秋のある日のこと。珍しく仕事が早く終わり、広域メンバーたちは帰る準備をしていた。  
「西崎、今夜は一緒に飲みたいんだけど・・・」  
帰る準備を終えた高見は廊下に出て、自分より先に刑事部屋を出ていた西崎に声をかけた。  
「残念ですが、今夜はダメです」  
そう言って西崎はスタスタと歩き去る。  
「ちぇっ、付き合い悪いなあ。女とデートの約束でもしてるのか?」  
相棒に誘いを断られた高見は、煙草をくわえ火をつけた。  
その後西崎は広域本部の建物を後にすると、夜の街を歩いた。彼はこの日、一人の女と会う約束をしていた。  
女の名は今日子。彼女はバツイチのシングルマザーで、ある事件が元で西崎と知り合った。  
西崎と今日子はもともと刑事と犯罪被害者の家族の関係でしかなかったが、今日子の存在は人を愛することを忘れていた西崎の孤独な心を癒し、西崎もまた、頑なに心を閉ざして生きてきた今日子の心を開かせる存在となっていた。  
そしていつしか、二人の間には恋愛感情が芽生えていた。  
数週間前、西崎はついに今日子に自分の想いを打ち明け、今日子もその想いに応えたが、なかなかデートをする機会には恵まれなかった。  
西崎はそれから多忙な日が続いたし、今日子も息子のことや自分の仕事でゆっくり出かけることができなかったのである。  
しかしこの日は今日子の息子が祖母の家に泊まることになったため、今日子は出かけることができた。それで今日子は西崎を電話でデートに誘ったのだ。  
(今日子さんが言っていた待ち合わせ場所はここだったよな)  
西崎は今日子が電話で言っていた待ち合わせ場所であるバーの前で、時計を気にしている今日子の姿を見付けた。  
「今日子さん、待たせたね」  
「いいのよ。私、ずっと楽しみに待ってたんだから」そう言う今日子の瞳が幼子のように輝く。  
 
二人は早速バーに入ると、揃いのスプリッツァーを注文し、乾杯した。  
白ワインをよく冷えたソーダで割ったカクテルであるスプリッツァーは西崎の渇いた喉を潤し、今日子を酔わせる。  
「今日子さん、大丈夫?」  
西崎がうつむいている今日子の肩に触れる。  
「ちょっと酔っちゃったみたい・・・」  
「マスター、彼女に水を出してやって下さい」  
西崎は初老のマスターに声をかけた。マスターが差し出した冷たい水を飲み干すと、今日子は小さくため息をつく。  
「今日子さん、お酒はあまり強くないんだ」  
「ええ。バーで飲むのも初めてなの。黙っていてごめんなさい・・・でも、あなたと一緒にこういう所でカクテル飲んでみたかったの。  
女って、好きな人と一緒に過ごすためなら何だってするものよ」  
そう言う今日子の表情はまさしく恋する乙女のそれだった。  
自分と一緒に過ごすためには、ちょっとした無理もする。そんな女心を隠そうともしない今日子が、西崎にはとても愛らしく思えた。  
「今日子さん、今夜はこれからどうする?」  
「今夜は帰らないわ。二人っきりで泊まれる場所の予約もしてるの」  
男女二人っきりで泊まれる場所というと・・・今日子の用意周到ぶりに、西崎は苦笑した。  
しかし、これでようやく彼女と体を重ねることができるのかと思うと嬉しかった。  
それから数分後、会計を済ませて店を出た二人は今日子が予約を入れていたブティックホテルに向かった。  
 
ブティックホテルに到着し、部屋に入るとすぐ、西崎は今日子を抱きしめキスをした。  
始めは唇を軽く触れ合わせるだけだったが、徐々にそれは舌を使う濃厚な口付けに変わっていった。  
いきなりのキスに今日子はたじろいだが、西崎に口腔のやわらかな部分を舌で愛撫され、快感に身を震わせる。  
白ワインの芳香が残る互いの口腔に舌を入れ、舌を絡め合ううち、今日子の秘所は濡れてきた。  
西崎が自身の唇を今日子のそれから離すと、今日子はベッドに腰掛け、西崎に言った。  
「西崎さん、脱いで。私をもっと気持ちよくさせて・・・・・」  
西崎は無言でうなずくとスーツの上着を脱ぎ、ネクタイをほどき、シャツのボタンを外す。  
西崎の小麦色に焼けて引き締まった上半身が露わになった。そこにはいくつもの傷が刻まれている。  
仲間たちには心配をかけないよういつもかすり傷だと言ってきたが、体に残るそれらの傷にかすり傷と呼べるようなものは殆どない。  
「西崎さん、その体・・・私の知らない所で大変な思いをしてきたのね」  
今日子は少し悲しげな目をしてそう言うと、着ていたスリーピ−スのジャケットとブラウスとスカートを脱ぎ捨て、ストッキングを下ろす。  
「そんな目で見ないでくれ。刑事という道を選んだ俺にとっては、こんな傷はたいしたことじゃないから」  
そう言うと西崎はベッドに腰掛けていた今日子を押し倒し、彼女を組み敷いた。  
西崎の右手は今日子の乳房を揉みしだき、左手は彼女の秘所を優しく撫で回す。  
「あっ、あっ、そこ・・・くすぐったい・・・・」  
よがる今日子の口から甘い声が漏れる。元の夫とした時にはこんなに声を出したことはなかったのに・・  
今日子は自分が西崎の前でとても淫らな女になったように感じ、少し恥ずかしかった。  
 
「今日子さん、そんな色っぽい声出されたら、俺我慢できないよ」  
西崎は愛撫を中断するとズボンのベルトを外し、ジッパーを下ろす。  
「それなら私も全部脱がなきゃ」  
今日子もブラジャーを外し、先ほどの愛撫でぐしょぐしょに濡れたショーツを脱いだ。  
西崎は今日子の濡れた部分に自身を挿入し、ゆっくりと腰を動かす。  
今日子が以前腰痛に悩んでいたことを知っていた西崎は、彼女に負担をかけないよう、激しく動くのはよそうと思ったのだ。  
「西崎さん遠慮しないで、私はもう何ともないの」  
西崎の気遣いに、今日子は気づいていたようだ。  
「そうか・・それなら・・・」  
西崎の腰の動きがだんだん激しくなり、西崎自身は今日子を深く、奥まで刺激する。  
「に、にし・・・ざき・・さん・・もっと・・・あっ、あぁぁ・・・!」  
部屋に響く淫猥な水音と今日子の嬌声がいっそう西崎を興奮させる。  
行為を続けるうち、西崎の額には汗の玉が浮かび、亜麻色の髪も繰り返す律動で乱れてきた。  
「私、もう・・・・!」  
今日子が西崎をきつく締め付けようとする。限界が近い西崎は自身を今日子から引き抜くと、彼女をうつぶせにさせた。  
イキそうなのにイカせてもらえないまま行為を中断され、今日子の体にもどかしい感覚が走る。  
 
西崎は四つん這いの格好で喘いでいる今日子の秘所に触れ、溢れてくる愛液を彼女の尻の間にある小さなくぼみに塗りこめた。  
「何するの?西崎さん・・・ひぃ!」  
西崎はそのまま指を今日子のくぼみに入れ、彼女の中を傷つけないようにそっと動かす。女性経験の少ない西崎だが、それでも「後ろの穴」で感じる女がいることぐらいは知っていた。  
本当に好きになった女だから、前も後ろも奪ってやりたい。西崎はそんな衝動に駆られていた。  
「少し変な感じだけど、気持ちいい。こんなの初めて」  
秘所をひくつかせながら今日子が言う。  
今度は西崎の指でゆっくりとほぐされた今日子のくぼみに、西崎自身が入ってきた。  
「うっ、くぅっ・・・西崎さん・・・・もう・・ダメ・・・!」  
異物感とそれを上回る快感で今日子のくぼみが収縮し、西崎自身を締め付ける。  
普通のセックスでは感じられない快感に耐えられなくなった西崎は、そのまま今日子の中に欲望を吐き出した。  
 
愛する男に「後ろの穴」で快楽を与えられ、行為が終わった後も今日子の体には疼くような感覚が残っている。  
今日子の背後で、西崎は自分のと今日子の体液にまみれた自身をティッシュで拭う。  
女を抱き、激しい行為に及ぶのは久しぶりだったので、西崎は多少気だるさを感じていた。  
そんな西崎の姿を見た今日子は仰向けに寝返って体を起こすと、西崎に抱きついてそっと口付ける。  
その口付けは優しく、自分が今日子にしたような激しい口付けに発展することもない。  
しかし、今日子からの優しく甘い口付けは、西崎の幸せな思いを強める。  
(俺はこの女性を愛しているし、この女性も俺を愛してくれている。)  
その思いを胸に、西崎は再び今日子を抱きしめた。                              
 

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