暗い暗いトンネルを歩き続ける…  
一人独り歩き続ける…  
泣くことも忘れ、頼ることも忘れ  
うつむきながら…ただ歩き続ける…  
いつか出口に辿り着くと信じて…  
いつか光が見えると信じて…歩き続ける  
足取りは重く…靴音は低く…  
 
  《いざ倒れ逝くその時まで》  
                『クラビら』より  
 
 
ふぅ…いくら忙しいからって妹にゲームソフトを買いに行かせる兄ってのも問題ですわね…  
それにしても…  
「いくら逆転裁判でも経費扱いは…」  
そういえばこの前作ってたデンドロなんとかは応接室で好評と言ってましたね…  
あら?あれは…  
「はこねちゃん?」  
「あっ由布院さん。こんにちわ」  
「はいこんにちわ。今日はお姉さんと一緒じゃないんですか?」  
「お姉ちゃんは委員会だから先に帰ってなさいって」  
…あの雨の日から結構経ちましたよね…  
「そうでしたか…あっ知ってます?あそこの喫茶店のケーキ有名なんですよ」  
「ホント?今度お姉ちゃんと来ようかな…」  
「良かったらこれからご一緒してくれませんか?御馳走しますよ」  
「え…でも…」  
「一人で入るのは少し…と思っていたので一緒してくだされば嬉しいのですけど。」  
「う〜ん。じゃあ…」  
「フフフ。ありがとうございます。ならいきましょうか」  
 
「いらっしゃいませ〜」  
「わ〜メイドさんだ〜」  
…有名なのはケーキでしたわよね?  
「なら…ケーキセットを二つ。ミルクティで」  
「かしこまりました。少々お待ち下さい」  
 
…さて  
「ところで熱海さんとは仲良くしてますか?」  
「え?…うん。最近は特に優しくしてくれるんだ。この前も一緒にプラモデル作ったんだよ」  
「へえ。今度は何作ったんですか?おめでたナイトホークとかですか?」  
「前に水玉スカイハリアーは作ったけど…今は1/144フルアーマーニワタズミだよ」  
「うちの兄は虹色エクステンダーなんて作ってましたね…」  
「なんか遠い目…」  
             ・  
             ・  
             ・  
「はこね、ここはこうでいいの?」  
「あ、うん。ねぇお姉ちゃん?この前のニワタズミ対ナオコサン面白かったね」  
「もう…はこねったらカッター使ってる時によそ見しちゃ駄目だって…」  
「痛!?あ…切っちゃった」  
「もう大丈夫?ちょっと見せて」  
「うん…ごめんなさい」  
私がお姉ちゃんの言うこと聞かないから…  
「良かった…ちょっと切っただけみたいね」  
「う、うん」  
「これくらいなら舐めておけば…ンム…」  
「お、お姉ちゃん?…ん…」  
「…ふぅ。これで大丈夫でしょ。ん?どうしたの、はこね?」  
「ううん。…ありがとうお姉ちゃん」  
             ・  
             ・  
             ・  
「エヘヘ」  
「はこねちゃん?」  
どうしたんでしょう?急にニコニコして…  
「あ?ううん。このケーキ美味しいね」  
「本当ですね。私のアップルパイも美味しいですよ」  
確かに制服だけでは無いみたいですね…  
そういえば…  
「熱海さんも結構お菓子作り上手なんですよ。知ってましたか?」  
「うん。この前クッキー焼いてくれたんだ」  
「あらいいですわね。美味しかったですか?」  
「うん!」  
             ・  
             ・  
             ・  
「はこね〜クッキー焼けたわよ〜」  
「これ…食べてもいいの?」  
「はこね以外に誰が食べるのよ?」  
お姉ちゃん…わたしの為に作ってくれたんだ  
「う…うん!わ〜美味しそう〜」  
「沢山作ったから一杯食べてね」  
「いっただっきま〜す。…あ」  
あ…壊しちゃった…  
「もう…はこねったら力入れすぎよ?クッキーは逃げないんだから」  
「お姉ちゃんゴメンね」  
「しょうがないわね…はいあ〜ん」  
「え?え?お姉ちゃん?」  
「ほら…あ〜ん」  
「う…うん。あ〜ん」  
んぐんぐ。お姉ちゃんが私の為に作ってくれたクッキー…  
「美味しい?」  
「うん!!」  
「じゃ可愛い雛鳥ちゃんは次どれが食べたい?」  
             ・  
             ・  
             ・  
「エヘヘヘ」  
「はこねちゃん?」  
「美味しかったな〜お姉ちゃんのクッキー」  
……味だけの話ではないんでしょうね。少し羨ましい…かな。  
「なら熱海さんの将来はお菓子屋さんで決まりですか?」  
「え?駄目だよ。私だけしか食べちゃ駄目なんだから」  
「あらあら。そういえば今度家族旅行に行かれるそうですね?」  
「うん。鳴子温泉に行くんだ」  
「よろしいですね。姉妹で仲良く温泉ですか」  
「え?家でもお風呂一緒だよ?」  
「…そうらしいですね」  
             ・  
             ・  
             ・  
「お姉ちゃん背中流してあげるね」  
「ありがと。お願いね」  
「うん!」  
それにしても…いつ見てもお姉ちゃんって  
「うん?…はこね、どうしたの?」  
「お姉ちゃんってスタイルいいよね」  
「そ…そうかな?ありがとう」  
「うん…羨ましいな」  
「はこねだって将来きっと美人さんになるわよ」  
「ホント?」  
お姉ちゃんに相応しい妹になれるのかな?  
「うん本当。素敵な女性になるわ」  
「ならお姉ちゃんの為に早く大きくなるね」  
「あら私は今の可愛いはこねも大好きよ?」  
可愛いんだ…嬉しいな  
            ・  
             ・  
             ・  
「エヘヘヘヘ」  
「はこねちゃん?」  
「あっそうだ!由布院さんもお兄さんと一緒に入ったら?」  
「いえ流石にそれはちょっと…」  
…犯罪ですわね。色々と。  
「駄目なの?」  
「もう子供じゃありませんからね…」  
「…子供じゃないと駄目なの?お姉ちゃんも本当は迷惑なのかな?」  
「えっと…はこねちゃん達はいいんですよ」  
ごめんなさい熱海さん。この目には…勝てません。  
「そうだよね。最近はお姉ちゃんが呼んでくれるし」  
…『応える』んじゃなかったのかしら…『呼ん』でどうするんです?  
「はこねちゃんは甘えん坊さんですね」  
「む〜」  
「このミルクティより甘いかも」  
「もう…お姉ちゃんにも言われたのに…」  
「あら?そうなんですか?」  
             ・  
             ・  
             ・  
暖かくて心地よい気持ちになれるお布団の中…  
「ねぇお姉ちゃん?」  
「な〜に?はこね」  
「もう少しそっちに行ってもいいかな?」  
「ん〜」  
「駄目?…キャッ!?」  
引き寄せられて抱きしめられちゃった……  
「これでいい?」  
「う…うん」  
お布団よりも暖かくて…柔らかくて…甘い香りで…気持ちよくて…  
「はこねの甘えんぼ…」  
「……ダメ?」  
「……」  
返事が帰ってこない…それだけで私は不安に…  
だって…お姉ちゃんしか…私には…  
「…良いに決まってるでしょ」  
「え?」  
…信じていいんだよね?  
「良いに決まってるじゃない。好きなだけ甘えていいんだから…ね?」  
お姉ちゃんの胸に顔を埋めたまま泣きそうになる。  
嬉しくて泣きそうなんて……  
「じゃあ…明日も一緒に寝ようね」  
ずっと一緒にいてね…  
             ・  
             ・  
             ・  
「エヘへヘヘヘ」  
「はこねちゃん?」  
よほど嬉しいことでもあったのでしょうか?  
でも思い出し笑いする人って……大変ですね熱海さん。  
「あ!お姉ちゃんだ!オーイ!」  
あらあら…まぁ知りたいことは聞きましたし…  
「はこね、ユッフィー…二人でデート?」  
「違うよ!!!」  
はこねちゃん……何もそこまで力一杯否定しなくても…  
「いえいえ私が無理にお誘いしたんですよ」  
「そう?…ならいいんだけど」  
はい?…この姉妹は……  
「あっユッフィーありがとね」  
「いえいえ。今度は三人で来ましょうか。では私はこれで」  
「ごちそうさま〜」  
帰りましょうか。兄も首を長くして待ってることでしょうし…  
今度少し甘えてみましょうか…  
 
 
あの日……  
「はこね…今日からまた一緒に暮らせるね」  
「…お姉…ちゃん?」  
貴女が笑顔で差し伸べてくれた  
「うん。たくさん仲良くしようね?」  
暖かくて柔らかい手は  
「…ホント?」  
私にとって待ち焦がれた『光』だった…だから…  
「うんホント。ほら…行こ?」  
「う…うん!!」  
ずっと…ずっと…いつまでも一緒にいてね?  
 
END  
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!