「鉄の女がギルドにいる。」
ギルドの一員であれば、一度くらいは目にしているだろう受付嬢がいる。別段目立つ風貌をしているわけでない、普通よりは整った容姿をしている女性である。
なぜ彼女が鉄の女と言われるのか。理由は2つあった。1つは表情。とにかく一定の表情を崩さない、その無愛想無表情。2つ目が男関係。噂もなければ煙もない。それ以前に火種もない。
前者は見ていればわかる。まるで喜怒哀楽がないような、典型的なクールビューティー。後者は、こうして言われているが証拠がなかった。
――今回はこの鉄の女と、不幸にも彼女に付き合わされた幸福な少年のお話。鉄の女が、少年の前で酔いつぶれて眠っているところから始まる。
(うわぁー、どうしよう……)
机に突っ伏して眠っている(だろう)サラサを前に、フィルはほとほと困っていた。
話はやや前に戻る。フィルが街を歩いていると、ため息をついて困り果てているサラサに出会い、そのときになくした書類を捜す約束をした。
話は少し前に戻る。無事に書類を見つけてサラサに渡した。そのときに盗人から聞いた、事件の前後を悪気もなく話してしまいサラサに連行された。
こうして現在。酔いつぶれたサラサを前にフィルは困っている。
「まあこんなに飲んだらなぁ」
テーブルの上に転がる空ビンを立てながら、ちびちびと琥珀色の液体を飲む。
フィルは決して酒に強いわけでなく、サラサが弱いわけでもなかった。むしろ、フィルの目にはサラサは相当強いように見れた。だが、二人のポジションは逆位置にいた。
ただ一つ、フィルは酒の席での処世術を持っていた。
自分が酔わないようにするには、強くなるか、相手を潰すか、あまり飲まないようにする、この3点。そのうちフィルが実行できるのが後ろの2つ(ただし2つ目は大人数相手には向かない)。
飲むとしたらなるべく無色のアルコールがやや高めのもの。低いものを選択すると、どんどん急かされて逆に飲みすぎてしまう。
高いものは猪口などにいれるため一杯の摂取量が少なく、飲み干したように見せかけて口に含んだ状態で、ハンカチなどで口を拭くふりをして染み込ませることができる。
なお、今フィルが飲んでいるものはウィスキーであるが、サラサに気づかれないようにお茶で割るに割った元ウィスキーである。
ここまでが3つ目。
相手を潰す際には、とにかくコールするに限る。が、コールは少人数だとやりにくい。こんなときはグラスに酒を注ぎながら他の酒も注いでチャンポンにしてしまう。これを「ここで一気はより良い女の条件だったりしますよ」とかなんとか言って飲ませてしまう。
この繰り返しで無事生き延びることも可能であるが、これには潰した後の対処まではない。フィルはこれに困っている。
「片付けようかな……」
手持ち無沙汰なフィル(普通ならやましいことの一つは思いつくだろうに)はビンを燃えないゴミに入れ始める。と共に、部屋をじっくりと見る。
サラサの部屋は「鉄の女」の異名に合うような、無駄のない造りになっていた。最低限の家具や生活用品。部屋に連行されたときは緊張のあまり見えていなかった。窓際の花は最低限の色彩だろうか。
「ぅん……」
「あ、サラサさん、気がつきましたか?」
「……うが」
「『うが』って何だ、『うが』って」と内心つっこみつつ、サラサに歩み寄る。
「大丈夫ですか? ずいぶん眠っていましたけど……」
「フィルくん」
名前を呼ばれると共に、手を掴まれた――瞬間、フィルの顔はサラサの顔に急接近していた。
「さささささサラサさん!?」
ほんの十数ミリで唇同士が触れてしまう。フィルはかつてシオが作った蛍光色の(シオ曰く)食べ物を前にしたとき以上の緊張があった。
「臭わないわね」
「……え?」
「お酒臭くないのよ」
しまった。意外と判断力が残っている。離れようとしたが、鉄の女のプレッシャーのためか手が振り解けない。
「やってくれるのね……少々油断してたみたいね」
「えー、あー、はい、ごめんなさい」
素直に謝る。これは魔女の弟子から学んだ人生の処世術。けれど魔女も鉄の女も許してくれるようには感じなかった。
「罰を与えないとね」
この言葉を理解するよりも早く、逃げようと抵抗するよりも早く――サラサはフィルの唇を奪っていた。
「―――!」
離れようとしても、サラサの腕が後ろに回っている。加えて、フィルは初めての感触に、離れたくない、という感情もあった。
「ごちそうさま」
触れ合ってからしばらくして、まるでフルコースの前菜を食したようにサラサは離れる。フィルは顔を赤くして口元を押さえている。
「なっ、なっ、なっ、なっ、」
「? もしかして初めてだった?」
「酔いすぎです!」
「俺のファーストキスを!?」という言葉をどうにか飲み込み、差しさわりのないことを言っておく。さすがに惨めだろう。
「俺、もう帰ります。今日はありがとうございました」
「……キスに?」
「飲み会にです!」
荷物一式を背負い、いざ出て行かんとするフィルに、サラサはその手を握る。
「ねぇ、もう少し付き合わない?」
「嫌です」
「そんなこと言わないで、さ」
フィルの手の甲に軽く口付け、表に返して手首にもキスをする。また甲に戻り、唇は生温かな、液体と感触に変わっていた。
フィルは見ずとも感じていた。サラサの舌が這っている。これを見てしまっては理性が崩れる、かもしれない。ぞくりと微粒が走る感覚がフィルを襲い続けるが、まだ理性は強かった。
「帰りますから。それじゃ」
「きゃっ……」
少し強めに振り払うと、そこは男と女の力の差。あっさりとほどける。が、勢いが強かったのか、サラサは倒れこんでしまった。
「あ、ごめんなさい――」
「いえ、いいのよ」
サラサは俯いたまま、起き上がろうとしない。
「ごめんなさい、フィルくん。ちょっと酔いすぎたみたい。ごめんね、今日の、いえ、さっきのことは忘れて、ね?」
声が震えている。ここで見捨てるほど、フィルは非常ではなかった。
「あ、あの……」
フィルは屈んだ。そして、目に映ったのは。
サラサの歪んだ口元。
「――青い」
つかみかかるようにフィルを押し倒し、股を割り、手を押さえつけ、吸血鬼のように首元に口を押さえる。わずか数秒の行為に、フィルは動くことができなかった。
「このまま帰るのは、男の恥じゃないの?」
サラサは二度目の、フィルの唇を奪った。先ほどとは違い、触れた瞬間にサラサの舌が強引にフィルの唇を割り、口内に侵入した。
「ん、んぁ……」
サラサの舌が暴れる。唾液は混ざり合い、舌は絡まり、漏れる吐息が口元に流れる。それは長く長く続き、離れるときには、サラサの口元からだらりと唾液が落ち、フィルに滴った。
「ねぇ、これでも帰るの?」
目が潤い、頬が赤い。酔いの他に感情が入っている。フィルの心臓はばくばくと鼓動し、錯乱の中で静かに理解した。
「……いえ、帰りません」
理性はあった。その中で考えた結果だった。フィルは、すべてを受け入れた。
「ふふ、嬉しい」
サラサの指が、フィルの上着は脱がし始めた。
フィルの民族衣装のようなふさふさとしたものは簡単に外れ、シャツは乱暴に上げられた。フィルは見た目通り華奢な体をしているが、サラサの目には未開発な、まるで風通しのよい平原の印象を受けた。
「綺麗な肌……」
うっとりとした声を出し、フィルの肌に近づき、舌で唾液のラインを引く。「うっ」とフィルが漏らすが、サラサは丹念に舌で愛撫する。
フィルの手はすでに拘束が解かれていた。ここまできて抵抗するほど野暮ではないし、わずかな好奇心とサラサと寝れる、という嬉しさを否定できないでいた。まあ損するもんではない――と、流れに身を任せている。
サラサは空いた手でフィルの腰を、まるでハープを弾くような動きで触れている。ぴりぴりとした感覚がフィルの神経を、舌がねとりとした感覚が思考を溶かす。
「あ、ぁあ、あっ、はっ……」
「ふふ、かわいい」
女の子のような声を出すフィルに、サラサはキスで愛しさを表現する。二人は自ら舌を出し、積極的に舌を絡める。
ねちょねちょと生温かな舌同士が絡み合い、溢れた唾液を飲み合う。どれもフィルにとっては初体験で、興奮せずにはいられなかった。
「ぁん、私も感じてきた……フィル君、いい、いいわ」
フィルの胸板に唇を押し付け、きつく吸う。しばらくして離すと、そこには赤い印がついていた。
「私の印、私のモ、ノ」
ズボンの盛り上がったところをサラサは生地の上から上下に摩る。
「硬い……感じてくれてるのね」
「そりゃそうですよ……サラサさんだって」
フィルは唐突にサラサの胸に触れた。意外と豊満な胸に驚きつつも、円が描くように動かした。サラサはびくびくと震えながら、フィルの手の動きに合わせる。
「ほら、敏感ですよ」
「そうね。ねぇ、脱がせて」
言われるまでもなくフィルの予定にはあったが、言われたとおりにサラサの服に手をかける。
女性の服の造りはよくわからなかったが、サラサの手助けもあってどうにか脱がせた。純白のレースの下着がフィルの目に飛び込んできた。
「ねぇ、どう?」
「綺麗です、とても綺麗ですっ」
「よかった、今日は少し地味なのつけてたから心配していたの」
「…………」
サラサはその『地味な下着』を外し、フィルの横にごろんと横になった。
「今度はフィル君の番」
「はい」
サラサの上にのっかかり優先権を得て、先ほどのように胸に触れた。優しくつかみ、練るように動かす。
「あん、あ、いい、気持ちいいっ」
「サラサさん、本当に敏感ですね」
「もう、あんっ!」
フィルは乳首を甘く噛み、そのままちろちろと舌ではじくように舐め上げる。その間、サラサに見習って腰を手でさすり、時折爪を立てて刺激を与える。
「ああ、フィルくん、逆のほうも、お願い……」
「はい、もちろんです」
逆も同じようにすると、サラサから甘い甘い声が漏れる。興奮で体温が上昇し、フィルはシャツを脱ぐ。二人の上半身は裸となった。
「下も脱がせますよ」
「え、あ、やだ……」
「ここまで来て、ですか?」
抵抗するサラサを抑え、下を一気に脱がした。恥ずかしさのためかサラサは顔を手で隠してしまったが、そこまで嫌ではないのは隠し位置を見ればわかる。
すらりと引き締まった脚に白い下着。白に満ちたそこに、フィルはくらくらと見入ってしまった。
「下着、濡れますよ」
「いじわるぅ……ねえ、触って」
「ええ」
下着にするりと手を入れ、さわさわした薄い陰毛の感覚がフィルを楽しめる。もっと奥へ行くと、そこは液体で満ちていた。中指で、割れ目にそって上下に動かす。
「あ、ああ、触れてる、触れてるぅっ」
「……」
フィルは次の展開が見えず苦しんでいた。小説から得たありったけの知識を総動員させる。割れ目上部の、固くなりかけた豆粒のような突起をこりこりと弄った。
「あう、あああ、ああ!」
「ここ気持ちいいですか?」
「……熱い! あつっ……あんっ……!」
身をよじるサラサを見るたび、どんどん血圧が上昇していく様がわかる。ひとしきり弄ったあと、割れ目を下って、やや下あたりに指を突き立てる。
「いたっ……」
「す、すみません!」
「ううん、大丈夫、もうちょっと下を、ゆっくりと」
言われた通りに動かすと、すんなりと、フィルの指はサラサの体内に入った。
「あああぁぁぁ、はいったぁ……」
「熱い……すごく熱い」
知識通り、指の腹を使って天井をさする。ざらざらとした体内が、フィルの指先をくすぐる。
「あ、そこぉ。そこいいぃ。もう一本ほしい、ああん」
中指に続き人差し指を入れ、同時に動かす。ぐちゅぐちゅと水の混ざる音がサラサの喘ぎ声と共に響く。
「あ、あ、あ、あ、あ、ああ、すごい、やぁぁぁぁぁっ」
サラサは自らの手で胸を強く握っていた。もっと刺激がほしいのか、それとも我慢が効かないのか。フィルは空いている手でそれに加勢した。
「ん、あ、ああ!」
びくりと大きくサラサの体が震えた。同時に体内がびくびくときつく締めてくる。フィルはべとべとの指を引き抜くと、サラサは上半身を起こして笑った。
「イっちゃった……気持ちよかった」
フィルを抱きしめ、キスをする。フィルも強く抱きしめて返す。
「今度は、私の番」
滑るように顔を下へ移動させ、ズボンのチャックを開ける。そこから固く怒張したフィルのモノを取り出す。
「うわ、恥ずかしいなぁ……」
「ここまで来て、ですか?」
サラサはフィルの言葉を返した。フィルは思わず笑ってしまい、サラサの頭を撫でた。
「これがフィル君の……固くて、大きい……」
指で輪を作り、ゆっくりと上下にさする。か細い指が男のモノに触れている。フィルはそのギャップに興奮を覚えた。
「気持ちよかったら声出してね」
「はい……うう、あっ、ああ」
指の動きは早くなるにつれ、フィルの声は大きくなる。サラサはそんなフィルの表情と声に楽しんでいた。
先端から漏れ出る透明な液体を、サラサは指ですくって口に含んだ。
「にがっ……慣れたらおいしい……?」
「ん、んー。どうでしょう?」
「そう……あむ」
サラサは大きく口を開け、含んだ。唾液で満ちる口内がフィルのモノを包み込み、体験したことのない快楽が押し寄せる。
「うわ、ぁぁぁぁ、すご、すごいです……」
「ん、ん、ちょっと苦しいけど、喜んでくれるなら……」
裏筋を下で這わし、じゅぼじゅぼと音を立てて顔を上下に動かす。一度深くくわえ込み、そのままゆっくりゆっくりと、引き上げる。
「ああ、サラサ、さん、俺、俺……」
「ん、はぁ、出して、たくさん出してっ」
サラサはまた深く、そして激しく動かす。
「う、あ、あああああ!」
サラサは動きを止め、口ですべてを受け止めた。
「ん、ん」
口を亀頭まで移動し、尿道に残った精液を指の上下の動きで搾り出す。
「ふぁ、ぁあ」
サラサは口を開けた。フィルの目に、己の精液と唾液が混ざった液体が見える。
「んふぅ……」
サラサはフィルに抱きつき、その耳元で、精液を飲み干した。ごくりと、フィルの耳元で音が鳴る。妙な淫靡さが伝わってくる。
「苦い……気持ちよかった?」
「はい……あんなの初めてでした」
「それはよかった。じゃあ、次は――」
サラサは最後の下着を脱ぎ、生まれた姿になった。
「フィル君の初めて、頂戴」
「あの……本当に俺でいいんですか……」
最後の一線を越えるこの瞬間、フィルは確認をとるように尋ねた。サラサのことは嫌いではない。でなければここまで及んでいないし、そもそも家に上がりこんでもいない。
だが、ここから先は別物では……フィルは言い表しにくい不安を感じていた。
「フィルくん……」
しょぼんとした表情。だが、それは急変した。
「ばかー!」
軽い平手打ちがフィルを襲う。この人酔ってる! という判断がフィルの中で下された。
「私は酔ってない! 安い女じゃない! それに、それに……!」
ぽすっと、フィルの胸板をサラサのこぶしが押す。
「フィルくんのこと……嫌いじゃ……ないし……」
(ああ……)
フィルは自分のバカさ加減に呆れていた。目の前の女性は鉄ではない。感情やプライドの詰まった、一人の女性なのだ。
「ごめんなさい」
胸元に唇を押さえつけ、きつく吸った。そうしてできた、薄い赤。
「俺の印です。これで、サラサさんは俺のモノですね」
ぎゅっと抱きしめて、それをさらに強める。
「嬉しい……ありがとう」
サラサは息を吸い、腰を落としていった。
「あん、ああ、かたいっ……」
フィルの先端を少しずつゆっくりと咥え始める。フィルのモノに温かい粘液による快感と、昂ぶった彼女への感情が押し寄せる。
「ああ、ああ。あつっ」
「サラサさん……早くっ」
「もう、急かさないで、あああっ!」
我慢できなくなったのか、フィルはサラサの腰をつかむと一気に下ろした。すぼりと二人が一緒になると共に、二人にはすさまじい快楽が走った。
「あ、はぁ、すごい、ぁあん」
「うぅ、サラサさん、サラサさんっ」
サラサの腰に腕をまわし、前後に動く。サラサから漏れ出る粘液がフィルの股間にしたたり、脳の中がぐるぐると回り始める。
「フィ、フィル、くん、あん、あっ、うぁぁぁっ」
「俺も、うう、ああ!」
フィルはきつくサラサを抱きしめた。大きな息を吐いた瞬間、サラサの体内に入ったモノはぶるっと震え、温かいものをぶちまけた。
お腹の中で何かが弾け、広がっていく感じがした。
「あ……たくさん……ぅ」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
フィルは抱きしめたまま、息を荒くしていた。
「ふふ。がんばったね」
子供を扱うように、フィルの頭を撫でる。「ちょっと早かったね」と心の中で付け加えておく。
「かわいい。女の子みたい」
「………………」
「いたたたたたたっ」
ぎりぎりと無言で力を込める。そして、ゆっくりとサラサを倒し、正常位の体勢にする。
「あら、フィルくん?」
「あの……もう一回、いいですか?」
サラサの中で一度力尽きたモノがまた固さを戻しつつあった。
「ふふ、どうぞ」
「ありがとうございます」
二人はキスをして――それが開始の合図になった。
やけにスズメの鳴き声がうるさい。やけに陽が熱い。そんな不満がフィルの眠りを妨げた。
「んん、ん……」
目には見慣れぬ天井。背中に慣れないベッドのスプリング。
「ん、あー……」
寝転がったまま体の部位を伸ばす。思考を覚ますにつれ、どんどん昨夜のことも思い出していく。
拉致、宴会、情事。そして目覚め。
「う、……わー」
「あら、起きたの?」
キッチン(の方向だったと思う)から、女性の声が聞こえる。そこには、いつもとは違うサラサがいた。おそらく裸体に白いワイシャツを羽織っただけの、メガネをしていない彼女。
印象がずいぶん違うなー……と、寝ぼけた頭で考える。
「あ、どうも……」
「ちょっと朝食の準備していたの。入っていい?」
「え、あー、はい」
もぞもぞとベッドに入り、ごく自然にフィルにくっつく。
「………」
「………」
気まずい。
「あの、今日ギルドの仕事は……?」
「今日は遅番なのよ」
気まずい……? それは違う。たぶんこれは、気恥ずかしさだろうか。
「フィル君の今日の予定は?」
「俺は特にありません」
「ふうん、そお」
寄り添った体勢から、するりとフィルの上に抱き合うように乗っかる。そしてそこには、ニヤリとした口元。
「なら、さっそくしましょ♪」
「ちょ、朝からですか!?」
「こんなに硬くしてるのにそんなこと言うの?」
撫でるようにフィルの、朝の生理現象ゆえに主張するモノを触れる。
「ほら、見て。これ」
サラサは胸元の赤い、消えかかった印を見せる。そして、フィルには見えないが赤い印があるだろうフィルの胸板をなぞる。
「私たちは、私たちのモノなのよ」
ゆっくりと二人の唇は触れ合う。こうしてまた、キスから始まる。