ある月夜の晩のこと。  
地上を照らす真昼の太陽はとっくに山へと深く沈み、代わりに妖しく美しい満月の光がジャングルの夜を優しく包んでいた。  
深夜2時。誰もがもう寝入っている時間帯。  
だがある一軒の家のみ、灯りがついていた。  
そしてそれと共にそこからはピコピコやカチカチなどテレビから無機質な音が漏れていた。  
「・・・すぐクリアできると思ったんだけどな・・・。」  
声の主のはゲームが思いどうりに進まないことにいらだっているようだった。  
「まだ起きていたのかハレ・・・。」  
背後から聞こえた少し低めな声に、少年は少しびっくりしてコントローラーから手を離した。  
「グゥ・・・。お前こそ起きてたのか。母さんは今日集会で帰らないって言ったろー。早く寝ろよな!」  
「・・・・・・。」  
グゥは無言でハレを見詰めてた。  
「?? ・・・なっ、何・・・?」  
不信感を抱いた少年は、過去の経験からか冷汗が出てきた。  
少女はすたすたとテレビの側面へむかった。そして、ハレが声を出す前に  
 
ぶちん  
 
「―――――っっなっ!何すんだよーーーーーっ!!」  
涙目になりながら夜ということもあって控えめな叫び声が家の中にこだました。  
 
そんなハレに対して悪びれる様子もなくグゥは部屋の灯りを消した。  
「グゥ?!何してんだよ!てゆうか人の3時間無駄にしやがっ―――――、て、う、うわ??!」  
 
ハレは驚愕した。  
暗い室内なのでグゥの動きが読めなくなり、不意を疲れて前から床に押し倒されたのだ。  
「グ・・・グゥ・・・?」  
今も自分の腹の位置に、顔を埋めて無言のままでいる少女に問い掛けるが返事はないままだ。  
いつもなら素早く引っぺがす所だが、グゥの様子がいつもと違うのと、暗闇で押し倒されたことにハレは激しく動揺し、硬直してしまった。  
 
「お、おい・・・?グゥ・・・?何たくらんでるんだよ・・・、グゥ・・・?!」  
「・・・たくらみ、か。」  
「グ・・・・・・ゥ・・・・・・?」  
少女は少年の服をキュッと力を入れて包むように握った。  
「ハレは・・・、マリィが好きか?」  
「・・・・・・っはぁ?!」  
いきなりの脈絡のない問いに間抜けな声を出してしまったハレは改めて問いただす。  
「何たくらんで、てゆうか何言ってんすかグゥさん??」  
 
 
「・・・ハレはマリィが好きかと聞いているのだ。」  
 
 
 ビクッ!  
 
いつもより低い不安定なような、怒っているような声にハレは一瞬体がこわばった。  
「え・・・、マリィは友達だよ。普通に友達としては好きだけど・・・、でも恋愛感情は・・・・・・別に・・・。」  
自分の正直な気持ちをそのまま伝えるとグゥはハレに覆い被さっていた体勢からゆっくりと体を起した。  
そう・・・、俗にゆう“騎乗位”の体形で・・・、  
「そう・・・。」  
暗闇で表情が良く見えない。  
だけどその声からはグゥが安心感を抱いたように思えた。何となく、ではあるけど・・・。  
 
「グゥ?どうしたんだよ・・・?なんか今日おかしいよ・・・。いやいつもおかしいけど・・・?」  
「おかしい・・・?」  
ハレは戸惑いの色を見せながらもコクンと、縦に首を振った。  
「おかしいのは、ハレのほうだろう?」  
「え・・・?」  
相変わらずその表情からは戸惑いの色が消えない。  
「まだ解らないの・・・?」  
グゥはもどかしいような様子でさらに声のトーンを落として言った。  
 
不意にグゥの白い手がハレのズボンをパンツと一緒に器用に脱がしていく。  
「??! グゥ?!何してんだよ!?ちょっ、やめてよ!!」  
あっという間に露わになった下半身は、まだ成長しきっていないことが見た目からしてわかった。  
グゥは馬乗りになったかと思うと今度は目にも止まらぬほどの早業でハレの両手首をどこに隠し持っていたのかロープでぎちぎちに縛り上げた。  
何故少女が頭上で己の手を拘束したか、ハレには理解できなかった。  
「何・・・・っ?何でこんなことするんだよっ!?いい加減にしろよ!!!」  
「えーい、うっせー!」  
「ぃだあ!!!??」  
突如グゥの右ストレートがハレの頬にヒットした。  
悲鳴をあげた少年だったが、少女の声がいつものふざけた調子に(少しではあるが)戻ったことに  
心の奥で(同じく少しではあるが)安堵した。  
それでも少女の理解不能な行動、言動は続く。  
「やれやれ・・・。お子様だなハレは。これでもわからぬのか?いい加減にして欲しいですな・・・。」  
「・・・はっ・・・?いやその言葉そのまま返すわ。ってゆうかマジで何考えてるんだよ!も〜、本当にやめてよ!!そしてこれほどけよ!!!」  
「っさいの〜・・・。仕方ない、教えてやろう。」  
いきなり神妙な面持ちになったグゥをみて、ハレは「な、何だよ・・・?」と小さな声で再び問いただした。  
 
 
「・・・ハレとの子が欲しいからちょいと子作りをと思って・・・。」  
 
 
ずる、  
と、何かが抜けるような、ずれるような間抜けな音が脳内でした気がした。  
 
「ちょっっ、ちょっと待った――――――!!!!!」  
「なんだ?」  
「いや、絶対止めといたほうがいいって!!俺らまだ子供だよ??!俺まだ下の毛も生えてないのに〜〜!!!」  
「そんなもん関係ない。」  
「いやーーーーー!!!」  
「ええーい、だまらっしゃい。据え膳食わぬは男の恥じという言葉を知らんのか?」  
「知ってるけど俺まだ保険医みたいになりたくねーんだよ!」  
「ふぅ〜・・・。大丈夫、大人になってからだがne,この行為が一言で許される言葉があるのだぞ?」  
「っは?」  
「知らんのか?“若気の至り”と、言う言葉を・・・。」  
「・・・・・・・・・。」  
「・・・・・・・・・。」  
 
少年はその時の事を『時が止まった様だった・・・。』と後になって話したという。  
 
「阿呆!!それって後悔する言葉じゃないのか??!」  
「ああ〜〜、もうウッセーな〜・・・。おい、筆者、次回から強引にエロに突入しろよ?早いとこハレをを黙らすぞ?」  
 
「いやーーーーーーーーーーーー!!!!!!」  
少年の半泣きが混じったその悲鳴は大人たちに届く事はなかった。  
 
 

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