「ねえ、結婚式はいつにする?」  
ドレスも早く作らなくちゃね、とエドガーは楽しそうに話しかけてくる。  
お芝居で結婚の約束をしただけだといくらリディアが言っても  
エドガーは決して取り合わず、毎日のように結婚話を持ち出してくる。  
「やめてよ、あれはその場限りだって言ったじゃない」  
呆れてため息をつく。  
どうしてこの人は、こんなにも自分に執着するのだろう。  
毛色の変わったフェアリードクターよりも、  
同じ階層のお嬢様のほうがどう考えたって釣り合うじゃない。  
「ねえ、お願いだからやめましょうよ」  
「やめないよ、君のような美しい花を手に入れたんだからね」  
そんな台詞で自分を惑わせないで欲しい。  
友人としてなら付き合っていけると言っているのに、  
なぜこんなにも愛情にすり替えようとするんだろう。  
 
「はっきり言わせてもらうけど」  
「どうぞ」  
「・・・あなたのことは友人としかみていないの」  
だから、やめてちょうだい。  
リディアが困惑した様子でお願いすると、  
エドガーは笑顔を一瞬曇らせた。  
「友人じゃなくて恋人になりたいな」  
「だめよ」  
「どうして?」  
「私が好きなんて、嘘でしょ」  
「嘘じゃないよ」  
いつもどおりの押し問答が繰り返される。  
いつもと違うのは、彼の表情がどこか泣きそうに見えること。  
 
「こんなにも僕は君を愛してるのに、どうしてきみは信じてくれないのかな」  
「だって・・・」  
リディアが口を尖らせる。  
普段から信じられるような行動をしていないじゃない。  
なんとなく目を合わせづらくて、少しうつむいてそう答えると  
さっきまで距離をとっていたエドガーがじりじりと近づいてきた。  
「なんでこっちに来るのよ」  
「いや別に」  
どこかいつもと違う雰囲気の彼に逆らうことができなくて  
リディアは後ろ足でさがっていき、気がつけば壁際に追い詰められていた。  
どいてよ、と言う事もできずにうつむいていると  
上から彼の声が降ってきた。  
「どうすれば信じてくれる?」  
 
 

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