「な〜なせ!今日のお昼は何?」  
お昼休みの教室。にわは最愛の人である八重にじゃれつきながら聞く。  
ちなみに英語で言うと『My Little Lover』しかし体は『My Little Baba-』だったりする。  
「あ…その…」  
しかし八重は気まずそうに言葉を濁して視線を逸らしながら言葉を続ける  
「実は…今日寝坊しちゃいまして…」  
「ふ〜ん…え?」  
あまり考えたくない想像をしたのかにわの表情が強張る。  
「そういうわけで今日は購買で皆で行く予定なんじゃよ」  
そしてそのいやな想像を多汰美が無邪気に現実へと変える。  
〜にわ脳内BGM「火曜サスペンス劇場のテーマ」〜  
「あ……そう…そうなんだ…」  
なにもそこまでと思うくらい目に見えて落胆するにわ。  
うっすらと涙まで見て取れるのがあまりに痛々しい。  
「あ…にわちゃんごめんなさい!明日はちゃんと作ってきますから!」  
慌てて八重はにわに謝るものも  
「ううん。いいのよ…いつも無理言って作ってもらってるんだから七瀬が謝ることなんて…」  
涙目で八重を気遣うが全身から漂う嘆きのオーラは隠しきれてない。  
「あ〜ほらパンが売り切れる前に買いにいかんとあかんやろ」  
「そうそう急がないと無くなるけえ」  
気まずい雰囲気を変えようと助け船を出す二人だが…  
「ゴメン…なんか食欲ないから三人で行ってきて…」  
見事に沈没した。マキちーの体重のせいじゃろかと多汰美は思ったかは定かでない。  
 
「八重ちゃん何か手伝えることあるか?」  
真紀子は晩御飯の用意をしている八重に声をかける。  
「あ…なら焦げ付かないようにお鍋見ててもらえますか?」  
「おやすい御用や…おっ今日はビーフシチューなんやな…ん?たしか…」  
何かに気付いたような真紀子に八重は少し微笑みながら  
「はい…にわちゃんの大好物ですから」  
「なんや…まだ気にしとるんか?」  
「いえ……ただ…」  
確かに八重の表情に憂いは見えない。それどころかむしろ…  
「ただ?」  
「今日のこと…本当はとても嬉しかったんです」  
少し予想外の返答を聞き思わず真紀子は聞き返す  
「まさか…にわの泣き顔が可愛かったからとか?」  
「へ?…いやまぁ…それもありますけど…」  
あるんかい。とは言えなかった。だって怖いさかい。  
「なら…?」  
「だって…にわちゃん…それだけ楽しみにしててくれたってことですよね?」  
「…そうやなぁ」  
「私の作った料理をあんなに心待ちにしててくれていた…それがとっても嬉しくて」  
「…八重ちゃん」  
八重の顔は本当に嬉しそうだ。原因を考えるとアレだが。  
「でもにわちゃんには悪いことしちゃったのでこれはお詫びと…お礼代わりですかね」  
あの果報者め。素直にそう思い嫉妬やろか?と内心苦笑する。  
「でもな八重ちゃん…私らだって…な?」  
「!……ハイ。ありがとうございます。そろそろ好い頃合ですから盛り付けましょうか」  
「なら私は皆を呼んでくるさかい…」  
 
『いただきま〜す』  
皆で揃って唱和し食べ始める  
「あっ今日はビーフシチューなんだ」  
にわは瞳を輝かせてスプーンで掬いはじめる  
「たくさん食べてくださいね。いっっぱい作りましたから」  
八重も嬉しそうににわが食べる姿を眺める。…が、  
急にスプーンを止め少し悲しそうな顔で八重の方を向く  
「え?…にわちゃん?」  
「七瀬…今日は本当に御免ね?」  
「そ、そんな…」  
いきなりの告白に戸惑うことしかできない八重に言葉を続ける  
「私…七瀬がお弁当作ってくれるのが当たり前みたいに思っちゃって…我侭言っちゃって…」  
「にわちゃん…そんなこと言わないで下さい」  
「でも!」  
「私…にわちゃんのお弁当作るの好きなんですから」  
「……」  
「いえ…本当は私の作った料理を美味しそうに食べてくれるにわちゃんを見るのが好きなんです」  
「七瀬…」  
「ですから…これからも楽しみにしててくださいますか?」  
「うん…でも」  
「え?」  
何か思う事があるのかにわは言葉を続ける  
「明日からは私も手伝っていいかな?」  
「にわちゃんが?」  
「やっぱり七瀬だけにってのは…」  
にわの言葉を聞き微妙な表情を浮かべる八重だが急に明るい顔になり  
「そうだ!ならにわちゃんは私にお弁当作ってくださいますか?」  
「え?わ、私が?」  
突然の提案に今度はにわが目を丸くする。  
「はい、私が皆の分を作りますから…にわちゃんには私のを作って欲しいんです」  
「え?え?…でも…」  
「ん?」  
「私…七瀬みたく美味しく作れないよ…」  
悲しそうな顔で話すにわを見て八重は優しい微笑を浮かべ…  
「何言ってるんですか?にわちゃん」  
「え?」  
「にわちゃんが私のために作ってくれたお弁当が美味しくないはずないじゃないですか」  
「…七瀬」  
「フフ…ですから明日は」  
「うん!」  
 
「なぁマキち〜?」  
「なんや?」  
「確か今は九月じゃったよね?」  
「にしては熱いな」  
 
                END  
 
 
 

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