオのアヌスにずぼりと入る。じりぃとシオの脳に痛覚が響き、同時に不可侵領域に踏み入れられた、拒絶感がシオの理性を呼び戻す。  
 
「や、や、そこは、ちがぅ!」  
「違うことないよぉ、もう何度か会うころにはぁ、こっちでもシオちゃんはぁ、喘ぐんだよぉぉ」  
「や、やだぁ、やだぁ! ――あああああああ!」  
 ぎり。男の歯は、目前のシオの乳首を締めていた。  
「お前に拒否権があるとでも思うのかぁ!? シオぉ!」  
「がっ、かぁっあっ」  
 第二関節までの指がアヌスに埋まる。そのまま指を暴れまわし、愛撫――いや、痛めつける。  
 耐えがたい苦痛に動きを止めてしまうシオだが――  
「止まるんじゃねぇよぉ、今すぐにでもケツの穴に突っ込まれてぇのか!?」  
「ひぃっ! はいぃ、もうじわけぇございまぜんんん!」  
 背中に回していた腕を首に回し、シオはただただ上下に動いた。だが、いくら動いても抜けない指。いや、動いてさえいれば仕置きはない、はず。  
「あん、はげ、じ、はぁぁぁぁっ。ん、んぅ! が、あっ、あ!」  
 シオの肩がびくびくと大きく震え始める。二度目の絶頂を迎えようとしてながら、腰を動かし続ける。視界は白と黒の光景を繰り返していた。  
 すでにまともな思考と視覚をしていなかった。  
「いいよぉ、シオぉ、シオぉぉぉぉぉ! お前はぁ、俺のなんだぁ!?」  
 男はシオの髪を掴み、無理やり目を合わせて問う。  
「わたしわぁ、あなだのぢゅうじづなあああああ!」  
 言葉の途中でシオは二度目の絶頂を迎えた。が、おそらく無意識だろうか、腰の動きは多少衰えたものの動いている。  
「まったく、いやらしいヤツだ。イくと共に締め付けやがっ、ううっ」  
 男の限界もすぐ近くに来ていた。  
「はぁあ、イきそ、うう、ああ、ああっ、あああっ!」  
 ず、ず、ずっ。男はがっちりとシオの腰を抱き、暴れ回る精液をすべて膣内に叩きつけた。  
 
「あ、はぁ、はぁんっ」  
 シオは腹部で広がる熱さを受けて本来の感覚を取り戻し、汗ばんでいる肌を預けるように男にもたれかかる。  
 男の理性は戻っているようだった。アヌスから指は抜かれていて、もう片方の手でシオの頭が撫でられている。  
「ほら、シオちゃん。このあとはどうするの?」  
 ぐちゅりと力の抜けた棒を引き抜き、シオを見る。  
「あ、はいぃ……オチンチンを使わせて頂きありがとうございます、シオの口で綺麗に、させて頂きます」  
 シオは先ほどのように四つんばいになり、様々な粘液を帯びた一物を口に含み、舐め回す。  
「今度拡張器持ってきてあげるよ。受け取ってくれるだろう?」  
「はぃ、ありがとう、ございます……」  
 シオは震える声を押さえつけて――隠れて涙していた。  
(フィルくん、フィルくんっ……! ごめんね、私……私……!)  
 少しずつ力を戻しつつある棒を、丹念に、口で上下に動かし始める。  
(愛しいの……この男、こいつのコレが……嫌なのに……いやぁ……!)  
 口の中の物が再び怒張を戻すころ、シオの秘所からは男の精液と、新たに分泌された愛液が床でしたたり落ちていた。  
 

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