都会は真夜中。  
高いビルに囲まれた大きな屋敷の住人はほとんどが寝静まっている。  
―その屋敷の中で明かりも灯さず、暗い廊下をヒタヒタと歩く少女の姿があった。  
足取りは重く、表情は暗い。だが確実に、吸い込まれる様にして、或るドアに向かって行った。  
―重いドアを開ける。  
ギィという音が不気味に鳴り響いた。ドアの向こうで待っていたのは少女が最も大切だと思っている少年の――従兄弟だった。  
 
「待ってたよ、グゥ」  
薄暗い電灯の中でアルヴァは不敵に笑った。グゥは決心する様に部屋に入る。  
 
――ガチャリ  
 
手錠を付けられる。抵抗はしない。何故か?守るためだ――ハレを。  
 
 
数日前、グゥはアルヴァの部屋に招かれ契約をした。理不尽な契約だった。  
「お前ハレが好きなんだろう?」  
アルヴァが唐突にそう言ったのだ。  
グゥはその言葉を無視した。しかしその直後にアルヴァはグゥを抱き締め、白い耳に脅迫の言葉を注ぎ込んだ。  
「大事なハレを傷つけたくはないだろ?」  
「――俺ならアイツを今すぐにだって殺すことができる」  
確かにその通りだった。アルヴァは以前にも平気でウェダやハレを殺そうとした。そのためか、とても冗談には聞こえなかった。  
 
「――大事な奴なら自分を犠牲にしてでも、守ってやりたいと思わないか?」  
アルヴァの言う事は全て当たっていた。  
 
グゥはハレの事を誰よりも大切に思っていた。いつも一緒に行動して、少しでも離れると不安でならなかった。でも想いを知られるのが怖くて、いつもふざけた事を言って隠し通していた。だからマリィみたいに意思表示はできないけれど、いつも陰ではハレを見守り、慕っていた。  
 
ハレのためなら何でもできる、ハレを守るためなら自分はどうなったって構わない。――それがグゥの本心だった。  
 
「――何をすればいい…」  
グゥは俯いてそう応えた。  
アルヴァはグゥの耳元で、含み笑いをしながら囁いた。  
「――俺の物になればいい」  
 
――アルヴァとの契約は、毎晩彼の部屋で彼の言う事に従う事。抵抗は許さない、帰っていいと言われるまで、其処で性奴隷にされる事だった。  
グゥの能力を持ってすれば何とでもなるように思うが、逆らえばすぐハレが傷つけられるというのが途方もなく怖かった。  
それで、ただ言われるがまま契約にのったのだ。  
 
 
自分の手を拘束する重みのある手錠に視線を落とし、グゥはアルヴァの前に座り込んだ。  
アルヴァはそれが当たり前の様にグゥの服を脱がせていく。  
 
ブラウスのボタンを外し、白い肩を晒す。そこに貪る様に噛み付き、  
水気のある音でグゥの首筋を舐め上げ、自分の物である証を刻む様に、  
きつく肌を吸い上げ真っ赤な跡を残していく。  
 
グゥは全く抵抗せず、正座したまま必死に耐える。これも全てハレのためなんだと何度も自分に言い聞かせて。  
 
アルヴァの舌は下の方へと降りていった。両手でブラウスをずり降ろせば、真っ白で柔らかい、グゥの上半身が露になる。  
その肌を、唾液をたっぷりと含んだ下で舐り、吸う。  
軽く乳頭を突つけば、幼くて薄桃色の小さな突起が、精一杯立ち上がる。その幼気な乳頭を、指と舌で両方とも痛め付け、責め立てる。  
 
「っ…く、ぁ……」  
 
怯えで震えるグゥの中から、熱い息が漏れる。今直ぐ逃げ出したいという気持ちを抑え、声を殺す事に集中した。  
 
「っん…!」  
 
胸を責めるアルヴァの手つきが、次第に激しさを増す。それにつれて息も上がり、小さな口が喘ぎ出す。それでも理性を保とうと、グゥの小さな身体はより一層強ばって耐える。  
「力を抜け」  
乳頭にしゃぶりついていたアルヴァが言った。夜のグゥにとって、それは主の命令だった。  
「は、ぃ……」  
昼間の彼女からは想像もつかないような頼りない声で、グゥは従順にそう答えた。  
言われた通り――ハレを守るためにグゥは全身の力を抜く。小さな身体はアルヴァにあずけられ、今まで我慢していた全てのものが溢れ出す。  
「ぁんっ!はうぅぅっ!」  
 
命令に従い全身をアルヴァにあずけても、アルヴァの手つきが変わる事はない。  
真っ白なグゥに覆い被さり、なお小さな胸を責め立てた。  
 
「あぁっ…ウゥ…」  
 
堪える事を許されなくなったグゥは、体中を伝う感覚に、忠実に応える事しかできなかった。怯えた嗚咽と、恐怖故の涙と、下からは感覚に正直な蜜が溢れ出してくる。  
 
「―――ハ、レッ…」  
 
嗚咽混じりにグゥは小さく呟いた。黒い瞳からは止めどなく涙が溢れ出ている。いくらハレを守るためにと思っても、どうしても助けを求めてしまった。  
 
「此処にいる時はそいつの名前を口に出すな。お前は誰の物だ」  
 
声に気付いたアルヴァは冷たく言い放った。そればかりか、罰だと言わんばかりに、グゥの乳頭を噛み、摘んだ。  
 
「痛ッ……ァ!」  
 
突然の激しい快楽と痛みに、グゥの身体は跳ね上がった。性奴隷と化したグゥの表情には、もはや昼の余裕さはなくなっていた。主の体罰に何も出来ず、ただただその表情が歪む。  
 
「お前は誰の物かって聞いてるんだよ」  
 
夜のグゥの支配者は、無慈悲にも少女の白い髪を掴み、強引に持ち上げた。グゥは息も絶え絶えに、従順に答える。  
 
「ぁっ…あ、なたの……アルヴァの、物です……」  
 
こんなのはグゥではないと思うかもしれない。でもグゥにとって、ハレはグゥの全てだった。ハレを守るためなら――ハレのためなら、グゥはどんなに辛くても、どんなに苦しくても我が身を犠牲にできた。だから従順な性奴隷になる事さえ、グゥにはできたのだ。  
ハレがもし殺される事があったら―――それこそグゥにとって一番の苦しみなのだ。  
 
「ごめんなさっ……も、言いません…」  
 
流れる涙を舐められながら、グゥは主に向かってそう言った。アルヴァは許す様に幼い、平らな胸から手を外し、グゥのスカートに手をかける。  
裾の中に腕を入れ、下着へと侵入する。グゥのパンツはもぅすっかり濡れていて、いやらしい水気を出していた。  
 
「あっ、嫌だっ…」  
「嫌だ?」  
「ぃ、いぃぇ……」  
 
何度か肌を重ねたが、下の方をいじられるのは今夜が初めてだった。グゥは怯えた顔で、必死にその行為を受け入れた。  
クチャリといういやらしい音が二人の耳に入る。アルヴァがその浅黒い色の手でこね回せば、水気は更に増していった。  
力を抜いているグゥは変わらず嬌声を発している。手錠で束ねられた腕は邪魔とばかりに上へ退かされた。  
 
「足を開け」「っ…はぃ……」  
「もっとだ」「はぃ…」  
 
アルヴァはグゥの下着を脱がせ、まだ未発達なそこを露にさせた。グゥの性器は桃色に染まり、中からぬるりとした液が漏れ出ている。そこにある小さな突起まで、乳頭と同様に立ち上がっていた。  
アルヴァはその穴に表情一つ変えず指を挿れる。  
 
「アッ!なっ…!?やぁっ!」  
 
瞬発的にグゥは叫び、硬直した。しかし力を抜けとアルヴァに睨まれ、恐る恐る力を抜く。するとアルヴァの指は二本三本と増え、中で暴れ出した。  
 
「はぁんっ、あぁっ……!んっ、んん……」  
 
甘い響きの悲鳴と共に、グゥの口から唾液が流れ落ちる。同時にクリトリスも責め上げられて、白い腰は自然と浮き上がった。  
ハレを守るため―――その言葉だけを頭で繰り返し言い聞かせ、苦しい快感に耐え、怯え、翻弄される。  
その間にもアルヴァは舌をグゥの中に侵入させ、無理矢理出させた愛液をたっぷりと味わう。どんなにその液を吸い上げても減るどころか、際限なくそれは溢れ出た。  
その液をたっぷりと含んだ口で、グゥに濃密なキスを交わさせる。  
グゥの嬌声は熱い息と共に室内を満たし、大きくなっている。  
 
「四つん這いになれ」  
不意にアルヴァの命が下った。  
 
「…はぃ」  
そのあとの予測がつかず、グゥは不安そうに応えた。しかし逆らう事はせず、ただ性奴隷として、主の前に、言われるがままにした。  
 
「あぁうううぅぅっっ!!」  
グゥは目を見開き、悲痛な叫びを上げた。  
ぐにゅりと、グゥの中に挿れられたのは―――太い性遊具だった。アルヴァがスイッチを押すと、それは大きくグゥの中で捩れて、暴れる。  
「ぁんっ!ぁんっ!!っあぁ!いやあぁっ!!」  
機械的に動くその物体に、グゥは自我を奪われた様に翻弄された。四つん這いにした白い身体が、切なげに、激しく揺れ動く。  
それを視姦しながらアルヴァは見下して言う。  
 
「今日はそれで勘弁してやる。これをくわえろ」  
 
グゥの目の前に差し出されたのは、アルヴァの熱い性器。十分に勃起し、幼気な少女を威嚇している。  
グゥは硬直した。今からこれをくわえろというのか。ハレの従兄弟のこれを。もうハレと目を合わせられない―――。そう思った。  
 
「どうした、返事は」  
主はすっかり支配されているグゥに、躊躇の時間も与えてはくれなかった。  
 
「―――はい…」  
 
俯き、涙を落としてグゥは従った。そして口を開けアルヴァの性器をくわえる。下の方では機械が蠢き、自分を支配している。全ての理性を捨て、丁寧にそれを舐め上げる。  
おぞましい機械の動く音と、自分の口が出す水分の音―――。脳裏にはハレの優しい声が過る。  
 
「飲み込め」  
 
上から主の声がした。口内に出された精液を、グゥは息を止めて飲み込む。  
「んくっ…んくっ…」  
 
 
「っはぁ…はぁ……」  
ようやく機械を抜かれ、手錠が外された。横たわって荒い息をする少女の顔は、白い液で汚れている。  
 
「今日はもういいぞ。帰れ」  
 
抵抗は許されない。自由になった後でもグゥは何もしなかった。  
息を整え、ある程度支度をすると、グゥはそのままアルヴァの薄暗い部屋を後にした。  
 
 
 
翌朝、グゥはいつものグゥに戻っていなければならない。夜の姿を、気付かれない様に振る舞わなくてはならない。いつもの調子でハレと朝食をとる。  
 
「あれ?グゥどうしたのそこ…」  
「ん…?」  
 
襟の端から、毎晩付けられる赤い跡が二つも見えていた。ハレは何の悪びれもなく、それを覗き込む。  
 
「傷じゃないよね…。なんかぶつけた?でも首だし…」  
 
グゥが横目でテーブルの向こう側を見た。そこには夜の主、アルヴァが座ってこちらを睨んでいる。  
 
「あぁ、何でもない」  
「えぇ?でもさぁ」  
「ほーぅ?そんなに知りたいのか?後悔しないんだな?」  
「えっ!?遠慮しときます…」  
 
また壁を作って、ごまかしてしまった。アルヴァに睨まれなくても同じ事をしただろう。  
 
少女はいつも何かを背負っている。それは誰にも、どうしても言えない事。  
普通の人間は背負う必要のない、グゥにだけ科せられた重い秘密。  
ハレにそれを知られるのは、今のアルヴァとの契約を知られる事よりも、彼女にとって恐ろしい事なのだろう。  
慣れた口裁きでハレをごまかして、それを重ねるごとにグゥの誰にも言えない秘密は益々壁を厚くする。それは出会った時から変わっていない。  
 
だからせめて、ハレを守る事ができたら―――。  
秘密を知られるより、性奴隷でいた方がずっとましだ―――。  
 
グゥと名乗る、少女かどうかさえわからない存在は、ふざけた態度と裏腹に、常に何かを一人で抱え込んでいる。  
それでも今は、ハレという存在がいるから、少しは耐えられるのだ。  
 
グゥの全てであるハレを守るために、またグゥは秘密を一つ抱える―――。  
 
 

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