愛しい者へ施されていたいくつものキスは今、熱い吐息を漏らす唇を  
離れ耳から首筋を辿って、柔らかな胸元へ降りた。  
 そのまま、小さく自己主張をしている赤い実を舌で転がし、唇で優しく  
吸い、軽く歯を立てる。 もう一方の胸も丁寧に、掌と指で優しく育てて  
いく。  
 恥ずかしいのか、それとも初めて与えられる感覚に気持ちが追いつか  
ないのか、押さえ込まれた身体を捩り、体中を這い回る立人の手から逃  
れようとするかのような仕草を繰り返す。  
 その間にも、花鹿の唇からは絶えず言葉にならない声が漏れ、立人の  
身を熱くする。  
「どうした、辛いのか?」  
「ゃぁ…はぁ…ん」  
 胸元から少し唇を離し囁いてみても、軽くかかる吐息でさえも花鹿には  
刺激なるのか、更に身体に熱を灯し柔らかい黒髪に震える手を掛けた。  
 
 そんな、愛する者の幼い仕草に自身の熱を更に熱くし下肢へと手を伸ばすと、  
先程からの刺激に蜜を溢れさせている箇所に長い指を触れさせる。  
「だめ…だって、そんな…あぁん」  
 途端に、花鹿の口から嬌声が上がり、払いのけようと必死で腕に手を掛けてく  
る。そんな抵抗を気にすることなく、立人は蜜に濡れた小さな突起を弄り、蜜を  
溢れさす蕾へと指を這わせていく。  
 一度も開かれたことの無い箇所へゆっくりゆっくり、花鹿の反応を窺いながら、  
深く潜り込ませた。  
 指を動かす度に、漏れる花鹿の嬌声と、内部から聞こえてくる卑猥な濡れた音、  
荒い呼吸に合わせて揺れる少し小さな二つの膨らみが、立人の理性を奪い去っ  
ていく。  
 小さく開かれた、熱い吐息と熱の篭った声を漏らす唇に、ゆっくりと唇を重ね合  
わせ、舌を差し込み、奥で今だ戸惑っている、柔らかい舌に絡ませる。  
 
「…ん…はぁ…んん…っ」  
「…大丈夫か?」  
「…ん…ふっ…ぁん」  
目尻から流れている生理的な涙を唇で拭うと、秘所に埋めていた指を  
ゆっくりと抜き、限界に近づいていた自身をあてがった―――――――  
 
 
「って、えっ!!」  
 立人は、一気に目が覚め思わずビジネスの場でもいや、ビジネスの場  
でそれはまずいだろ等と、取り敢えず訳の分からないことを考え、花鹿の  
命の危険を感じたとき意外に、ここまで慌てたことは無いだろうと思われ  
る、うろたえ振りで自分の今の状況を確認する。  
 
 
 だが、隣では安心しきった表情で夢の世界の住人となっている最愛の恋人。  
 もちろんパジャマはしっかり着用している、しかし胸元からチラチラと見える  
ものはいかんせん…だが着用はきちんと為されている。  
 立人本人も然りである。  
「………夢…か…」  
 自分が今見ていた夢の余りの内容に、自分自身嫌気がさしてくる。  
 今までの人生、立場的に欲求不満というような状況になるようなことも一度も  
無く、花鹿に知られると怒って当分口を利いてくれないだろうが、行為に目覚め  
たときには既に幾らでも女はいるといった環境であったのは事実で。  
このような夢を見ることも、こういった夢で自分が反応してしまうということも無く…。  
しかし、自身に勝手に灯った熱はなかなか冷めずに、事実ここにある。  
 
「…ん…りー、れん」  
 そうしている間にも、立人が半身を起こし、どうしたってこの状況では必要以上に  
刺激を受けずにいられない花鹿から身体を離したために、少し眠りが浅くなったの  
か、花鹿の小さな白い手がシーツの上を這う。  
それも、鼻にかかった声と共に…。  
その仕草が、先程の夢と重なりやっと落ち着き始めた熱を、再度元に戻す。  
 
 
立人の理性が限界になる日も、もう間近?  
 
(終)  
 

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