「んー、向こうの…友達は、巫女さんとかしとったけど」  
「み……」  
 
「…多汰美、それはどんな店や?」  
「みせ?」  
「あ、いや…神社やんな、うん。  
 …あー、なんか一瞬、おっかしなこと考えてもうた……」  
 
危ない、危ない。  
バイトの内容は、そのおっかしな想像のほうでバッチリ合うとるよ。  
こんな話、マキちーはともかく八重ちゃんには刺激強すぎるけえね。隠しとかんと。  
いやー、マキちーのエロガッパセンサーは正確じゃね。  
 
…ただ、もう一個の隠しとることは、  
マキちーのエロガッパセンサーにも引っかからんかったみたいじゃねぇ…。  
 
…友達の話なんじゃけどー、って言ったら、  
それはたいてい、本人の話、なんじゃよ。  
 
…。  
……。  
………。  
 
「多汰美ちゃーん、ご指名でーす」  
 
…中学まで陸上やっとったけえ、なんじゃろうか。  
速く走ることへの欲求、っていうのは高校入ってからも絶えずあったんじゃけど、  
ある日、ジャージのポケットにお金入れてると、  
なぜかいつもよりはるかに速く走れることに気づいたんじゃよねぇ…。  
ユニフォームのポケットにお金入れると活躍できるようになる野球漫画があったけど、  
ああいうのともまた違う気がするし、なんとも不思議なことじゃよ。  
 
なんでそうなるんか、はわからなくても、速く走れるのは単純に嬉しいことじゃし。  
お金のこと考えとるだけでもまぁある程度速くなるんじゃけど、  
実際にポケットに入れたほうが、しかもそれが高額なほど速くなるんじゃから、  
なんとかして普段からたくさんお金を持っていたい、  
より多くのお金を手に入れたい、と思うのは…自然なことじゃよね。  
そうなると、一番手っ取り早いのはこのお仕事なわけじゃよ。  
 
「多汰美ちゃーん?」  
「あ、はーい、すみませーん。今行きますー」  
 
ぱん、と一つ頬を叩いて、控え室のソファーから立ち上がる。  
入店して日が浅い上に、見た目にもスタイルにもあんまり自信はないんじゃけど、  
でもそれなりに指名ってあるもんなんじゃね。  
しかも今日は、割高になるコスチュームのオプション指定までついとる。ありがたいことじゃよ。  
指定された巫女装束に着替えて、ウキウキ気分で割り当てられている個室に向かった。  
 
「ご指名ありがとうございますー、多汰美ですー」  
「……!?」  
 
部屋に入ると、今日のお客さんがすでにベッドに腰掛けていた。  
ちょっとカッコイイ系のお兄さんじゃけど……むぅ、なんかものすごく驚いた顔しとるよ。  
もしかして、この巫女装束、似合ってないんかなあ? 結構気にいっとるコスチュームなんじゃけど…。  
コス有りでいつもより稼げるチャンスじゃし、「写真と違う、チェンジ」なんて言われんとええねぇ…。  
 
「…」  
「…」  
「…あのー?」  
「…あ、いや、ごめん。耳と尻尾のオプションは頼まなかったけどな、って思って。  
 耳も尻尾も、もちろん巫女装束も、よく似合ってるよ」  
 
へ? 耳と尻尾?  
そんなのつけとらんけど…何のこと言っとるんじゃろうか、このお客さん?  
…まあいいや。何はともあれ、チェンジって言われんかったから、まずは安心じゃよ。  
 
「よし、じゃあ早速だけど、始めていいかな?」  
「あ、う、うん。あの、プレイのシチュエーションとかは…?」  
「いや、いいよ。巫女に獣耳って見た目だけで充分。フツーにしてて」  
 
良かった。神主×巫女、とか、やまたのおろち×生贄、とか言われたらどうしようかと思っとったよ。  
ただでさえ演技は得意じゃないけえ、そんなシチュエーション演じ切れんもんね。  
 
「んじゃ、こっち来て……へえ、多汰美ちゃん、細いのに胸結構あるんだね」  
「…ぁ、そう…んっ、か……な…?」  
 
引き寄せられて、お客さんの膝の上にちょこんと横座りした。  
片手で肩から抱きかかえられ、もう片方の手で服の上から胸をさわさわ揉まれる。  
 
「よっ…あ、下着つけてないんだね」  
 
胸の合わせから手を差し入れられ、素肌の起伏を揉み上げられた。  
他のコスチュームのときは、注文が無い限り  
一応下着つける(男の人は下着も脱がせたいみたいじゃけえ)んじゃけど、今回は着物じゃしね。  
んー…力の入れ具合が絶妙じゃよ…このお客さん、ちょっと上手い、かも。  
 
「乳首、固くなってきたよ」  
「ん、はっ…あっ……」  
「こっち来て……ん、よし、いい子だね…ちゅっ」  
「…は、あぅっ……ちょ…強…っ! す、吸いすぎ、じゃよぅ…んぁっ!」  
 
お客さんがベッドに寝転び、私はその上に覆いかぶさる格好になった。  
胸元をはだけられ、お客さんは音を立てて乳首に吸い付いて舌を動かしてくる。  
まだ片手で数えられるだけしかお客さん取ってない、っていうのもあるんじゃろうけど、  
胸を弄られる恥ずかしさは…慣れんもんじゃね……大きくないけえ。  
 
「あ、こっちも下着つけてないんだ…やらしいねえ」  
「んっ、やっ、やらしいんじゃっ…のうて…あぅぅ」  
 
口で胸を責めながら、お客さんは赤い袴の裾を手繰り寄せ、その下に手を突っ込んできた。  
たぶんズボンみたいに股が分かれとるのが普通の袴だと思うんじゃけど、この袴はスカートタイプになってる。  
こういうお店じゃけえ、ユーザーフレンドリーな仕様なんじゃね。  
 
「っ…ん…くぅ、やっ……はっ、ひゃ、あぁ…っ」  
 
お客さんは、胸への愛撫ですでに染み出し始めていた潤いを  
指で掬い取り、私の秘所全体に、そして膣内の入り口付近に、ほぐすようにして塗りつける。  
 
「あぁっ…あ、ん…んぅ、ふぁ、ぁあ、んん、ぅぅんんんっ!」  
 
入り口付近のある箇所を指が通過したときに  
私の身体がびくりと跳ねたのを、このお客さんは見逃さなかったみたいで、  
乳首をかりっと噛みながらそこを重点的に責めてきた。  
…核でもない、入り口の近くのこんな場所に  
私の性感帯があるって初めて知ったよ……やっぱ、この人手練れじゃね…。  
 
「あぁっ…う、ぁ…そこ、や…あぁ、ん…んぅっ!」  
「可愛い声出すね…じゃ、そろそろ僕のもお願いしようかな」  
「ふぇ? …あ、ああ、ふぁい…」  
 
危うく一人でイクところじゃったよ…むぅ。  
寝転がっているお客さんの下半身側に移動して、下着ごとズボンを下げる。  
男性自身が勢い良く飛び出してきた。反撃開始じゃよ。  
 
「わ、元気じゃね…」  
「多汰美ちゃんがエッチだから、僕のもつられちゃって」  
「うー、そんなん………はむっ……ん、む、ちゅぅ」  
 
幹に添えた指をうにうにと動かしながら、先端をくわえ込む。  
口の中で男性自身がさらに大きさと硬度を増したのがわかった。  
 
「ちゅぷっ、じゅ、んむ、ちゅっ…ちゅぱっ、ぷぁ…! …ちろちろ、ちゅぅ」  
「くぅ、う…!」  
 
アイスキャンディーを舐めるように亀頭をれろれろと刺激したり、  
くわえ込んだ状態から吸い上げながら顔ごとピストンしたりする。  
テクニック、とかはまだあんまりよくわからんのじゃけど、  
舌動かす速さや顔動かすペースにはちょっと自信あるんよ。ふふん。  
 
「う…あ、ああ、そうだ…せっかくだし、こっちの耳、触ってもいい?」  
「(こっちの…?)ぷは、別にええよ……て…っ!?  
 んぅ!? やっ、なっ、ちょ、ひゃうぅ、ぁあ、ああ、ふぁああんんっ!?」  
「え、あ、そんなに感じるんだ? …どうなってるのこれ、ホンモノ?」  
 
い…今のなに…!? 「こっちの耳」ってなんのことなん…?  
頭を撫でられた、というか頭頂部をかすめる程度に手をかざされただけじゃのに、  
背筋に電流が走ったみたいに感じた…よ…?  
 
「じゃ、もしかして尻尾も……よいしょ(ふさふさ)」  
「ふぁっ!? ぁっ…なっ、んぁっ! っぁあ、気持ち、気持ちい、あ、あっ、ひゃぁああぁっ!?」  
 
じゃけえ、尻尾てなんのことなんよ!?  
お客さんは、私のお尻付近に手を伸ばし、上下にゆっくり擦るような動作をしている。  
お尻撫でられてこんなんなるはずない…っていうか触ってさえおらんのに…なんで!?  
 
「あ、ああっ! やっ、いや、も…ヘンに、ヘンになるけぇ、やぁぁぁぁああああ!!」  
「…ふう。いやー、なんか、すごいねえ」  
「はっ、はぁっ…、ん、んぅ、ふぁ…っ!」  
「フェラ…は、もうムリか。じゃあ挿れされてもらうよ」  
 
は、反撃…結局マトモにできんかったよ…うぅ。  
直接触れられてもおらん(たぶん)のに、一気に絶頂まで……私の身体、どうなっとるんじゃろう…。  
 
お客さんは、正座の形から前のめりに倒れ込んだ私の後ろに周り、  
戯れに胸や秘所を弄った後、私の腰をぐいっと引き寄せる。  
それから袴を腰まで捲り上げると、後背位の姿勢で男性自身を入り口に宛てがい、  
勢いよく腰を押し出して、私の中にずぶりと侵入してきた。  
 
「ん…ぁ、ぁあああ! はあ、はあぁんっ」  
「うぁ、キツ…多汰美ちゃん、かなり鍛えてるね…」  
「う、うんっ、ああっ、すごっ…なんかっ、奥っ、当たって…ひゃうううっ…!」  
「そんなにぶんぶん尻尾振って…気持ちいい?」  
 
また、尻尾とか…意味不明じゃよ…! 確かに気持ちはええけど…っ!  
ぱん、ぱん、ぱん、と音を響かせながら、リズミカルに腰がグラインドされる。  
男性自身が根元まで差し込まれるたび、繋がっているところから液が溢れ出ては、  
衝撃で私のお尻やふくらはぎのあたりに飛び散っているのがわかった。  
 
「う、うんん…あぁっ、ひゃ、やっ、ん、んんっ! ふぅ、んぁっ!!」  
 
お客さんの動きは徐々に激しくなり、膣内が激しく掻き回される。  
突き込むごとに、いちいち内側の擦れる場所が違って、  
様々な種類の快感が連続で叩き込まれているような感じがした。  
喘ぎ声が止まらない。視界がぼやける。  
あぅぅ、この人まさか、自分の手管試すために風俗来てるんじゃないじゃろうね…?  
 
「どう? 多汰美ちゃん、またイケそう?」  
「はぁ、ひゃ、あっあぁ! ぁ、あんっ…感じっ、すぎる、けえっ、んっ! もっと、ゆっく、り…んぁっ!」  
「…あ、じゃ、これは? …えいっ」  
「やっ!? やあぁああ!? また、んんんぅっ、そこ、あっ、あぁ、ダメっ、ひぅうううううん!!」  
 
お客さんは、腰に添えていた手の片方を  
私のお尻あたり…お客さん言うところの「尻尾」の部分に移動させ、  
わしわしとしごくような動作をした。  
さらにピストンの速度を速め、男性自身を強く突きこんでくる。  
だ、ダメじゃよ! いまその同時攻撃はダメじゃって! 強烈すぎるけえ!   
 
「ぁぁああ! あぁん! くぅっ! もう、ダメぇえ、あ、あああ、やぁあああああ!!!」  
「わ、締まるっ……ぅ、だ、出すよ! く、ぅっ!」  
「ひっ…! んぅぅ、ん、ぁっ…!、出、とる…よ…っ!」  
 
尻尾を触られた(らしい)のがトドメになって、  
私は断末魔のような甲高い声を上げ、背中をのけぞらせた。頭の中が真っ白になる。  
そのときに膣が大きく締まったみたいで、  
同じタイミングでお客さんも、私の膣内に熱いものをほとばしらせた。  
 
「ふぅう……あぁ、良かったよ、多汰美ちゃん。また指名するね」  
「はっ、あっ…はぁ、ん、ぅ…んあ…!」  
 
お客さんはしばらく余韻を楽しんだ後、私の中から男性自身をずるりと引き抜く。  
ヘアピンで留めた髪の束が汗で頬に貼り付いて、その感触が疲労と恍惚感を助長した。  
支えを失って崩れ落ちると、どろっとしたものが私の太ももを伝っていったのがわかった。  
 
…。  
……。  
………。  
 
「巫女さんって場所によってすごい時給違うんじゃて」  
「へー、そうなんですか」  
「いうても300円くらいやろ?」  
 
「ううん、すごいとこだと千円とか」  
「千円もですか!?」  
「な、なんでそこまで変わんねん!?」  
 
なんで、って…そりゃ、どういうオプションつけられるか、とか、  
生本番はあるか、とか、膣内出しは許されてるか、とか、いろいろあるけえねえ。  
私は全部OKな店じゃったけえ、時給に換算しても千円どころの差じゃなかったし。  
やー、儲かっとったなー……。  
…っと、ニヤけてしもとる。いかんいかん。そんな話、二人にはとても言えんもんね。  
 
「…多汰美、神社やんな?」  
 
…マキちーが私の頭上…ちょうどあの頃、耳、って言われてた部分を見つめながら、  
さっき「おっかしな想像」で思い浮かべたことを確信に変えたような口調で尋ねてきた。  
…ようわからんけど、エロガッパセンサー、恐るべし、じゃよ。  
 
 
 
(了)  
 

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