婚約の指輪はまだつけていない。左手の薬指は空いたままだ。そんな私にエドガ−は「早くお父さんに挨拶に行こう」とか  
「結婚しよう」とか相変わらずホントかウソかわからないことを言ってくる。これだけしつこいと本当なのかな?と信じたくな  
るけど、今ままで何度も騙されてきた。「恋をするのを恐がってるみたいだ。」そうエドガ−は言った。確かに恐い。傷つく  
のはもう嫌だ。でも・・・。  
「リディアはあいつのことを嫌いなのか?」  
机に頬づえをつき、考えたくないことを悶々と考えていたリディアの前にいつのまにかケルピーが立っていた。  
「いつからそこにいたの?もっと早く声をかけてくれればいいのに。」  
「お前が指輪をじっと見てるときからいたぞ。なぁ、あんな軽くて胡散くさい奴なんかほっといて俺と妖精の世界へ  
行こうぜ。悩むことなんて何一つ無い。のんびりくらそうぜ。」  
ケルピーのことは嫌いではない。変わり者の自分を昔から好きでいてくれる。彼の気持ちは本当なんだろうと思う。  
彼といればきっと幸せに暮らせる。でも・・・大切な人を残して行けるだろうか。大好きなお父さんを。そして・・・もう一人・・・。  
「待つって言ったけど、もう待つのも疲れてきたぜ。リディア・・・俺を選べよ。」  
ケルピーの手がいつの間にかリディアの髪をなでていた。  
 
「僕の婚約者に触れないでくれるかな。」  
いつの間に来ていたのだろう。エドガ−が部屋の入り口で腕組みをして壁によりかかってこちらをじっと  
見つめて、いや睨んでいた。  
「おっと。婚約者さまのおでましだ。リディアが何だか悩んでいるようなんでね。相談に乗ってやろうと  
思ってさ。じゃな。リディア」  
「あ・・・じゃあね。」  
エドガ−のただならぬ雰囲気を感じたらしいケルピーは素直に部屋から出て行った。エドガ−はケル  
ピーが部屋を出るまでドアの前から動かなかったが、ケルピーが出て行くとドアを後手で閉め、リディア  
の座っているイスに近づいてきた。  
「そういえばラングレーさんの家に行くんだった。」  
何となく気まずい・・・。そう思ったリディアは白々しい独り言を言って立ち上がった。しかしその瞬間、  
ものすごい力でイスに座らされた。エドガ−の両手がイスの手すりに置かれる。  
「きみは婚約者のぼくを差し置いて他の男の所へ行こうとするんだね。」  
エドガ−の灰紫の眼がすぐそこにあった。  
「べ・別に婚約者じゃないし!ホントにラングレーさんに用があるんだから、どいてよ。」  
なんだかまっすぐにエドガ−の眼が見れなくて、そっぽを向きながらリディアは答えた。  
「嫌だね。美しい君を他の誰にも見せてやるもんか。どうしてそんなにきみは僕を拒絶するんだい?  
そんなに僕が嫌い?」  
エドガ−が眉根にしわを寄せて悲しそうは表情をして言う。そんな顔をされてもリディアにとってみれば、  
芝居なのかな?と疑ってしまう。自分はエドガ−のことをどう思っているのだろうか。  
「嫌いとか好きとか・・・そんなんじゃ・・・。」  
顔が赤くなってくるのを自覚したリディアはうつむいた。  
 
「僕が嫌い?」  
エドガ−が腰をかがめてリディアをのぞきこむ。  
「僕はこんなにきみが好きなのに」  
そう言うとエドガ−は震えるリディアを包み込むようにして抱きしめた。エドガ−のにおいがそっと  
リディアを包んだ。その香りに包まれると不思議にホッとして、何も考えずにこのままエドガ−と  
一緒にいたいとさえ思えるのだった。これが自分のためだけに向けられたものでるならば・・・。  
「そっそういうこと他の誰にも言ったりするんでしょ?!期待させるようなこと言わないでよ!」  
エドガ−の手を振り払いリディアは立ち上がった。  
「そうよ!前あなたが言っていた通り、誰かを好きになるのが怖いわ!それがあなたであるならなおさら!  
私を利用するために甘い言葉を囁いてその気にさせて。信じて近づいたら捨てられて。  
私はもう傷つくのはまっぴらなのよ!」  
流れる涙をそのままに、リディアはそう叫ぶと書斎から逃げ出した。  
 
どうしてこんなに涙が出るのか。哀しそうなエドガ−の顔を思い出してどうしてこんなに  
胸が痛いのか。そんなことをグルグルと考えながら走っていると、いつの間にか温室に  
たどりついていた。走り疲れてまるで倒れるようにしてベンチに腰掛けた。涙は次から  
次へと溢れてくる。  
「なんであいつのことでこんなに涙が出てくるのよ・・・。」  
誰もいない温室でそうつぶやいた。  
「それはその人のことが好きだからよ。」  
そう声がするので顔をあげると一匹の妖精がリディアの膝上に乗っていた。見覚えのある妖精。  
 
「スイートピー!」  
「情けないわねぇ。妖精博士が泣いたりして。」  
「だって・・・わからないんだもの。あいつが。調子いいこと毎回言って私を騙して利用して。  
甘い言葉を囁いて・・・。私の気持ちをかき乱すんだもん。」  
スイートピーはフーっと息を吐くと両手を腰にあててこう言った。  
「・・・あんたはエドガ−のこと好きなクセにそれを認めたくないのね。」  
「私がエドガーのことを好き?!何言ってるの。そんなわけないじゃない!」  
図星をさされたような気になってリディアはむきになって答えた。  
「あんたの言ってることを聞いてると、エドガ−に自分だけを見て欲しい!他の女を見ないで  
自分のことだけ好きでいて欲しいって言ってるように聞こえるわよ?」  
「そんなこと!・・・・・・・」  
そういうとリディアは手で顔を覆い、天を仰いだ。  
 
・・・確かに、スイートピーのいう通りかもしれない。自分がエドガ−の気持ちを認められないのは、  
信じられないのは、自分の他にも同じ事を言われている女の人がいるだろうと思うからだ。そして  
そうだった場合、自分だけが傷ついてしまうのが嫌なのだ。自分だけを好きでいて欲しい。ずっと・・・。  
そう思った瞬間、リディアの心はすっと軽くなったのだった。  
「スイートピーの言うとおりだわ。私、エドガ−を信じられなくて。そして自分の気持ちを認めたくなくて、  
傷つくのが恐かったの・・・。本気になってのめりこんでもつきまとってもいいってエドガ−は言ってたけど、  
距離が近くなった分、傷の深さも深くなる。それか恐かった。そしてなにより好きな人に嘘をつかれるのはもう嫌なの・・・。」  
そう言いながらリディアの眼からまた涙が溢れてきた。  
「ぼくを信じて欲しい。リディア。」  
 
「!!!」  
背後から聞き覚えのある声であり、今一番聞きたくない声がしたので振り返るとそこにエドガ−が立っていた。  
「だましたりしてゴメン。本当にごめん。でもリディアを好きな気持ちは嘘じゃないよ。」  
突然の出現にリディアはうろたえた。どうしよう、さっきの言葉、聞かれていたんだ!!恥ずかしい!!  
エドガ−は逃げようとするリディアの腕をつかんで強く抱きしめた。  
「逃げないで!君の気持ちを盗み聞きしたのは悪かった。でも嬉しかったんだ。」  
恥ずかしさで顔が真っ赤になっているリディアはなんとかしてエドガ−の胸から逃げ出そうとしたが、  
さすがにエドガ−に全力で抱きしめられては逃げ出すことは不可能であった。  
「僕の今までの言動がきみを不安にさせて傷つけていたんだね。ごめん。でも安心して。僕のきみを  
好きだという気持ちに嘘はないよ。」  
そういうとリディアの顎をつかみ、そっと上を向かせた。  
「リディアが好きだ」  
 
涙でぐちゃぐちゃになった顔を見られるのが恥ずかしくてリディアはうつむいた。  
「・・・好きだ」  
そういうとエドガ−はリディアのキャラメル色の髪にキスを一つ落とした。  
「でもっ私はエドガ−のことなんか!」  
そういいかけたリディアの唇をエドガ−は人差し指で塞いだ。  
「そんな口たたいたってだめだよ。僕はもう君の気持ちを聞いたんだから」  
「!!!」  
言い返したいのに言葉が出てこない。それに加えて涙が止まらない。うつむいている  
リディアの顎を強引に持ち上げるとエドガ−はリディアの唇を塞いだ。優しく。そして強く。  
いとおしむように慈しむように何度も。リディアは身動きが取れず、エドガーのされるがままだった。  
最初は震えていたが、徐々にエドガ−に身を任せていった。  
長いキスの後、ようやく唇を離したエドガーは力なく自分に寄りかかる、大切な人の耳元でこう囁いた。  
「結婚しよう。ノーはなしだ。」  
リディアは息を整えながら悪魔の囁きを信じていいものかどうか迷っていた。でも・・・何も言わずコクリとうなずいた。  
 
「よし!そうとなったら早速!」  
そういうとエドガ−はひょいとリディアを抱えると歩き始めた。  
「ちょっと!何するの?バカバカ!降ろして!!」  
リディアはそう言いながらエドガ−の胸をたたく。  
「なにするのって結婚する二人がすることといったら一つだろ?これからぼくの部屋に行こう」  
「なっ・・・降ろしてよ!そんなの私は嫌だ!」  
その言葉にエドガ−は立ち止まったが、にっこり笑ってこう言った。  
「いままでぼくを信じてくれなかった罰だからね。どれだけ僕が今まで辛かったか。きみの体に教えることにするよ」  
「っ!バカ!何言ってるのよ!嫌だってば!!」  
ジタバタと暴れるリディアにエドガ−は  
「そんなに暴れると落ちるよ」  
と言うと足取りも軽やかにリディアを寝室に運んでいった。  
 
ゆっくりとベッドに下ろされる。その瞬間起き上がろうとするリディアの肩をつかみ、  
ベッドへ縫い付けると、いくつも優しいキスを落とした。  
「ん・・・待って」  
「もう待てない」  
必死の抵抗を試みるがエドガ−は止まらない。  
首筋に落とされるキスがくすぐったくて、身をよじって逃げようとするがエドガ−に  
舌を耳に入れられる。ザラっという舌の感触に体がゾクゾクして何かが這い上がってくるような感覚を覚えた。  
「ふっ・・・やめ・・・ふうんっ・・・」  
自分は今なんて声をだしているのだろう。恥ずかしくなって手の甲で口を塞いだ。  
「だめだよ。リディアの声、ちゃんと聞かせて」  
そう言うとリディアの手を唇からどかせ、ベットに押さえ込んだ。いつのまにか服はがされており、  
あらわになった胸にエドガ−はキスをしながら撫でる。唇を寄せ、ピンク色の突起を軽く吸い上げる。  
 
「やっ!あんっ・・・んんっ・・・」  
決して大きくはないが、形の良い胸を存分に弄ぶ。ねっとりと乳首の周りを舌でなぞる。  
「ふぅん・・・んふっ・・・あんっ」  
起立した乳首をコリコリと指で転がすと、リディアの体が大きく弾む。  
「あんっ!やめっ・・・て・・・」  
チュパ・・・とわざと音を立てて胸の突起から唇を離す。そしてショーツの上から  
秘所をなぞるようにして指を往復させる。そして下着の上から敏感な部分に舌を這わせる。  
「あんっ!あっ!はんっ・・・いやっん・・・ぅん・・・っあっあん」  
リディアは上に逃げようとするのだが、エドガ−はそれを許さない。がっちりと腰を押さえ、  
足を開かせ、リディアの秘所に顔をうずめている。  
 
「濡れてきたな。」  
「・・・・・・!!!」  
エドガ−はそう言うとリディアの下着をはぎとった。リディアの足を自身の肩にかける。  
ピチャピチャ・・・と音を立てて濡れそぼった秘所を舐めあげる。花芽をさんざん捏ねまわし、  
花弁を両側に押し広げ、奥深くまで舌を進入させる。ざらっとした舌の感触に、リディアは  
声を我慢することができない。  
「あ・・・やぁっ!・・・ぅんっあっ・・・はんっ・・・ふぅん・・・ぁはん・・・」  
クチュクチュ・・・という音と共に奥からどんどん蜜が溢れてくる。エドガ−はその蜜を一滴でも  
漏らすまいと音を立ててすすった。  
「ああぁん!!・・・」  
執拗に舐められ、リディアはもう何が何だか判らない。  
 
「そろそろいくぞ?」  
エドガ−は自身をリディアの秘所にあてがうとゆっくりと挿入した。  
「やっ痛っ・・・!!」  
リディアから溢れる涙を唇で受けながらエドガ−はゆっくり進入を続けた。  
「あんっ!・・・あっあんっ!・・・んっんっんっぁあん!」  
切なげに苦しげに声をあげるリディアの胸の突起を弄びながら、エドガ−は抽送を続ける。  
「あん!っも・・・もう・・・ふぅんっ!」  
痛みを堪えて自分に答えてくれるリディアがなんとも愛らしく、そして嬉しく感じられた。  
自分のせいで自分の気持ちに確信が持てなかったリディア。  
そんないじらしいリディアを一生大切にしようと心に決めた。  
「ふっ・・・もうダメっ!ああ・・・あああああん!」  
押し寄せる快楽の波に身をゆだねた。  
 
ぐったりとベッドに横になっているリディアをエドガ−は腕の中へ抱き寄せた。  
まるでやっと手に入れた宝物のように。そのリディアの耳元でエドガ−は囁いた。  
「こんなもんじゃ教え足りないからね」  
リディアは反撃する気力がなく、その日1日エドガ−はリディアに自分の気持ちを教え続けたとか。  
 
おわり  
 

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