ゆっくりと彼女の中に入り込む。
その衝撃にリディアは、体を強張らせ、息をするのもままならない様子だった。
歯を食いしばり、痛みに耐えている。
彼女の痛みが遠ざかるのを少し待つ。
顔には脂汗が浮き、眉をしかめ、彼を受け入れている体制に必死になれようとしている。
そんな必死な姿にいとおしさがこみ上げてくる。
枕を彼女の腰の下にいれてやる。
体を動かされるのに反応して辛そうに呻く。
彼女のすべてはもう、自分のものだ。
歓喜に少し乱暴に胸元に跡を残す。
「いたっ」
思わずというようにでた悲鳴にたまらなく欲望を揺さぶられた。
もっと、聞きたい。
ひどく凶暴な気持ちになっていた。
痛みをこらえる彼女に謝りながら、彼女の中にうずめた自身をゆっくり動かす。
「…っ」
痛みに体を硬直させ、後ずさろうとしているのに気付き、
「もう少しじっとしていたほうがいい?」
「や…」
「まだ痛むかい?」
やさしく聞く。
だが少々このままでいるのはつらくなってきているところだった。
今までたくさんの女性と関係を持ったが、ここまで手こずらされたのは、リディアにだけだった。
そして、かけがえなく愛しいと思ったのも、彼女にだけ。
そのせいだろうか、うまく自分を制御できそうもない。
気を抜けば彼女の体を気遣わずに、乱暴に接してしまいそうだった。
息も絶え絶えといった風に、リディアはかすれ声でいう。
「も、やめて…」
今更何を。
彼女は彼の妻になることを選んだ。
今日の結婚式で、永遠の愛を誓い合った。
そのときのリディアはとても幸せそうで。
夜も、寝所で寝間着だけを身につけ、恥ずかしそうにしながらも、
おとなしく身をゆだねてきたというのに。
もう戻れないのだ。
こんな関係になる前の二人には。
すでに彼女は自分の妻だ。
なのに、こんな状況でそれを言うとは。
苛立ちがこみ上げるが、怒りの言葉を飲み込む。
自分に女性のつらさが分らないように、彼女にもこの状況の男のつらさなどわからないのだ。
「だっ…て、こんなっ…」
リディアの瞳から涙が零れ落ちる。
衝撃を感じて固まった。
女性は純真で無垢であれ。
そう育てられてきて、性的なことなど何も聞かされずにいた彼女には、
この行為は恥ずかしく屈辱的なことなのだと察せられる。
彼女のために、ここでやめるべきなのか。
はじめての彼女にとって、ここまでの過程は彼の想像以上につらいもののはずだ。
「ごめん」
だが、ここでやめることなど、できない。
息を呑むリディアには、その言葉はつめたく聞こえただろう。
目元の涙をすくい取り、涙の跡をくちびるで拭う。
「息を吐いて。少し楽になる」
抑揚のない声でいい、とっさに逃れようとする彼女の手をシーツに押さえつけ、自分の体で縫いとめる。
「いや…」
顔を背けるリディアを無理にこちらに向かせ、くちびるにキスをする。
逃れようとする舌に無理に自分の舌を絡める。
ぎゅっと目をつぶり、耐える彼女の姿に、そそられる。
ゆっくりとくちびるで彼女の体を辿る。
華奢な首筋。
大きすぎず、小さすぎず整った乳房。
細い腰。
びくりとリディアの体が硬直する。
その感覚に触れた部分が熱を持ち始める。
彼女の内部がわずかに収縮する。
それに誘われ、彼女の両足に手をかけ、広げる。
「やあっ…」
抵抗を示すが、弱々しく、エドガーにはびくともしない。
「動くよ」
耳元で囁き、おしのけようとする手を強く握る。
「もう、僕も我慢できないくらいつらい。リディア、助けてほしいんだ」
真剣な言葉に、目を見開き、抵抗をやめた瞬間を見計らい、彼女の中を衝いた。
リディアが声にならない悲鳴を上げた。
それはかすれ、ちいさな、声とも呼べないような悲鳴だった。
衝撃に、体がのけぞっている。
無意識だろうが、その体制は彼の劣情をさらに煽り立てた。
リディアの膝を曲げて、勢いよく腰を衝き出す。
「…はあっ」
しだいに、体が異物を受けとめようと、彼女の中が濡れてくる。
熱さにとろけそうになる。
リディアも肌を赤く染め、喘いでいる。
その表情は、先程より辛そうではなく、たいぶ慣れてきたようだ。
息を弾ませる彼女と額をあわせる。
焦点の合わない目が、目の前のエドガーをみる。
少し顔を離し、見詰め合う。
羞恥とわずかに非難しているような、潤んだ瞳。
エドガーは極上の微笑を浮かべ、くちびるをそっと重ねあわす。
金緑色の瞳が、閉じられるのをみつめてから、自分も閉じる。
もっと深く彼女とつながろうと、断続的に腰を動かす。
「は、…ああっ」
彼女の内部が締め付けられ、快感に溺れそうになる。
意識を保つために、リディアの手と自分の手をからめる。
リディアは、予想外に強い力で彼の手を握り返してきた。
それに力を得て、激しく腰を動かす。
「や…壊れちゃう…ああっ」
「大丈夫だから…力を、抜いて…」
彼女を壊したい。
叫びに欲望を煽られ、ひたすら内部を衝き、彼女の中を把握しようと探る。
揺さぶられる感覚をやりすごそうと、彼女はエドガーの背中にしがみつき、爪を立てる。
わずかに痛みを感じるが、それよりも彼女を感じるほうに夢中だった。
「リディア?」
絶頂を迎えた直後、ゆっくりとリディアの体から力が抜け、ぐったりした。
意識が飛んでいるものらしい。
少々激しくしすぎたかと後悔する。
どこか虚ろな表情を浮かべている。
そっと腕の中に抱き込む。
すべらかな肌を撫で、彼女が意識を取り戻すのを待つ。
触れられているのに反応したのか、意識が戻ってくる。
「エ…ドガー…?」
ぼんやりと彼の名を呼ぶ。
キャラメルの髪を撫でて頬にキスすると、はっきりと覚醒したリディアは顔を赤らめる。
「まだ、終わらないの…?」
不安そうに聞いてくる彼女に、ほほ笑みで肯定する。
「もうやめましょう…疲れたわ…」
ぐったりとしていう彼女の気持ちに配慮したかったが、ひとつ気になることがあった。
自分は今まで、利害関係のない女性にはベットで優しくしてきていたが、
リディアに関しては、理性が暴走して乱暴な扱いになってしまう。
自分だけのものであると証明したいがためか、嗜虐心が強い傾向があるのか。
それを試すために、残酷なことばをリディアに吐く。
「ねえ、リディア、知っている?」
ゆっくりと組み敷きながら甘く耳元で言う。
「夫の持つ性交の権利を拒んだ妻は、投獄することも出来るんだよ?」
リディアの目が見開かれる。
「こ、この…悪魔っ!」
わずかなおびえの表情、かすれたののしりの声に痛みと同時に快感を感じた。
女性を抱きながらこんな感情を感じたことはなかった。
リディアが愛しくて、そして彼にそんなおもいを与えた彼女が憎らしく感じられるのだ。
「冗談だよ」
リディアの額に汗で張り付いた髪を掻きあげ、エドガーはほほ笑み、キスを贈った。