「あー疲れた疲れた・・・」  
 山積みに詰まれた仕事の書類や手紙は、始めたときの半分ほどに減った。こ  
のへんで休憩してお茶でも飲もう、と仕事部屋から出たのが運の尽き、どこか  
で待っていたかのようにすうっと現れたエドガーに捕まってしまった。  
「リディア、お茶でも飲まないかい?」  
「ちょっとエドガー、私疲れてるんだけど・・・」  
「じゃあちょうどいいね!一緒にゆっくりしよう」  
 エドガーはリディアの気乗りしない返事を聞かなかったように、その手を取  
りずんずんと引っ張っていく。今まで一所懸命に仕事をして疲れているリディ  
アには、もうそれに抵抗する気にさえなれなかった。  
(ああ・・・あのふかふかのソファでゆっくりしたかったのに・・・)  
 エドガーに捕まってしまえばゆっくりお茶をするなんて出来ない。彼が新し  
いデートスポットやお店など、色々な話をしてくるからだ。それが心の底から  
嫌いというわけではないが、静かにお茶をしたいという今のリディアの望みと  
はかけ離れたものだ。  
 ぐいぐいと手を引っ張られつつ、リディアは諦めのため息をついた。  
 
 リディアは紅茶とスコーンを楽しみつつ、ゆったりとしたソファに体を預け  
ている。すぐ横に座るエドガーは、新作の芝居や新しい店のことを色々と話し  
ている。本当に色々なこと知ってるのね、と半ば呆れたように言うと、エドガ  
ーは今までとは違う、意地悪そうな笑顔を浮かべてリディアに言った。  
「ねえリディア、子供の作り方って知ってるかい?」  
「・・・はあ!?」  
 一瞬彼が何を言っているのか理解できなかった。少しの間を置いて、その言  
葉の意味を頭が理解すると、リディアは恥ずかしさで頬を真っ赤に染めた。  
「何てこと聞くのよ!」  
「いや、君が知っているのかどうか参考までに聞きたくて」  
 どう?とニヤニヤ笑っている。ここで知らないと言えば、なんだかエドガー  
に負けたような気がする。恥ずかしさよりも負けたくないという気持ちが勝っ  
て、リディアは頬を染めつつも答えた。  
「知ってるわよ。その、・・・お臍から生まれてくるに決まっているでしょう」  
「・・・おへそ、って・・・」  
 今度はエドガーがリディアの言葉にびっくりしている。一瞬目を見張った後、  
肩を震わせるようにして笑い出す。何か間違っていたんだろうか。からかわれ  
ているのだろうか。エドガーの笑いの意味が分からずきょとんとしていると、  
急にエドガーがリディアの体を抱きしめた。  
「え?ちょっと、何」  
「・・・まったく、君はなんて純粋なんだか・・・」  
「何よ、馬鹿にしてるの!?」  
 からかわれたんだわ!と恥ずかしさと怒りで怒鳴ると、エドガーがリディア  
をソファから抱き上げ、そのまま歩き始めた。抱き上げられたままのリディア  
には、どうしてこんなことをされるのかが全く分からない。  
「ちょ、ちょっと、さっきから何なのよ!」  
「知らないんだったら教えてあげるよ、子供の作り方。」  
 そう言われて、初めてエドガーの足が寝室に向かっているのだと理解した。  
 
 エドガーの寝室に来ると、リディアは大きなベッドへと下ろされた。今まで  
は抱きかかえられていて自由が無かったが、こうして下ろされ地に足をつける  
ことができれば逃げられる。  
(ここにこのまま居たら、何されるか分からないわ!)  
 だけどリディアの行動を見透かしていたエドガーは、逃げ出そうとする彼女  
の体を容赦なく捕らえ、口づけをした。  
「ん・・・っ」  
 本当に最初はただ唇をあわせるだけの口づけ。そこまではリディアだって知  
っている。なのに途中からエドガーの舌が唇を割り口内に入ってきて、混乱し  
た。こんな口づけは知らない。口内をエドガーの舌が余すところ無く蹂躙し、  
リディアの舌を絡め取るように動く。  
「・・・ふ、んぅ・・・」  
 触れるだけの口づけさえ経験したことが無いリディアにとって、深く探られ  
る口づけは衝撃的なものだった。舌に触れられるたびに体がじんとするような  
気がした。  
「・・・っはあ、はぁ・・・なに、よ・・・」  
「言っただろう、子供の作り方を教えてあげるって。実地でね」  
 口づけのせいで、リディアは体がもう言うことを聞かなかった。足腰には力  
が入らないし、何より一瞬感じた快楽に体が惹かれてしまった。理性の部分で  
こんなこと駄目だと思っていても、本能と好奇心が今は勝っている。そして心  
のどこかで小さく、彼になら全部を預けられるかも、と思っていた。  
 
「あ、や、だめ・・・!」  
「何で?」  
 下着まですっかりエドガーに脱がされベッドに寝かされたリディアは、彼か  
ら与えられる、今まで知らなかった感覚に翻弄されていた。エドガーの手が胸  
をゆっくりと揉みしだき、同時に淡く色づく頂を舐めあげられる。  
「ひゃぁっ!」  
「君は本当に可愛いね。声も、姿も、全部が」  
 舌で舐られ指でくにくにと摘まれ弄られると、頂がピンと立ち上がる。それ  
を更に摘まれ、リディアはその刺激と快楽に、ひっきりなしに声をあげた。し  
ばらくはその反応を楽しんでいたエドガーだが、胸に置いていた手の片方をゆ  
っくりと彼女の腹へと下ろしていく。そのときに体の線を撫ぜるようにするも  
のだから、リディアはその感覚にも声を上げ体をよじらせた。そしてエドガー  
の指がゆっくりとへそ周りを撫でる。  
「可愛いおへそだね」  
「・・・っ、あ、何よ・・・!」  
「褒めてるんだよ。そうそう、子供はここから生まれるんじゃないよ」  
「え?」  
「こっちから生まれるんだ」  
 そうしてゆっくりと掌がリディアのうっすらとした茂みへ、秘所へと下りて  
いく。指が入り口にたどり着くと、ゆっくりと指をその中へ入れた。  
「や、ああっ!」  
「ここに僕のを入れて、子供を作るんだよ。分かる?」  
 それから一度指を抜き、上の方にある尖りを探り当てる。ビクンとリディア  
の体が跳ねるが、エドガーは構わずその突起を優しく弄り始めた。  
「あっ、は・・・ぁっ、や、何、これ・・・」  
「気持ちいい?」  
「・・・んっ、わ、分かんない・・・っ、そんなの・・・あ、あ」  
 
 初めての感覚に戸惑うリディアにエドガーは新鮮さを覚える。また、こんな  
風に自分の腕で彼女を好きなようにしていられるのが嬉しいとも思った。眉根  
を寄せたリディアの表情は扇情的で、見ているだけでエドガーは自身が張り詰  
めてくるのを感じた。  
(まさか、こんなに夢中になるとはね・・・)  
「ん・・・っ、ぁ、エドガー、あっ、あああああぁっ」  
 きゅ、と強く突起を摘むと、リディアが一際高い声を上げた。弓なりに背中  
が反りあがり、秘所に指を当てると中からとろりと水気があふれてくる。それ  
を確認したエドガーは、ぐったりと横たわり息を整えているリディアから少し  
体を離して、自らも全てを脱いだ。  
 何か分からない、波に攫われるような感覚を体験したリディアは、息を整え  
ながらぼんやりと目の前に居るエドガーを眺めていた。彼はゆっくりと身を起  
こし、着ている物を全て脱ぎ去って、リディアと同じく裸になった。それから  
ゆっくり体を重ね、肌と肌が直接触れるのをなんだか気持ちいいと思っている  
と、リディアのお腹になんだか熱いものが触れた。  
「あ・・・」  
 ぼんやりとそれを下目に見つめていると、エドガーがくすくすと笑いながら  
リディアの掌をそれへと導いた。初めて触るそのものの熱さに少し驚きながら、  
それをゆっくりと撫でた。  
「これが、君の中に入って、子供が出来るんだ」  
「入るの・・・?」  
 中に入る、という言葉に恐怖を覚え、不安そうな目でエドガーを見上げる。  
エドガーは大丈夫だよと言って、それをゆっくり入り口へ宛がった。  
「ゆっくり息吐いて・・・」  
「はあ・・・・・・・・・っ、い・・・っ」  
 
 ゆっくりと先ほど触っていたそれが中に入ってくると、リディアは体が裂け  
てしまうのではないかと思うほどの痛みを感じた。あまりの痛みに、こんなの  
聞いてないわよ、とエドガーに訴える。  
「・・・っ、いた、痛い・・・ちょっと・・・!」  
「ごめん、我慢して」  
 エドガーはそれでも入れるの止めない。息をゆっくりして、なんとか体を楽  
にしてと言われたけれど、痛みで体が硬くなってしまっているのはもうどうし  
ようもない。気がつけば目尻から涙が零れていた。  
 エドガーもエドガーで、あまりの狭さと彼女の涙に、なんとかしなくてはと  
思った。先ほどまで止めていた胸への愛撫を再開したり、耳たぶを舐りつつ下  
の突起を弄っていると、次第に彼女の体の緊張も解れてきたようで多少スムー  
ズに進むようになった。そうして最後まで収め終わると、リディアの目尻の涙  
を舌で拭った。  
「全部、入ったよ」  
「っ、そう、良かった・・・」  
 些か辛そうにする彼女に悪いとは思ったが、もう我慢が出来ずエドガーはゆ  
っくりと腰を動かし始めた。これ以上動かないだろうと内心ほっとしていたリ  
ディアは、そのエドガーの動きと痛みに驚き涙を零す。痛いという言葉をリディ  
アが零すたびに、ごめん、とエドガーが呟く。エドガーとしては彼女を苦しめ  
る事はしたくは無かったが、それよりも今は狭く熱い彼女の中を感じていたかっ  
た。  
「・・・っく、リディア、出すよ」  
「は、あぁっ・・・な、なに・・・」  
 リディアは何が起こるのか分からず、未知のものへの不安からただエドガー  
の背中にしがみつく。そうして痛みと不安と、今まで感じたことの無い感覚に  
耐えるうち、エドガーが一際強く腰を打ちつけた。  
「リディア・・・っ!」  
 彼が名前を呼ぶのを聞いたリディアは、自分の身の内から湧き上がる不思議  
な感覚と共に、同時に自分の中に、何か暖かいものが放たれたのを感じた。  
 
「・・・すっごく痛かったんですけど」  
「その痛みにまで耐えて僕を受け入れてくれて嬉しかったよ」  
 ベッドの上で裸のままシーツにくるまったリディアが文句を言うと、エドガ  
ーはそれさえも愛の表現に変換して受け止める。まったく、あの時仕事部屋か  
ら出たのが間違いだったわ、と内心ため息をついた。  
「でもこれで子供の作り方、わかっただろう?良かったね」  
「良くないわよ!あんな痛いの、もうごめんだわ!」  
 恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にして怒ると、エドガーはリディアをぎゅっ  
とシーツごと抱きしめる。私は怒ってるんだからね!と更に怒鳴っても、エド  
ガーはへらへらと笑ったままで。  
「大丈夫、今度は気持ちよくしてあげるから」  
「今度って何よー!」  
 これからは今まで以上に警戒しなくちゃ、とリディアは決心するのであった。  
 
(終わり)  
 

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