たからは、ブラウスの下に何も着けていなかった。  
 
はらりとはだけた胸元には、形のよい豊かな双乳がたからの呼吸に合わせて息づき、かすかに汗ばんでいる。  
「…私ね、浮気するほどヒマじゃないわ。‥毎日、風間の事で頭いっぱいだから‥」  
━慎太に、胸を見られている。  
羞恥心と快感がない交ぜになった興奮で、たからの頬は真っ赤に上気していた。  
意志とは無関係に、身が震えているのが分かる。  
‥声は震えていないだろうか。  
ちゃんと伝えなきゃわからないんだから‥この鈍感すぎる男は。  
こんなに、むき出しに想いを口に、仕草に示すのは初めてだった。  
「…だから、自分でいろいろ勉強したの‥それを無駄にさせないで」  
たからは慎太の手をとると、そのまま、胸元にもぐりこませた。  
慎太が、息を呑む。  
「…ねえ、もう1年よ?キスだけじゃつまらないと思わない?…風間、私が欲しくないの‥?」  
乳房にあてがった手が、熱い。  
慎太の顔も、その熱を色にしたように真っ赤だ。  
‥たからの意図は理解しているのだが、そのあまりに大胆な行動に圧されて、動けずにいた。  
そんな様子を見てとり、羞恥から手を引かれぬよう、たからの手は指先が白むほど強く慎太の手首を握りしめる。  
「…そんなのダメ、許さないんだから。‥私は欲しいの。今すぐ欲しいの。…好きよ、風間‥好き」  
意識が、白くなっていく。  
 
好き。好き。好き。好き。好き。好き。  
 
自分がうわごとの様に何か言葉を連呼しているのは分かったが、震える声はまるで他人の声のようで‥ただ耳に響くのみだった。  
動かず、胸に当てられただけの手のひらが、叫び出したいほどに焦れったい。  
━ほら。  
━力を入れてよ。  
━好きにしていいのに。  
言葉にはならない声が、脳を飛び交う。  
想いに頭が、唇が追いつかず、たからは意味を成さない呟きを漏らしながら俯いてしまっていた。  
 
…何分。いや、何秒かも分からない。小さな声で、沈黙を破ったのは慎太だった。  
「…冴木ッ…」  
「……なに‥?」  
じわっ‥と、胸に当たる慎太の手に力がこもる。  
「…ッ…!!」  
ぞくっ、と背筋に喜びの電流が走った。‥来た。  
来た。来た。  
来てくれた。  
「‥ホントにいいのか、俺で?」  
 
「風間じゃなきゃイヤよ!!」  
 
まだ言わせるの!?  
このばか、どこまで!  
反射的に、噛みつくように応えていた。  
「…うわ、怖ぇ」  
「…ッ?!」  
キッと睨みつけるたからを見つめ返す慎太の目は、優しく笑っていた。  
(ああ‥)  
この目だ。慎太にこんな風に見つめられると、何でも許してしまいたくなる。  
「…ったく、ホント突っ走ると怖いな、お前」  
「………うるさい、ばか」  
「俺の言う分まで、全部とられちまった」  
「………グズだからよ、ばか」  
「ホント、そうだな‥まぁでも、そのおかげでハジけた冴木を見れたし、得かもな。鈍いってのも」  
「………なッ‥こ、殺すわよ‥ばか!」  
「ダメ。今さらスゴんでも遅えって‥」  
「あッ?‥ぁ‥ぁあっ‥」  
ぐっ、と乳房が掌で圧し上げられた。  
ヒクン、と身を震わせたたからの体が、抱きしめられる。  
「あ、ひぁ、あっ‥んっ‥ぅうん」  
そのまま乳房をやんわりと揉みしだく手つきに反応しながら、唇も、慎太に塞がれてしまう。  
「……んっ…む‥は、ぁ……」  
…わずかの間、たからは身をよじりながら呻いていたが、やがておとなしくなり、自ら、慎太の首に腕を回していった。  
「…ばか。乱暴‥」  
「‥なあ、バカ何回言われんの、俺ι」  
「…ペットは、ばかでいいの。‥私に甘えてればいいの」  
ギュ、と腕が締まる。  
「…風間。気持ちよく、して‥できるわよね?」  
「‥ハイιガンバります」  
慎太は唇をたからの喉へと滑らせ、鎖骨から、豊かな胸へと顔を埋めていく。  
「…んっ…ふふ、やっぱりそこいくの‥?風間、おっぱい欲しいの?」  
たからの腕の中、ぴくっ、と慎太の頭が震える。  
たからの口から露骨な単語が飛び出したので、急に恥ずかしくなったのである。  
 
‥からかうような口調だが、嫌みは感じない。  
髪を撫でるたからの手も優しく、好きにしていい、と慎太を誘っているようだった。  
…慎太は、夢中で乳房に吸いついた。  
たからの唇から甘い吐息がもれ、頭を抱く腕が強まる。  
心地よい抱擁と、石鹸の香りに混じる汗の蒸れに包まれ、慎太の舌が肌を這い回る。  
「…んあ、ぁんッ‥んふふ‥風間ったら赤ちゃんみたい‥ッ‥可愛い‥んぅっ!」  
固くしこる乳首を熱い唇に強く吸われ、たからの顔が苦悦に歪む。  
「…あ、あ、いや、待ってぇ‥ぁあっ!や、噛んじゃダメッ‥あ!あああっ、ぁんっ」  
舌がゾロゾロと乳首を圧しつぶし、さらに歯形が残らない程度の強さで歯を立ててくる。  
痛みと紙一重の危険な快感が背筋を駆け抜けるたび、たからは声をあげ続けた。  
 
窓の外はすっかり暗くなり、夕から夜へと時刻を移している。  
下校する生徒達の声や雑踏もとうになくなり、蛍光灯が照らし出す室内を、慎太とたからが体をまさぐり合う衣音だけが響く。  
「‥なあ、今さらなんだけど」  
「…な、に‥?」  
さんざん吸いつき貪られ、涎まみれにヌルついた双乳を放心したように見つめていたたからの目が、トロン‥と慎太を見る。  
「お前さ、なんでブラ着けてねeへブッι」  
無言で繰り出された掌底が、ゴスッと慎太の顎を突きあげた。  
「…流しなさいな。‥どうせ脱ぐんならいらないでしょう?」  
「おま、舌噛んッ…!…」  
加減のない一撃にのけぞり、絶句し、悶える。  
‥舌がわずかに切れたのか、口の中で鉄の味がした。  
「痛‥ってぇ。あのなぁ、年頃の女の子がノーブラで街歩くんじゃねeヘブッ!」  
第二撃(強)。  
ついに慎太は床に倒れ、声もなく、ゴロゴロゴロゴロ。  
「…考えが浅いわね、風間。もし人に見つかったら、逃げる時に下着なんて着けなおす余裕あると思う?‥嫌よ、下着持って逃げるなんて。間男じゃあるまいし、情けない」  
「き、切れた!舌切れたマジでッ!ι」  
「…だから、服は全部脱がしちゃダメよ?このまま。‥分かった、風間?」  
んな殺生な‥!  
痛みと、裸が見れないおあずけを食わされ、捨て犬の眼差しで涙ぐむ慎太の上にたからは覆い被さり、今度は慎太のシャツのボタンを楽しげに外していく。  
「…まあ、臭いわ。‥すッごく汗臭い」  
「狽ャゃーー━━━━━ッ!!!!」  
慎太の目から大粒の涙が流れる。  
1人でせっせと整理掃除をしてたのだから、多少の汗や汚れは仕方がない。  
だが、今、こういう時に【クサい】とか直球ド真ん中なコメントをサラッと言われると、男としては【死ね】と言われているに等しい。  
まさに、恥辱である。  
「…あら、死んだ?」  
クサいって言われた‥クサいって‥  
余りの惨めさにシクシク泣いている慎太の様を見るたからは、心底楽しそうだ。  
こういう言葉イジメをする度、まず期待通りにヘコんでくれる慎太がたからのS魂をくすぐるせいもあるのだが‥この時ばかりは、やはり照れ隠しな部分も大きい。  
 
確かに、下着も着けず学校へ来るのは恥ずかしかった。  
実際、たからは家からここまで、カウントしたなら超高校級のタイムは出たであろう全力疾走でやってきたのだ。  
そして、着くなり人気のない校舎裏に潜んで息を整え、部室の窓を睨みながら、みずほ達が帰るのをひたすら、待つ作業。  
忠犬よろしく主人の元へと駆け寄ってきたヘンデル&グレーテルも完全無視で、プレゼントの首輪を手に、どうやってコレを慎太の首に着けてくれようか、とあれこれ企みを巡らしていた。  
……そう、ノーブラで。  
━だが、ここまで思い切った格好をしてきた理由が、人に見つかったら云々‥ではなく、実はこの時のために【教材】として使っていた、  
未成年者禁止の雑誌に載っていたシチュエーションを丸ごと鵜呑みにしてしまい、【ノーブラ+制服】なら慎太をノーサツできるかも‥などと考えたからだったとしても、誰がたからを責められるだろうか?  
元々、色恋を相談できるような友人もなし。唯一の友であるみずほには立場上相談できるはずもなく。  
結局、怪しげな雑誌やらビデオやらの知識に頼るしかなかったのだ。  
‥ただ、【対人性ぶきっちょ】な自分を、女として見てほしい。ちゃんと抱いて欲しい。  
無口と毒舌の裏で何度となく溢れそうになったキモチ。  
その真心を、愛おしくも鈍感な慎太にアピールしたかっただけなのだ。  
(…………ι)  
しかし、その結果たるや散々。むしろ慎太は少〜し、引いているではないか。  
…計算外だ。  
真心アピールどころか、ヘタするとたからは慎太の中で【痴女】か【露出狂】に分類されかねない空気だ。  
実にマズい。裏目もいいところ。‥で、余りの恥ずかしさに逆ギレ。多少はなじりもしよう、手も出よう。  
(まったく‥汗クサいくらいで泣くな、ばか慎太‥。泣きたいのはこっちなのよ‥ι)  
「…ほら、いつまでも泣かないの。気にしないでいいわ‥風間の臭い、好きよ?私‥」  
とにかく、この折れた空気を仕切り直し。  
小さく呟くと、Tシャツをたくしあげ、慎太の肌にキスを這わせ始める。  
「わ、わ!冴木‥いいって、きたないって!う、ぅわっ」  
「…ぁん、暴れないの‥全然平気だってば。‥風間の体、美味しい‥ほら、ここもいい匂い…ふふ」  
‥言葉通り、その舐め方にはまるでためらいがなく、首筋から胸板、上気した顔を腋(わき)にまで埋めて、丹念に、汗を舐めとっていった。  
 
慎太の男の臭いが、たからの鼻腔をくすぐる。舐め進むにつれ、慎太の胸の鼓動が高鳴り、呼吸が、喘ぎ声がうわずってくるのが伝わる。  
(━━━風間‥ああ、かわいい‥かわいい‥かわいいわっ…!)  
━幸せだった。慎太の体なら、いつまでキスしていてもいい。まるで飽きない。彼の反応ひとつひとつが可愛く、新鮮だった。  
「…んぁ、は…ぁ…ぁ、は…」  
犬の呼気さながらに、はしたない息づかいで舌を這わせるうち、ざわ、ざわっ、と全身に鳥肌が立ち、たからはひとり、ますます昴ぶってゆく。  
「…んは、ぁ‥!!」  
こらえきれず、思わず自ら手を潜りこませた太腿のつけ根。【そこ】はすでにショーツ越しにもはっきり分かるくらいに充血し、熱い分泌物で潤っていた。  
…敏感な部分を指でなぞると、ビクン!と腰から背筋に電流が走り、さらに奥から新たな蜜を溢れさせる。  
…今まで唇しか味わえなかったぶん、たからの舌は淫蕩極まる動きで、ちゅ、ちゅっ…と肌肉を食らいつくさんばかりに、舐め貪っていった。  
「…ふふ、舐められるの‥好き?‥ねえ、気持ちいいの‥?」  
ナメクジと化したたからの熱心な奉仕に、息を荒げるしかない慎太は、快感に浸りつむっていた目を開いた。  
 
「‥ぅぁ‥」  
 
慎太の目に映る、たからの姿。  
四つん這いで体にのしかかり、犬のように熱心に肌を舐めてくる、その姿。  
半脱ぎの開いたブラウスの前で揺れる、張りのある実のような双つの乳房。  
慎太を見つめ、熱く潤んだ瞳。  
━なんというか。  
なんというか……  
 
「すげぇ‥!」  
 
‥もう、それしか口にできなかった。  
「…あら、そんなにいいの?」  
ぺろっと唇を舐めて、たからが膝立ちに起き上がる。  
「…ふふ…それなら、してあげようかしら‥ね?」  
慎太の反応を若干はき違えてはいたが、ぱあっと顔に喜色を浮かべながら、たからはおずおずと指を這わせる。  
‥そこは、慎太の腰。  
ズボンの生地ごしに熱く膨らんだ怒張を、白い指が撫でていた。  
「…ここ、脱いで。見せてよ‥風間」  
「え!?あ、ちょ‥ちょっとお前っ、いきなり‥」  
「…早くなさいな。‥じゃないとコレ、つまむわよ?」  
「ぃいッ?!わ、わかった…そこはマジでやめてくれ‥ι」  
急くようにグリ、と股間に押しつけてきた人差し指の脅迫に、本気を感じる。  
興奮中のたからに逆らうのは流血を伴うと知っている慎太は、しぶしぶ半身を起こすと、ズボンのベルトを外し始めた。  
 
「あ、あのさ。そうジッと見られてっと非常〜に‥脱ぎにくいんすけど」  
見るばかりでなく、たからの顔は股間にせっつかんばかりに近く。その怜悧な瞳は興奮と興味でらんらんと輝いていた。  
「…うるさい。ネジり切るわよ。早く」  
「………ι…………」  
ええい、もう知らね!  
思い切った慎太は、一気に下半身を晒した。  
 
「…………」  
「…………」  
 
ファーストコンタクトは、無言にて迎えられた。  
 
「………風間」  
「な、なに…ι」  
「…ワンサイズ小さくならないかしら?これ‥」  
「無理ですけどι」  
「…努力なさい。男でしょう?」  
「男だから無理なんだよ?!」  
ようやく発せられたたからの台詞は、限りなくソフトな、拒絶。  
‥ていうかワンサイズって何だ。ワンサイズあたり何センチ?  
「…これが‥風間の…?」  
圧迫から解放された慎太の肉棒は天を衝きつつ激しく自己主張し、たからの視線はビクン!ビクン!と身を震わせているソレに釘づけだった。  
━肉の凶器。  
たからの知識としてある男のモノはあくまで絵や描写であり、モザイクがかった映像であったから、実際にナマモノとして見たのは慎太のモノが初めてだ。  
(…こんなのが、私の中に…?)  
処女喪失の【痛さ】には個人差があるらしいが…そんな統計なんの慰めにもならない。断言してもいい。これを入れるのは‥痛い、じゃ済まない。  
「…ねえ。これって‥これが普通なの?」  
「あ?いや‥わりぃ、人と比べたことねえから‥」  
「………そう…」  
ていうかありえない。  
ひょっとしたら慎太のは標準的なサイズなのかもしれないが、イメージ的に【針穴】に【バット】を通そうとするのと同じに思えた。  
痛みの連想が頭をかき乱し、たからは自分の声がいつの間にかトーンダウンしていることにも気づかない。  
「‥いや、まあホラ、なんだ‥」  
━たからの明らかな後込みを感づいたのだろう、慎太は苦笑いしつついそいそと分身をしまいにかかった。  
「ぃ、急ぐことないって…な?俺、無理やりする気ないから‥また次にしようぜ!」  
まさか見た目や大きさで引かれるとはショックではあるが、まあ、逆に【小さい】とか変に安心されるよりはマシだろう、男としては。  
せっかくここまできて‥と猛る気持ちがないと言えば嘘八百になるが、慎太も自制のきかない人間ではない。  
たからとの付き合いは真剣だし、嫌がるのであれば事を急ぐ気もなかった。  
 
こうして、たからが自分を求めてきてくれただけで…気持ちは満足だ。  
我慢だ、俺。  
我慢しろ、俺。  
我慢できるだろ、俺。  
つとめて明るく‥というか、引きつった笑顔をギギギと顔にはりつかせ、ズボンを上げ場を終わろうと慎太が立ち上がった。その時。  
「ぅえっ━━━━!!??」  
突然、両足が膝から抱え込まれ、すくわれた。  
視界が高速で上向き、天井が見えた、次の瞬間。  
 
ゴンッ!!!!!!  
 
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」  
後頭部に痛み、いや、衝撃が襲った。  
意識に一瞬ノイズが走り、目に火花が爆ぜる。  
腰が痛い。背中が痺れている。  
‥自分が床に伸びていることに意識が至るまで、数秒を要した。  
━見事な引き倒しだった。  
「…次?なにを紳士ぶっているのかしら‥風間?」  
ジィィィイン、と痺れた頭に、低い声が響く。  
「…次なんかないのよ。‥逃がさない。逃がさないわよ‥」  
体にのしかかる、たからの重み。  
激しい頭痛の中、ようやく開いた目の前に、明らかに怒っているたからの鋭い眼光が合わさった。  
「な、なにすんだよっ…うわッ…」  
「…ねえ、逃げないでよ‥好きよ風間…好き、好き…風間も‥私が好きよね‥ね?」  
怒りの色と、それを上回る深い情愛のこもった瞳で慎太を見つめながら、たからの手が器用に踊り、再びズボンの戒めを解いてしまう。  
「ぅわ、わっ‥待て冴木ッ…うぁっ」  
トランクスを引き下ろすと、むき出した肉棒に白い指が絡みつき、キュウッ、と握りしめてきた。  
「…嫌、嫌よ‥待ってあげない。私のこと好きだから、こんなになってるんでしょう‥?‥大丈夫、私ちゃんとできるわ‥何だってしてあげる‥」  
笑みを浮かべ、うわ言のように呟きながら、たからは身を移し慎太の腰に顔を近づけていく。  
「…ふふ‥逞しいわ‥凄く固いし‥熱い」  
「うぁ…あ!」  
さらにたからは、先刻までの消極的な様子とはうって変わり、さも愛しそうに亀頭に頬ずりをした。  
‥柔らかな頬に、ヌルヌルした粘液がなすりつけられ、徐々にたからの脳に、ぼうっと陶酔の甘い霧がかかっていく。  
(…熱い‥ふふ、ピクピクしちゃって‥よく見たら、可愛いじゃない…これ…)  
セックスが怖くなった自分を気遣ってくれた、慎太の優しいところ。  
嬉しいし、そういうところは大好きだ。  
━でも、今欲しいのは優しい慎太より【ケダモノ】な慎太だ。  
 
「…ねえ風間。なぁに、これ?カチカチじゃない‥次にしようとか格好いいこと言っても、全然おさまらないのね…?」  
たからはもはや臆する風もなく、慎太の分身に指を絡め、その強張った肉の弾力を楽しんでいる。  
「…どうせ家に帰っても、1人で慰めるんでしょ?‥私のこと、思い出して。違う?」  
「さ、冴木‥」  
「…言ったでしょ。ペットが飼い主に遠慮なんかしないで。‥かわいがる甲斐がないじゃない?‥ふふ‥それにしてもこれ、すごい匂い」  
鼻を鳴らしながら、再び頬ずりを繰り返す。  
「ぅ、くっ…」  
慎太はたからの変化に戸惑いつつも、はたと気づき、慌てた。  
「‥あ、やめろって、マジ汚れてっからッ‥!お、俺、昨日そこ洗ってな‥ッ」  
「…ああ。そういうこと…どうりで臭いわけだわね」  
━━本日、2度目の恥辱。慎太の目尻からツツー‥と、涙がこぼれ落ちる。  
━イッソノコト、コロシテクダサイ━  
「…あら、また言っちゃったわね」  
くすりと笑うたからの目の光は、確信犯のそれだ。‥しかし、その口調に慎太の不潔を咎める険しさは、ない。  
「…仕方ないわね。‥じゃあ、だらしない風間の大事なところ…私がきれいにしてあげなきゃね?」  
「へ!?ぁ、う、‥ええっ?!」  
「…風間のなら平気。いい子にしてて‥ふふ、私のも見せてあげるから、ね?」  
ハの字に眉をたわめた、媚びるような眼差し。  
普段からは見せたこともない、たからの男を誘うような、全てを許しきった瞳。  
その奥にある妖しい光と目が合い、慎太はゾクリとし、うろたえた。  
「………」  
伸びて動けないままの慎太の上を無言でまたぎ、たからがシックスナインの体位を整えた。  
慎太の目の前に、たからのむっちりとしたお尻が捧げられている。  
およそ無駄な肉のない、スタイルの良いたからの肢体にはやや不釣り合いなほどに肉づきのいい、丸い双丘。そのはちきれんばかりの柔肉にまとうマリンブルーのショーツは、たからの秘部を守りつつも、尽きることなく溢れる蜜を吸いきれずに、グショグショに濡れそぼっていた。  
「…ど、う‥?どこでも‥好きにしていいから‥ね」  
慎太の熱い視線を、股関節にビリビリ感じる。誰にも見せたことのない女の部分を恋しい慎太に見られている喜びと、脳髄が痺れるほどの羞恥に、ヒク、ヒクッ、と下腹部の奥が震え、そのたび、涎が湧くように熱い蜜が溢れるのが分かった。  
 
‥早く。見てるだけ?ねえ、早く。なんでもいいの、触れて。味わって。お願い。‥それとも、汚い‥とか思ってるの‥?毎日、うんと綺麗にしてるわ。あなたにあげる大事なところだから、毎日ちゃんと…  
「ひぁっ!ぁ、あっ‥はぁあ!」  
股関が灼けつくような視姦に耐えきれず、ついに膝が震え始めた時、ぐっ、と慎太の手が尻肉をつかみ。下へ引き寄せられた。そしてそのまま、たからのなだらかな下腹部に、慎太の顔が埋められる。クチャッ、と汁気を含んだショーツが押し当てられ、慎太の顔を汚した。  
「んぁ、あ、あぁ‥あああッ!‥あ、あ、‥はあ、んぁ、ぁあ〜‥!」  
スカートの中に隠れる慎太の頭がうごめくたび、たからの唇からは甘やいだ声が漏れる。  
やがてショーツ越しではおさまらなくなった慎太の舌は布地をずらし、たからの敏感な柔唇をじかにえぐり、舐め回し、痛いほどに吸いついてきた。  
たからは、腰がくだけ慎太の顔をおしつぶしそうになるのを必死で耐えながら、昴ぶる興奮に身を任せ、慎太のへそにつきそうな反りを見せる怒張の先端に、舌を伸ばした。  
「…ん…んう‥んっ」  
塩っぽい、形容しがたい味の刺激が、舌走った。  
(これが‥風間の味…ッ…いちばん大事なところの、味…!)  
不潔な感覚はまるでなかった。  
過敏らしい亀頭にザラリとした舌を絡め回すと、その都度、肉柱はビクビクと震え、透明な粘液を先から滲ませてくる。  
その反応が、とてつもなく可愛い。味も匂いも、体を舐める時よりはクセがあるが、もう気にならなくなっていた。…むしろ、美味しい、とさえ思える。  
倒錯した思考が、たからの味覚をも狂わせていたのかもしれない。  
 
…肉棒にあらゆる角度でキスしているうちに、たからの舌は、亀頭のカサの内側にこびりつく恥垢を見つけ出した。  
「…ん、んぅ……はぁ、んふ……ねえ。これ…汚れかしら?」  
「(ふぐっ)!!」  
「あんッ…ば、ばか、噛まないでよッ…?」  
あまりに恥ずかしい指摘に、固まってしまった慎太の歯が秘裂を刺激したのだ。  
…スカートの中で見えないが、きっと今、すごく情けない表情をしているに違いない。  
‥ホント、可愛いんだから‥。  
「…大丈夫よ。私がちゃんと、綺麗にしてあげる……ぁは、ぁ…ん、ふふ。スゴい味…」  
たからは舌を伸ばし、こそぎ落とすように、垢だまりを丹念に舐めとっていく。そして、苦味と塩味が入り混じる恥垢を唾と共に口内で溶かしながら、吐き捨てることなく飲み下していった。  
…たからのフェラチオ奉仕のテクニックは、巧みと呼べるほどのものではなく、さながら餓えた犬が食べ物にありついた時のような、肉にむしゃぶりつくような無我夢中の愛撫。  
…しかし、その貪欲な責めの端々には慎太への愛おしみが溢れ、少年に少しでも楽しみを、快楽を与えてやりたい。そんな慕い尽くさんばかりの愛情がこもっていた。  
「……うッ……ぐ、ぅあっ…!!」  
そんな責めに押され、慎太にはもはやたからの秘部を責め返す余裕もなく、強烈な刺激と愛撫に身悶え、屈服するしかなかった。  
「さ、冴木!口どけて‥ッ!うぁっ、で、出る…ッ!!くぁあッ!!」  
「んぅッ!?んッ!!」  
 
ドクンッ、ドクッ、ドク、ドクッ‥  
 
「……!…ッ!!」  
慎太の腰が小刻みにはねた瞬間、たからの口の中で亀頭が弾け、熱く夥しい量の精が噴出した。  
‥射精しながらも腰がヒクつき、身悶え逃げるが、たからの唇は慎太の分身を咥えたまま、離そうとはしない。眉を寄せ、苦悶と恍惚の入り混じった苦悦の表情で、口に溢れかえる慎太のエキスを、喉をならし、必死で飲み干していった。  
 
「ご、ごめん。‥大丈夫か?…無理して飲まなくてもいいのに…吐いちまえよ、ほら‥」  
一気に放出したことによる虚脱感に襲われながらも、慎太は起き上がり、わずかに飲み損ねてムセるたからの背を撫でてやる。  
「大丈夫か?ほんと‥ごめんな。俺ガマンできなくって‥」  
「……けふッ……凄い、味…これ……が‥いるわね……」  
「‥は?」  
咳こみながら、たからは何かブツブツ呟いていた。  
「おい、ほんと大丈夫か?……うっι」  
心配げに、慎太が彼女の顔をのぞきこんだ瞬間。  
ズイ、とたからの顔が間近に迫ってきた。  
「…言いなさい風間、…今の、気持ちよかった?」  
「え?‥あ、うん。…そりゃもう」  
「…どの辺りが?」  
「ど、どの辺りがって言われても…ι」  
熱心ぶり。心のこもっていた奉仕。‥ポイントはそこに尽きるんだが‥素直に言ってしまうと【冴木はスケベだなぁ】的なホメ言葉(?)にしかならない気がした。だいたい、自分の1番キッタナイ部分の汚れを‥あんな、嬉々として舐めとってくれるなんて。  
与えられた快楽以上に、驚きが勝る。  
「………うーん」  
「…………………」  
うまい言葉が思いつかない。どうホメても、たぶん怒らせるだろう。  
「…何よ、じれったいわね。…もういい」  
「わ、わりぃ。俺、夢中でさ…今度からはちゃんと外に‥って、おわぁっ!!?」  
たからはため息をつくと、ドンッ!と慎太を突き飛ばした。  
ゴンッ!!  
再び慎太の目に火花が爆ぜる。  
「お、おごぉお‥ι‥おまッ!前フリなさすぎッ!後頭部はヤバいんだぞ?!格闘技全てにおいて殴ったら反則なんだぞコラ〜〜ッ!!」  
後頭部を打ったはずの慎太の鼻から、ひとすじ血がタラリ、と垂れている。‥打ちどころが少しマズかったのかもしれないが、たからは気にしない。  
「…うるさい犬。‥今の納得いかないから、もう1回やる。練習よ」  
「ハア?!」  
「…あと、出す時はもう少し早めに言ってちょうだい。…飲むのも準備がいるんだから」  
「注意点はそこかッ?!‥の、飲むのはOKなのかι」  
「…まあ、美味しくはないけれどね。…べつに体に入って悪いものじゃないし。風間が好きなら、ぃ…いくらでも飲んであげる‥ゎょ?…………ど、どうなの?男ってこういうの嬉しいんじゃない‥の?…ちょ、じっと見ないでよ、なんとか言いなさいな…」  
「…はい。そこはすげえ嬉しいです」  
(つか練習って‥何回出させる気だよι)  
 
「…ふふ…エッチねぇ、風間は。ほら、楽にして……すごい、まだ固い……ん、ふ‥んん、ぅん…」  
嬉しそうに、慎太の腰にすがりついたたからは、迷いもなく再び亀頭にむしゃぶりつく。  
2度目は勝手が分かりかけて余裕があるのか、より大胆に、深々と喉の奥まで怒張を咥えこみ、頬の内側で肉竿をしごきあげ、髪を揺らし、気持ちを込めて、夢中で舐め回す。  
慎太はたちまちに骨を抜かれて、ただ快楽の呻きを漏らしつつ、たからの髪を撫でることしかできない。  
だがその行為も、たからには慎太に優しく愛でられているように感じられ、ウズウズと奉仕欲がこみあげてきた。  
‥もっと喜んでほしい。その一念に、たからは従順な子犬のように甘えた声を漏らして、さらにフェラチオ奉仕を深めていった。  
「あ、ぁ‥うあ、そこヤバいッ、冴木!ちょ、さえ、きッ…うぁあああ」  
「………んッ……ふふ、また出るの‥?出るのね?‥ん、…ぅん…いいわ‥出して。‥ほら、出しなさいッ‥!」  
「うあ、ああ…ッ!」  
(…ぁあ、風間‥かわいい…ふふ、ふふふふふ‥もっと、もっと泣かせてあげる‥!)  
切羽詰まり、切ないいななきを漏らす恋人を上目遣いに見ながら、たからは淫靡な笑みを浮かべ肉竿に絡める指をピストンさせつつ亀頭肉の先、尿道口を舌先でつ突き、クチュクチュとくじり立てていく。  
知識からではない、それはたからの本能がなす射精への催促だった。  
「ぁ、ああああああっ!」  
自らでも触れたことのない敏感な肉孔に甘美な虐待を加えられ、抗う術もなく慎太は悲鳴をあげ。湧き上がる痛みにも似た快感に絶頂への階段を一気にのぼり、体を強ばらせていった━━━━。  
 
「…………」  
鼻血も出ない、‥とはこの事か。  
ぼぉ‥と考えながら精液と一緒に色んな【やる気】を出しきった体を大の字に、天井の格子模様を眺めていた慎太は視線を横に傾ける。  
━━その先には、彼の生気を根こそぎ吸い取ってくれた張本人が、クタリと萎えた愛しい少年の分身を今だ指で弄びながら、うっとりした目つきで自分の顔にまとわりつく精液を丹念にすくっては、舐めとっていた。  
「…ん…ふふ、苦い‥やっぱり、凄い味。……にしても、2回目も盛大に出したわねぇ風間?顔、べとべとだわ‥ふふふ」  
「……あのですね、冴木さん。俺、お前がすげぇエロい生き物に見えるんだけど…ι」  
「………そう?‥うふふ‥なんだか私、こういうの好きみたい。…やってみないと分からないわね、習うより慣れろ‥てことかしら?…んぅ…」  
ちゅぽっ、‥最後の残滓をすくった人差し指を味わうと、たからはゴチソウサマ‥と満足げに呟き、慎太の傍らに添い寝する。  
「‥お前‥大丈夫か、本当に?どっかキレてねぇかι」  
とろん、と潤んだ瞳が、んん?と慎太を見つめている。…まるで、子供のような無防備な微笑み。凛然とする普段のたからとはかけ離れたその表情の緩みぶりは、まるでたからに別の誰かが乗り移ったかの様な錯覚を抱かせる。  
「…失礼ねえ、私はわたしよ?ふふふ‥ま、いいわ。…じゃぁ、キレちゃったついでに私も犬になろうかしら?…犬は犬同士の方が‥うまくいくわよね?」  
恋人の腕を枕に、すっかりリラックスした表情で体をすりつけ甘えてくるたから。  
慎太はたまらなくなり、抱きしめてやる。  
「……んふ………わん、わんっ☆‥ふふ」  
嬉しげに頬を胸にこすりつけながら、たからが小さい、‥本当に小さい声で可愛らしく鳴きながらじゃれつき、何かをねだるように慎太の顔を見つめてくる。  
…悪戯っぽく微笑む桜色の唇が、ゆっくり動いた。  
━━━犬と犬が好き合ったら、する事なぁに…?━━━  
「……………」  
決まっている。  
キスは毎日。体も隅々まで隠さず舐め合った。  
………あとは、つながるだけ………。  
慎太は思う。  
ここまでくるのに、1年かかった。同年代の男女にしては国宝クラスに清い交際、と言えるだろう。  
それだけに、このゴールを迎えることに嬉しい反面、寂しいような気もした。  
少なくとも今日、一線を越えれば‥自分達の中の人間関係は嫌が上にも変化する。  
とみかとの関係も、今まで通りにはいかなくなるだろう。  
 

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