お願い…どうか、どうか…お願い…
この手を離さないでいて……
この感情の希薄な『人の形』に手を差し伸べ続けてくれた貴女。
貴女の手を掴んでいる時だけ私は……人間でいられる。
どうか……どうか…
《人の形弄びし少女》
『特ダネ三面キャプターズ』より
「アッチにソッチに飛び回る ああ たくさんのハテナの数♪」
「部長…道の真ん中で歌うのは…」
「いいじゃない、そんな気分なのよ今」
「…迷惑」
「なによ、たからまで。それより今度の特集だけど…―― !」
「みずほ!!」
…ん?誰?私は何処かに行かなきゃならないのにな……
「ねぇお嬢ちゃん。服を離してくれないかな?」
聞こえてるのかしら?俯いたままただイヤイヤするように首を振り続ける少女…
顔も見えない…一体誰なのかしら?でも何処かで見た覚えがあるような…
「私のこと知ってるの?」
ただただ…かぶりを振り続ける…私は何故かこの子を見捨てることが出来ない…
なんで?…ねぇ貴女は誰?
…夢?…ん…あれ…ここ…たからの部屋?
「私…どうしたんだっけ」
「…あら、お目覚め?」
たから?
「あ…うん…ねぇ私…」
「…登校途中にぶっ倒れたから一番近い私の家に運んだ」
う~ん昨夜の貫徹が効いたのかしら。なら今朝のは夜明けのテンション?
ってアレ?
「ねぇたから…あなた学校は?」
「……」
「そっか。ありがと」
「…なにか飲むでしょ?麦茶でも持ってくるわ」
「ん…お願い」
もう三時回ってる…たからには悪いことしたわね…
それにしてもこの部屋に来るのは久しぶり…三回目かな?
今日はもう泊めてもらおうかな?都合良くパジャマも着ているし…………
パジャマ?ってちょっと?
「…はい麦茶。で、それなんて踊り?」
「あ、ありがと…ってじゃなくて!」
「…珈琲のが良かった?」
「そっちじゃなくて!なんで私パジャマ…?」
「…汗掻いてたから私が」
「そ…そう…」
ううう…ハズい…
「…下着を替えてパジャマ着させた」
何ぃぃ!
「ゴフ!って本当だ…た、たから!」
「…大丈夫。新品だから」
「だから、そっちじゃなくて!」
「…みずほ」
「な、何よ?」
「…少し痩せないとお腹が」
「ほっといて!」
嗚呼ジーザス。もしかして結構怒ってて意地悪されてる?
このままペース握られると何をされるか分からない!
でってこの子サドだし! 見てなさい……
「ねぇ…たから今日はありがとね」
「…心底感謝なさいな」
「それで今日のお礼がしたいんだけど…」
「…お礼?」
「そ、お礼。ねぇたから…」
私はたからの体を引き寄せ…
「…何?―― !!」
一瞬だけたからの唇にキスしてやった。
フッフッフ思い知ったか部長の素晴しい実力を。
「………」
たからは指を唇に当てて黙り込んでる。
少しはビックリさせられたかな?
「どうしたのよ?黙っちゃって。何?もっとして欲しいとか?」
形勢は完全に逆転ね!
「…してくれるの?」
………はい?
「…たからさん?」
「みずほ!」
OK。冷静に現状を把握してみよう。
今私はたからに押し倒されて唇を奪われてる。
あ…舌入れてきた……っておい!
力任せにたからの体を引き離し
「むぐ…た、たから!冗談も大概にしなさいよ?!」
「……」
ってなんで泣いてるのよ?!私何かした?なんてキスしたか。いやだからって…涙?
あ……たからの涙なんて初めて見た…
「た、たから……?」
「…みずほ、みずほ、みずほ…ゴメン…私…私…」
まさか……
「ねぇたから。もしかして私のこと…」
「……」
たからは俯いてまだ泣き続けている…
…ねぇ止めてよ。そんなたから…見たくない…
「たから…謝らないでよ…その…たから…なら…」
私は今なら引き返せるのだろうか?
「…え?みずほ?」
「たからが本気なら私…」
「……」
「今日…泊まってもいいかな?」
「…ええ」
…私の服を掴んで離さない少女
私はこの子を知っているのだろうか?でも…
「ねぇお願いだから服離して?」
でも私は決めたんだ。
「もちろんお嬢ちゃんも一緒に来るんでしょ?なら服じゃなくて手を繋ご?」
やっと顔をあげたその顔は……
「大丈夫。ちゃんと側にいるからね」
ん~昨日遅かったんだから…寝かせてよ…
…ん、何?……なんかアソコが…
っておい!
「あんた何やってんのよ!」
「…ちょっとGスポットなどを」
「すんな!!」
この女は真顔で…やっぱ引き返そうかしら?
「…みずほ?」
あ~もう…
「そんな心配そうな顔しなくたって何処までも道連れになってやるわよ!」
「…ん、ありがと」
…フン!
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