その少女は隣で気持ち良さそうに眠り続ける友人の姿に見とれている。
少し開いた唇から漏れる静かな寝息の音だけが部屋に満ちている。
その濡れた唇に心を奪われた少女は少しづつ少しづつ自らの唇を近づける。
甘い甘い唇。彼女はその唇が甘いことを知っている。
今日で何回目かもう分からない。何度も何度も奪ってしまった味わってしまった果実。
……甘い。
唇を重ねた瞬間いつも少女はそう思う。少しだけ顔を離して愛しい人の寝顔をまた見つめる。
少し顔を赤らめて少女は自らの舌を唇に這わせる。味を確かめるように柔らかさを味わうように。
そしてそのまま少女の口の中に差し入れる。眠っている少女を起こさないようにゆっくりと内側をなぞる。
最初は友人が起きないか不安だった。しかし眠りは深く少女は目を醒ますことは今までなく……
彼女は少しづつ狂い始めた。自分でも気付かないうちに甘い果実を食べ過ぎてしまっていた。
唇から舌を引き抜くと細い細い銀の糸が彼女と少女を繋ぎ……途切れた。
そのことが彼女を少し不安にさせ……それ故に更に欲しくなる。
少し肌蹴たパジャマから覗いた鎖骨を軽く指でなぞる。
くすぐったいのか身を少し捩る様子があまりに可愛くて思わず顔を近づけ細い鎖骨に口付ける。
唇とは違った舌触りを感じていると急に寝ていた少女が大きく動いて彼女は身を固くする。
しかし少女は幸せそうな寝顔で自らの胸に彼女を抱きしめ眠り続けた。
息をすると少女の甘い香りが彼女を満たす。胸いっぱいに吸い込んだ香りが自分の中に溶けていくような気がして
体が熱くなるよな錯覚を覚える。本当は足りない。もっと。……もっと欲しい。でも。
安心しきって眠り続ける姿を見ると……今の関係を壊してしまうことに恐怖を覚えてしまう。
もし拒絶されたら……ここから居なくなっちゃたら。
壊れちゃう。
だからまだこのままで。優しくて温かくて愛しい貴女の傍にいたいから。傍にいてくれるから。
臆病な私は……このままで。
明るくなり始めたことに気付いた彼女は布団から出て眠り続ける少女に布団をかけ直して頬に軽くキスをする。
しばし寝顔を眺めた後、静かに部屋を出て扉を閉めかけて優しく呟く。
「早く起きてきてくださいね、にわちゃん。美味しい御飯作って待ってますから」