「ハーメルンの魔女…ねぇ。ハッ!
たしかに男をたぶらかしそうないいカラダしてんなぁ、え?」
傷だらけの身体で向かっていった彼女を待っていたのは、圧倒的な力の差だった。
いまや体中の血が、力が、目の前の男ーいや、魔物に削り取られて、抗うこともままならない。
体中、特に神経の集まっている翼の痛みがひどい。
頭部の出血が眼に入って視界も良くない。
そして、何より仲間を救えない自分の無力感が、鋭く彼女の胸を突いた。
茶色に変色した血のこびり付いた金糸をつかまれて、それでも彼女は諦めない。
諦めない―眼の力だけはそのまま、凶悪な笑みに対抗する。
「…それでも諦めねぇか。いいぜぇ、その眼!
そう…そのツラ汚してみてぇなぁ!」
ヴォーカルの咆哮に似た叫びが、廃墟に響く。
ブツリ、と何本か、美しい髪が切れた小さな音がする。
オル・ゴールの操る死霊たちに押さえつけられていたオカリナは、思わず声をあげる。
「サイザー様ぁっ!」
サイザーは地面に顔を押しつけられ、血に汚れた翼をつけた背を踏みつけられる。
「ぐうっ…!」
苦痛に歪んだ表情を見るや、ヴォーカルはさらに愉快そうに声をあげた。
「ハハハハハッ!
っあぁ、いくらなんでもこれじゃ雰囲気がねぇか?
メイクラブはロマンチックじゃねぇとなぁ!」
「!?」
パチン
ヴォーカルが指を鳴らすと、サイザーが顔を埋めていたガレキが純白のベッドに変った。
さらに彼女が身に着けていたはずの甲冑も、服も消え、
傷だらけの白と赤の入り混じった肢体と、波打つ金糸だけが艶かしく横たわっていた。
いや―その首には、悪趣味な漆黒の首輪がはめられていた。
サイザーが身をよじると、ジャラリと鎖が鳴った。
「おおっと、余計なことすんじゃねぇぞ?
後ろのナカマがどうなってもかまわねぇのか?」
「サイザー様!私のことは構いませんからっ…!」
言いかけたオカリナの口に、死体の指が押し込まれる。
サイザーは覚悟を決めた。
隙をうかがうしかない。
何をされようと、最終的にこの男を倒せればいい。
そうすれば、自分はみんなのところに帰れるのだ。
…みんなのところに。
383 名前:暴走王×妖鳳王 投稿日:04/08/15 23:02 ID:AMCws/HG
「…さぁて、それじゃさっそく奉仕してもらおうか?」
言うなり、ヴォーカルは自分の衣服を破り捨てた。
腹には、サイザーの鎌を噛み切った面妖な大口。
その下には―サイザーは生まれて初めてソレを直視した―
どう考えても並の人間とは比較にならないモノが半ば頭をもたげていた。
「奉仕…?」
「咥えるんだよ、そのかわいいお口でよぉ」
「ぐっ…!」
ヴォーカルはサイザーの頭を掴み、無理やり自身を押し込む。
「おっと、歯は立てるなよ?余計なことしたらどうなるかぐらいわかってるだろうな?」
舌で押し返そうとするが、しっかりと頭を掴まれていてそれ以上抵抗できない。
進入を拒むつもりの舌と唇の動きが、目の前の男を喜ばせているなどサイザーには理解できなかった。
間族の中で育てられたとはいえ、ベースの監視下に置かれて、ある意味では純粋培養だったのだ。
こと性に関することなどまったくの無知に近い。
そのサイザーにとって、この体験は強烈過ぎた。
―苦しい…何だ…何をしているんだ…?―
喉の奥にまで入れられたモノは、少しずつその容積と硬度を増していった。