《塩基の鎖》  
            『トリコロ』より  
 
ガラガラガラ……  
「こんにちわー 七瀬いる〜?」  
勝手知りたる他人の家。返事を待たずに靴を脱ぎ居間に向かう。  
他人の家…でもここの住人は私を家族同然に扱ってくれる。私はそれが…  
 
「あっにわちゃんいらっしゃい。二時間ぶりじゃね」  
居間に居た由崎が人懐っこい笑顔で迎えてくれる。  
何か携帯ゲームに熱中していたらしく私に気付くのが遅れたみたい。…無用心ね。  
「よす。ん〜由崎一人?皆は?」  
「出とるよ。買い物じゃけぇ小一時間くらいで戻るんじゃないじゃろか」  
その由崎の言葉に私はニヤッと笑い…  
「ふ〜ん。由崎は一人良い子でお留守番ってわけね?」  
と軽い冗談を飛ばしたら由崎はクスッと意味深な笑みを浮かべ…  
「たぶん…今日もにわちゃんが来ると思ったけえ…誰か居たほうがいいじゃろ?」  
……何て返事しろと?  
「もう!あに言ってんのよ…」  
「ハハハ…照れてるにわちゃんの顔可愛いけん…つい」  
「つい…じゃないわよ」  
ああ…今の私顔が赤いんだろうなぁ  
「にわちゃん顔真っ赤じゃよ?」  
「わかってるわよ!!」  
…もう!  
 
「ん…んく…」  
出された烏龍茶を飲み何とか落ち着く。  
「少しは落ち着いた?」  
「誰のせいだと…」  
「そうだ。なごやん元気?今度のお休みはいつなん?」  
私の言葉を見事に聞き流す由崎。もう人の母親をなごやんって呼ぶことは諦めたけどさ…  
何故か母さんも気に入ってるみたいだし…ハァ。七瀬の苦労が分かる気がするわ。  
「明日…明日の夜は帰るって話だけど…?」  
「ふ〜ん。…ところでにわちゃん?」  
表情で分かった。由崎はこれからする話のために一人ここに残ったんだ。  
思わず姿勢を正して身構える。  
「…あによ?」  
「この画像データ欲しくない?」  
そう言って見せてきた携帯に写し出されていたのは……!!  
「ちょっこれ!!欲しい!ちょうだい!」  
七瀬のお着替え画像と由崎の顔を交互に見る。  
「もちろんええよ。なんだったら…これからもにわちゃんのリクエストに応えてもええんじゃけど…」  
こちらを伺うように語尾を濁す由崎。…それはつまり…  
「…で?由崎は私に何をさせたいわけ?」  
「あっ分かった?」  
「そりゃあ…ね?」  
でも…それはつまり私には出来るけど由崎には無理ってことよね。なんだろ…?  
「にわちゃんにお願いなんじゃけど…」  
お願いじゃなくて交換条件よね…。  
 
「ただいま〜。景子起きてる〜?」  
「お帰りなさい。少し遅かったわね」  
予定より少し遅れて帰宅した母さんを玄関まで出迎える。  
「そうなのよ。いつもの道が混んでてね」  
「お疲れ様。…ご飯は?」  
「まだなのよ。景子は?」  
その言葉に内心安堵する。だって…  
「えーとね。そうだと思って簡単なの作ってみたんだけど…」  
「本当!?…景子が私のために…」  
予想以上に喜ばれちょっと良心が痛む。  
「あ…味の保証はできないんだからね!」  
「フフフ…大丈夫よ。さ、早く食べましょう?」  
 
「このご飯も自分で炊いたの?」  
「…そうだけど?」  
「洗剤で洗わなかった?」  
「…なわけないでしょ」  
そんなお約束な…  
「わたし…最初砥ぎ石使うものだと思ってたのよね」  
「…米無くならない?」  
「ええ。それで何か違うんじゃ?って気付いたわ」  
「……」  
 
「景子もう寝るの?」  
部屋に行こうとした私に母さんが声をかける。  
「うん…今日ちょっと起きるの早かったし。母さんは?」  
「私もお風呂に入って寝ることにするわ。おやすみ景子」  
「おやすみなさい。風邪なんかひかないでよ?」  
 
「にわちゃんにお願いなんじゃけど…」  
「あによ?」  
「なごやんのこういう写真欲しいけえ…撮ってきてくれん?」  
「はっ?ゆ、由崎?」  
「駄目…じゃろか?」  
「由崎…母さんにどんな感情抱いてんのよ?」  
「どんなって…」  
赤くなって俯く由崎  
「………」  
「………」  
困ったなぁ。…でも……七瀬の…う〜ん  
「由崎…七瀬の際どい…いやそれ以上のショット頼むわよ」  
「えっ!?それじゃあ…」  
「共犯…だからね?」  
 
「いってきまーす」  
「いってらっしゃい。気をつけてね」  
「そうだ景子、昨日のご飯美味しかったわよ」  
「そ、そう?」  
「ええとっても。またお願いね」  
「う、うん」  
「今日もなんとか帰れるからね」  
「分かった。待ってる」  
「じゃ…」  
ごめん。悪い娘を許して…  
 
「…さてと」  
母さんが車で出勤したのを窓から確認してから脱衣所へと向かう。  
「ちゃんと撮れてるかしら…?」  
セットしておいたビデオカメラを取り出す。この中には…母さんの着替えや湯上りシーンが  
映っているはずだ。…一応…由崎に渡す前に確認しておくべきよね。  
自室に戻りテレビに接続し…再生する。  
「少し早送りして…」  
画面に母さんが映ったところで早送りを止める。  
テレビに映る母さんはとても上機嫌で…鼻歌混じりだ。  
『ふふふ…景子が私のために…』  
ああ…そんなに料理の件が嬉しかったのかな。  
罪悪感からの行動だったんだけど…本当ごめんなさい。  
『…しょっと』  
母さんはそのまま服を脱ぎ始め……おばさんもかなりスタイル良いけど母さんも…  
バストはおばさんの方が上かな…?でもウエストは…どうだろ?  
「なんか…喉…渇いたな」  
何時の間にか喉がカラカラだ。でも…何故か目が離せない。  
母さんはもう裸になりバスルームへと向かう後ろ姿が映し出されている。  
「…由崎…入浴シーンも欲しいなんて言い出さないわよね?」  
テレビは無人となった脱衣所を映し続けバスルームからの物音だけがスピーカから流れる。  
「母さんいつも何分くらいお風呂に入ってたっけ?」  
湯上りシーンを確認するために早送りボタンを押そうとした時に…  
『ん…うん…』  
何か苦しそうな…それでいて艶っぽい声が耳に届いた。  
「え?え?…これって?…まさか?」  
喉の渇きが一段と強まる。予想外の展開に動揺が走り…それでも停止ボタンを押すことは出来ず  
ただ画面を凝視し聞こえてくる音に集中する。…何してるんだろう私。  
『あぁ…んぅ…くぅ…』  
間違いない…。母さんは昨日お風呂で…  
見ることは出来ないぶん…リアルにその光景を想像してしまい…  
「あ…ああ…」  
どうしよう…私もちょっと…  
服の上から胸を触り軽く撫でるように揉んで…  
「だ、駄目よ…いくら可愛いからって……!!」  
そうなのだ。私の母さんは娘の目から見ても…かなり可愛い。  
由崎がなごやんと呼んだり…私にこういうことを頼むのも…分からないでもないけど。  
私が…こういうことをするのは…不味いわよね?  
 
『くん…ん…んぁ…』  
テレビからは相変わらず母さんの声が聞こえてくる。  
寝ている私を意識してか声を抑えているみたい…  
「ん…あぁ…ふぁ」  
母さんの様子を想像しながら片手が下半身へと伸びる。  
「…あ、もう…」  
下着がすでに湿ってる…私…朝から…いや朝じゃなくてもまずいわよね…  
下着の中に手を差し入れ指を割れ目に這わせる。指に纏わりつく蒸れた空気が私がどれだけ興奮してるか  
教えてくれてるみたいでクラクラしてくる。  
『あ…ダメぇ…ん…ぁう』  
指に少し力を込め割れ目に埋め込み感触を確かめる。  
「ん、うわ…もう…」  
ヌルヌルの感触が伝わってくる。そのまま指を動かしグチュグチュと掻き混ぜる。  
「つぁ…ああぁ…ここ…ここぉ…」  
『あぁ…んぁあ…くっ…』  
私の耳には母さんと私の声が入ってきて…まるで…  
「!…ぁん!」  
その想像をしてしまった瞬間背中がゾクゾクッとして軽く達してしまう。  
クセになったらどうしよう…?  
…もし私が…母さんを……  
『ふぅ…あぁ…』  
そういえば母さんは何を想像してるんだろう?  
気だるい余韻に浸りながらそんなことを思う。…やっぱり父さん?  
『だ、ダメよ景子。あぁそんな…』  
「へ?」  
い、今なんて?空耳?  
もう一度確認しようと巻き戻しボタンを押そうとした時にガタッと後ろから音がして…!  
「…け、景子?」  
振り向くと部屋の出入り口に座りこんだ母さんが信じられないといった顔でそう呟いた。  
「母さん?…どうして?」  
「会議が午後からになったから…一緒にお昼でもと思って…それより景子あなた何を…?」  
テレビは既に脱衣所で着替え始めている母さんを映し出している。正直なところ何て弁解したらいいのか分からない。  
「何って…」  
言い淀みながら立ち上がった瞬間、母さんがビクッと震え脅えたような目でこちらを見る…。ああ…そうなんだ。  
急に私は冷静になるのを感じながら母さんに近づき…  
「何って母さんの声を聞きながら…見てたんでしょ?」  
私の言葉に母さんは顔を背けて…  
「分かってるの景子?私達…」  
「じゃあ娘を想像してするのはいいの?」  
「そ、それは…」  
顔を赤くして言い淀む母さん。この顔を撮影して由崎に渡したらどんな顔するのかしらね…  
そんな顔をするから…止まらなくなるのに。  
「ねぇ…私にどんなことされたかったの?」  
「な、何言ってるのよ…そんな」  
「言ってよ。私にどんなことをされるのを想像してたの?」  
私はしゃがんで母さんの顔を手で固定し覗き込むようにして問いかける。  
「そ…それは…そんな…」  
「ねえ?私に本当にされたく…ないの?」  
「え?…どうしたのよ景子…やめてよ…」  
「してあげるって言ってるのよ。私が…娘の私が…欲しいんでしょ?」  
「……ごめんなさい。謝るから許してよ」  
「もう…このまま無理矢理しても私はいいのよ?あぁ…その方が母さんの好みとか?」  
「……」  
脅えた表情はとてもとても可愛くて…私は…もっとその表情を見るために唇を奪い…そして…  
 
「ごめん、由崎。この前は失敗しちゃったんだ。」  
「そうなん?」  
由崎と二人になった時にこの前の交換条件についての報告をする。  
由崎は少し残念そうな顔で返事をして…。  
「だから画像の方は後でいいからさ。もう少し待ってよ」  
「別に先渡しでもいいんじゃけど…」  
「いいってば。それよりさ…」  
「うん?」  
 
「面白いオモチャ手に入れたんだけど…今度遊びに来ない?」  
 
 
                                          END  
 

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